世界一大きな問題のシンプルな解き方――私が貧困解決の現場で学んだこと

  • 英治出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784862761064

作品紹介・あらすじ

15カ国、2000万人の貧困脱却を可能にした単純かつ大胆な解決策とは?「残りの90%の人たちのためのデザイン」を提唱し、スタンフォード大学やMIT(マサチューセッツ工科大学)など最先端の研究者から絶大な支持を集める社会起業家が贈る、本当に貧困を解決したい人たちへのメッセージ。

感想・レビュー・書評

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  • 1.稼げる仕組みをつくるにはどうすればいいのか?

    2.貧困層がどのような手段で「稼ぐ仕組み」を生み出してきたのかが分かる本です。いままで、開発途上国に対しては援助中心のアプローチが主流でしたが、上手く行かないことが多くの失敗を経てわかってます。
    著者は、このようなやり方ではなく、彼ら自身に力をつけさせることが重要だと述べています。12章立てになっており、どのようにして稼ぐ仕組みを作り上げてきたのかを詳細に述べています。主体となっているのは農業であり、どのように改善してくのかをストーリーで書かれてます。
    貧困を解決するために必要なのは、多額の資本ではなく、彼らと対話し、どのように稼ぐ仕組みを作っていくかということを教えてくれる本です。

    3.まず大切なのは現状分析だと思いました。彼らに寄り添い、なぜこのような生活をしているのか、なにが問題なのかを見極めることから始めなくてはいけません。一方的な寄付は彼らの自立心を失わせ、結局何も生み出さないことは歴史が証明しています。また、国と話をしても、汚職が蔓延っているため、支援は貧困層に直接届ける必要があります。そのためには草の根事業が必須となってきます。一度に全てのことを変えることは無理なので、何か1つでも現場を変えることができれば、何かしら良くなるということがこの本を読んで理解できました。

  • 世界中の最も貧しい層の生活を改善するために何が必要か、という問いに対し、著者は自身の知識と経験を踏まえ、「貧困層が買える値段のサービスを提供する」ことが重要だと説く。

    貧しい人々にも自らに投資できる力があることを忘れてはならず、自らの力で収入を高め、生活を高められるという経験を積ませることが彼らの糧となり、さらに生活をよくするための投資を生んでいく、というのが著者の主張。それを著者が実際に出会い、関わっていたネパールの寒村の男性の事例を示すことで、夢物語ではないという説得力がある。このネパールの男性の姿を追っていくことで、ビジネス書でありながら物語性もあり、サクサク読み進められる良い構成になっている。

    著者は最初の章で、「現実的な解を導く12のステップ」を紹介しているが、うち10個ぐらいはNGOや国際開発協力の世界では結構、当たり前の話。違うのが「目に見えて良い影響をもたらし、大規模化できる手法を探す」というものと、「具体的な費用と価格目標を決める」というもの。前者は即ち事業を大きく拡大することを最初から考えるということであり(これは持続発展性とはまた少し違う)、後者は明らかに実利的、ビジネス的な視点。この2点は、資金的な制限からプロジェクトを想定したり、そもそも現地の人から収益を得ることを考えなかったりするNGOや国連には全くない視点。

    この2つの視点が、一般的なNGOや国連による「国際協力活動」と、著者の理論による支援との違いを生んでいる。著者は「貧しい人々が収入を増やすことに力を貸すことが重要であり、そのためには低コストで強力な解決方法が求められる。収入が増えれば、貧困の原因のうち必要と思うものを自ら選択し、自ら解決できるようになる」という考え方を持っている。

    「とにかく収入を増やす手助けをするから、そのあとの自分たちの生活向上のために必要なもの(医療、教育、生産性の高い農業手法などなど)は自分たちで考えて選び、サービスを買いなさい」という考え方は、「貧しいために手に入らないサービス(医療、教育、生産性の高い農業手法など)を提供します」という国際機関の従来の支援とはある意味で逆のアプローチ。要は、貧困をスタート地点とするか、不健康や未就学などをスタート地点とするか、その違い。

    でも、サービスや支援を提供する側がしっかり利益を得つつ、貧困を解決するというのは一筋縄ではいかない。その点が、著者の理論を面白く、魅力的に見せている一因だろう。

    ちなみに原題は『Out of Poverty : What works when Traditional Approaches Fail』で、『貧困からの脱出:伝統的な手法が失敗した時、どんな活動が実を結ぶか』といったところか。ここで言う「伝統的な手法」とは、言うまでもなく従来、国際機関や先進国政府がやってきた「必要なモノやヒトやカネを提供します」という支援のやり方。
    「失敗」という語をタイトルで使ってるあたり、原題はなかなか攻撃的。邦題も、この本に関してはそれほど大きく本の内容を損なってるわけでもなく、なかなか巧いタイトルを生み出してると思う。

    原著の出版は2008年。著者が言う「伝統的な手法」による国際協力そのものが、まだ大して長い歴史を持っていないが、その中でもさらに新しい理論と言える。出版から11年経った今でも著者はご健在。彼のアプローチを継ぐ人たちがこの先20年後の国際支援の在り方をどう、変えていくかが楽しみでもある。

  • すばらしい本なので読んでください
    問題解決、ビジネス・起業のヒント、1日1ドル以下で暮らす人たちの本当の姿などが詰まっています
    先進国に住んでいると裕福な10%の人々にだけ目を向けがちですが、残りの90%の人たちにどういう価値を提供出来るか考えたいです

  • 掛け値なしに面白い1冊。 1日1ドル未満で生活する、8億人の貧しい人々。彼らを貧困から救い出すための現実的な解法を、著者のポール・ポラック氏は貧しい人々が自らの労働でいかにより多くの収入を得られるかに焦点を絞っている。25年にわたって現場の貧困層に話を聞き、彼らの自立に本当に役立つ道具を開発・販売・指導してきた実例をあげて、徹底してビジネスの観点から語っている。貧しい人々は金がなく、農地も1エーカーの小規模であるといった状況のため、先進国での高価格・最先端機器が役に立たないといった実情は目からウロコ。

  • 368

  • 寄付という手段が必ずしも効果的でないこと、巨大な思い込みの投資が持続的な流れを作れずに終わるケースも多いこと、貧困の解決が地球のあらゆる分野の解決に向けた可能性に繋がるということ。
    彼はその為のアプローチとして「現実的な解を導く12のステップ」という極めて汎用的で具体的な道を提示しています。
    一方でこの巨大で難解な課題解決に向けては、我々含めた多くの人々のマインドセットを変えていくことが必要だということ、ソーシャルビジネスとして資金回収まで含めた循環モデルへ昇華していくことに向けた更なる宿題があるということなど、色々考えさせられる本でした。

  • 途上国の開発援助に関わる人は是非読むべき本。貧困をなくすためには、貧しい人が収入を増やすことに対して力を貸すこと。寄付では貧困は無くならない。非常に簡潔で明快なメッセージを著者自身が取り組んできた事例を紹介しながら説明している。エピソードを追う形なので、非常に読みやすい。本旨は最初の方に全て書かれているので、最初の方だけを読めば、何が言いたいのか分かる。

  • 1ドル未満で生活する貧困層が豊かになるのに必要なのは彼らが稼げる仕組みとその為に必要なサービスを販売すること。付加価値が無意味に高くても意味はなくて、求めるレベルの付加価値があり、幅広く手に入れやすい値段であることが大切。
    今2017年だと何が変わって、何が変わっていないのかは気になった。

  • # 12のステップ
    - 問題が起きている場所に行く
    - 問題を抱えている人と話,その話に耳を傾ける
    - 個々に特有の状況について,可能な限りすべてを知る
    - 大きく考え,大きく行動する
    - 子供のように考える
    - 当たり前のことを見て,実行する
    - すでに誰かがやっているかどうか調べる(やっていればする必要はない)
    - 目に見えて良い影響をもたらし大規模化できる手法を探る(少なくとも100万人が活用でき,大きな生活改善につながる手法)
    - 具体的な費用と価格目標を決める
    - 現実的な3カ年計画に基づいて実行する
    - 顧客から学び続ける
    - 他の人の考えに流されず,前向きでいる

    # 安いことは素晴らしい
    - 道具の重量を厳しくダイエットさせる
    - 余分なものはつけない
    - 時代をさかのぼってデザインすることで未来へ進む
    - 最先端の材料で昔のものに色を添える
    - レゴブロックのように無限に拡張できるものにする

  • テコになるのはどこなのか。
    どこのボタンを押せばいいのか。

    つまりそういうことかな。納得。
    Design for other 90%のファンとしては、感動した。

    2017年再読
    馬一頭の価格と運べる荷物量、これを単純に貧困層が購入できる価格帯まで運べる荷物量も比例してさげさせるという考え方、基本的には購買力がカギとなるという事だと思う。また貧困をなくすために多面的なサポートが必要とのトレンドに対し、収入の増加があれば自分達が自然とその他の項目に対してはお金を投じていくという考え方も興味深い。スラム街における陶磁器作りを担う人たちを、世界有数の博物館等で売られているレプリカ作成に回せないかというのも興味深い。

    IDEは農民たちに可能性を信じてもらう所から始める。砂漠に水をやるような作業のこともおおく、行動を起こす事が出来る人はごく一部である。だが一人生まれれれば、それをロールモデルに多くの人が変化を信じるようになるのだ。

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