「カタリバ」という授業――社会起業家と学生が生み出す “つながりづくり”の場としくみ
- 英治出版 (2010年9月24日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
- / ISBN・EAN: 9784862760876
作品紹介・あらすじ
「何とかしなきゃ!」立ち上がった2人の女性と共感して集まった人々。教育現場に一石を投じた、ゼロ年代起業家の熱き10年ヒストリー。
感想・レビュー・書評
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高校生へのアンケート結果が冒頭に上げられています
2人に1人が「自分は人並みの能力はない」
3人に1人が「孤独を感じる」
5人に3人が「自分はダメな人間だ」
5人に4人が「なんだか疲れている」
5人に3人が「自分が参加しても社会は変わらない」
本書は、カタリバというNPOを通じてみた、日本の教育現場の現状と問題提起です。
<目的意識のない大学の学習>
就職活動で学生が取り組むのが自己分析。自分はどんな人間で、どんなことをやってきて、それがどんな風に将来の仕事につながっていくか、という物語を紡ぐことになる。
だが、多くの学生にとってこれが極めて苦しいものになる。それは、「自分自身を語る材料が足りない」、「どうして、自分はこんなに何もないんだろう」
「もっとちゃんと考えて大学を選べはよかった」、「入ってから何をするのかを考えておきたかった」
<一方通行の講義型学習の弊害>
・一方通行の講義型学習が大半なので、小中学校のあいだは、自分にとっての評価基準を設定することができない
・帰国子女の談:日本の高校はおかしい。どうしてこんなに一方的に暗記ばかりさせるのか。どうしてこんなのおかしいって声をあげないのか。
・純粋に好奇心をもって学ぼうとするほど、学校の勉強には追い付かなくなっていく
・わからないことに興味をもってはダメということでしょうか
・早く大人になりたいと考えている高校生は少ない。
・留学していた子供たちは、日本のスクールカウンセラーがあまりにも機能していないことに驚く、つまり悩みの持っていき場がない。
・日本の子どもの貧困率は、13.7%。7人に1人が貧困状態にある。
<文部省行政>
・「学校の勉強ができる」ということは、学校に与えらえた評価基準をクリアしていくことをひたすらやっていたこと。
・誰も評価基準となるモノサシを与えてくれない場所にいったとき、自分でモノサシを設定することができないということである。
・教員ですら、相対的にしか物事を考えられず、絶対的な価値で判断ができなくなってしまっている。
・教科書とは:どの教科も結局、最終的な目標は人づくりだとおもっていました。
・先生にとって、授業はとても大切なもの。信頼のない団体がぽっといったところで簡単に授業の時間をもらえるわけではない。信頼と実績が必要である。
・公立高には、教員でない外部の人材や組織に対して、自校の判断で組める予算総額は極めて少ない
・教育はすべて学校内で行わなくてはならないという前提が教育委員会にも、自治体にもある
<私大の問題とひきこもり、フリータ>
・進学率の上昇とともに、私大は大きな問題を抱えるようになった。大学に通う目的意識の薄い学生や、志望する大学に合格できず、不本意ながら、入学してきた学生が次々に中退してしまう。
・大学は学生を獲得するために、広報費を拡大してきたが、入学者に中退されてしまうと、意味がなくなる。
・また、大学の中退者の一定数が、引きこもりになったり、フリータになったりする。
・大学生活の全うさせ、社会に送りだすことができれば、個々人にとって人生の充実につながるだけでなく、その後仕事について税金を納める立場になる確率も高まる。
<教育問題>
・日本では、交通事故の死者より自殺者が多い状態がずっと続いている。教育問題を子供の問題として捉えていてはダメだと思うようになりました。
・関係構築とコミュニケーションが何よりの処方箋になる
・仕事がつまらないと感じたら、それを変えることができるのは自分だ。
・福澤諭吉の言:世の中で一番楽しく立派なことは、一生涯を貫く仕事をもつこと
目次は、以下です。
はじめに
第1章 「カタリ場」という熱気
第2章 カタリバが生まれるまで
第3章 周りも自分も「見えない」高校生たち
第4章 仲間が集まり、実現したカタリバ
第5章 組織マネジメントを成長につなげる
第6章 難題=「いかに収益を確立するか」
おわりに詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
現在は震災地域の子どもの学びの場やサードプレイスの提供、不登校の子どもの支援や貧困家庭へ無償でwifiとPCの貸与を通じた支援をしているNPO法人カタリバの創業時のエピソードやメイン事業である高校での「カタリ場」の授業の様子や組織構築・マネジメントについて取材したもの。創業者である女性2人の創業時の覚悟やニーズの確信が現在のカタリバの形を支えていることが伺え、圧倒される。心に火を灯すこと=動機付けさえできれば、頑張ることができる子が多いのにその機会が得られないという問題意識でその機会格差を解消している。
福祉で近年よく使われる「居場所」と「出番」を2000年初期から教育にも持ち込み、その具体化と組織継続のための人材育成や収益化について真剣に考えているところに感銘を受ける。9月には不登校の子どもへの支援の事業に焦点を当てた書籍が出版される予定。 -
質が良ければ売れるっていう発想に行き詰まり、
それから具体的にどのように利益を出していくかというところが、
リアルで面白い。
もちろん取り組み自体が面白いのはいうまでもないが。 -
2012年81冊目。
自社本のため割愛。 -
大学の図書館でたまたま見つけた一冊。
平日は大学の授業があるのでなかなか参加できていないですが、この本を読んではやく高校生のみんなの役に立ちたいなと思いました。 -
NPO法人として、自分達が考える教育に関する社会貢献のうち、収益を最大にする取り組みを模索し続けた。色々な失敗を経験したのち、高校や大学、病院など、対話を大切にしたワークショップを行い、受講者の自分自身の価値に気づかせたり、将来のビジョンを描かせたりするなど、様々な人たちの関係性の中で、お互いがWIN-WINになる活動が紹介されている。
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カタリバの設営理念に共感する。
ななめの関係、いいね。わたしも、高校生時代は、先生ではなく、年の近い大学生(教育実習生)に、すごく腹を割って話すことができた経験がある。
年齢が近いからこそ伝えられることがきっとあると思う。
カタリバ、やりたい・・・・!
まあ、これをやらなくても良い社会が理想なんだろうけど。 -
変えられるのは自分だけ...。我々は分かりやすいニーズに踊らされている...。
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学校教育のみならず、企業組織にも当てはまる。ナナメの関係、気持ちの引き出し方。