- Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
- / ISBN・EAN: 9784862726995
作品紹介・あらすじ
星野源や吉澤嘉代子など多くのアーティストに支持されるロングセラー歌集『たんぽるぽる』に加えて、電子詩集『地球の恋人たちの朝食』から、同じ背景で書かれた詩作品を追加収録。
【収録作品より】
「目がさめるだけでうれしい 人間がつくったものでは空港がすき」
「とても私。きましたここへ。とてもここへ。白い帽子を胸にふせ立つ」
「うれいなくたのしく生きよ娘たち熊銀行に鮭をあずけて」
感想・レビュー・書評
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雪舟えまさんの歌集の文庫本ですね。
雪舟えま『ゆきふね・えま』さん(1974ー)札幌生まれ。小説家・歌人。
歌集『たんぽるぽる』の初版は2011年の春だそうです。この文庫版(新書サイズ)は2022年の2月発行です。短歌なのでこの新書サイズが良いですね。
とは言え、短歌を少し味わってみようという私の目論みは、ページを開いた瞬間に「えっ」となりました。こんな短歌あり、雪舟えまさんの世界の中に引き込まれる短歌ですね。
目がさめるだけでうれしい 人間がつくったものでは空港がすき
とても私。きましたここへ。とてもここへ。白い帽子を胸にふせ立つ
美容師の指からこの星にない海の香気が舞い降りてくる
きみ眠るそのめずらしさに泣きそうな普通に鳥が鳴く朝のこと
カステラの一本ずつに雷をしずめて通りすぎるあまぐも
妖精の柩に今年はじめての霜が降りた、 という名のケーキ
北風はほんとうに来てこの窓へ電車の音を運んでみせた
雪よ わたしがすることは運命がわたしにするのかもしれぬこと
風呂あがりあなたがパジャマ着るまでの時間がのびる春なのです
たんぽぽがたんぽるぽるになったよう姓が変わったあとの世界は
はやく何か建てばいいって言われてる空き地を月が歩いているよ
手のなかで軋むデラウェアあの人の深層筋を吹きわたる風
解説の松川洋子さんは「若草色のシュールレアリスム」と言われています。
私には、短歌のメルヘンに思えます。よくわかりませんが、穂村弘さんが認めていらしゃるから確かなのでしょう。
文庫版には、詩が一篇『地球の恋人たちの朝食(抄)』も記載されています。
ちょっと驚いて、楽しめる歌集でした。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
雪舟えま「たんぽるぽる」書評 神様の囁き声をとらえる感性|好書好日(2011年06月26日)
https://book.asahi.com/article/11644874
雪舟えまウェブ
https://yukifuneemma.com
【サイン本】 たんぽるぽる (短歌研究文庫) - 短歌研究社
https://tankakenkyu.shop-pro.jp/?pid=166586258 -
目がさめるだけでうれしい人間がつくったものでは空港がすき
あかつきの君は洗濯機に告げる「おまえは六回ピーという!」と
たんぽぽの綿毛を吹けばごっそりと欠けて地球の居心地に酔う
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延々と挙げきれないほど好きな歌ばかりだった
自分だけの「かんぺきなせかい」を構築して、それを支配してる。
宇宙的なスケールから日常への落とし込み方。その妙にキレイで、浮遊感のある、かわいい世界観の徹底。そのためのモチーフの選び方や視点、スケール間を飛び越える表現。他の歌集も買う! -
この玄関は入るのに難しいですね。もうちょっと離れて見ましょうかね。
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p11
温度の不安定なシャワーのたびに思いだすひととなるのだろう
p33
びすびすと降る雹のなか抱きあって むかし金属だった気がする
p34
すきになる? 何を こういうことすべて 自信をもってまちがえる道
p42
逢えばくるうこころ逢わなければくるうこころ愛に友だちはいない
p43
やっと二人座れるだけの点のような家を想うと興奮するの
p44
全身を濡れてきたひとハンカチで拭いた時間はわたしのものだ
p70
歩道橋にのぼってさけべ願いごとは轟音に溶けこませたら叶う
電話きてどきんとゆれた心臓が壁画の劣化すすめてしまう
p72
硬貨舞うバスの床みて不可思議なちからが目覚めそうな感じに
p77
ながいながい手当てはじまる僕たちが眠ったあとは星が引き受ける
ふたりだと職務質問されないね危険なつがいかもしれないのに
p80
君がもう眼鏡いらなくなるようにいつか何かにおれはなります
p83
ぜんぶ忘れて似合う服を着ていたい次にあなたの前に立つとき
p85
なでられて頭の二十二個の骨ふしぎだふしぎだとさざめけり
あの人と最も小さなものになり輝く管を流れてみたい -
雪舟さんの短歌。なんだろねこの視点と感性。独特で繊細でユニーク。短歌をよむとほわんと映画のような映像が思い浮かぶ。世界は、おもしろい。
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どう遠回りしても行き着く先は愛
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シンガーソングライターの吉澤嘉代子さんのおすすめで読んだ本…解説も素敵でした。
ちいさな棘は抜けぬまま肉にめり込み、今も胸の奥に刺さったままです。きっとどこまでも深く深く、いつか私の一部となるでしょう。いえ、もう既になっております。
確かに私にもちくりと著者の著す世界の棘が、
私の肌にも、確実にその棘を残しました。
特に好きだったのは…章の扉にあった詩
ムーンせんべい。三日月、上弦、満月、十六夜など月の満ち欠けをかたどったせんべいが一箱に一枚入っている。どの形が入ってるかは分からず、新月として空っぽのこともある。その新月こそが当たりで、幸運を呼ぶんだそうだ。〜月の港の代表的なおみやげである。
…本当にこんなおせんべいがあったら素敵じゃない?あるのかな?あとでググってみよう。
『地球の恋人たちの朝食』の詩の抜粋とのこと。一気にこの本の著者に興味が寄った。
そして、短歌が始まった。
1首ずつ、声に出して口を動かし、詠んでみる。
逢えばくるうこころ逢わなければくるうこころ愛に友だちはいない
全身を濡れてきたひとハンカチで拭いた時間はわたしのものだ
あるときはお酒に強くある時は弱くてひとは自由なのです
うるいなくたのしく生きよ娘たち熊銀行に酒を預けて
歩道橋にのぼってさけべ願いごとは轟音に溶け込ませたら叶う
あの人と最も小さなものになり輝く管を流れてみたい