黒船前夜 ~ロシア・アイヌ・日本の三国志

著者 :
  • 洋泉社
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感想 : 28
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  • Amazon.co.jp ・本 (353ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784862485069

作品紹介・あらすじ

ロシア・アイヌ・日本の三者の関係をとおして、北方におけるセカンド・コンタクトの開始を世界史的視点で捉える。-異文化との接触で生じる食い違いなどエピソードに満ちたこれこそ人間の歴史!渡辺史学の達成点を示す待望の書、遂に刊行。

感想・レビュー・書評

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  • 題名「黒船前夜」の「黒船」は、もちろん、1853年のペリー来航を指している。

    泰平の眠りをさます上喜撰たった四盃で夜も眠れず

    黒船の来航により鎖国体制が崩れた、「泰平の眠り」がさめたという理解が一般的だと思うが、それ以前にも、日本と西洋の接触や交流はあった。本書は、その中でも、特に北海道を中心としたロシアとの接触の歴史を描いたものである。大量の史料調査・分析に基づいて描かれており、エキサイティングな内容だ。
    ただし、本書は、読者に日本史に関してのかなりの知識と理解を要求する。私などのように、そのあたりに自信がない者にとっては、本書のストーリーを追いかけることで精一杯であり、なかなか物語を楽しむところまでは至らなかった。
    こういう本を自在に楽しめないのは、かなり残念。

  • 長い感想文を書いてたけど一瞬で消えちゃった。
    ショック。本はとても面白かった。


    思い出して書いてみる。
    この年齢でここまで纏めた本を作れることに驚いた。
    作者は石牟礼道子のビジネスパートナーらしいが、私は詳しいことは知らない。

    通訳の世界が面白い。桶を使った絵手紙のやりとりも興味深い。
    他国の言語や文化の理解には、もともとの適性があり、知識や教養があり、新しい言語を頭の中でうまく整理してすぐに会話レベルが上がるものもいれば、いつまでたっても上達しないお飾りの通訳もいる。

    松前藩がなぜこのような立場になったのか。
    アイヌの世界、ニヴフ(ギリヤーク)の世界。江戸幕府とロシア。
    エトロフがこんなに大きな島とは知らなかった。

    ロシアがとにかく古い。
    ここだけ、海運技術も数百年古くてバイキングなみとか。不凍港の獲得を急ぐわけ。
    人権意識も古いし、いつも寒さのあまり、酒飲んで騒いで強奪してるだけ。
    国が広いから、中央の目が届かず、地方官吏が独裁でやりたい放題。
    賄賂や暴虐のかぎり。腐ってる。
    一方で他国からの人材は大事にした。
    ラクスマンはスウェーデン人だし、ど田舎に送られたポーランド政治犯が知識を運んでくる。

    この数年読んできた、いろんなジャンルの本がここで集合したかんじで面白く読めた。
    ダンピアや海賊たちの航海術、プーシキンでみたロシアがなぜあんなに古かったのか、おろしあ国粋夢譚と米原万里のイルクーツク探訪、ゴールデンカムイと、北原白秋の樺太旅行記。面白かった。

    ひとつだけ追記。
    アイヌ詩人の知里幸恵さんのこと。
    たった一言だけ登場するこの本では美化されていない(婉曲表現)ので、そこが地雷のかたは気をつけてください。

  • ふむ

  • 洋泉社
    渡辺京二 「黒船前夜」


    アイヌ(千島、樺太を含めた蝦夷地)の交易権など を巡る日本とロシアの競り合い史。レザーノフらロシアと 松前藩ら日本の競り合いが、ゴローヴニンの釈放交渉を通じて 落ち着いていくという構成



    興味深かった著者の見立て、エピソード
    *アイヌには国家形成の意思がない
    *シャクシャインの戦いは 民族全体が決起したわけではない
    *薩摩から漂着した権蔵がペテルブルグ日本語学校の教師となり、厚遇されたエピソード
    *日本の庶民たちの異国人に対する警戒心のない態度
    *梅原猛「アイヌ=原日本人説」は アイヌの儀礼や習俗に 日本文化の最古層を読解する鍵を求めるもの












  • 2022/2/10購入
    2023/2/27読了

  • ロシア・日本・アイヌの北方三国志。
    79歳でもこんな仕事が出来とは、まだまだ我々も頑張らねばなりません。
    船戸与一の「蝦夷地別件」と併せて読むとよいかも。

  • 時代は、1739年の元文の黒船来航から、1771年のはんべんごろう事件、1792年のラクスマン来航、1804年レザノフ来航、1811年ゴローニン事件までを扱う。またそれまでのロシアの極東進出、アイヌと日本の関わりの経緯についても解説する。

    なんといっても最終章のゴローニン事件は圧巻である。函館でのゴローニンの幽閉と、その報告措置としてのロシアによる高田屋嘉兵衛の連行。嘉兵衛の毅然とした態度、人道的な松前奉行所の対応、日本とロシアの友情が芽生えた瞬間であった。

    2011年2月8日のhttp://naokis.doorblog.jp/archives/51644658.html本のキュレーター勉強会二軍キャンプで紹介される。5月15日読書開始、5月22日読了。

  • 資料に基づきながら少しだけ想像の翼を広げる、そんな手法で書かれている。新聞の連載であった所為か、若干間のびしていると感じてしまった。

  • 2010年刊行。著者は河合教育文化研究所特別研究員。◆田沼意次政権は、ステレオタイプ的江戸時代観とは異質の、脱吉宗政策、反松平定信的な役回りを演じた。その田沼政権の政策に興味を持ち、その前後史を丹念に追いかければ、本書のような方向性にたどり着くはず。「三国志」との副題はやや言い過ぎの感はあるが、ステレオタイプ的な江戸時代観(本書的には「鎖国」になるのだろうが)を突き崩すには、もってこいの好著。特に、アイヌと松前藩の関係を丹念に追いかけている点は、類書を見ず、とてもすばらしい。

  • 北海道、千島列島という、教科書の日本史には登場しない地域が、ロシアとの外交の歴史の中には大きく立ち現れてくる。そして、日本とロシアの歴史の間には、アイヌが大きくかかわっている。
    戊辰戦争前の北海道はどんな姿だったのだろうという興味から読んだのだけれど、鎖国時代の外交、ロシアとの関わり、日本とアイヌの関わり、知ることが多かった。

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著者プロフィール

1930年、京都市生まれ。
日本近代史家。2022年12月25日逝去。
主な著書『北一輝』(毎日出版文化賞、朝日新聞社)、『評伝宮崎滔天』(書肆心水)、『神風連とその時代』『なぜいま人類史か』『日本近世の起源』(以上、洋泉社)、『逝きし世の面影』(和辻哲郎文化賞、平凡社)、『新編・荒野に立つ虹』『近代をどう超えるか』『もうひとつのこの世―石牟礼道子の宇宙』『預言の哀しみ―石牟礼道子の宇宙Ⅱ』『死民と日常―私の水俣病闘争』『万象の訪れ―わが思索』『幻のえにし―渡辺京二発言集』『肩書のない人生―渡辺京二発言集2』『〈新装版〉黒船前夜―ロシア・アイヌ・日本の三国志』(大佛次郎賞) 『渡辺京二×武田修志・博幸往復書簡集1998~2022』(以上、弦書房)、『維新の夢』『民衆という幻像』(以上、ちくま学芸文庫)、『細部にやどる夢―私と西洋文学』(石風社)、『幻影の明治―名もなき人びとの肖像』(平凡社)、『バテレンの世紀』(読売文学賞、新潮社)、『原発とジャングル』(晶文社)、『夢ひらく彼方へ ファンタジーの周辺』上・下(亜紀書房)など。

「2024年 『小さきものの近代 〔第2巻〕』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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