太平洋の赤い星

  • バジリコ
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  • Amazon.co.jp ・本 (341ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784862382078

作品紹介・あらすじ

日本の安全保障に大きな影を落とす中国のシーパワー。第一級の海洋軍事アナリストが海洋における中国の軍事的戦略、戦術を包括的に分析した労作。

感想・レビュー・書評

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  • 中国の海洋進出をマハンの「シーパワー論」を切り口に論じた本。
    19世紀の米軍提督の唱えた覇権理論が今、中国の軍事エリートのバイブルになっている、と。
    内田樹氏のように「中国は大陸国家。海洋進出の野心はない」、という論を立てる人もいるが、少なくとも著者は、早晩米国の海洋覇権はアジア海域においては中国に逆転されるだろう、という立場。

    ちなみに、東アジア文化圏を説明するためによく使われる南北を逆にした地図というのがあるが、あれを眺めると、好むと好まざるとに関わらず日本列島が中露にとっての「蓋」になっていることがよくわかる・・・。

  •  中国の公開文献を使い、海軍を中心とした海洋戦略を分析している。原著は2010年刊行だが、その時点での事象や能力分析の比重は小さいので、そこまで古さは感じない。
     筆者たちは、中国国内でも一枚岩ではないとしつつも、マハンの制海権理論と毛沢東の「積極防御」を組み合わせた戦略が重視されていると見ているようだ。一方で海洋での経済活動を軍事活動よりも重視するのが本来のマハン理論、とも述べている。ただ、本書の範囲を超えるが、その後の「一帯一路」を見ると、やはり中国では経済活動の重要性も、必ずしもマハンの意図しなかった形で理解されているのではないかとも思える。他には、鄭和の遠征を使った中国のソフトパワー主張についても述べている。
     中国の海軍力に対しては「楽観主義者と悲観主義者の簡単すぎる予測をどちらも裏切る」「中国の海軍の潜在力を見くびってもいけないし、過大評価してもいけない」と繰り返し述べるなど、警戒しつつも単純な中国脅威論でもない。副題の「海洋覇権への野望」に当たる部分は、原副題では"the Challenge to U.S. Maritime Strategy"だ。ただ、過去の米国内の分析が甘すぎた点は批判的に述べている。
     なお軍艦を「戦艦」、SLOCを「交通シーライン」とするなど、和訳に基本的な問題が多い。訳者も認識していたのだろう、本書の中で読者に容赦と一報を乞うと共に自分のウェブサイトに訂正を載せているが、これがプロとして誠実な態度だろうか。なぜ刊行前にチェックを受けなかったのだろう。

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