軍艦島 全景

  • 三才ブックス
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  • Amazon.co.jp ・本 (160ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784861991813

感想・レビュー・書評

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  • 『博士ちゃん』という番組で取り上げられた軍艦島の特集を偶然視聴し、圧巻のあまり終始口を開けて見入ってしまい、さらに芦田愛菜ちゃんの秀逸すぎるコメント力にも圧倒され、気づいたらこの本に辿り着いていた。

    ここまで深く、貴重な画や情報を見聞きしたことが無く、圧倒されると同時に、
    いまもなお崩れ続ける世界遺産をこれまでにないほど近くに感じ、見られなくなる前に、とにかく自分の目で観に行かなくては、という気持ちに。

    ここに映し出されたビジュアルは、全く同じものはもう見られない。
    (現在老朽化により、入島できるエリアはわずか2%らしい)
    そこに生活し命を燃やした人たちの息づかいが今も残っていて、それもまた虚無感やら少し恐ろしさも感じる。

    人の手を使って維持をし続けるのもロマンだし、
    このまま朽ち果てていく様子を見守るというのもロマンだと思う。

  • ゾクゾクする写真集。
    1ページ1ページじっくり眺めたいような、じっと見るのが少し怖いような、不思議な建物。不思議な景色。不思議な空間。


    大正から昭和にかけて、軍艦島は炭鉱の島として栄えた。島に住み込んで働く人々のため、国のバックアップもあり、当時まだ珍しかった鉄筋コンクリートの建物群など時代の先端技術が惜しみなく投入された。最盛期の昭和30年代には5300人近い島民がいたそうだ(世界最高の人口密度だったらしい)。しかし、昭和49年、軍艦島は炭鉱の閉山とともに一瞬にして無人島となった。

    そんな劇的な歴史を持つこの島は「昭和のタイムカプセル」とも呼ばれているそうで、数多くの建物や施設跡など、至るところに当時の人々の暮らしの痕跡が残っている。
    人の姿は写っていなくても、無数の思念がそこらじゅうを漂っていそうな独特の雰囲気がある。入ってはいけない時間の落とし穴を覗いているみたいだ。

    「はじめに」を読んだときに印象に残った箇所がある。
    “(最先端技術と国からの手厚い保護のもとでの豊かな生活があった反面、)すべてのライフラインを外部に依存することから生まれる危機感、そして欲望の対象が変化することで、あっさりと捨て去られてしまうという運命を辿った軍艦島は、そのすべてが現代社会を黙示していた超近未来都市といえる。”
    ……なるほど。軍艦島は、私たちの暮らしのすぐ隣に、あるいは、私たちの暮らしの先にある風景かもしれない、というわけだ。
    事件や震災や感染症の流行、世界情勢の混乱などのたびに立ち現れる社会の脆さ。この写真集を見て感じた怖さの中には、私たちが今生きる社会が向かう先の景色、その一つの可能性を目撃してしまったようなゾクゾク感もあったのかもしれない。


    しかし、何度も写真を眺め、解説を読むうちに、写真の中の生活の名残にだんだん親しみを感じるようになってくる。
    保育園、学校、病院、食堂、商店、役場、寺院、神社、旅館、スナック、映画館……この小さな島の中には何から何まで揃っていた。最新式の家電の普及も早かったという。
    活気溢れる豊かな島で、大人たちは一生懸命働き、子供らは学び、遊び、みんなで力を合わせて暮らしていたのだな。ノスタルジー。


    【印象に残った写真】
    ●p.14~19 16~20号棟 日給社宅
    鉄筋コンクリートと木造長屋の融合した摩可不思議な建物。外廊下や土間の様子が祖父母の家にそっくりで、懐かしい。

    ●p.24~25 23号棟 泉福寺
    住職が常駐する寺院「泉福寺」ではあらゆる宗派の葬儀を執り行ったため、「全宗寺」とも呼ばれたそうだ。島には今も仏像と釣り鐘が残されている。

    ●p.62~64 21号棟 鉱員社宅
    1階には派出所と留置場があったが、酔っぱらい対応に使われるくらいだったとのこと。
    留置場の頑丈な檻や、居室の襖に直接書かれた子供のおき書き(離島の際に残していかざるを得なかったペットの世話を頼むメモ)の印象が強烈。

    ●p..96~105 昭和のタイムカプセル
    化石のような家電、家具、生活用品、学用品。

    ●晴れた日に撮られた屋外の写真はまた趣が違う。天空の城ラピュタやエドワード・ホッパーの絵が思い浮かぶ。明るくて、不穏。


    軍艦島については、太平洋戦争前後に多数連行されたとみられる抑留労働者の生活実態など、いまだ解明されていない部分も多いという。他にも近隣の中之島に残る謎の遺構など、現在も様々な面で私たちを惹き付ける存在だ。

  • 丸ごと1冊軍艦島の写真。大正時代、昭和時代(戦前、戦後、高度成長期)と分け住宅棟を紹介。最初はグラバーハウス。下請け業者の飯場としてロの字型の1916年(大正5)に4階建て、のちに7階建てに増築。建物は日給社員、鉱員社宅、独身寮、女子独身寮、職員社宅、公務員社宅、などと職制によって分かれていたのが分かった。島の高い所は偉い人用の住宅。

    軍関島名所散策では、船着き場、汚水浄化槽、などを写す。鉱業所アーカイブズでは竪坑、選炭施設、貯炭場、換気施設など。またアンダーグラウンドとして、住宅棟の地下の浴場、生協購買部の写真。・・驚くべき居住空間としての軍艦島。汚水は明治大正までは汲み取り式で、毎日対岸の野母半島から農家が船で汲み取りに来ていたとある。江戸でも練馬あたりの農家が肥を買いに来ていたなどということをちょっと思い浮かべてしまった。

    ・・しかし写真はほとんど現在の朽ち果てたもの。わずかに当時の生活している写真もあるが、まあ、なんという島だったんだろう・・ 生産、生活、の記憶の残滓。

    表紙は中ノ島からの眺望。左側が端島小中学校、でいいのかな。1893(明治26)三菱社の私立小学校として発足。現在の建物は昭和33年建設でちょうど島内の人口が5000人を超えた年。隣は65号棟・鉱員社宅「報国寮」、島内最大の建物。1945に建設が始まる。


    2008.12.12第1刷 2009.6.12第3刷 図書館

  • 軍艦島の世界を隅々まで写している写真集。廃墟にはもう人は住んでないけど、目に見えない何かが居る。そう感じさせてくれる一冊。

  • 建築物は、人の手が入らなくなると、じきに死んでいってしまう。
    役目を果たせなくなったものからは、寂しさと、後ろめたさと、幽霊になったような心許なさを感じる。
    でも、ただ「在る」だけになった存在は、あらゆる時代とあらゆる物を内に秘めている。

    海岸の砂を混ぜたセメントで建てた高層住宅が、まだ残っているんだ…。材料の調達がアバウトすぎるだろう。鉄筋に塩気ってNGじゃないの?建物を見てみたいけど、建物の中は歩きたくない。

    X階段、超美しい。

    行ってみたいけど…本州の南端かよ。本州の南端ってどこだよ。そこからさらに船…船酔いが怖い。でも行ってみたい。

    http://www.gunkanjima-odyssey.com/GS11-01.htm

    旧三井物産横浜支店ビル
    https://ja-jp.facebook.com/mituiyokohamaWarehouse

    岡まさはる記念館
    http://www.d3.dion.ne.jp/~okakinen/

    「ユリイカ 岡村靖幸特集」
    軍艦島という、もともと三菱(マテリアル)が所有していた無人島があるじゃないですか。あそこは2009年までは観光客は入れなかったのですが、僕は入れなかった時期にどうしても、すべてが人工的に作られ、廃墟になったビル面に波がドーンと打ち付ける、あの島に入りたかったんです。あそこは、どれだけいっぺんにドーンッと盛り上がってバーンッと盛り下がって人がいなくなったのかということが露骨にわかる、異形のかたまりのような島じゃないですか。そこに行きたくて行きたくてしょうがなくて、でも当時は入れなくて。だけど無理矢理、漁師さんに頼んで近くに寄れるというツアーがあったので、それに参加してみたことはあります。 p.24-25

  •  本屋で平積みになっていたのでつい買ってしまった,軍艦島の写真集です。
     私はちょっとだけ廃墟ファンで,そのきっかけとなったのが軍艦島の写真集でした。今回買った本は私が廃墟ファンになるきっかけとなった写真集ではありませんが,写真が軍艦島全体を網羅しているのと,写真だけでなく解説が充実しているのとでなかなか良かったので買いました。
     それにしても,見れば見るほどすごい廃墟です。狭い島の中に建設された炭鉱施設と,それを守る壁のようにびっしりと建てられたコンクリート造の高層住宅群がなんともシュールです。もともと狭い島に,最盛期で5,000人以上の人が住んでいたそうで,とにかく詰め込んだような印象の街並みが非常に魅力的です。高層建築同士をブリッジで連結し,さながらコンクリートの巨大迷宮と化したところや,ボタを海に捨てるためのベルトコンベアが住宅棟を貫通しているところなど,普通に考えたら絶対あり得ないような構造がまかり通っているところが面白いです。「人間の巣」といった趣ですね。
     いずれ行ってみたい場所ですが,長崎はちと遠い…

  • 行ってみたいが本書のように建物には入れないしなあ。

  • 細部にわたる写真の数々で柱があった場所などの予測がしやすいです。

  • 年代順に建物の特徴を追っている。当時の写真も数点。

  • 【推薦文】
    軍艦島の通称で知られている長崎県端島の解説付き写真集。一時期は東京以上の人口密度を有したが、炭鉱の閉山により現在は無人島となっている。詳しい地図とともにたっぷり楽しめる作品です。
    (推薦者:知能システム科学専攻 M2)

    【配架場所】
    すずかけ台: 2F-ペリパトス文庫 219.3/G

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