ゆっくりの美学: 太田省吾の劇宇宙

著者 :
  • 作品社
0.00
  • (0)
  • (0)
  • (0)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 12
感想 : 2
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784861828713

作品紹介・あらすじ

初の〈太田省吾〉論!
沈黙劇 と呼ばれる独自の舞台を生み出し、今も、世界で高く評価される太田演劇。その劇宇宙の全貌を、初めて論ずる。生前の本人との対談も収録。

太田省吾は、なぜ「沈黙劇」に至り着いたのか――。
 言葉を失い、動きが緩慢になり、何もかも奪われてしまう過程で、すべてを奪い尽くされた地点、つまり死者の視線から、現在を見返すこと、そこに「希望」や「未来」を見ようとしていたのではないか。
 演劇は、人の行為によって、つまり誰か(自分も含めて)を「演じる」ことで、そこに虚構の事象を立ち上がらせる。その力業を、これまで「演劇」と呼びならわしてきた。だが太田は、そうした虚構をつくりださない。自然と人間の関わりに目を凝らし、そこにすでに胚胎している事実を、人間(俳優)のささやかな行為で取り出してくる。それは木の中に本質が宿り、それを削り出すことで露わにする彫刻的発想と似ている。それが太田の虚構を演じない〈劇〉ではないか。
 何もないこと、それは自然の景観と同義だ。その巨大な自然と相まみえることで、人間の中に〈劇〉が生まれる。それをわたしは、太田省吾の劇宇宙と呼びたい。この〈劇〉を浮上させる仕掛けが「ゆっくりの美学」である。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • ふむ

  • 第1部 太田省吾の“ゆっくりの美学”(太田省吾のために;太田省吾の「希望」 ほか)
    第2部 太田省吾との対話―根源に向かう思考(太田省吾と沈黙の演劇;根源に向かう演劇―虚と実のバランス ほか)
    第3部 最後の芸術家―太田省吾の仕事(最後の芸術家;「沖縄」―太田省吾の戯曲作品から ほか)
    第4部 太田省吾の闘い―転形劇場解散後の活動(不機嫌な時代を乗り切るために;エロスへのまなざし ほか)
    第5部 劇評/書評(劇評『小町風伝』―“聖”へ向かう身体と空間;劇評『抱擁ワルツ』―腐朽する夢の時間 ほか)

全2件中 1 - 2件を表示

著者プロフィール

[編者]西堂行人(にしどう・こうじん)
 演劇評論家。明治学院大学文学部芸術学科教授。2023年3月で退職。
 1954年10月、東京生まれ。早稲田大学文学部(演劇専修)卒。同大学院中退。1978年から劇評活動を開始。60年代以降の現代演劇を中心に、アングラ・小劇場ムーブメントを理論化する。80年代末から世界演劇にも視野を広げ、韓国演劇及びドイツの劇作家ハイナー・ミュラーの研究。90年代以降は大学で教育に関わる。「世界演劇講座」を2006年から兵庫県伊丹市で開講。
 主な著書に、『演劇思想の冒険』『ハイナー・ミュラーと世界演劇』『劇的クロニクル』『日本演劇思想史講義』(以上、論創社)『[証言]日本のアングラ―─演劇革命の旗手たち』『蜷川幸雄×松本雄吉――二人の演出家の死と現代演劇』『ゆっくりの美学 太田省吾の劇宇宙』(以上、作品社)、『唐十郎 特別講義――演劇・芸術・文学クロストーク』(唐十郎との共著、国書刊行会)、『韓国演劇への旅』『現代演劇の条件』『演劇は可能か』(以上、晩成書房)ほか。最近著に『新時代を生きる劇作家たち』(作品社)。

「2023年 『敗れざる者たちの演劇志』 で使われていた紹介文から引用しています。」

西堂行人の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×