美しく呪われた人たち

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  • Amazon.co.jp ・本 (484ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784861827372

作品紹介・あらすじ

デビュー作『楽園のこちら側』と永遠の名作『グレート・ギャツビー』の間に書かれた長編第二作。刹那的に生きる“失われた世代”の若者たちを絢爛たる文体で描き、栄光のさなかにありながら自らの転落を予期したかのような恐るべき傑作、本邦初訳!

摩天楼が林立し始め、繁栄を誇るニューヨーク。その華やかな文化と、上流階級の暮らし。それがフィッツジェラルド独特の絢爛たる文体で描かれる。そしてアンソニー、グロリア、リチャードらの生き方に、信じられるものを失い、刹那的に生きる「失われた世代」の心情が見て取れる。
「どうしてこの作品がこれまで訳されてこなかったのだろう?」
 訳しながら、私はずっとそう思っていた。こんなに魅力的な作品なのになぜ、と。この素晴らしい作品を読む喜びが多くの日本の読者にも伝わりますように。(「訳者あとがき」より)

感想・レビュー・書評

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  • 若くて裕福で美男美女で、でも自分で人生を切り開く才能はあんまりない二人がじわじわじわじわ転落していく話。ハネムーン期でさえその薄っぺらさに気持ちが沈む重苦しい長編なので、あまり薦めようという気にはならない。ただ500ページかけて二人のどうにもならなさには納得がいったので、読んでよかった。

    構成や言葉遣いは肩に力が入りすぎているようで、特に最初は読みづらかった。ただグロリアが灰色の家から逃げ出すシーンやアンソニーが酔って失敗する場面は突然筆が走り出す感じがあり、一気に読ませる勢いがあった。

    アンソニーは相続のあてがなければ、グロリアは絶世の美女でなければ、いたわりあって暮らしを立てる方法を知って それなりに幸せになれたのではないかと思ってしまう。恵まれすぎた人の不幸と呼ぶと陳腐すぎるのだけれど、では不幸にして最上級の下駄を履いて育った人はどうやって自立する力を育てればいいのだろう。学校を出るまでに信用できる友人や大人とかかわって、せめて根拠のない万能感を抑えられるようになるには。本当に対処方法が浮かばない、彼らの転落は彼らの責任なのだろうか。

  • フィッツジェラルドだとどうしても基準がギャツビーになるし、比べてしまうとストーリーに動きが少なくてひたすら坂道を転落し続ける夫婦の物語ってツラいっちゃツラいけど、むしろギャツビー以上に転落していく描写が美しくて繊細で切ない。まぁ40過ぎた子持ちのオッさんが繊細な美しさにホロっと来てもしゃあないねんけども。
    というところで2読目追記。時代的なアレはしゃあないよね、有色人種はともかくクラス的なアレは作品そのものに関わるし。
    訳者あとがきの「エンディングがどうなの?」という批判的意見ってのもなぁ、じゃあ他にこの話どう落とすよ?ハッピーエンディングも違うしアンソニー死ぬのも違くね?って言う絶妙な落とし方や思うけどなぁ。判官贔屓上等な五つ星よ。

  • ◆華麗なる夫婦の崩壊鮮烈に [評/千石英世=アメリカ文学者]
    東京新聞:美しく呪われた人たち F・スコット・フィッツジェラルド著:Chunichi/Tokyo Bookweb(TOKYO Web)

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    デビュー作『楽園のこちら側』と永遠の名作『グレート・ギャツビー』の間に書かれた長編第二作。刹那的に生きる「失われた世代」の若者たちを絢爛たる文体で描き、栄光のさなかにありながら自らの転落を予期したかのような恐るべき傑作、本邦初訳!

    摩天楼が林立し始め、繁栄を誇るニューヨーク。その華やかな文化と、上流階級の暮らし。それがフィッツジェラルド独特の絢爛たる文体で描かれる。そしてアンソニー、グロリア、リチャードらの生き方に、信じられるものを失い、刹那的に生きる「失われた世代」の心情が見て取れる。
    「どうしてこの作品がこれまで訳されてこなかったのだろう?」
    訳しながら、私はずっとそう思っていた。こんなに魅力的な作品なのになぜ、と。この素晴らしい作品を読む喜びが多くの日本の読者にも伝わりますように。(「訳者あとがき」より)
    http://www.sakuhinsha.com/oversea/27372.html

  • 上流階級の出身であるアンソニー・パッチは早くに両親を亡くし、富豪の祖父に育てられた。両親の遺産で贅沢な暮らしを続けながら、まるで定職に就かず、大学の友人や美女達と交際する日々。友人から紹介された絶世の美女・グロリアと結婚し、変わらず贅沢三昧。倹約ができない2人は次第に経済的に追い詰められてゆき、夫婦関係も険悪なムードに。ラストはちょっと出来すぎてる気がしましたが、面白く読みました。アンソニーの苦労知らずの優しさ、優柔不断な面や出自故の虚栄心、見栄などによって身動きが取れなくなってしまう様は自業自得とはいえ、痛ましく思いました。約500ページの大作ですが、飽きさせずに読ませる筆の力はさすが。フィッツジェラルドは他に2作品ほど積読しているので、こちらも早く読みたいです。

  • 物語もさることながら、戦争の時代、アメリカの様子を知ることができた。上流階級は出かけるときは帽子をかぶり、ドレスを着て出かけていた時代。今でもいるのだろうか。仕事をしないで生活するなんて、想像できない。お金があっても何かしていないとおかしくなりそうだ。主人公の精神が蝕まれていく様子がなんとも言えない。

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著者プロフィール

(Francis Scott Fitzgerald)
1896年生まれ。ヘミングウェイ、フォークナーらと並び、20 世紀前半のアメリカ文学を代表する作家。1920年、24歳のときに『楽園のこちら側』でデビュー。若者の風俗を生々しく描いたこの小説がベストセラーとなって、若い世代の代弁者的存在となる。同年、ゼルダ・セイヤーと結婚。1922年、長編第二作『美しく呪われた人たち』を刊行。1925年には20世紀文学を代表する傑作『グレート・ギャツビー』を発表した。しかし、その後は派手な生活を維持するために短編小説を乱発し、才能を擦り減らしていく。1934年、10年近くをかけた長編『夜はやさし』を発表。こちらをフィッツジェラルドの最高傑作と評価する者も多いが、売り上げは伸びず、1930年代後半からはハリウッドでシナリオを書いて糊口をしのぐ。1940年、心臓発作で死去。享年44。翌年、遺作となった未完の長編小説『ラスト・タイクーン』(本書)が刊行された。

「2020年 『ラスト・タイクーン』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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