- Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
- / ISBN・EAN: 9784861525872
感想・レビュー・書評
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千葉県に写実絵画専門のホキ美術館がある。展示物は写真と見紛う絵画たちである。ただし写実でありながら実際の写真では撮影できない光景が描かれる。造形の大きさを少し変えたり事実と異なる陰影をつけたり。それを知ったとき芸術の片鱗を理解した気がした。
本書は「Picture」の歴史をデイヴィッド・ホックニー氏という画家が解説する点に面白さがある。三次元、正しくは三次元でさえないかもしれないもの、を二次元に置き換えるPictureという世界の試行錯誤や技術革新が語られる。範囲は絵画だけではなく写真や映画にまで拡がる。徴、時間と空間、光と影と捉まえて二次元のカンヴァスに表現する、それは画家が事実を描写するのではなく感性を具象化するところに芸術の神髄がある。画家が自分の感じたものを伝える方法を考え抜き計算し尽くした結果を、我々は感性とか芸術とかと呼ぶ。そう理解すると、美術館に並ぶ作品や映画館の上映に新たな見方が増え楽しみ方が増えた気がする。
非常に良書であるが絶版?のようになかなか手に入らずプレミアがついているようで残念。再販を望む。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
勉強用としては使えない。参考書でなく、余暇に読書するのであれば、面白いのかもしれない。
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ウォルター・アイザックソンが『レオナルド・ダ・ヴィンチ』で紹介していたので読んでみた。
歴史を概観できるだけでなく、美術界の第一人者の「ものの見方」を覗けるのは勉強になる。
それは彼が画家だからこそ得た視点であり、自分も絵を描く習慣から独自の視点を得なきゃなと痛感。
光学やレンズについては理解が及ばなかったので、別に学ぶ必要があるな、と。
【メモ】
絵画に進歩はない。この考え方はパウル・ベッカーの『西洋音楽史』の歴史の捉え方に通ずる。
最高の写真家の多くは画家になる訓練を受けていて、ものの見方を学んでいる。
カラヴァッジョはハリウッドの照明を発明。劇的に見せるためにどのように光を当てるかを小気味良く案出した。
プラトンは錯覚絵を嫌った。
写真は一瞬を切り取るが、絵画は人・情景・出来事の展開を凝縮させる。すなわち、絵画は空間の芸術
正しい遠近法なんてない。等角遠近法もものの見せ方の一つ。
中国絵画には固定された視点は存在しない。焦点の移動が原理になっている。
メガネは1286年にピサの職人が発明。仕組みは???
アルベルティは絵画に知的な威厳を与えた。また絵画に幾何的な定義。彼は私たちを周囲の世界から切り離した。
消失点を想定した線遠近法に違和感があったが、ミケランジェロはその通念を曲げた。
『絵画論』やっぱり読もう。
ヨーロッパと違い、東洋は影が使われない傾向にある。
人の目の滑らかに光る表面は、真珠や鏡と同じく作用する。
ファン・エイク
反射像と現実はモネの最も深遠な主題の一つ。
睡蓮は絵の表面、水面、空と木々の反映、つまり小宇宙と大宇宙がひとつに溶け合うように見せた。
油彩絵具は感覚に直に訴えるように肉体を描ける
ファン・エイクの美しい緑 光学的に撮影するとそれが得られる
クロード・ロランの絵画は見事な構成で、建物を左右に配置して中央に奥行きの深い空間を配置する。舞台の両袖に張り物を置き、背後に舞台の背景を配すのと同じ (歌舞伎?)
好きな画家の1人。
屈折光学 デカルト そもそもレンズの投影とは?望遠鏡の仕組み
フェルメールはカラヴァッジョと同様にレンズ越しに作画
風景画の面白みは奥行き。写真では表現できない。
絵を描くには「手と目と心」
レンブラントは心が特に秀でている。
実在の風景を光学的に撮影すると(カメラ)、見るものをその場から遠ざける。
写真は現実を映しているとは言えない。それは写真は現実そのものだという思い込みに過ぎない。
チューブ入りの絵具が発明されて印象派は屋外で絵を描けるようになった。
1830年代 映像を永久に留めておく方法が発見された
1888年 コダック社が持ち運びカメラ
人間の目は1秒間に16個以上の画像を見ると動画と錯覚
絵の歴史は生き残った絵の歴史に他ならない。今電子機器で撮ってる写真は未来に残っていくのか?
人は絵に自分の時間を当てはめるけど、映画は映画の時間に人を当てはめようとする。
カンヴァスは油彩が普及するにつれて、板絵に取って代わった
カメラ・オブスクラはカンヴァスの上に映像を投影させる
ビデオゲーム→「絵で遊ぶ」
プルースト「私の唇が彼女の頬に向かう短い道のりの間にも、10通りのあるベルティーヌが見えた。」→キュビズム (色んな角度から見えたものを一つの絵にまとめてしまう) -
制作する人にも、鑑賞のみが好きな人にもオススメかな、という本でした。特に絵画制作で方針が揺らいでしまった学生さんなんかには、改めてこういう歴史の整理のされ方に接すると何かヒントになるかも、という感じもしました。
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現代を代表する画家のデイヴィッド・ホックニーと美術評論家のマーティン・ゲイフォードが、技術と歴史の両面から「人類が世界をどのようにして平面に置き換えてきたか」について深く掘り下げています。
絵を描く人だけでなく、写真や動画を作る人にもおすすめ。全ての分野がひとつながりの流れとして語られているので、これから新しい表現を作るための考え方としても参考になります。
絵を描かない人でも、絵に興味のある人は面白く読めると思います。わかりづらい技術的な部分もありますが、絵の見方が深くなります。
対談形式ということもあり時代が前後したりもするので、美術史の資料としてはおすすめできませんが、多くの逸話から絵画の本質を探るような深い内容になっています。
絵画の歴史というタイトルですが、写真や動画についても含めて語られているので、『画像の歴史』のほうがしっくりきます。美術史において絵画の時代が長いので、大半は絵画のことが語られてはいます。
絵画と写真を芸術の分野として分けるのではなく、とても密接な関係として語られているところが革新的な芸術論になっています。絵画の延長として写真は生まれて、現代になってまた近づいているというのが、かなり面白いです。
新しい科学技術によって古い芸術と新しい芸術が生まれますが、古い芸術がなくなるわけではなく、より本質的な部分に洗練されていく過程もとても面白いです。
写真の登場によって写真的な絵とは逆の印象派やキュビズムのような絵が生まれたように、より多彩な表現に広がっていく大きな流れが語られています。
写真に関しても、近年写真を加工するアプリやソフトの発展によって、真実を伝えるための画像だった写真の持つ領域がより絵画に近づいているなどの考察はとても興味深いです。
どのような分野でも、「絵を描ける」ということは長い時間を経ても強みになり得る。逆にそこを怠ると、すぐに面白くないものになる。 -
【資料ID: 1117000740】 720.2-H 81
http://opac.lib.saga-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BB23193618 -
めちゃくちゃ面白かった。
人類は「画像」と共にあった。
「写真は街中に、すでにある」という森山大道の言葉を思い出す。 -
貸し出し状況等、詳細情報の確認は下記URLへ
http://libsrv02.iamas.ac.jp/jhkweb_JPN/service/open_search_ex.asp?ISBN=9784861525872 -
2017年3月12日 読売新聞 書評
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