スリー・カップス・オブ・ティー (Sanctuary books)
- サンクチュアリパプリッシング (2010年3月25日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (568ページ)
- / ISBN・EAN: 9784861139413
作品紹介・あらすじ
1993年、ひとりのアメリカ人男性がK2登山に失敗し、パキスタンの小さな山村で助けられた。村人たちの手厚いもてなしに胸を打たれた彼は、恩返しをしようと再びこの地に戻り、「女子のための学校を作る」と約束する。だが、お金もツテもない。しかもそこは女性の権利が制限され、タリバンのような過激派が勢力を広げる保守的なイスラム社会。いにかして男はこの無謀な取り組みを成功に導いたのか。全米が熱狂した真実の冒険ストーリー。
感想・レビュー・書評
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パキスタンで登山に失敗して命からがら下山して来た著者が、手違いで入った小さな山村で出会った人達と過ごすうちに、子供達のために学校を建てようと決意し、目標に向かって奮闘する話。
フィクションのように最初は全然うまくいかないし、フィクションのように協力者と多額の融資を得て、目標を達成し、さらに他の地域にも学校を作り続け、知名度も上がっていく…のが実話とは!
私は、日本から遠い中東の国について何も知らないのに、テロを起こした人、紛争を起こした人々だけをニュースでちょこっと見て、怖いと思ってしまいがちでした。けれど、この本に出てくるのはとても温かみのある、純粋で優しい人々で、そうだよねえ、そんな人ばかりじゃないよねえ、と実感しました。
著者の偉業もさることながら、彼の地の、紛争など望んでいない市井の人々について気付かせてもらえる良書でした。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
9.11の後と前とでは描かれている風景がまるで違う。
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登山家が、道に迷い助けてもらったパキスタンの山村に、「何か恩返しをしたい」と言う気持ちから学校を建てていくノンフィクション小説です。
村人の素朴さに心を打たれ、その環境に何とか変えたいと。単純に、現代の資本主義を押し付けるわけではなく、イスラム社会の中で、生きていく術を学ばせる。
正直にすごい話です。母国アメリカで資金(援助)を募り、1校。また1校と立てていきます。時代は9.11と重なります。
無学が故に、危険思想の教育を受けた子どもたちが、タリバンになったり、今のISISになったりしてる。
世界を守るために必要なのは、武器ではなく「教育」であると。
今もその活動は続いているらしい。 -
2013年96冊目。
登山失敗の祭に助けられたパキスタンの村に学校を建てることで恩返しを図るアメリカ人男性の壮大な物語。
久しぶりに素敵な冒険ができた。
すすめて下さった書店員さんに感謝。
9.11前、起きた瞬間、起きた後、全てをパキスタンとアフガニスタンで経験している著者は、子ども達の教育こそが最大の対テロの戦いだということ、全てのイスラム教徒が危険であることは決してないこと、人と人との信頼がいかに大事かということを教えてくれる。
現地の文化を尊重し、現地に体当たりで飛び込む彼が学ぶことはとても大きい。
560ページの大著だが、ぜひ読んで欲しい一冊。 -
凄いの一言で片付けちゃいけない気がするけど、本当に凄い。
始まりが約束を守るためで、しかもちゃんと果たすというのも凄いし、そこで終わらないでどんどん学校を建てていくのも凄い。
自分の目で色んなものを見ないとなと思った。 -
久々に終わってほしくないと強く思った物語だった。
しかし本当は作られた物語ではなく、実際に起こったことだし、
いまなお続いていることだというから驚きだ。
たとえ本書を読まずとも、
9.11テロは一体なぜ起きたのか、
アメリカ側からうつし出された映像(価値観)だけではなく、
反対側の(アフガニスタン)の背景、考え、文化について
知っておくといいと思う。
この本はまったく考えがおよばなかった世界を見せてくれた。 -
K2登山に失敗したアメリカ人が命からがらたどり着いたのは、パキスタンの小さな貧しい村。
先生もいない屋根もない学校で勉強している子ども達。
『僕がなんとかしなければ、僕が学校を建てます。』
パキスタンの貧しい村に学校を建てたアメリカ人。
私達はイスラムの世界をあまりに知らなすぎるのかもしれない。
テロリスト=イスラム。
この簡単な図式は一体誰が作ったのだろうか。
なぜテロが起きるのか。
それを防ぐにはどうすれば良いのか。
その一つの答えが彼の生き方だ。 -
小さい頃にアフガニスタンとの戦争が始まって、
その周辺の国は危なくて、危険な人がいっぱいいるし、怖い宗教なんだと思い込んでいた。
サイード アッパーズが言った
「我々の心を見てほしい、我々のほとんどはテロリストではなく、善良で素朴な人間なのです。我々の国が貧困で苦しんでいるのは、教育を受け入れられなかったからです。」
この言葉が本当に胸に刺さって涙が出た。
この本を読んで何も知らずに偏見を持っていた自分が恥ずかしくなった。
まずは、ちゃんと知ることから始めないといけないと思った。 -
K2登頂に失敗したアメリカ人登山家が、命を助けられたシェルパーたちの故郷に恩返しをするため、学校を建設していく実話に基づいた小説。法律も先進国の常識も通じないパキスタンの山奥で、古いイスラム教を信じる正直な村の人々に助けられながら、同時に厳しい反対・妨害にも遭いながら、その間に911のテロが起こり、イスラム諸国とアメリカの確執に巻きこまれたりもしながら、学校建設という目標達成に向かって歩みをやめない。イデオロギーの対立を超えた、現地の長老や宗教指導者、米国内の理解ある人々にも助けられるが、その高次、本質的な考え方は、プロジェクトを進める上で重要なことを教えてくれる。「全ては神の思し召し」を受け入れることで、人間の矮小さを自覚することができる。純粋に冒険譚としても面白いし、新たな視点を得られる一冊。
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死に際に、病院から支援者のヘルニ博士が幼なじみに電話したときのセリフがかっこよすぎる。
「俺だよ、ジャンだ。カラコルム・ヒマラヤに学校を建ててやったぞ」「そっちはこの50年間で何をしたかね?」
科学者として成功して、友人への自慢が学校を建てたこと。たまらない。
なんでも急いでさっさと済ませる、効率の良さの追求が現代的だが、
イライラとさせられるほどの物事の進め方、じっくり腰を据えて取り組むという文化的な違いに主人公が散々苦労したり戸惑ったり落ち込んだり学ばされたと感動したりするのも追体験させてもらう感じで良かったー!