高校教師、巣藤は、恋人と家庭をつくることに強い抵抗を感じていた。馬見原刑事は、ある母子との旅の終わりに、光の疼きを抱いた。児童心理に携わる氷崎裕子は、虐待される女児に胸を痛めていた。女子高生による障害事件が、それぞれの登場人物に運命の出会いを生み、家族関係の闇、心の闇にせまっていく。家族関係のぎくしゃくから生まれる心の闇や苦悩は、表面にはあらわれにくいものだと思う。幸せそうな雰囲気を漂わせる街の中にも、動物虐待や児童虐待は潜んでいる。親になりきれない親、そして、愛情を知らずに育ってしまった子供。心の闇に迷い込んだ少年少女が非行に走ったり、それが傷害事件や殺人事件に発展してしまうという、そういうニュースは最近実際多い。あとがきに書いてあったように、家庭に帰ろう。という風潮は、何の解決案にもなっていないし、それを解決案にしてしまうことで、余計に子供へのしわ寄せが生まれる。だから、家庭に帰ろう。なんていう風潮は、今の時代には胡散臭い。という天童荒太の想いには、共感した。