- Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
- / ISBN・EAN: 9784860112912
作品紹介・あらすじ
農業には人生を変える力がある──。
農業のリアルな喜びと苦しさを、自らの体験をもとに綴るノンフィクション。
40代に突入し、突如農業の面白さにめざめた著者は、あるとき相模湖の若き農業者と出会い、畑を耕し、地域の人たちと交流する農業コミュニティ「weekend farmers」を立ち上げる。その活動のなかで知った、野菜作りの深い充実感と収穫の喜び。また同時に知った、新規就農することの難しさ。
そこから著者は、全国各地でユニークな試みをする農家をたずね歩く旅を始めた。小豆島に移住しオリーブ農家となった元サラリーマン、有機農法でお茶を栽培してきた長崎の一家、衰退した麻の栽培を復活させるべく鳥取で苦闘する若者、育てたレモンやみかんを使ったジュースやドレッシング、リキュールなどの加工品を売る夫婦…。
「きれいごと」だけでは立ち行かない農業の世界で志を貫く人々の声を聞き、さらに農業への思いを深めた著者は、自らが事務所をかまえる渋谷でビルの屋上に畑をつくることになったのだが……。
感想・レビュー・書評
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2020年9月27日読了
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タイトルに技ありというか、著者の経歴を見て納得。
もともとは出版社勤務で編集者だった著者。
今はフリーで編集やいろんなことをやっているが、そんな彼が渋谷で農家をすることになった経緯とは。
渋谷のビルの屋上に畑を作り、農業をしているのは事実だが、農業専業ではない。
多分今後も専業にはならない。
美味しい野菜を作って流通させたいという夢は本当だけど、それは商業ベースに乗せることではなく、あくまでもコミュニケーションツールとして農業を知ってもらい体験してもらい、美味しい野菜を買ってもらうというのがコンセプト。
著者が農業に心惹かれていく様子がこの本に書かれている。
それは、私にもよくわかることだ。
安心安全な野菜を食べたい。
味の濃い野菜を食べたい。
できればそれを自分で作ってみたい。
子どものころに合成何とか剤がたっぷり入った食品を食べて育った世代の私は、その反動で無添加とか自然農法に弱いのである。
退職したらプランターで細々と野菜を作りたいと思っている私は、働き盛りの男の人が、農業の「の」の字も知らないなか、試行錯誤を繰り返しながら農業に取り組んでいく姿に、やはり憧れをいだいてしまう。
この本には、そうやって有機栽培でオリーブを栽培している人や、土地作りから始めて野菜を作っている人などがたくさん出てくる。
渋谷の農家はどうしたんだ!?
と思ったら、最後に現状が楽しそうに報告される。
農家といえども、人脈は宝なんだよなあ。
ここが家庭菜園とは違うと思った。
”土の役割は植物を育てることだけではない。
土の細かな粒子は、空気中の有害物質を吸って空気を清浄にする。また、雨を濾過して地下水としてきれいな水を生み出し、太陽の熱を吸収して気温の上昇も抑えてくれる。
水や、空気など、僕らが生きている中で、当たり前と思っていたものは、すべて土のおかげで存在していたのだ。”