日本映画[監督・俳優]論 ~黒澤明、神代辰巳、そして多くの名監督・名優たちの素顔~ (ワニブックスPLUS新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (207ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784847060236

作品紹介・あらすじ

萩原健一の「危険な才能」は、行き場のない欲動の系譜に属している。そのはてしのない栄光と失敗の繰り返しを、改めて本人が真率に辿る貴重な日本映画への証言集。黒澤明、神代辰巳、深作欣二、その他同世代随一の多数の監督とのコラボレートによる出演作、及びその周囲の生々しい事情が、今、明かされる。それは思春期からカウンター・カルチャーの洗礼を浴び、さまざまな守旧のシステムの破壊者として、多くの模倣者を寄せつけぬ歩みを続けざるをえなかった孤独な表現者の40年の記録だ。

感想・レビュー・書評

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  •  萩原健一・絓(すが)秀実著『日本映画[監督・俳優]論――黒澤明、神代辰巳、そして多くの名監督・名優たちの素顔』 (ワニブックスPLUS新書/798円)読了。

     ショーケン――萩原健一が、おもに映画とテレビドラマの仕事で接した監督・俳優・脚本家・プロデューサーたちについて、縦横に語り尽くしたインタビュー集。インタビュアーは文芸評論家の絓秀実がつとめている。

     副題にもなっているとおり、黒澤明と神代辰巳についてかなり紙数を割いて語られている。とくに、黒澤については面白いエピソードが多い。神代と萩原の深いかかわりは知っていたが、黒澤作品への出演は『影武者』のみだから、萩原の口からこれほど黒澤について語られるとは意外であった。

     ほかの監督・俳優たちについても、『股旅』で一緒に仕事をした市川崑について「俺、大嫌い、市川崑」と言うなど、歯に衣着せぬ人物評、ぶっちゃけ話の数々が面白い。

     萩原が表現者として生きてきた過去40年間の音楽・映画・テレビ界の舞台裏を垣間見ることができるし、何より、役者としての長い実践をふまえた映画論・演技論・表現論として味わい深い。
     正直、私は萩原がこんなに深く考えて演技をしているとは思わなかった。「感性の人」ではあっても「知性の人」だとは思っていなかったのである。

     いい言葉もたくさん引き出している。たとえば――。

    《僕の信念は、与えられたものは奪われる、だから自ら勝ち取らねばならないわけですよ。》

    《ものを作るというのは、どこかでリミッター、制限の回路を超えることだと思うんです。お酒も並々と注いでいって、あっ零れるという時にみんながハッと見るわけでしょ。腹八分目で物事をやっている人間ってどうなんでしょうかね。まぁ毎回そういうリミッターを超えることをやれというのではないけれど。毎回出来れば最高ですけどね。》

    《映画は本身の刀を抜いたうえでの御前試合だと思うんですよ。だけどテレビというのは木刀ですね。木刀で試合をする。しかし、木刀でも命を落としますからね。そういった真剣勝負を、テレビで重ねたからこそ僕は映画というものがやれたんじゃないですかね。僕は、テレビから基本的なソースをいただきました。》

    《(『いつかギラギラする日』のときの荻野目慶子について)彼女は、撮影の間、不眠症みたいだった。そりゃ寝られないから、おかしくなるよ。眠らないでやっているということは、撮る側からしたら面白いんですよ。リミッターを切ってるから。でも、そういう下品なことをしないで、素の状態でリミッターを切るのが本当の「美」というものなんですよ。》

     巻末には絓秀実が長文の「解説」を寄せている。それはおもに中上健次と萩原を比較して論じたもので、わかったようなわからないような、読者を煙に巻く文章である。
     本文のインタビューでも、絓は冒頭で「生い立ちなども含めて、中上さんと萩原さんは非常に似ている」(え~、そうかあ?)と言い、中上の話から始めている。そのへん、私には、絓が自分の専門分野に引き寄せようとしてのこじつけとしか思えなかった。
     
     絓は萩原のこれまでの活動についてよく調べてインタビューに臨んでおり、その点好感は持てるのだが、やはり映画評論家にインタビューさせたほうがよかった気もする。

  • 久々面白かった。
    当初 映画監督をめざし 「約束」に助監督ではいるも主演降板で監督から主演を依頼された。というのを読んで萩原健一に興味を持つ。映画出演記録を観ると結構映画をみているのだが あまり好きな俳優ではなかった。

  • ショーケンに対して“チンピラ”というイメージが役柄から強かったのですが、企画・製作も考えて色々やってきたんですね。妙に映画に詳しいのに意外な印象を持ちました。沢田研二に対するライバル意識、市川昆にたいする反発、嫌悪をストレートに出してます。
    面白いのですが、雑談的なところで終わってしまったので残念。もっと彼の世界観が俯瞰できる構成・内容になっていればよかったんですが。

  • 11010

    01/28

  • 「かっこいいけど悪い人」という印象が、「ものすごく勉強してるすごくてかっこいい人」にかわった。「アフリカの光」あたりをもう一度観たい。

  • ショーケンが神代監督をはじめ、日本の監督との思い出や、現場の様子を語るといったもの。『ショーケン』同様におもしろい。オファーがあったけれどもハリウッドに進出しなかった理由は、向こうはドラッグ天国なので当時麻薬に手を染めていた身としては生きて帰れないと思ったからなどセキララでもある。ただ、スガ秀実がインタビューしなくても良かったのではと思うけれど、スガ秀実的には中上との重ね合わせがあって、話が聞いてみたかったのか、単純におもしろいからかなとも思ったり。

  • 物事の捉え方、見つめる眼差しがなんとも刺激的で。
    まだ観たことのないショーケンの出演作品も観たくなりました。
    蜷川幸雄監督、萩原健一主演の映画は是非実現してほしい。

  •  ショーケンと言えば、自分は映画『居酒屋ゆうれい』や、ドラマ『外科医 柊又三郎』辺りで初めて見たと思うのだけれども、この本を読めばそれ以前の彼の役者以上であり、映画人以上であるそのスタンスに驚く。

     日本映画が今より何倍も日本的でありながら、確実に世界の一部であった時代。

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著者プロフィール

1950年7月26日生まれ。1967年、ザ・テンプターズのボーカリストとしてデビュー、以降俳優・歌手として活躍。「ショーケン」の愛称で親しまれた。2018年、初の本人作詞・作曲によるシングル「Time Flies」発表。2019年3月26日逝去。

「2019年 『ショーケン 最終章』 で使われていた紹介文から引用しています。」

萩原健一の作品

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