- Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
- / ISBN・EAN: 9784845908202
作品紹介・あらすじ
ハリウッドの第一線で活躍してきたカリスマ映画編集者が、長年の経験で得た知識とセンスを伝授。画面を息づかせる"編集"の極意。
感想・レビュー・書評
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「映画は思考に似ている。思考にもっとも近い芸術が映画である。」人間のまばたきと、映画のカットを関連づけて考えた事がなかったので目から鱗だった。映画という不思議なメディアの魅力に気付かされた。
それからアナログ映画/デジタル映画の違いについて日頃まったく意識してなかったことを痛感した。いまやデジタルが当たり前だけど、昔はフィルムを手作業で編集していた…編集者とは、職人業だったのだな。フィルムの場合は、辿り着きたいカットを探す為に全体を巻き戻したり早送りする作業が必要になるため、必然的に他のシーンもざーっと観ることになる。好きな所に一気にワープできるデジタル編集とは全く違うものが出来上がる…そりゃそうだよなぁ。
本の後半ではデジタルと映画の関係について書かれていた。安価なカメラや編集ソフトが普及し、誰でも作れる時代になったが、だからといって素晴らしい作品を作れるとは限らず、むしろ「たくさんのコックが寄ってたかって作ったスープ」(本書より)になる可能性をはらんでいる。というのはその通りだと思う。映画監督や編集者は、”本質的に”映画とは何なのかを意識しながら、作品を作らなくちゃいけない時代なのだと思う。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
理由がうまく説明できないけれど引き込まれる映画、好きだと感じる映画は、映画のリズムと自分の思考のリズムが一致しているのだろう。そうしたリズムを作り出しているのは、映画編集の「カット」である。これからはカットを意識して映画を見たいと思った。
また、後半の、映画のフィルムからデジタルへの変遷を、絵画におけるフラスコ画から油絵に喩えた話も興味深かった。しかし如何に技術が革新しようとも映画の本質は変わらない。その本質についてズバリ明快に書かれた良書だった。
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瞬き=カット
原作の初版の発売が1995年で約30年経っている。冒頭にあるように今まではアナログだったが今後はデジタル化していくだろうと作者は考えている。その結果新装版ではデジタル技術の章を大幅に加筆している。
アナログからデジタルに代わっても、編集にとっての大切なものは同じ。
観客と同じ立場で映像を見て、そのカットで観客に何を見せるのか、何を伝えるのかということ。
そのためのカットを選ぶための基準を
1. その瞬間の感情に忠実であること 51%
2. ストーリーを推し進めていること 23%
3. リズム的に面白みのある「ここぞ」という瞬間にカットされていること 10%
4. 「視線」を意識していること 7%
5. 「平面性」を尊重していること 5%
6. 三次元における継続性(人物の位置関係など)を尊重していること 4%
だとしている。
このとき上位を捨てて下位を優先してはいけない。上位があるなら上位を優先しなければならないとしている。
例えば、感情かストーリーかだったら感情を選ぶこと。
上位をきちんと満たしていると下位の部分で欠陥があっても気づかない(気づかれにくい)とのこと。 -
2000年代ギリギリ手前。映画編集がアナログからデジタルに移行する真っ只中で最前線にいたウォルターマーチの著書。
映画と編集好きにはたまらないと思う -
2022/2/27
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映画(映像)編集のプロセス
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映画編集について著者の実体験をもとにした素晴らしい考察。皮肉にも「デジタル」についての記載だけが冗長で古くなっているが、それ以外の章はとてもエレガントで、映像以外の編集にも通じる本質をついていると感じます。
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デジタル化についての冷静で正確な見通しはすごい。映像編集という仕事に誇りと愛情を持っていることが感じられた。
人の瞬きと思考の関係や、「観客」になることが編集にとって大切であるなど、独自の編集論は興味深かった。
語り口調も丁寧で読みやすい。
無駄だと思える作業が創造に大きく関わっているということですね。