タマゾン川 多摩川でいのちを考える

著者 :
  • 旬報社
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  • Amazon.co.jp ・本 (176ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784845112692

作品紹介・あらすじ

ぼくらの川がちょっとおかしいゾ。アロワナ、ピラニア、グッピー、プレコ…日本の川に捨てられる、外国の魚(いのち)たち。

感想・レビュー・書評

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  • 自然環境コンサルタントの著者が、多摩川を調査し、綺麗な川を取り戻し水の生き物を保護しようとするドキュメンタリー。

    冒頭で書かれる多摩川の調査で出てきた水の生物達の国際色豊かだった。
    南北アメリア、オセアニア、アジア、ヨーロッパ、アフリカ…。
    やはりインパクトが強いのはアマゾン川にいるような熱帯魚や肉食魚たち。ピラニア、アロワナ、グッピー…これではタマ川でなくてタマゾン川ではないか!
    この「日本の川にアマゾン川の生物がいるぞ」は、世界各国のテレビ局から取材が来たそうだ。

    多摩川は、山梨県の笠取山から始まり、東京、神奈川を通り羽田河口に抜ける、全長138キロ、日本で五番目に長い一級河川だ。
    綺麗だった多摩川は、高度成長期に汚染や公害病が起き、外来種も増加していった。
    問題視した東京都が排水処理を作っていったため、徐々にきれいになっている。
    多摩川の水のうち、支流や湧き水はせいぜい二割、残りの八割は家庭からの下水だという。下水処理場の優秀さよ…。

    多摩川で見つかった外来種たちはだいたいが飼えなくなったペットの放流だ。外来種というのは外国の動物というだけでなく、日本の別の場所の生物も含まれる。「多摩川のメダカが減っているなら、〇〇川でとったうちのメダカを放してあげよう」と本人は好意のつもりで別の場所の生物を放つのは、結局は多摩川在来のメダカを減らすことになってしまう。
    しかし外来種といって捕まえて殺すことは忍びない、自分たちが来たくてきたのではないのだから。著者は多摩川で捕まえた外来種たちを展示したり、里親探し始めた。これはなかなか有益だなあと思った。外来種が増えての弊害として、食物連鎖が壊れて生物同士で攻撃しあってしまうことがある。多摩川で捕まえた魚たちも、目が潰れていたり、ヒレがちぎれていたりしているものが多い。それらを治療して保護して水族館などで展示することにより「ペットを無責任に放してはいけないんだ」と自分でわかるようになる。
    また「おさかなポスト」というシステムも始めた。「多摩川に放したり、捨てたり、殺したりするなら、ここに入れてください」と水の生物を受け入れるものだ。できれば放して終わりではなく、たまには様子を見たり餌をあげに来てほしい、と言っている。飼えなくなって泣く泣く放したのであれば飼い主もたまに会いに来られますね。

    こんな怪我した動物たちへの治療や触れ方も書かれている。
    ヒレがぼろぼろになった魚はヒレをハサミで切って消毒するとまた生えてくるんだそうだ。亀の甲羅に血管が通っているので子亀のうちから触れ合っているとちゃんと飼い主と心が通じる。

    多摩川を通して、川が汚れること、外来種を放つことがなぜいけないのか、動物とのふれあい方、発電のこと、エコがなぜ大切か、自分たちができること、目に見えて分かりやすい良い本だった。

  • 高度成長期に川がみるみる汚くなって、公害病も起こったため、排水処理が義務化され、下水道もできて、また川が(前ほどではないにしても)きれいになった。それとはべつに外来生物の問題がここ数十年のうちに起こってきた。と思っていたけど、これは一つだったということが、読んでわかった。今さらだけど、私のようにいい年した大人も知らない人の方が多いんじゃないか。子ども向けのこの本はとてもわかりやすく読みやすいので、皆読むといいと思う。
    個人的に魚類爬虫類両生類も嫌いじゃないけど、哺乳類、まあ犬猫ほどペットとして関心がないので、基本的なことを知らなかったんだなあ、とつくづく。亀の甲羅には血が通ってるとか、魚のヒレがぼろぼろになってたらハサミで切ってしまうときれいなのがまた生えてくるとか、「そうなんだ!」と驚いた。多摩川の水の八割は処理された下水とか、川は流れの中央より岸辺近くの方が水がきれいとかも知らなかった。恥ずかしい。
    はじめに書いた下水処理と外来魚の関係とは、処理された下水の温度が高いため(人間がお湯を使うから、冬の方が高い)、南米やアフリカ、東南アジア原産の外来魚が住みやすくなってしまった、ということだそうです。地球温暖化じゃなくて下水による温暖化。
    これ以上川の外来生物を増やさないためにはお風呂のお湯が冷めてから捨てる、食器を洗う前に拭くなど、お湯を捨てない努力をすることが大切だそうです。食器は拭いてたけど、洗剤の量を少なくするつもりでやっていて、お湯のことは考えてなかったなあ。反省。
    子ども向けの本って侮れない。読んで良かった。

  • おさかなポスト廃止に 多摩川への外来魚投棄増の懸念 | 話題 | カナロコ by 神奈川新聞
    https://www.kanaloco.jp/news/life/entry-158144.html

    調布・多摩川の「おさかなポスト」廃止から1カ月 川への外来魚投棄増加懸念も - 調布経済新聞
    https://chofu.keizai.biz/headline/2915/

    タマゾン川にはさせない!「おさかなポスト」山崎充哲さん - YouTube
    https://www.youtube.com/watch?v=LTeQTItCjHc

    タマゾン川 - 株式会社旬報社 働く、学ぶ、育てる、暮らすなどをテーマにする生活に身近な出版社です
    http://www.junposha.com/book/b317086.html

  • 地元を流れる川でもある「多摩川」についての本です。
    自然豊かな清流から汚れすぎた「死の川」へと落ちぶれ、また復活した多摩川。
    一方で、様々な外来種が生息する「タマゾン川」としても有名になりました。
    その歴史をふりかえりながら、これからの私たちが、何に気を付け、どういった視点を持つべきなのかを示してくれる本です。
    文章も小中学生に向けて書かれているようで、平易な言葉づかいで読みやすいです。

    多摩川がきれいな川に戻った要因の一つである下水処理施設についての記述(下水処理場の果たした功績と、河川の温水かというデメリット)や、在来種とはいえそれぞれの河川に特有の遺伝子を持つ場合があり、人々の安易な行動で固有種が絶滅する(国内間外来種による淘汰)ことが起こりうるということは新しい発見でした。

    「おさかなポスト」という取り組みも行っている筆者の考えは、一面では極端な自然礼賛にも思える部分がないわけではありませんが(どこまでが「自然保護」として人間が行うべきことなのか、という議論にはそう簡単に結論が出せないとも思うので)、「考えるヒント」を与えてくれる作品として、生徒に推薦できる作品だと思います。

  • 多摩川に住む魚や生き物についての子供向けの本なのだけど大人が読んでも十分に面白く、勉強になった。

    テレビでよく取り上げられて「敵」「害」扱いされている外来魚のこと、数を減らす在来種のこと。

    飼っていた魚を捨てる人と、その魚を引き取るボランティア「おさかなポスト」のこと。

    川の汚染と、そこからの奇跡的な復活。
    いまは昔よりも魚の種類が多いこと。

    多摩川とそこに住む生き物の生態性についてわかりやすく網羅されていてすごく面白かった。甥っ子に読んでほしい。

  • 外来生物に関しては子供の頃に触れ合ったミドリガメとブラックバスがその双璧だと思います。
    今は昔よりも色々な生物が輸入されて、そして心無い飼い主が川や池に捨てる。繁殖して在来種を駆逐する。これは水生生物だけに言える事ではありません。あらゆる場所で沢山の外来生物が日本に定着しています。
    そして川がきれいになり、一般家庭からの排水温が高くなっている事によって、熱帯で繁殖する淡水魚が多摩川で大量に繁殖し、まるでアマゾン川のような状況に。
    そう、まるで「タマゾン川」になってしまったのです。

    そんな我々に一番身近と言っても過言ではない多摩川を、長い間見つめてきた筆者が語る川、生物、人間の関係性の話は滅法面白く、子供が読めばワクワク及び固有種を守ることの大事さが分かり、大人が読めば、あのドブ川だった多摩川を清流に戻した人々の尽力に頭が下がり、もう一度多摩川に遊びに行ってみようかなと思うに違いありません。
    思えば子供の頃、田んぼの横のどぶ川とかは本当に汚くて、生活排水をそのまま流していたと思うのですが、子供はそういうもんだと思ってザリガニを取ったりしていました。とんでもなく汚いのですが、昔はそれが当たり前だったんですね。

    そして筆者が行っている「おさかなポスト」の存在が素晴らしいです。てっきり外来魚を入れてもらって処分するんだろうと思っていたのですが、面倒を見て病気であれば治療までして、里親を探すことまでするんですね。外来魚だから死んでも仕方が無いと思っていた自分をグサッと突き刺されたような気持ちです。
    勝手に放流されて、増えたから駆除されるって、外来魚にしてみたらえらい迷惑ですよね・・・。
    これすぐ読めるので、子供だけではなく大人も読むといいと思うなあ。

  • K519
    「ぼくらの川がちょっとおかしいゾ。アロワナ、ピラニア、グッピー、プレコ…日本の川に捨てられる、外国の魚(いのち)たち。」

    「多摩川は、人間の努力で元の清流にもどりました。しかし、すてられたペットの魚によって生態系の危機に。川から多様な問題が見えてきます。」

    目次
    1 いるはずのない魚たち
    2 おさかなポスト誕生
    3 死の川、多摩川
    4 そして、いのちが戻ってきた
    5 未来への流れ

    著者等紹介
    山崎充哲[ヤマサキミツアキ]
    1959(昭和34)年、神奈川県川崎市生まれ。自然環境調査コンサルタント。外来種問題が深刻な多摩川で、NPO法人おさかなポストの会を創設し、飼い主に捨てられた魚を保護する活動をおこなっている。「川を知ることが川をよくすること」との思いから、子どもを対象にした川遊び教室、環境紙芝居、移動水族館などにも熱心に取り組んでいる。TBS『どうぶつ奇想天外!』などテレビにも多数出演

  • タマゾン川は流行語大賞候補だったのか。知らなかった。
    まだ池の水を抜いたりしてなかった時代の話だと思います。
    駆除じゃなくて、保護。
    彼らに罪はないから。
    だけどそれには莫大なコストが必要になる。
    駆除でもそうなんだから、なおさらよね。
    自分たちが生きるために改変した自然。
    その責任をしっかりとるなら、そりゃもちろんコストがかかる。
    著者は2021年に亡くなっていらっしゃいます。
    その後の活動はどう継続されているのでしょうね。

  • 多摩川には日本の魚もいるが海外の魚も沢山いて
    悪い意味で生態系が豊かである。
    多摩川の自然は人間がことであり一人一人が「多摩川は、自分の川だ」と思うべきだという文


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著者プロフィール

水辺の安全教育委員会、ガサガサ水辺の移動水族館館長。川崎河川漁業協同組合総代。「おさかなポスト」創設者『おさかなポストの会』代表。川崎市特別派遣講師(理科)東京都レッドデータブック選定委員。2012年関東川の日ワークショップ賞入賞など2006年より数々の環境関連の受賞がある。

「2012年 『多摩川のおさかなポスト』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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