小説・秒速5センチメートル (文庫ダ・ヴィンチ)

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  • Amazon.co.jp ・本 (186ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784840148573

作品紹介・あらすじ

「桜の花びらの落ちるスピードだよ。秒速5センチメートル」いつも大切なことを教えてくれた明里、そんな彼女を守ろうとした貴樹。小学校で出会った二人は中学で離ればなれになり、それぞれの恋心と魂は彷徨を続けていく-。映画『秒速5センチメートル』では語られなかった彼らの心象風景を、監督みずからが繊細に小説化。一人の少年を軸に描かれる、三つの連作短編を収録。

感想・レビュー・書評

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  •  センチメンタル満載だったなあ。

     男の人は、初恋が忘れられないって
     いうけれど、まさにそんなお話だった。

     タカキくんの時間は、あの雪の降る
     2人きりの夜から止まったまま。

     なんだかね、素敵すぎる思い出も
     いただけないなと思いました。

     いつまでも大切にしすぎて、
     そこから動けなくなってしまうことも
     あるから。

     タカキくんは、自覚している以上に、
     ずっと彼女と過ごした日々を
     夢見ていたみたいだ。
     「今」を、生きていなかった。

     だから、あきらめて離れていったの
     だと思う。どの女の子も。

     

  • 自身のアニメ映画のノベライズ本。
    映画と同じ3話構成で基本的に映画と同じ内容。
    映画では、映像から登場人物たちの心情を想像するしか無かった部分が
    (そういえば、貴樹については結構語られていたか)
    言葉で表現されていたりして、補完する意味合いが大きい。

    最初に映画を観た時、第一話『桜花抄』が好きになった。
    何度か観るうちに第二話『コスモナウト』が好きに。
    そして、この小説を読んで第三話『秒速5センチメートル』がお気に入りに。

    映画では最終的に喪失感が一番強く残ったけど、
    小説では読み終わった後に、前向きな印象も残って
    その点がより好きだと思ったなー。

    カッコつけた言い方をすれば、私の中で初めてこの物語が完結した気がした。

  • 寂しくて、切なくて、儚くて、幻想的で、甘酸っぱくもあって、
    でもどの言葉にも当てはまらなくて。

    ふたりが出会ったのが中学生であったなら、仲よくなるのに時間が必要だったかもしれないけれど、小学生じゃなかったなら、ふたりの間の(事実的な)距離を越える行動が何かできたかもしれない、私はやっぱりふたりが一緒になることで幸せになってほしいと願わずにはいられませんでした。

    ふたりは、ずっと心のどこかで、別れを予感してなお、相手を繋ぎ止めることはしない。だから、ふたりは一緒になろうと思えばできたけど、一緒にならないことを選んだのだと思います。それはもう中学1年生の時に。

    ふたりの恋は中学1年生のあの冬が綺麗な完成形で、それ以上は無かったんじゃないかなあ。

  • アニメ映画にあった空間の隙間がどこか淡白さを内包した文章で紡がれることで、小説ならではの表現を獲得していると感じます。

    何よりも違うのが、より主人公である貴樹の歩みにフォーカスしていることで、アニメ映画ではどこかぼんやりとしていた貴樹の人物像が明確に見えていて、ラストシーンにおける意味合いがより強調されているように思います。

    文章としての構成力というよりは、あくまでも映像をイメージさせる空気感という点で、映画を観た人もそうでない人もひとりの青年の喪失の日々と、そこから一歩足を踏み出した時の心情を感じられるのではないでしょうか。

  • 2年前に映画を見たときは花苗ちゃんがあんまり好きじゃなかったのだけど、今回は彼女の行動とか感情にとても共感してしまって、ものすごく応援したくなった。この子は幸せになってほしい。

  • 涙腺崩壊。注意!

    絶望的な距離により引き裂かれた貴樹と明里。幼き日の「ずっと好き」は度し難い運命の前に儚くも消え去ってしまう。

    人生において「喪失」は避けて通れず、人はそのたびにそれを乗り越え前を向かなければならない。
    それが現実とはいえ、この救い難さは深く私の心を貫いた。

    15年後に明かされた当時の二人の手紙の内容にはお互いを思いやる気持ち、かけがえのない時間を共に過ごし育んだ特別な感情、そしてひとりで歩いていかねばならないという覚悟が切々と綴られており、読み進めながらとても平常心ではいられなかった。

    この部分は映画版では語られていないので、未読の方には強くお勧めする。

  • 映画は何年か前に鑑賞済み。

    テーマは喪失。

    生きてゆくのに一人は辛い。
    けれども大抵の人は
    不器用で、孤独で、
    せっかく手に入れた温もりにも
    混じり合うことを強く望みすぎて
    苦しくなる。

    気持ちは行き違う。
    あのとき、ああなっていればと願っても、
    決して交わることはない。

    少しずつ失いながら、
    一人で生きていく強さを手に入れる物語。

    小説秒速5センチメートルは
    たくましく美しく、
    思ってたより前向きで、
    思っていたとおりにメランコリックだ。

  • 原作は未鑑賞。
    素晴らしき初恋に囚われてしまう登場人物。
    恋をしているときのあの世界が輝いてみえるような独特の風景を文章から感じ、胸にくるものがあった。
    また、恋をしているがゆえの全てがマイナスへのベクトルに向かっているような負の感情にも共感して読むことができた。
    映画は非常に繊細な映像のイメージがあるが、小説においては、登場人物の心情が繊細に描かれていたのでは。

  • アニメとはまたすこしだけ違った、というかアニメのさらに少し先の、エンディングが良いと思います。主人公の心の変化がアニメより正確に書かれていて、「なるほど…!」と納得できる場面も。カナエが好きな人には特にオススメします。ラストまでカナエが出ます。

  • 少年と少女、淡い想いが幼いながらも本物の確信に育ったとき、二人を襲う別れ。
    遠く離れ、奇跡の再会があったために、その想いが長くふたりを縛ることになる。
    その出会いは幸福のためにあったのか、それとも呪縛でしかなかったのか……。

    映像版(特に第3話)を補充している感じですが、文章だからこそ、映像ではわからない心理描写が丁寧に描かれていると思います。
    映像版も小説版も漫画版もおススメします。
    そして、明里も花苗もかわいいですw!

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著者プロフィール

1973年生まれ、長野県出身。
2002年、ほとんど個人で制作した短編作品『ほしのこえ』でデビュー。
2016年『君の名は。』、2019年『天気の子』、2022年『すずめの戸締まり』公開、監督として国内外で高い評価と支持を受けている。

「2023年 『すずめの戸締まり(1)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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