ありがとう、さようなら (MF文庫ダ・ヴィンチ)

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  • メディアファクトリー
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  • Amazon.co.jp ・本 (151ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784840135726

感想・レビュー・書評

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  • 瀬尾まい子さんが働いていた、京都丹後地方の中学校での日々を綴ったエッセイ。

    本当に生徒が大好きなんだなぁ、こういう先生が担任だったら楽しいだろうなぁ、と瀬尾先生のクラスを思い描かずにはいられない。

    中学生は、難しい年頃で、関わる方も距離感を掴むのになかなか苦労する。
    でも、実はまだまだ素直で純粋な可愛い年頃でもある。
    こちらが構えずにいれば、意外とうまくいくことも多い(私が先生じゃないからかもしれないけれど)。

    駅伝のエピソードなどは、この学校での日々から「あと少し、もう少し」が生まれたのかな、なんて想像できて、またあの物語を読み返したくなった。
    2021.2.12

  • めちゃめちゃ好きな瀬尾先生の奮闘記。
    瀬尾まいこオタクとして外せない一冊

  • ───ひとりはみんなのために、みんなはひとりのために───
    不覚にも涙が零れた。しかも「あとがき」を読んで。

    久々にエッセイを読んだ。
    エッセイというか、随筆というか、コラムというか、学級通信、まあ「呼び方」などどうでもいいのだけれど。
    昔、高校生の頃、丸谷才一や開高健のエッセイが好きだった。
    小説と違って短いので、勉強の合間にとか、息抜き代わりに時間もかけずに軽く読めるというのが理由の一つ。
    もう一つは、雑学的な知識を吸収できる楽しさもあったから。
    特に丸谷才一のエッセイは、薀蓄というか雑学というか、そういうものがたくさん出てくるので面白かった。

    この瀬尾さんのエッセイ「ありがとう、さようなら」は、ブクログでいろんな方の本棚のレビューを覗き見して、あちらを読み、こちらを読みしていたら、見つかった一冊。
    私はこの「ブクログ」の楽しさは、そこにあると思っている。
    自分が全く知らなかった作家の作品のレビューを読んで「それほど面白そうなら読んでみよう」というきっかけになる。
    新聞や他のメディアではなかなか発見できない作家や作品に出会うことができる。
    それがとても楽しい。

    瀬尾さんの作品は「ブクログ」で彼女の名前を知り、「図書館の神様」を読んだら、とても癒された気分になった。
    そこで、機会があれば別の作品も読もうと思っていた矢先のことだった。
    今回、このエッセイのレビューを読んで、彼女が現役の中学の先生だということも知った。
    ついでにウイキで調べたら、教員採用試験に9回も落ちている。
    私の友人にも小・中・高・大(大学は教師と言わないが)の先生が何人かいるが、今の教員採用試験とはそれほど難しいものなのか、と驚いた。
    でも、それにひたすら挑戦し続け、合格した瀬尾さんもすごいと思う。
    しかも小説を書きながら、だ。
    そして、このエッセイからは、彼女と生徒たちの微笑ましい交流が見事に伝わってくる。

    ニュースなどでは、荒れた、すさんだ中学生の実態ばかり報道されるけど、そういう生徒ばかりじゃないのだ、とあらためて感じた。
    闇の部分ばかりを報道し、光の部分を伝えることが少ないからだろう。
    人間誰もが光と闇の部分を持っている。
    そして、光の部分にスポットを当てるか、闇の部分にスポットを当てるかで、ニュースと同じように、小説なども全く異なった作品になる。
    中学時代というのは、光と闇の部分をちょうど半々の割合で持っている時期じゃないのだろうか。
    高校生になり、それからどんどん大人になるに連れ、その割合がどちらかへ微妙に傾く。
    そこから人間は変わっていくのじゃないだろうか、そんなことをぼんやりと思う。
    瀬尾さんの作品は、主に光の部分に焦点を当てて書いている作品が多いようだ。
    だから優しい作風なのだろう。
    もちろん、闇の部分もあるのだろうけど(悩みや問題のない中学生などいるはずはないから)、そこにはさりげなくしか触れない。
    それはそれで良いのだと思う。
    心癒されたい時に、つらい現実などそのまま書かれては、こっちも沈むだけだ。
    もちろん、頑としてそういう作品を読みたいときも当然あるけれど。

    ここに出てくる中学生たち、そして瀬尾先生との繋がり方は羨ましくなるほどだ。
    クラスのために、何とか頑張ろうとする一人の生徒。
    一人の生徒のために、何かできないかと考えるクラスのみんな。
    温かい。本当に温かい。
    これはそういうクラスにさせる瀬尾さん自身の人柄があればこそだと思う。
    そして、さりげない名言がそこかしこに見え隠れする。
    これはエッセイだが、その些細な名言(いい言葉)が彼女の文章の魅力かもしれない。

    このエッセイを本当に楽しく読ませていただいた。
    ウィキには『退職』と記載されていたので、ネットを駆使して調べ直したら、やはり昨年2011年3月に先生をお辞めになったようだ。
    モノを書く、小説を書き上げるという行為は大変だけれど、瀬尾さんにはそれをしながらも、素晴らしい先生として中学生にいつまでも向き合っていて欲しいと思っていたのだが……。
    お辞めになられても、今までのような作風の小説を書き続けていただきたいと願うばかりだ。
    とても疲れたとき、辛いときに、瀬尾さんの文章を読むと癒されるので。
    そんなことを感じた、心がほんわりと温かくなるエッセイでした。

    (追記)是非、教師をお辞めになった最後の時までのエッセイも書いて欲しいなあ、と。
    感動の涙をぼろぼろ流しながら読んで、心が思い切り癒される気がするので。

    (追記その2)「ありがとう、さようなら」というこのタイトルは、私がyoutubeにアップした故田中好子さんへの動画の導入部分に入れ込んだメッセージと全く同じ言葉だと、今気づいた。
    やはり、大切な人との別れというのは同じ気持ちになるのだろう。
    YouTubeにアップした田中好子さんのお通夜の様子と、お別れの映像は下記の二つをご覧ください。
    チャンネル登録していただけるとありがたいです。<(_ _)>

    https://www.youtube.com/watch?v=6kua1XhHdPE

    https://www.youtube.com/watch?v=t54vvKoJ-5w

  • 久しぶりにエッセイを読んだ。
    「幸福な食卓」ですっかり瀬尾さんのとりこになってしまい、その瀬尾さんの教師時代のエッセイ。
    最近中学生のいじめ、自殺問題をニュースで見るたびに心が痛んでいたけど、このエッセイの中の中学生は 素直でほっこりしてて温かくて、一気に心を和ませてくれた。
    読みながらも くすっと笑えて、ぽろっと泣かされて 素敵なエッセイでした。

    • まろんさん
      大好きです、瀬尾さんのエッセイ!
      1冊の中で、哀しくて泣くんじゃなくて、温かさに泣いてしまう、
      そんな幸せに何度も浸ることができるエッセイっ...
      大好きです、瀬尾さんのエッセイ!
      1冊の中で、哀しくて泣くんじゃなくて、温かさに泣いてしまう、
      そんな幸せに何度も浸ることができるエッセイってなかなかありませんよね。

      生徒たちが可愛くてしょうがない、瀬尾さんの気持ちが文章から溢れ出ていて
      こんな生徒を持った瀬尾さんも
      そんな瀬尾さんに巡り会えた生徒たちも
      ほんとうに幸せだなぁ、と思いました♪
      2012/08/02
  • デビュー直後から3年半。
    作家とはもう一つの顔、京都府での教員生活をつづる。

    じーんときたり、ほっこりしたり。
    素敵なエッセイ。

    ずけずけものを言ったりもあるけれど、どの中学生もかわいく、ほのぼの。
    生徒へのあたたかいまなざしは、小説にも通じる。
    ほかの先生方とのやりとりもたのしく、こんな中学校に通ってみたい。

  • 瀬尾まいこさんは作家をしながら現在も中学教師を続けています。
    その瀬尾さんが中学生との日常をエッセイとして綴ったもの。
    中学生っていいんじゃない~!と思えるエッセイ。
    瀬尾さんも巻末に書かれていましたが、エッセイの中には綴られていないこともたくさんあるのよね~
    それが学校と言うものだもの。

  • 教員やめるか悩んでいる人に読んでほしい。
    いい先生になれるかわからないけど、生徒の応援したいのだ。
    今年も頑張りましょう、私。

  • ★4.0
    教師をしていた頃の著者が綴った、中学校の生徒たちとの日常のあれこれ。子どもでも大人でもない微妙な年頃の中学生は、気難しくて扱い辛い時も多々あっただろうと思う。それは、自分の中学生時代を振り返るだけで分かる。が、本書で綴られるのは、素敵な出会いへの感謝と未来を歩む生徒たちへの応援のみ。そして、誰も彼もが暖かくて優しくて、そんな空間で過ごせた彼・彼女たちを羨ましく思う。著者は生徒と保護者が素晴らしかったと言っているけれど、きっと同じくらい先生な著者も素晴らしかったと思う。平成の最後に心がほっこり。

  • 生徒を心から大切に思う気持ちにあふれている。教師なんてって思ってきたけど、あの先生もこの先生も本当は情熱をかけてくれていたんじゃないのかなって思わされた。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「教師なんてって」
      先生って、生徒の為じゃなく学校の為に働かされるので、熱意を持っていても挫けちゃう人が多いみたい。。。
      学校の閉鎖性がなく...
      「教師なんてって」
      先生って、生徒の為じゃなく学校の為に働かされるので、熱意を持っていても挫けちゃう人が多いみたい。。。
      学校の閉鎖性がなくなって、色々な立場からモノが言えるようになれば、変わると思う。。。
      2013/04/18
  • 学校嫌いだった私。それなのに、ずっと教師になりたかった。 嫌いな鯖を克服しようとがんばったり、走るのが苦手なのに駅伝大会に出場したり、生徒に結婚の心配をされたり、鍵をなくしてあたふたしたり・・・・。 瀬尾まいこが作家デビュー直後から3年半にわたって“せんせい”として書き綴ったエッセイ。

    瀬尾さんの生徒たちの純粋さに、胸を打たれる。
    それを励みに頑張ろうと思う瀬尾さんの気持ちがよく分かる。
    学校生活は、生徒にとっては窮屈で、面倒なことがたくさんあったけど、それを見守り、指導する先生にも憂鬱なことがたくさんあったんだなぁと知ることができた。
    ただ、タイトルの通り、そんなマイナスなことではなく、生徒たちとの生活で楽しかったこと、嬉しかったことなどプラス面がたくさん書かれていて、ほのぼのする。
    瀬尾先生と生徒とのやりとりが可愛くて面白い。

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著者プロフィール

1974年大阪府生まれ。大谷女子大学文学部国文学科卒業。2001年『卵の緒』で「坊っちゃん文学賞大賞」を受賞。翌年、単行本『卵の緒』で作家デビューする。05年『幸福な食卓』で「吉川英治文学新人賞」、08年『戸村飯店 青春100連発』で「坪田譲治文学賞」、19年『そして、バトンは渡された』で「本屋大賞」を受賞する。その他著書に、『あと少し、もう少し』『春、戻る』『傑作はまだ』『夜明けのすべて』『その扉をたたく音』『夏の体温』等がある。

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