POPEYE特別編集 味な店 完全版 (マガジンハウスムック POPEYE BOOKS)
- マガジンハウス (2021年6月21日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (251ページ)
- / ISBN・EAN: 9784838754809
作品紹介・あらすじ
「実家皿の店」、「メニューがひとつの店」、「塩対応の店」!? <br>
人生が、そのまま店になる。<br>
誰にも真似できない、あの味、この店。<br>
愛すべき飲食店案内。<br>
(本誌 帯より抜粋)<br><br>
食を通して店、人、町を描いてきたフードエッセイスト・平野紗季子さんによる渾身の飲食店案内が完成しました。味な店= “そこにしかない物語の宿る店” 。「実家皿の店」、「メニューがひとつの店」、「塩対応の店」など個性的な切り口で、愛しきレストラン、食堂、カフェなど総数100軒以上の飲食店へ取材を重ね、50テーマ&250ページを超える大ボリュームの一冊にまとめあげました。<br> <br>
雑誌『POPEYE』の別冊付録として制作し話題となった小冊子「2018年の東京味な店」と、その後約3年にわたって同誌にて連載した「続・味な店」を再編集しています。<br> <br>
心まで満たす食体験を鮮やかに記述したグルメガイドであり、食の場をめぐる幸福な物語の数々を綴ったフードエッセイでもあり。作り手への敬意と愛とユーモアに満ちた、あたらしい形の飲食店案内をぜひお楽しみください。<br> <br>
感想・レビュー・書評
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ホテルのルームサービスから商店街の焼き鳥屋まで、〈味のある店〉を訪れたPOPEYEでの連載をまとめた一冊。
流石POPEYE、フルカラーの写真がとにかくいい。料理以上に「店」にフォーカスした本なので、店構えや内装、食器、そして店主たちが魅力的に撮られていて、ただ美味しそうだという以上に「行ってみたい」という気にさせる。
「喫茶店 トップ」と「ビストロ ポップコーン」には特に惹かれた。頑固なこだわりというよりも、変わらないことを柔軟に選択し続けた結果いまがある、という洒脱な風情。兄弟姉妹で営んでいるお店の回は似た面影の大人がはにかみながら並んでいる姿を見るだけでなんかいいし、石井好子の本でしか読んだことがない料理「ウフマヨ」の実物を初めて見たり、ギンガムチェックのテーブルクロスは照明が暗い店のほうが似合うなんて言われるとそんな気がしてきたり。店主さんの人生に迫る回もよくて、「TONY'S PIZZA」のご店主が若い頃ケネディに憧れてニューヨークへ渡ったら暗殺の瞬間に立ち会ってしまったという話はすごい。フレッシュトマトピザも美味そうだなぁ。
ところで、この世には二種類の人間がいると思う。話し言葉と書き言葉でキャラクターが変わる人と、びっくりするほど変わらない人。平野さんは完全に後者の人だ。
最初『生まれた時からアルデンテ』を読んだときは、ナイーブでガーリーな語彙を駆使してロマンティックに食を語る文章に失礼ながら「インターネットの人だなぁ」と思ったし、そんなに好きじゃなかった。だが、いつしかPodcastで「味な副音声」を聞くようになり、すっかり平野さんの言文一致体のしゃべりに慣れ親しんだせいで、本書では全部のテキストが脳内で音声に変換されるようになってしまった。括弧を使ったセルフツッコミなどの要素も、平野さんのいかにもオタクっぽい〈書き言葉しゃべり〉におけるリズミカルな相槌として自然に受け入れている自分がいる。(先々週読んだ四方田犬彦の『ラブレーの子供たち』と真逆だな。四方田さんの文章は頭のてっぺんからでてきたもので、平野さんのように喉を通って口からでてきた感じはしない)
この本は店構えや料理を写した写真とテキストからなっていて平野さん本人はそんなに写りこんでいないのだが、写真を平野さんの一人称視点と考え、一人で店を訪れ黙々と料理を口に運ぶ平野さんのマシンガン的なモノローグを聞いている気分で読むのがベストだと思う。つまりこれは平野紗季子版「孤独のグルメ」なのだ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
この本に載っているお店のほとんどに、わたしは一生行けないと思う。でもこの本を読んで、わたしはわたしの周りにある「味な店」にもっと通おう、大事にしよう、と思った。
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平野紗希子さんに出会って、私の人間性がまた変な方向にひん曲がる音がしたんだ。グッジョブ…
人生しんどくなったらこの本の適当に開いたページの飲食店に行く、なんてことしたい。元気になるどころか寿命2年くらい伸びるよ。
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誰にも真似できない味、人生がそのまま味、という数々のお店がここにある。
「会いたい人には会えるうちに。食べたいものは食べたいときに。さあどうぞ。おはやめに、お召し上がりください。
だって、いつもは、いつまでもじゃないんだから」。
井川直子さん『シェフたちのコロナ禍』と相補的な本になっているな、と思う。「コロナと食」というテーマに対する様々なアプローチのひとつを本書は採っている。それは、目の前の店をいとおしみ、通い、語り続け、多くの人をゆるやかに寄せていくこと。 -
ポッドキャストの「味な副音声」を友人から勧められ、最近聴き始めたんですけど、平野紗季子さんはとにかく言語スキルが高い人。
おすすめのものをポエム調(良い意味で言ってない)で書く人は沢山いるけど、それは自分の感動を自分だけの言葉で昇華しただけで、他者にはほぼ伝わらないことが殆どじゃないですか。平野さんは他人の興味を惹くのが上手い。自分の気持ちをわかりやすい言葉にするのが上手で、その中でもフックになる言葉を沢山引き出しに入れていて、それらを駆使して数打ちゃ当たる戦法で語ってくれるので、「そういうものなら興味あるかも」と思える母数が多いのだろうな、と思っている。
そんな平野紗季子さんが紹介するお店なのでどれも興味深く拝見した。
単に美味しい店が載っているわけではなく、店主の人柄があって、信念があって、通う客がいて、そしてできる店の雰囲気が「味」になっている「味な店」がずらりと並んでいる。行きたいお店を見つけたので少しずつトライしてみたい。お店は行かないといつか閉店しちゃうし、他の業種と違って残らない。引き継がれても違うものだもんね。「いつもは、いつまでもじゃなんだから。」という前書きが大変心に残りました。
巻末にSNSをやっていない店主たちの近況が載っていてこれが思いのほか面白い読み物だった。食べることが好きで、食と作り手に常に敬意を持つ平野さんだからこその一冊ですね。いわゆる店紹介の本とは一線を画す、エッセイとしても面白い一冊。グルメな友人にプレゼントしたいです。 -
東京に住んでいたらこの本片手に聖地巡礼したい。
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POPEYEでのコーナー味な店が好き。単行本になったということで手に取りました、
写真の見せ方、吹き出しの使い方、平野さんの文章がとにかく私好み♡
ほぼ関東だから旅行に遠出した時じゃないと、食べに行けないけどいくつも入りたいお店が載っていた。
平野さんのお店紹介や店長さんのコメントがゆるっとしていて好きでした。
フラミンゴのいるお店行ってみたいなあ〜
緑がいっぱい溢れてる、洋食 KUCHIBUEさんも良かった。なにより、お店でご飯を前にしている平野さんの表情が大好き。 -
面白そうなお店が満載!さすがPOPEYEに連載されていたというだけのことはある!
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食べものは消えものであり、店は永遠ではない。
平野さんの食べものへの愛と飲食店への敬意に満ちた一冊。
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「味の台湾」に続いての「味な店」。でも「味の」と「味な」は違います。「の」はおいしいという体験の品質保証ですが、「な」は料理だけじゃなくお店体験を含めたユニーク印なのです。それはお店の人の独特を味わうということ。独特な人が作りサービスするこだわりの味、「味な店」の料理は、やっぱりめちゃおいしそうなんです。「な」は「の」と一体化するのである、って、これ「オモしろくて」「ウマい」店、「オモウマい店」POPEYE版ってことじゃん!中京テレビの探す「オモウマい店」はワイルドでプリティーだけど、平野紗季子さんの探す「オモウマい店」はおしゃれでプリティー!これはコロナ禍によってfoodがrestaurantから切り離された今こそ、そそる愉しみなのであります。スキなお店が取り上げられていた時は密かにうれしいし、知らないお店は密かにメモりながら読みました。そして、本文中にもある閉店とかオーナーの苦しみのインタビューとか、その愉悦はどうなるんだろう、という心配も。飲食店の未来を考える本でもあるのです。実は、この本でどーんと取り上げられている店じゃなくて、著者がコメントでひとこと触れていた店に速攻で行ってみました。まさに「味な店」でした。こういう情報チェックって本ていうより雑誌だな、と懐かしくなりました。食べログでもGoogleMapでもないお店、そして店主との出会い、ありがとうございます!