ぼくの村は戦場だった。

著者 :
  • マガジンハウス
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  • Amazon.co.jp ・本 (255ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784838716852

作品紹介・あらすじ

お母さんが庭に出たとき、爆弾が落ちたんだ。お母さんは何か言っていた。お母さんのことは大丈夫だよって、そばにいた人が言ったけど。でも、死んじゃった…。お母さんの頭には、穴が開いていた。女性ジャーナリストた見た戦場の真実の姿。

感想・レビュー・書評

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  • 謹んでご冥福をお祈りします。
    アフガニスタン、チェチェン、イラク等紛争地域のの現状を伝える一冊です。

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    「『お母さんが庭に出たとき、爆弾が落ちたんだ。お母さんは意識がないのに何か言っていた。ぼくたちは泣いていた。お母さんのことは大丈夫よって、そばにいた人が言ったけど。でも、死んじゃった・・・。お母さんの頭には穴が開いていた』 戦火の下で暮らす人々の真実の暮らし、想い、声がはじめて語られる。」

  • 戦場ジャーナリストである著者が現地で取材し、戦争が続く地域で起こっていること、なぜそういう状況が続くかということについて鮮明に描かれています。
    何かが出来るわけではないけれど戦争が起こる理由や戦争がもたらすものを知るきっかけとなって非常に有意義でした。
    著者の冥福をお祈りいたします。

  • 『戦争を取材する』の大人版とでも言おうか。
    現地で直接取材をした著者の息遣いなども感じられる。
    生々しいというか。
    アフガニスタン、ウガンダ、チェチェン、コソボ、イラク、現在はどうなっているんだろう?

  • 子ども向けに書かれた「世の中への扉 戦争を取材する」に続いて読んだ。こちらはがっつり入り込んだ紛争地のルポルタージュ。

    日本では「戦争を知らない世代」が大半を占め、平和ボケと自嘲するような雰囲気もあるけれど、今も世界には「戦時中」の地域がたくさんあり、「戦争を知らない世代がいない」国もあるのだと再認識した。

    まず表紙と裏表紙をめくった見開きの世界地図に紛争地域を記したMAPに驚かされる。その数の何と多い事か。そして、今話題の尖閣と竹島で日本も記載されていることに。

    アフガニスタン、ウガンダ、チェチェン、コソボ、イラクの5カ所について取り上げてあり、各章の最初に紛争の背景がまとめてあって、とても分かりやすい。この1冊に記されただけでいったい何十万?何百万?の人が命を落としてるのか。

    戦争というものの正体を探る冷静な目と、そこに生きる人たちに注ぐ優しい視線。命がけで集めた情報、殺す者と殺される者の息遣いを、やわらかく凛と、淡々と深くつづった、素晴らしいルポルタージュだと思った。たくさんの人に読んでほしい1冊。

    「戦場で何が起きているのかを伝えることで、時間はかかるかもしれないが、いつの日か、何かが変わるかもしれない。そう信じて紛争地を歩いている」、と山本さんは言っている。それは本当にいつの日か、というほどきっと遠く険しい道のりだと思うけれど、こうして伝えてくれたことが少しずつ芽を出していきますように。

    続けて読むならこちらを読んでから「戦争を取材する」がおすすめです。

  • なんというジャーナリスト魂。
    行って、見て、持ち帰って伝える。
    親しい人からもなぜそんな危険なところにいくのかと問われ、身体的にも精神的にもきつい状況に身を置いて、それでも見なければ・伝えなければという強い意志。

    ただでさえ危険だというのに「アメリカ批判したらアルカイダ」みたいなあの異常な空気の中で、これだけのことをするのは恐かったりきつかったりもしただろう。
    伝えてくれたことを、どうやって受け止めようか。

    9・11直後のニュース番組で「同時テロの知らせに喜ぶイラクの子ども(や大人)」の映像をみたとき、恐いと思った。
    この子たちやこの人たちじゃなくて、そう思わせてしまう環境が。
    でも、日常的に殺されたり爆撃されたりする環境の人にとっては、単に「いつもの爆弾が今日はうちではなく、のうのうと暮らしているあいつらのところに降った」という程度の感覚にすぎなかったのかもしれない。
    「安全な(はずの)自分の生活圏を攻撃された」アメリカとは衝撃度が全然違ったんじゃなかろうか。
    と、この本と直接関係があるわけじゃないんだけど思った。



    2012/09/05追記
    今日の新聞に広告が載っていた。
    もう新しい言葉をきくことができないから、伝えたかったことを伝えるために宣伝するのが悪いと思わない。
    でも、こんな今が売り時と言わんばかりの売り方はみたくなかった。

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    (※配置場所は、レビュー投稿時のものです。)

    ☆特集展示「SDGs特集」☆
    SDGsを特別なものとしてではなく「自分ごと」として捉え、それぞれの活動、生活の中に浸透できるようSDGsを理解し社会課題に関心を持つことを目的としています。

  • 2012年にシリア内戦の取材中に亡くなったジャーナリスト、山本美香さんの取材記録のような書籍です。
    アフガニスタン、ウガンダ、チェチェン、コソボ、イラクに実際に行って、紛争地で影響力を持つ人物から一般市民、タリバン支配下で息をひそめて暮らす女子学生など、幅広い人々に会って取材したことが記録されている。
    なぜ紛争が起こるのか、多面的に理解しなければならないけれど、私のアタマでは新聞や解説書や、世間で「わかりやすい」と評判の池上彰さんの書籍やテレビ番組などではなぜか理解が深まらない。(なぜだろう?)
    現地に行って命がけで取材してきた女性の、見たまま、聞いたままの取材記録からなら、もっと生々しく理解できるかも、と手に取りました。
    各章の最初に、簡単に紛争情勢の解説が書いてあって、そこから著者の目線で現地の人々の様子がつづられる。とても興味深いと同時に、恐ろしいです。
    イラク・サマワに派遣された日本の自衛隊についても、日本政府の説明と現地で見たことのギャップを、政府批判とかではなくありのままに書いていて、わかりやすかった。サマワでは多くの人が、当初自衛隊が来ることを歓迎していた。日本の企業が来て、安定した電力や雇用を生み出すことが多いに期待されていた。しかし実際は、「紛争地には派遣されてはいけない」はずの自衛隊は、決して隊員の命を危険にさらすことはできないわけで、できることがかなり制限され、何重にもお膳立てされたありきたりな(というか…)活動をすることしかできず、現地の人々の期待に応えられるはずもない。自衛隊の責任でもない。そこが危険すぎるんだ!と私は思った。
    山本美香さんの仕事は、偏らない、ありのままの、正しい情報を世界に発信し、国際社会や日本に届けることで、素晴らしいことだと思うが、すべて読んで、平和というものはやはり、そこに住んでいる人々の手で作り上げるしかないのだと思った。外国の干渉、ましてや武器の供給、様々な名目(大義名分)による空爆などで、平和が訪れるはずもない。混乱と憎しみが残るだけだ。
    そしてどんなに尊い仕事をしてもやはり、死んではだめだ!と言いたい。命をかけないとできない仕事があることはわかるが、一人の女性として、子を持つ親として、両親の娘として、人間として、やっぱり、死んじゃだめだと言いたい。2006年の日付で書かれたあとがきの最後には、ご両親への感謝の言葉がつづられている。その文章で、他のすべての章がふっとんでしまった。やっぱり死んじゃだめ!としか思えなかった。

  • アフガニスタン、ウガンダ、チェチェン、コソボ、イラク。日本では
    あまりに情報が少ない世界の紛争地を取材したルポルタージュ。

    タリバンの圧政の下、学ぶことさえも奪われたアフガニスタンの
    女性たち。密かに集まって、大学生だった女性が先生役となり
    勉強を続ける。

    著者が亡くなって以降、何度かテレビ番組でこの時の取材映像
    が流された。命の危険を承知で、著者が回すビデオ・カメラに
    顔を晒した女性たち。

    この映像が、山本美香というジャーナリストを象徴しているのでは
    ないか。女性だからこそ、弱いものへ向けられた視線があったから
    こそ出来た取材だったのだろう。

    密告者だと疑われ、唇や耳を削がれたウガンダの女性たち。
    誘拐され、子供兵として訓練された少年や少女の心に宿った
    闇。

    封鎖されたグロズヌイ。爆撃で廃墟のようになった建物で、肩を
    寄せ合って暮らす子供たち。

    セルビア人とアルバニア人が、うまく付き合っていたコソボでは
    復讐の連鎖が止まらない。もう、民族の違う隣人は信用出来ない。

    フセイン政権からの解放者だった米軍は、イラクの普通の人々に
    とってはフセインに代わる圧政者でしかなかった。国際問題に
    発展してもおかしくない、米兵たちの悪行三昧は黙認されたも
    同然だ。

    戦争・紛争という不条理。その影響をもろにかぶるのは市井の
    人々だ。日本とは政治的に繋がりの希薄な地域だが、私たちが
    当たり前だと思っている「普通の暮らし」から程遠い生活を強い
    られている人々がいる。

    「戦争は、どちら側が正当か私には分からない。でも、ひとつ
    だけ分かっていることがあるわ。私たちが犠牲者だってことよ」

    チェチェンで雑貨を商っていた老婆の言葉は、すべてを言い表して
    いるのではないか。

    ジャーナリスト・山本美香。2012年8月20日、内戦の続くシリアを
    取材中に政府軍の銃撃により死亡。

    彼女の死が伝えられた時、呆然とした。そして、今は彼女を失った
    ことが悔しい。まだまだ彼女に伝えて欲しいことがあったのに。

  • 2012年8月にシリア内戦取材中に政府軍の銃撃に倒れたフリージャーナリスト山本美香の2006年の著作。
    フリーとなった1996年以降に訪れた、アフガニスタン、ウガンダ、チェチェン、コソボ、イラクという紛争地の惨状とそこに暮らす人々の日々の様子を、多数のカラー写真とともに伝えている。
    著者が亡くなったときも、先日イスラム国に後藤健二氏が捕まり殺されたときも、少なからぬ人々から「何故そのような危険な地域にわざわざ行くのか」との声が上がったり、TVニュースのゲストの専門家からですら「今後再発を防ぐためには、そのような地域に近寄らなければいい」というコメントが聞かれる。
    しかし、世界があらゆる面で繋がりグローバル化した現代において、望む望まないに係わらず、我々はそうした紛争の情報に触れるし、輸出入品や金融市場等を通して影響も受ける。即ち、各地の紛争は別世界の話ではないのである。日本が国家として、こうした問題にどう係わっていくのかについては、様々な観点からの議論が必要だと思うが、個人レベルでは、せめて何が起こっているのかを知り、そこに生きる人々の思いを共有することが大切なのではないか。
    日本に暮らす自分にできることは限られるが、著者が「目をそらしても現実が変わるわけではない。そうであるなら、目を凝らして、耳を澄ませば、今まで見えなかったこと、聞こえなかったことに気づくだろう。戦場で何が起きているのかを伝えることで、時間はかかるかもしれないが、いつの日か、何かが変わるかもしれない。そう信じて紛争地を歩いている」という、その信念を心に刻んでおきたいと思う。
    (2014年5月了)

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著者プロフィール

東洋大学ライフデザイン学部 教授(2022年2月現在)

「2022年 『地域福祉と包括的支援体制』 で使われていた紹介文から引用しています。」

山本美香の作品

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