クラシックの音楽祭がなぜ100万人を集めたのか ~ラ・フォル・ジュルネの奇跡~

著者 :
  • ぴあ
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  • Amazon.co.jp ・本 (255ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784835617534

作品紹介・あらすじ

常識をことごとく覆し、社会現象を巻き起こした音楽プロジェクト「ラ・フォル・ジュルネ」。その真実のドラマが、はじめて明かされる。

感想・レビュー・書評

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  • 今年のラ・フォル・ジュルネに3日間とも来場し、心ゆくまで
    音楽を楽しんだので、この音楽祭に対して、私自身が何か
    出来ることがないかと読みました。

    ルネ・マルタン氏の豊かな発想と、梶本音楽事務所、そして
    企業や国際フォーラムの努力があって、この音楽祭がいかに
    誕生したかが解りやすく描かれています。

    むしろ芸術的な観点からより、私は運営側、裏方で予算配分など
    扱うものの視点で読みました。何か新しいものを始める時、
    しっかりした予算的見通しや安全管理計画を立てる日本のスタッフと
    芸術的なアプローチから実現に迫ったマルタン氏と梶本氏の両方の
    尽力がなければ、あの素晴らしい経験はなかったのだとよく解りました。

    本当は梶本音楽事務所以外のマネジメント事務所も歩調を合わせ
    このイベントに協力してもらえると、更に面白いかもしれません。
    何かの事情で梶本のスタッフの方が動けない時も、
    一緒にマネジメントを進めるところがあれば、心強いからです。
    聴衆や、会場の垣根をとっぱらってしまえたなら、
    音楽業界の垣根も、この時ばかりは超党派的に外してしまったら?

    この大きなイベントをずっと続けるためにも、多くの専門家や
    ファンが、自発的な意志を持って関わり、楽しんで、そして力を
    貸すことが大事だと思います。

    ルポとして読んだ時、この本はわかりやすくて面白いです。
    私たち聴衆は、楽しんで、それで終わりではなく、本当は
    どんな人も気軽に芸術を味わったり楽しむことができる環境を
    自分がどうしたら作り出せるのか考えてみるのも
    興味深いのではないでしょうか。

    「このあと」をどう磨き、育て上げていくのか、それが語られて
    いたら、なおこの本は面白かったと思います。

  • GWに、東京国際フォーラムを中心に開催されるラフォルジュルネオジャポン。クラシックのイベントがどうしてこんなに人を集めることができたのか、について書かれた本です。一公演45分前後のコンパクトさ、2500~3500円という気軽に楽しめるチケット代、一日中音楽に浸れる楽しさ、あとは主宰者たちの熱意、というところですかね。ラフォルジュルネの成り立ち、その広がりなどもわかります。
    ただし・・・まもなく開催されますので、行ってみた方がよくわかるかも。

  • ルネ・マルタンのアイディアにカジモト音楽事務所が同調し、東京国際フォーラムがバックアップ。開催の裏には多くの人の尽力があった。
    熱い音楽祭を支えた熱い人々の記録。

  • 毎年、東京国際フォーラムでゴールデンウィークに開催される、クラシック音楽のフェスティバル「ラ・フォル・ジュルネ」。

    ・クラシック音楽のチケットの高額なイメージに反して低料金
    ・演奏時間が約45分とクラシック音楽のコンサートにしてはかなり短い
    ・複数の会場でいくつものコンサートが同時に行われる
    ・ベテランから若手までさまざまな層の演奏家を招く
    ・毎年テーマとなる作曲家を決める、子どもと一緒に鑑賞できる「0歳からのコンサート」のような独特のプログラムがある

    など、通常のクラシックのコンサートとはだいぶ趣が異なる。この本は、こうしたラ・フォル・ジュルネにまつわる物語を記したもの。内容は下記のように大きく分けられる。

    ■ラ・フォル・ジュルネの概要
    ■フランス人音楽プロデューサー、ルネ・マルタンについて
    ■フランスの都市ナントでラ・フォル・ジュルネが開催されるまでのエピソード
    ■企画・制作を行う梶本音楽事務所と社長の梶本眞秀について
    ■東京国際フォーラムと丸の内の歴史
    ■東京国際フォーラムでラ・フォル・ジュルネが開催されることになった経緯


    以下、本の内容をメモ。

    --------------------------

    マルタンは、音楽プロデューサーとなる経緯において、日本の企業とも関わりが深い。マルタンが飛躍するきっかけとなったフランスの田舎での音楽祭は、はじめはマルタンが何の経験もなく若かったためにスポンサー探しに苦労したが、ソニー・フランスの日本人社長がスポンサーになってくれたおかげで実現。音楽祭を開催するのに十分な額の支援、アーティストのギャラや雑誌広告の誌面を買ったりしてくれたらしい。

    また、演奏用のピアノを調達するにもフランスの企業では足元を見られ高い値段をふっかけられたが、ヤマハがピアノを無償で提供してくれたうえ、日本から調律師までつけてくれたという。

    ちなみにマルタンは何百にも及ぶ、ラ・フォル・ジュルネのすべての公演のプログラムを自分の手で行う。

    上記の梶本音楽事務所(KAJIMOTO)というのは、欧米のマネージメント会社からパッケージされた演奏会を買い、それを日本各地に売ることをおもな業務とする、老舗のクラシック音楽事務所。

    社長の梶本眞秀氏は、「オーケストラでは演奏曲目が人気曲に偏っていて(略)日本のオーケストラのプログラムも同じような傾向で、新鮮味がない。それでいてオーケストラの演奏会にお客さんが来ないとみんな嘆いている。しかし、それは自分たちで自分たちの首を絞めているようなもので、お客さんが来ない理由は演奏会に新鮮みがないからなのかもしれない。もう一度クラシック音楽の魅力を考え直すべきなのではないか。そしてクラシック音楽を提供する方法をもっと考え直す必要があるのではないか。」と常々、思っていたという。

    そのようなか、世界的な作曲家ある指揮者であるピエール・フレーズが日本公演のときに残した「現在のクラシック音楽の世界というのは、あまりにも定型化されてしまっている。例えば、演奏会ひとつにしても、古典と現代音楽は完全に分離されて交流がない。オーケストラは限られたレパートリーを繰り返し演奏しているだけ。そこには革新というものが感じられない。常に革新のない世界はいずれ滅びてしまうだろう。私たちはこの固定化、定番化をなんとか打ち破らなくてはいけない。」という言葉に共感を覚え、ヨーロッパに事務所を構える。そのようなときにマルタンを紹介されたことで、一気に日本でラ・フォル・ジュルネ開催の話が持ち上がったという。

    しかし、梶本音楽事務所では自社の社員は保守的で否定的。社内は分裂状態に。日本の音楽関係者に話しても理解してくれない。さらに都内のコンサートホールは連続して何日間も会場を押さえることが難しく、朝から夜中まで会場を開けておくことにも対応していない。はじめは渋谷で開催するために具体的に動いたが、会場が分散してしまう可能性があるために断念。そこで、東京国際フォーラムの営業の鈴木順子(現在はラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポンのエグゼクティブ・プロデューサー)との出会いにより、東京国際フォーラムが候補地として浮上する。財団民営化の動きの最中であった東京国際フォーラムや、丸の内再開発のタイミングとマッチする。

    ここでまた問題が起こる。開催1ヶ月前になっても有料公演のチケットの売れ行きは3割程度。懸命にメディアの露出を図ったが、前日になってもようやく6割。成功とは程遠い。しかし、当日になると当日券売り場は長蛇の列となり、最終的には全体の来場者数32万人、有料公演の9割、約12万枚が売れた。その後も順調に入場者数を伸ばし、2007年には有料公演のチケット販売枚数が約20万枚、全体の来場者数が100万人を超える。

    --------------------------

    上記のような、ラ・フォル・ジュルネの成功の裏側がドキュメンタリー風に記されている。これを読んで何よりおもしろいと思ったの、ルネ・マルタンの人物像。小さい頃からドラム、ロック、教会の合唱団、ジャズ、と順にはまり、シューベルトやスティーヴ・ライヒなど、家で音楽を聴く会を定期的に開いていたという。

    開催前に一読しておくと、より、イベントを楽しめるのではないかと思います。

  • 音楽マネージメントに興味があり、読んでみました。全体的な流れがちょっと悪い気もしたけれど、内容的には充分勉強になるものでした。

  • 東京国際フォーラムで毎年GWに開催される「ラ・フォル・オ・ジュルネ・オ・ジャポン」についての本。
    プロデューサー、ルネ・マルタンの想いと、それに賛同し影響された人々がいかに根気良く発展させていったか。
    私はまだ一度しか行けていないけれど、それはとても幸せな空間だった。お祭りの高揚感と、溢れる音楽に包まれる一日。
    この本を読んで、また絶対行こうと思わされた。

  • なんか、ところどころ「ゾワっ」と感動する。
    素晴らしい本でした。

    来年のラ・フォル・ジュルネ、絶対行く。

  • 毎年GWに東京国際フォーラムなどで開かれるクラシックの祭典。100万人以上が押しかけるその舞台裏には、ルネ•マルタンというプロデューサーがいた。

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