わたしたちのカメムシずかん やっかいものが宝ものになった話 (たくさんのふしぎ傑作集)

著者 :
  • 福音館書店
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感想 : 40
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  • Amazon.co.jp ・本 (40ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784834085525

作品紹介・あらすじ

「カメムシ」と聞くと、どんなことを思い浮かべますか? 「あの臭い虫?」と、おそらくあまり良いイメージはもっていないのではないでしょうか。でも、じつはカメムシには、美しいものや、かわったかたちのものなど、いろんな種類がいて、よく見ると、なかなかおもしろい生きものなのです。岩手県葛巻町にある小学校で、そんなカメムシをみんなでさがして、調べて、「カメムシずかん」まで作ってしまったお話です。

感想・レビュー・書評

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  • 岩手県葛巻町江刈小学校全校29人と校長先生のお話。カメムシ図鑑を作ろうと言い出した校長先生にどんどん巻き込まれていく子どもたちがいいね。

  • 小学校には、マイナスをプラスに変える不思議な力がワンサカあふれているということを教えてくれる作品。

    私が住むところは都市部の街なか。だけどマンションのすぐ横にいわゆる鎮守の森があって、5,6階くらいの高さを優に超えるくらいの高い木がまとまって生えている。
    だからなのかよくわからないけれど、春先からカメムシがやたら網戸や壁や植木にへばり付いてくる。灰緑色っぽい地色に黒の模様。体長は2センチもないくらいに小さい。動きは遅いのに、カメムシの姿を見つけた家族はワーキャー大騒ぎ。
    でもウチではそれだけで終わり。ちがう種類のカメムシって見たことある?とか、カメムシの仲間ってどんな特徴なの?とか、そこまで深く考える事は無かった。

    一方で、この絵本の舞台の岩手県葛巻町立江刈小学校では、全校児童が29人。だけどもカメムシの数たるや、私が住む街なかの比じゃないくらい多いみたい。たぶんワーキャーぶりはウチの何十倍なのだろう。はたこうしろうさんの描く、口を思いっきり開けた子どもたちのイラストが、子どもたちのワーキャーぶりを表情豊かに楽しく伝えている。

    それにしても、子どもたちがカメムシに抱くイメージを、厄介者から宝ものへと劇的に転換させた発想や手法はおみごと。
    でももしかしたら、学校現場ではよく使われている方法かもしれない。
    例えば、宿題を子どもたちが自分から興味をもって取り組もうとさせるときとか、寒い中での長距離走のときとか…

    ある意味で、先生が子どもたちをその気にさせて、子どもたちもうまく乗せられて…なんだけど、当然ながら、普段からの信頼関係がなければ、そう簡単にはいかない。
    「やりたくないことを、そのままにしていても、つまんないだけ。だから、みんなでワーキャーいいながら、楽しいことにしてしまおう」というのを、子どもたちに気づかれないように、それとなくふくらませていく、という感じかな?

    私たち大人の日常のいろんな場面でも、実はそういう“うまく乗せられた”という展開が、物事をスムーズに運ぶためのキーワードになりうるのかもしれない。実際には思うようにはいかないけどね。
    葛巻町の子どもたちに先を越されたね。葛巻町はおいしい牛乳だけじゃなく、もっといいものを育んでいる土地だってことだね。

  • やっかいもののカメムシがどうして宝物になったの?
    岩手県葛巻町の小学校の実話をもとにしたお話。

    〜~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

    臭い虫、農作物を荒らす虫、いろんなものにくっついてしまう虫…
    そんな害虫でしかなかったカメムシは、オトナにとっても子どもにとっても嫌なものでしかなかった。

    学校の廊下に大量に集まったカメムシを子どもたちと一緒に掃除していた校長先生は、カメムシにいろんな種類があることに気がつく。
    そして校長先生は子どもたちにこう呼びかけた。
    「カメムシにはいろんな種類があるみたいです。わたしもよく知らないので一緒に調べてみませんか?」

    それから子どもたちは、カメムシを自分から探し、観察しはじめた。すると…

    〜~〜〜~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

    わたしも小3の娘も、自然科学系の本はあまり読まないのですが、この本は図書館での「本くじ」(本が包み紙で包装された状態で借りるイベント)で娘が選んだ本のうちの1冊でした。
    「どうやってやっかいものが宝物にかわるのだろう?」と興味をひくタイトル、そして柔らかくてあたたかみのある絵柄に、さわりだけでも読んでみるかと開いてみると、図鑑や教科書的な説明文ではなく、物語のように読める本だとわかり、娘にも「お話みたいで読みやすいよ」とすすめてみました。
    しかし娘も、気にはなっているものの、ひとりでは読もうとしなかったので、読み聞かせで読んでみることにしました。

    この絵本のように物語として読ませてくれる本は、自然科学のお話を敬遠しがちな子どもにとって、とても貴重です。
    カメムシを追いかけていく絵本のなかの子どもとおなじ目線で、お話をおいかけていた娘は、絵本を読んでいる間も目を輝かせており、読み終わったあとも「おもしろかった!」といっていました。

    図鑑や物事を客観的に説明した本も、たしかに大事ではありますが、それが日常と結びつかなければ調べて終わりになってしまい、何も残りません。
    学校ではよく「自主学習しましょう」と、なんでもいいから書くノートの宿題が出るのですが、子どもたちは「書くこと」「ノートを埋めること」が目的になってしまい、自主学習ノートは面倒な宿題でしかないようです。
    でもそれは、日常のなかにある学びの種を拾う方法を子どもだけではなくオトナも知らないからであり、オトナも日常から学ぶ姿のを子どもに見せられていないからではないでしょうか。

    この本の校長先生のように、自然と自分たちの暮らしがつながっていることを感じられるような声かけやきっかけがあるかどうかで、子どもたちはすぐに目線をかえることができます。
    こんな校長先生が子どものそばにいたらな…と思うのではなく、そんなオトナに自分がどうしたらなれるのかな?と考えるほうが、現実的な気がします。
    オトナの声かけひとつで子どもは変わるし、子どもが変わればオトナも変われます。
    それにはまず、オトナである自分が変わることからなんだなあ…と、しみじみおもったのでした。

  • 岩手県の葛巻町にある小学校の実話絵本。毎年大量に発生するカメムシに困っていたが、校長先生が「どんなカメムシがいるか調べよう」と声を掛けたことから図鑑を作るまで、子供達の興味を引き付けたお話。教育って何でも声掛け一つだなぁと思う。でもさ、カメムシはやっぱり家の中に入られると嫌だよね(笑)
    2021年課題図書中学年に選出され再読。校長先生が偉いよなぁ、子ども達の関心を教育や楽しみに変化させるなんて。はたこうしろうさんの絵も可愛い。

  • カメムシでこんなに熱くなれて!!楽しそう!

  • ありふれている身近なものに丁寧に目を向けると、わくわくする発見があるのかー!って、探究心をくすぐられる。

  • 「調べ学習」のとてもよいお手本になります。
    実話に基づいた、ストーリー仕立てのカメムシ図鑑です。読み応えがありつつ、イラストがふんだんに使われているので、とんとん読み進められます。

    目を輝かせながらカメムシを探す子どもたちの姿が想像できました。好奇心は何にも勝る意欲ですね。

  • みんなの嫌われ者のカメムシを取り上げようとした校長先生がすばらしい。人間の見方によって、それ以外の価値観が変わり、良い生き物・悪い生き物と評価されているが、あくまで人間の尺度によるものであって、悪い生き物なんていない。きっとこの経験をした子どもたちにとって、生き物に対する考え方が大きく変わったことだろう。ただ、課題図書として読書感想文を書くのは難しいだろうなあ。

  • 令和3年度中学年読書感想文課題図書
    どんな虫にも草にも名前があり、既に調べられた性質がある。教科書には身の回りの生き物の同定や覚える評価がないから、みんな気にしないし知らないけど、もっと調べて覚える癖がつくと、世界はもっと深く美しくなるのに。Googleレンズなんか使えば、素人でも簡単に調べられるようになったから、この絵本の何が特別なのかがわからないような習慣がついて欲しいなぁ。

  • 課題図書 中学年

    岩手県の小学校で実際にあったお話を絵本にしている。嫌われもののカメムシ、調べていくうちに虫嫌いが変わっていくだけじゃなく競って調べていく姿勢がよかった。
    はたこうしろうさんの絵もいい。

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著者プロフィール

鈴木海花 1949年横浜生まれ。フォト・エッセイストとして旅や虫をテーマに作品を発表。チョウやカブトムシなどの花形昆虫だけでなく、カメムシやゾウムシなど身近な虫を観察する楽しみをブログなどで発信する一方、虫の専門家と一般愛好家を結ぶ『むし塾』などの催しも主宰。著書に『虫目で歩けば』『虫目のススメ』『どんどん虫が見つかる本―虫を楽しむ! 365日』など。

「2020年 『わたしたちのカメムシずかん』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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