ぼくたちに翼があったころ (世界傑作童話シリーズ)

  • 福音館書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784834081169

作品紹介・あらすじ

20世紀初頭のポーランド・ワルシャワで、愛と理想主義を貫く孤児院運営をし、ユダヤ人孤児たちとともにガス室に消えたコルチャック先生。その「孤児たちの家」では、信頼と自立・協働に基づく暮らしが息づき、子ともたちの生きる喜びが輝いていました……。施設にいた経験を持つ何人かへの聞き取りや詳細な調査をふまえ、戦争と暴虐に踏みつぶされるまで続いた輝くような日々を克明につづる、渾身のノンフィクション・ノベル。

感想・レビュー・書評

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  • 速い足を利用して盗みをしながら姉と生活してきた少年ヤネクは「かけこみ所」と呼ばれる孤児院で足にケガをさせられてしまい、走れなくなった。失意の彼に姉は、コルチャック先生の孤児院への入所を勧める。気が進まないながらもそこに行った彼は、ドクトル(コルチャック先生)の愛とその施設の人たちのお陰で少しずつ心がほぐれていく。やがて記者としての才能をドクトルに見いだされた彼は、施設内外の新聞作成に力を発揮していくが、その頃には暗い戦争の影がのびてきていた……。

    実存した施設「孤児たちの家」を舞台に創作されたお話。
    少年ヤネクの変化が無理なく描かれているので、施設が子ども達の心身にどのように影響していたか理解できる。






    *******ここからはネタバレ*******

    施設で生活する子ども達がいかに幸せであったかは、久しぶりに帰宅したヤネクが住みなれていた自分の家の酷さを見て驚く場面からも、施設を卒業した子ども達が理不尽なことの多い実社会に出て苦労する姿からも推察できます。

    この幸せな家は、ユダヤ人たちの施設であったため、ゲットーに送られ、その後は強制収容所に行かされるのですが、ただ一人逃れることを許されたコルチャック先生も皆と運命と共にしました。

    中学生以上として取り扱われていますが、すべての子どもと関わる人たちに読んでもらいたい本です。

  • 中欧を舞台にした児童文学は、こちらのように薄暗いものがおおい。こちらはフィクションではなくノンフィクションとのことでこのようなことが実際に起きていたのか……と思うと苦しくなる。

  • 原題:I'M NOT A THIEF A story about Janusz Korczak's orphanage

    Tami shem-Tov

    ポーランドワルシャワで約30年間運営されたヤヌシュ・コルチャック先生設立の「孤児たちの家」の話

    主人公はヤネク・ヴォルフは創作。
    この主人公がこの通称「家」で初めて子どもとしてきちんと扱われ、ひとりの人間としての生き方を身につけていく。
    育ち、育てられ方、環境で、人は善悪、優しさ、を間違って身につけてしまうことが、わかるし、それを矯正していくことの大変さがわかる。

    コルチャック先生の真意がわかるまで、ヤネクの発想はかなりひねくれたものだった。それは彼が生きてきた経過から得たもの。
    そんな彼の性質を見抜き、興味と素質を伸ばそうと力を貸してくれる大人の存在が少しずつ彼を変えた。傷つきながら。彼は記者として書くことで、自分の興味、好奇心、真実を追求するしていく。

    子どもに対する視線、姿勢を反省させられる。
    しかも、この困難な時代に。

    人には選ぶ自由がある

    ミナヘム・メンデル・ベイリス

    「なぜ、こうなんですか?」コラム



  • 子どもが愛されるとはどういう事なのかが描かれている気がしました。
    違う個性を持つ子どもたち一人一人に、それぞれに違うやり方で同じだけの愛情を注ぐコルチャック先生はほんとに素晴らしい人だなと尊敬しました。
    この物語はフィクションな部分も入っていますが、きっと愛情を溢れる素晴らしい人物だったのは間違いないんだと思います。

  • ポーランドで小児科医、作家、そして孤児の教育に携わり、二次世界大戦のさなか自らもホロコーストの犠牲となったことで知られているヤヌシュ・コルチャック先生。
    実在の彼の在りし日の姿、そして、ユダヤ人孤児たちのための養護施設「孤児たちの家」での子供たちの生活ぶりを、かつての同志や教え子たちの証言をもとに、架空の少年ヤネクの視点を通して描く。

    本書の主人公ヤネクは早くに両親を亡くし、姉と二人きりで生きている。子供だけの極度の貧困生活。ヤネクは自慢の俊足を使い、うまく盗みを働き生活の糧を得るが、そのために酷い暴行を受け、片足が不自由になってしまっていた。姉も生活のために早々に結婚するが、相手の男はヤネクにとってはろくでなし。
    ついには姉がわずかな伝手を頼って見つけた養護施設へとヤネクを入所させてしまう。
    ――たったひとりのほんとうの家族に見捨てられた――
    姉への恨みと消えることのない思慕に揺れるヤネク。
    しかし彼が入所した「孤児たちの家」には、さまざまな事情を抱えて施設で生活する百人以上の子供たちがいた。他人になかなか心を開けないヤネク。しかし彼は数々の失敗や経験を経ながら、だんだんと家の子供になってゆく。
    コルチャック先生からのゆるぎない信頼と愛情、ひとりの人として尊重されながら、彼の庇護の下で子供たちは悩み、戸惑い、傷つけ合い、許し合い、成長し、やがては豊かな才能と可能性を翼にして世界に飛び立っていくはずだったのに。それなのに、世界は許してくれなかった――。

    児童書だが、大人に読んで欲しいと思う。人生は大人だけのものではない。けれど大人のそれと切り離しては子供は生きていけない。
    大人の寛容と責任を考えさせられた一冊。

  • コルチャック先生のことをもっと知りたい。

  • 6年生から中学生かな
    高校生でも読んでもらいたい

  • ポーランドの小児科医で、教育者、児童文学作家でもあるコルチャック先生と子どもたちの物語。
    『孤児たちの家』では子どもたち自身が日々の生活運営をまかされる。コルチャック先生ほか大人たちは、子どもたちを「私物化」したり、「じゃま者あつかい」する事なく、ペットのように調教などしない。(どこかの国のように「子供達を飼いならす」なんてもってのほかだろう)
    ありのままの尊厳を認められた子どもたちには、みんなそれぞれの思いや考えが生まれ、強く優しくなる。
    「もしだれかが何か悪いことをしたら、いちばんよいのは、彼をゆるすこと」だと知る。
    「憎しみや人種差別を利用する」ような時の権力者や、自分の子ども時代を忘れよう忘れようとしている大人なんかより、ずっとずっと立派だ。
    21世紀の今も尚、世界各地には様々な解決されない問題がある。特効薬はないのかもしれないが、この物語に解決のヒントがあるんじゃないか?こどもこそ未来なんじゃないか?そんな事を考えさせられた。

  • 2016/1/8

    モデルとなったコルチャック先生のこと、「孤児たちの家」のこと、もっと知りたくなった!(T_T)

    これを書かれたタミ・シェム=トヴ氏のまなざしも凄い〜。

  • 生きづらい世の中に、望みを託す志。

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著者プロフィール

タミ・シェム=トヴ 著者タミ・シェム=トヴは1969年イスラエル生まれ。ジャーナリストとして何年間か活躍した後、作家として子ども・YA向けに次々と作品を発表、多数の受賞歴があります。子どもたちとの対話を通した交流に意欲的で、大学で創作を教えてもいます。邦訳に『父さんの手紙はぜんぶおぼえた』(母袋夏生訳/岩波書店)があります(この作品は数か国語で出版)。

「2015年 『ぼくたちに翼があったころ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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