石の神 (福音館創作童話シリーズ)

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  • 福音館書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784834080919

作品紹介・あらすじ

これはまるで-牙を剥いた神だ。石工修行にはげむ寛次郎の前に、謎めいた少年が現れる-。第12回児童文学ファンタジー大賞佳作受賞作!

感想・レビュー・書評

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  • 江戸時代、石屋「大江屋」で修業に励む2人の少年を描いた物語です。

    石工として一人前になることを志し、大江屋で修業を積んでいる寛次郎。
    そんな寛次郎の弟弟子として、新たに大江屋に加わったのが申吉と呼ばれる少年でした。
    申吉はあまり表情を変えることがなく、必要なときにしか口を開きませんが、石工としての才能には目を瞠るものがあります。
    あるとき、寛次郎は申吉との腕くらべをすることになりますが…

    終盤、山の中で寛次郎が不思議な人物に出会うシーンで鳥肌が立ちました。
    寛次郎の畏れが伝わってきて、自分までも神懸かった存在を目前にしているような気持ちになったのです。

    全体を通して余白の多い物語だという印象を受けました。
    文字で書かれていなくても、物語の起こす波紋がゆるゆる広がっていくのです。
    そこも読みたかった!…という箇所もあるけれど、2人の物語がそれぞれの読者の中で育っていくことが好ましくも感じました。

  • 村の外に住み見張りの任に当たる男たちと暮らす捨吉。村の周辺という限られた世界しか知らない捨吉は、村に変事が起きた後、唐突に男たちからも村からも引き離されてしまう。
     一方、村の石屋に弟子入りし、腕の良い職人となることを目指す寛次郎。3年も炊事係だった彼は、新たな弟子が入ったことでようやく石工としての修行を始めることに。
     寛次郎と捨吉、2人の行く道が重なった先に見出だすものは……?


     図書館本。
     主な舞台が石工の工房で、親方や職人はもちろん男ばかり。和風「クラバート」といった風情だが、親方も職人たちもいたって普通の人々、魔術学校などではない。かなり地味なストーリー。

     児童文学ファンタジー大賞佳作とのことだが、一般的なファンタジー要素はほとんど無い。どちらかというとホラーに出てきそうな幻想的なシーンが数ヶ所あるだけだ。
     2人の若い石工見習いの成長物語なのだろうが、ファンタジーを期待して読み始めたために受け入れ難くて困った。

     雰囲気作りや文章は悪くないのだが、思わせぶりな伏線のようなものは一切回収されず、投げっぱなし。寛次郎が見た稲荷社とか、村の道で襲われた人とか、捨吉の『前から決まっていたこと』とか、忘れられてる??? 石神の柱とか、捨吉の耳鳴りとか、門付けの男とか、何だったの???
     読ませはするのだが、ちょっと残念な作品としか言いようがない。

     間違えて電子書籍の方で登録してしまい、再投稿です。どうりで登録者数が少ないはずだわ……電子書籍版の感想を読んで下さった方、申し訳ありません。完全コピペなので上記の内容は同じです。

     しかし、電書化されてるのか……。文章自体は雰囲気あってまあまあ良かったし、買おうか悩みどころ。

  • 村の境で村人を守る役割を課せられながらも村に入ることを許されず不当な扱いを受けていた男たち。その長であった権平爺は幼い捨蔵を自分たちから引き離すことを選択するも、捨蔵は納得がいかず一人逃げ出し放浪することになる。
    石屋「大江屋」で石工をめざし修行に励む寛次郎は、兄弟子たちのもと一番下として下積みに明け暮れる日々だった。親方はある日、ひとりの弟子を連れてくる。彼の名は申吉――名前を伏せた捨蔵だった。

    仕事の呑み込みは早いがとにかく愛想のない申吉。型にはまらない天性の才を垣間見せるも、本気で取り組む姿勢を見せない。一人前の石工を目指す寛次郎はそんな申吉に困惑しつつも、彼の持つ非凡な才能と背負った影を気にかける。

    大きな展開があるわけではないのに各々が抱える心情描写が丁寧に描かれ、気付けばすっかり引き込まれていました。
    孤独を抱えた申吉と、石工で生きる道を選んだ寛次郎。二人とも幼いながらも自身の経験から、ひとりの人間として自分たちの足で立つ必要性を知っています。無愛想ながらも互いを認め合う後半の描写は、抱えてきた重荷がふと和らいだ瞬間のように思いました。

    創作童話シリーズとはあるものの、この作品の味わいは大人になってからの方が沁みるはずです。丁寧に読み進めたい「再生」の物語。

  • ノミを打つ作業場での、一心不乱な静謐さ。

    距離を置いた、寛次郎と捨吉の確かな繋がり。

  • 石工という職人の世界で生きる二人の少年を描く。
    厳しい職人の世界、貧しさや村外への差別、そして不可思議な存在を交えつつ、青少年の不安定な精神世界や人間関係を描いている。
    硬い石に向かって、ひたすら鑿をふるう。その姿と重なって、心にぐっと突き刺さってくる。
    相手を意識せずには居られない。分からないけれど分かってしまう。そんな存在と出会えることは、例え苦しくとも、ものを生み出す人にとっては、最良の人生になるのだろう。
    一筋縄ではいかない回りの大人たちにもドラマがあり人間味がある。
    『天狗ノオト』も良かったし、結構好きな作家かも。寡作なのが少し残念。

  • 小学生の時に司書さんからお薦めされて読んだ本。石彫の描写がちゃんと石彫の触感を伝えてくる。すごいと思った。

  • 日本の江戸時代風の時代設定。石工の工房に弟子入りすることになる二人の少年。石工(の徒弟)の日常はとても丁寧に描かれていて素晴らしかった。
    でも二人の少年の設定や結末が、ちょっとぼやけた感じがあってもったいなかったかな。石の神、というものを中心に据えるなら、どちらかにした方が良かったのではと思う。
    小説としてより、読み物として面白かった。でもこれ、児童書?

  • 図書館で手にとって、気になったので読んでみたけど、とても良い!好き!となりました。
    文章とか内容とか、はまりました。
    久しぶりに入り込めたお話でした。

  • ぎゃあああああああああああああ

  • 兄弟子に殴られるのは日常茶飯事、仕事は教えてもらうものではなく見て盗むもの。そんな石工職人の話。石神を憎み、蹴りつけ、引き倒した捨吉。その時から彼の中には牙を剥いた神が巣くったのだろうか。児童書っぽくない児童書。

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著者プロフィール

田中彩子 田中彩子(たなかあやこ)1979年生まれ。2002年「ニノ」で児童文学ファンタジー大賞奨励賞を受賞。2005年「白線」で再び同賞受賞(『天狗ノオト』と改題し、2013年理論社より刊行)。2006年「宿神」が同賞の佳作に入選。これを改題・加筆修正した作品が本書である。

「2014年 『石の神』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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