ハイジ (福音館古典童話シリーズ)

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  • Amazon.co.jp ・本 (516ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784834004397

感想・レビュー・書評

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  • 世界名作劇場シリーズの嚆矢となったアニメ『アルプスの少女 ハイジ』に感銘を受け、どのような原作をもとにしているのか興味を持ちました。

    アニメ版での追加箇所については、基本的に漫画も含めた他の原作つきアニメと同様に放映期間を満たすためのいわゆるカサ増しのためのものと言えそうです。追加要素を簡単に挙げると、「愛犬ヨーゼフ」「小鳥を育てる」「ユキが売られる」「狩りをする大人たち」「ペーターのソリ」「フランクフルト郊外でのピクニック」「ゼーゼマン家の秘密の部屋」「クララの祖母によるパーティー」「ネズミと仲良し」「ロッテンマイヤーのアルム同行」などです。主に動物絡みと、クララの祖母にまつわる心温まるエピソードが多く追加されていることがわかります。

    一方のアニメ版での原作からの目立った除外箇所はいくつかの点に分けられます。

    ①アルムおんじの来歴
    アニメではアルムおんじの過去については明らかにされませんが、原作では冒頭のデーテが村の主婦と会話をするシーンで以下のようなアルムおんじの噂が語られます。
    ・おんじは富農の長男だった
    ・酒とばくちで身を持ち崩し、実家までも手放してしまう
    ・失望のうち両親は亡くなり、弟は行方不明となる
    ・その後、10年以上は兵隊として海外に行く
    ・兵隊時代に戦争ではなく喧嘩で人を殺してしまう
    このようなエピソードから村人がおんじを怖がるのも無理はありません。ただ噂話として語られており、どこまで真実なのかははっきりしません。

    ②キリスト教による救い
    フランクフルトからアルムへの帰郷をのぞむハイジに、クララの祖母は祈りの習慣を取り戻すように諭します。結果としてアルムに帰ることができたハイジは神を強く信じることになり、神を捨てていたアルムおんじに信仰の重要さを伝えます。ハイジに感化されたアルムおんじはそれまでの行いを悔い改め、ハイジとともに教会に向かうことで憎んでいた村のひとびとに受け入れられ、一気に和解へと至ります。そのほかペーターのおばあさんや、後述の通りペーターについても信仰により救われたものとして数えることができるでしょう。

    ③ペーターの人格
    ハイジと親しく、アルムおんじに畏敬の念を持ち、話下手で食いしん坊なあたりは変更がありませんが、大きな違いとして原作ではペーターの嫉妬深さや卑怯さが描かれています。とくにその性向は物語後半に話の流れとも関わっており、ゼーゼマンから派遣された医師やクララにハイジをとられることを嫌がって陰ながら攻撃的な仕草を見せたり、クララの車いすを破壊するなど、無邪気なアニメ版のペーターとは異なる姿が描かれています。またアニメ版に比べてペーターの無学さや怠惰さが、強く打ち出されています。このようなペーターの姿は、アルムおんじと同様に信仰によって救われるべき対象として作者によって用意されたものにも見えます。

    ④ハイジの将来についての配慮
    物語終了時点で75才ほどになるアルムおんじは自身が高齢であることから、クララの回復を通して心を通じ合わせることとなったゼーゼマンにハイジの将来を託します。ゼーゼマンは快諾したうえで、医師が娘を亡くして孤独であり、隠居を望んでいることから、渡りに船とゼーゼマンをハイジの後見人に選びます。ハイジを気に入っている医師は同意し、村に移住したうえで養子に迎えることで彼女の将来をアルムおんじに約束します。

    ⑤その他
    ほかの細かな点については召使いのチネッテがやや意地悪であること、ゼーゼマンがハイジの帰郷に際して多額の謝礼金を持たせたり、クララの祖母がペーターに定期的に支援を約束するなど金銭についての記述が多くなっていること、またハイジ帰郷の際にデーテがアルムおんじと顔を合わせにくいため、ハイジとの同行を遠回しに断っていたことなどが挙げられます。

    これらの違いから、原作とアニメ版の変更点として、子供向けに受け入れられやすいように表現をマイルドにしたり一部の情報を伏せている点と、宗教色を薄めている2点にまとめることができそうです。

    原作に当たる以前に得た情報から、もっと宗教色が強い作品と予想してしばらくは敬遠していたのですが、読んでみるとそこまで布教的な説教臭さは感じませんでした。原作にしてもアルムおんじたちの救いの媒介となるハイジの存在そのものが稀有なものとして扱われており、基本的な方向性はアニメ版も原作を踏襲していると言えます。このような優秀な原作に立ったうえで、非凡な才能と並外れた努力によってアニメ版「ハイジ」が形作られたことを確認することができました。もちろんアニメを見ずに原作だけ当たる価値も十分あるでしょう。

  • テレビアニメはかなり原作に忠実だったのだと知る。

    宮崎駿監督が「僕たちはいい仕事をした」と書かれていたのを読んだことがあるけど、アニメも素晴らしい。ハイジやペーターのキャラクターもイメージを損なわず表現されてると思うし、アニメならではの表現も面白いし。

    原作はじつに心あたたまる作品。
    人に奉仕することに喜びを感じる明朗闊達な少女ハイジ。それは著者がそういう人だったから。
    読んでよかった。

    あ、あとおじいさんはいい男だね~!
    黙ってもくもくと仕事をする。
    深いところで人を思いやり、心身ともにケアすることができる。
    惚れますよ。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「おじいさんはいい男だね~!」
      ハイジによって、本来持ってる優しさが表に出てくるのが良い。
      TVアニメでフランクフルトでボロボロになるハイジ...
      「おじいさんはいい男だね~!」
      ハイジによって、本来持ってる優しさが表に出てくるのが良い。
      TVアニメでフランクフルトでボロボロになるハイジを見て、ここまで描くか!と驚きました。
      そして最近、ハイジを流用した変なCMを見て、汚された感を持っているのでした。怒っても仕方無いんですけどね、、、
      2013/05/02
  • アニメで大筋は知っていたが、原作を読んだのは初めて。やぎってこんなに人懐こいのか。クララがアルプスの山で、自分も人のために生きたい、と願うところで、感涙。歩けるようになってどんなにか嬉しかっただろうか、とまた涙。ハイジの周りの人によせる信頼の態度、なんていい人なんだろう。このまま大人になって、いずれは生き方に悩むようにならないのか?そうならないために信仰があるのかな。ペーターが文字を読めるようになり、おばあちゃんのために読んであげる詩は聖書?それにしてもアルプスの山の素晴らしい風景描写、一度は行ってみたいなぁ。

  • T図書館
    100分で名著で紹介

    面白い
    クララのおばあさんがハイジのよき理解者
    ハイジもアルムおじいさんも幸せになってよかった

  • もちろんハイジを知ったのはアニメのほうが先でしたが、
    原作を読んでみるとかなりアニメは原作に忠実だったんだ
    ということがわかりました!アニメ同様、たのしいアルムの生活を見ていると
    途端に今かに行きたい衝動が…!でも、訳がちょっと昔っぽかったかな…

  • 誕生日に貰った立派な装丁の箱入りの本。
    小さい頃大事に大事に読んで
    ハイジになりたいーと思ってました。
    ふわふわの白パンがとっても美味しそうに思えていたのだけどあれって結局どのパンにあたるんだろう。
    食パンも白パン...?
    ハイジの干し草のベッドがとってもうらやましかった。
    夢遊病を治すために窓をおおってしまったりするの納得いかなくて悲しかったなあ。
    久しぶりに読み返したいです。きっとまた違う感想を得られるような気がします。

  • 先週?土曜朝の旅番組?で
    ハイジのチーズを探せ!って内容でアルプスがすごいきれいでたまらなかったのでハイジ

    読んだことあるみたい
    けっこうはっきり覚えてたから去年とかだったりして‥

    アニメもけっこう見たのかな〜
    アニメで頭に浮かびました。

    ハイジいい子だなー
    ぴょんぴょん跳ねるハイジ可愛い
    アルプスやばい
    パン+チーズ+山羊のミルク+ハム
    食べたい‥!!!

    行きたい行きたい!
    超いきたい(>_<)

  • 昔アニメで見た人も多いかと思いますが、
    アニメで見たアルプスの壮大さが頭に思い浮かびます。

    アニメとちがって、キリスト教色が強く、
    それが物語の主要な要素になっています。
    それがまたよく、感動です。

  • 小学校の図書室でときどき借りていた。

    わらのふとんでヨロレイヒーな牧歌的雰囲気と、秘密の花園ばりの陰鬱な屋敷と。
    対比がすごくてどちらかといえば重苦しい印象だったから、宮崎アニメから入った人たちが明るいイメージを持っていることに驚いた覚えがある。
    ハイジは無邪気というより過剰適応の良い子ちゃんだと思ってた。

    でも全体として暗い話かといえばそんなこともなくて、子供が楽しめる物語だった。

  • 誰でも少しくらいは話の内容を知っていると思う名作の一つだと思います。私がこの本を初めて読んだのが確か小学校4年生の夏休み。夏休みの宿題に読書感想文があって、何を読もうかな~と図書室で見つけて、なんとなく知っている話だったし、この表紙にものすごく惹かれて手に取った。読みはじめたらすごく面白くて、読むのが止められないくらいこの本の虜になった。その後、小5、小6の読書感想文で毎年これを初めから読み返すくらい大好きな作品です☆

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