諦める力 〈勝てないのは努力が足りないからじゃない〉

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  • プレジデント社
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784833420488

感想・レビュー・書評

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  • 夢をひたすら追いかけて、逆境も跳ね除けて、誰よりも努力をして、結果を残して、といったことが美化される世の中においては、アスリートに限らず、色んな人がただ苦しみを抱えるだけになるのではないかと思う。何かを成し遂げようとする大勢の人が気にしているのは、なんだかんだで周りの期待と評価なのかもしれない。
    部活で苦しんでいた時期に読みたかったと後悔。

  • 「スポーツはまず才能を持って生まれないとステージにすら乗れない。」自分の目的を明らめよ

    ●感想
     読んで涼しく前を向ける本。暑苦しくなく、夢を諦めてスイッチすることをポジティブに語ってくれる。他の自己啓発本と違うのが、勝者※がその世界の厳しさをきちんと語っていること。スポーツには歴然と才能の壁があるし、努力すれば夢は叶うように世界はできてない。自分が本質的にやりたいこと、求めていることをよく考えることが大事。そのためには、ずっとやっていたことを辞めたっていい。こういう冷静な距離感で、人生やキャリアを考えさせてくれる本がもっとあってもいいと思うなぁ。

    ※著者は勝者と敗者の側面を併せ持つ。世界陸上のメダリストだ。その点では勝者といえる。しかし、花形の100m走での勝利はあきらめていた。100m走では勝てなかった。自分の勝てるフィールドにスイッチした結果、勝てた。

    ●本書を読みながら気になったこと・記述
    ・「人生は可能性を減らしていく過程でもある。年齢を重ねるごとに、なれるものやできることが絞りこまれていく。可能性がなくなっていくと聞くと抵抗感を示す人もいるけれど、何かに秀でるには能力の絞り込みは必須で、どんな可能性もあるという状態は、何にも特化できない状態でもあるのだ」
    ...分かってはいるけれど、人はスーパーマンにはなれない。どの人にもできないことはあるし、苦手なこともあるよね

    ・「多くの人は、手段を諦めることが諦めだと思っている。だが、目的さえ諦めなければ、手段は変えてもいいのではないだろうか。」
    ..確かに!!現実のあらゆる手段は、自分の心の中にある、目的を達成するため、ということがほとんどだよね。「甲子園で優勝する」とか「医者になる」とかはあくまで目標。本質的に自分がどういうことをしたいのかは、ずっと変わらない。抽象的に自分のやりたいことをきちんと考えるのが大事。具体的な目標にとらわれていると、ハッピーになれないよね

    ・「伊調さんは吉田さんにほとんど勝てなかった。伊調さんが世界の頂点に立ったのは、吉田さんとは違う階級に移ってからのことだ。」
    ...吉田さおり強すぎてわろた。この文の後に出てくる、小笠原選手も、吉田さんに勝てないから階級を変えたらしい。だから霊長類最強というわけか

    ・「だって、僕がこの分野に行けば有利なんだよね」
     自分が努力せずに勝てるフィールドを見つけること。それが戦略だという。

    ・「その一方で、いたずらにスポーツを長くやりすぎたため、人生を狂わせてしまったアスリートが数多くいることはあまり知られていない。」「スポーツはまず才能をもって生まれないとステージにすら乗れない」
     この本が面白いのは、世界級の選手がスポーツの厳しさをきちんと語ること。テレビやニュースではなかなか取り上げられないが、現実的で重要な側面にきちんと触れることがすごく大事だと思う

  • 良い意味で、今までの思い込みを覆してくれる本だった。

    特に『人生はトレードオフ』という言葉が印象的。何かをするためには、何かを差し出さなければならない。
    私はやりたいことが山ほどあるのに全然進まない感覚に陥ることがよくあるので、トレードオフという言葉を念頭に置いて優先順位を考えようと思った。


    誰が読んでも心に響く箇所があるんじゃないかな。
    おすすめです。

  • 正直、本書を読む前は「諦める」という言葉にネガティブな印象を持っていた。

    だが、本書を読んで「諦める力」は、自分の勝てるフィールド(仕事や分野など)を見つける手助けをしてくれることを知れて非常に良かった。

    年齢を重ねると、自分に出来ることが少ないことを理解出来てくるが、やはり後ろめたい気持ちがあった。

    今はプログラミングを勉強しているが、その分野で勝ち残ることができるのか、勉強しながら自分を俯瞰的に見て判断していきたい。

    今のところ、プログラミングは楽しいので継続して行くつもり。

  • ・多くの人は手段を諦めることが諦めだと思っている。だが、目的さえ諦めなければ手段は変えてもいいのではないだろうか。

    ・日本は、人の思いを汲んで自分の道を決めていく社会であるように思う。

    ・日本では「やめる」「諦める」という行動の背後に、自分の能力が足りなかったという負い目や後ろめたさや敗北感を強く持ちすぎるような気がする。「自分には合わなかった本質的には、ただそれだけのことではないだろうか。

    ・人生は舞台の上で、僕は幻を見ている。人生は暇つぶしだと思ってから、急に自分が軽くなって、新しいことをどんどん始められるようになった。 たかが人生、踊らにゃそんそん、である。

    ・自分のなかで「納得感」を持って終わるしかないと思う。

    ・ここでやめようと思ったときにきっぱりと終わらせることは、人生にとってすごく大事なことだと思っている。つまり、自分で設定したルールを守り、締め切りを守ることが大切なのだ。

    ・天才をのぞき、普通の人がトップレベルにいくにはトップレベルにたくさん触れることで、そこで常識とされることに自分が染まってしまうのが一番早い。

    ・アスリートの場合でも、競技場では諦めずに続けることが勝ちだったかもしれないが、一歩競技場を出て人生をトータルで考えたときに、ただ諦めずにがんばることが本当に勝っていることになるのかどうかはわからない。

    ・多くの日本人は、あまりにも人から選ばれようとしすぎてはいないか。人に受け入れてほしいと思いすぎていないか。

    ・「あなたが就職した先に描いている大きな目的は何だろう。それはランキング上位の会社に入らないと実現できないことなのか」

    ・多くの指導者は、スタープレーヤーが取り組む驚異的な練習を見て、教え子たちに「見ろ。あのぐらい練習しているからあそこまでの選手になったんだ」と諭す。しかし、スタープレーヤーは、努力を努力と思わず、努力そのものが楽しいという星の下に生まれてきていることがほとんどだ。

    ・他人由来の幸福は、つまり移ろいやすい世の中の評価の中心に振り回され続けることになる。

    ・あれも、これも手に入れたいという発想の行き着く先は、つねに「できていない」「足りていない」という不満になってしまう。

    ・他人由来の幸福は、つまり移ろいやすい世の中の評価の中心に振り回され続けることになる。

  • 無理なものは無理。努力ではどうにも出来ないこともある。自分のやりたい事で勝てるとは限らない。
    なんとなく感じていたけど、トップに上り詰めた為末さんに言われると説得力がある。理想の自分ではなく、ありのままを自分を見つけて認めてあげたいと思った。

  • 名前を聞いたことがある程度で、陸上のことも全然詳しくないのですが、タイトルにひかれて読んでみました。

    限りある人生の中で何かを目指すとき、道のりはいくつかある。今進んでいる道が困難なときは、固執せず、冷静な判断で諦めて、他の自分に合った道を選ぶこともできるということ。(その先にある目的が同じであれば)

    「前向きに諦めること」自分の仕事だけでなく、子育てにおいても参考になりました。


    以下引用

    日本人は、計算高いことをマイナスにとらえる傾向がある。負けが見えていてもがんばることが尊いとされるのだ。「将来のことまでよく考えている」「限りある人生を納得いくように生きている」こうした表現であれば、拒絶反応を見せる人も少なくなるのではないか。時間の限界という概念を持っていると、目先の評価に惑わされることはない。

    何でもかんでも手当たりしだいに手に入れることで、幸福が得られるわけではない。むしろ、ある段階がきたら「もうこれはいらない」と手放していくことで、幸福が近づいてくるのではないだろうか。

    働く女性は仕事と育児を必死で両立させようとしてきたが、その過程で多くの犠牲を払ってきたのだと思う。仕事も諦めない、子育ても諦めない……そうやっていると、どこかで行き詰まるものだ。どちらかを完全に諦めろと言っているわけではない。ただ「今自分はどちらを優先したいと思っているのか」ということを自覚していないと、自分に対する不満ばかりがたまっていく。

    あれも、これも手に入れたいという発想の行き着く先は、つねに「できていない」「足りていない」という不満になってしまう。現代は生き方、働き方にも多様な選択肢がある時代だ。それはとてもいいことだが、すべてを選べるということではない。

    何にでもなれるという無限の可能性を前提にすると、その可能性をかたちにするのは本人(もしくは親)の努力次第といった話になってしまう。しかし「おまえはそんなものにはなれない」という前提であれば、たとえ本当に何者にもなれなくても、誰からも責められない。

    自分をほかの誰とも比べることなく「オンリーワン」などと言っているのは、単なる自己満足にすぎない。そもそも自分の特徴が何であるのかすら、他人との比較がなければわからない。まずは「自分はこの程度」と見極めることから始め、自分は「何にでもなれる」という考えから卒業することだ。そこから「何かになる」第一歩を踏み出せるのではないだろうか。

  • 経験に基づいて主張が語られるので、想像しやすいと思いました。

    こういう類の本を読むときは、自分の考えと違う意見が出てくるのを期待して読む。そういう考え方あるんだなーって気持ちで読まないと入ってこない内容もあるので。

    著者の経験に基づいた主張なので、表現の仕方は人それぞれ違う。ただ、主張の根本的な部分は同じだったりするのが面白いと思う。

  • なかなかおもしろかったです。著者の合理的な視点は共感できました。ただ、結局言ってる中身の総量はそんなに多くはないのかなあと感じました。(2017年11月19日読了)

  • 1.踏ん張ったら勝てる領域を見つける
    サンクコスト 気がすんだ 別の分野が向いている 納得感 
    2.トップレベルの常識に触れる 客観的な目と練習プランのアウトソース なにを勝ちとする ヒエラルキーは誰が作ったの 
    3.努力にはどれだけ、なにを、どうがんばるかという方向性がある 
    4.負けない工夫より、負けにふてぶてしくなる工夫 
    5.一番になる範囲 あなたは僕がつづけた場合、どのくらいいくと思う? 
    6.ノブレスオブリージュ  頑張らなくてもできることは?  
    7.トレードオフの感覚 全能感と期待への演技 多面性を引き立たせるもの 
    8.人間に優劣はないが能力に優劣はある 
    9.自分らしさは結果からくる。
    10. ルサンチマン 嫉妬
    11.高倉健は心境と観客の反応のギャップを理解することがなにか。 世の中の評価は移ろいやすい 限るあるものを納得いくように。 
    12.他人由来の幸福は世界に振り回される未来の幸福は掴めば消える。 
    13.手放す幸福 何者かになれている自分を見失う。 
    14.子供に自発性に報酬いらない。 楽しいことがすでに報酬である。努力するうえでの遊び 
    15.なんでも知ってる偉い人はいない 平等原理主義は可哀想というもの 
    16.不安の種は棄てる 仕方がある

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著者プロフィール

1978年広島県生まれ。スプリント種目の世界大会で日本人として初のメダル獲得者。男子400メートルハードルの日本記録保持者(2021年12月現在)。現在は執筆活動、会社経営を行なう。Deportare Partners代表。新豊洲Brilliaランニングスタジアム館長。YouTube為末大学(Tamesue Academy)を運営。国連ユニタール親善大使。主な著作に『Winning Alone』(プレジデント社)、『走る哲学』(扶桑社新書)、『諦める力』(プレジデント社、小学館文庫プレジデントセレクト)など。

「2022年 『Unlearn(アンラーン) 人生100年時代の新しい「学び」』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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