絶滅した日本のオオカミ―その歴史と生態学

制作 : 浜 健二 訳 
  • 北海道大学出版会
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  • Amazon.co.jp ・本 (329ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784832967182

作品紹介・あらすじ

絶滅に至る過程を,民俗学・生態学や進化論に基づく新たな枠組みと北米との比較を通じて再構成。特に北海道におけるエゾオオカミ絶滅政策とイエローストーンでの絶滅と再導入の歴史的背景を詳細に検討する。
「狼の視点」からという斬新な軸に拠り,野生生物の「歴史」研究に一石を投じた,気鋭の著者による日本環境史研究の力作。

感想・レビュー・書評

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  • 日本人がオオカミを絶滅させてしまったのは確かだけれど、それもいわば人類という種類の生態のなせる技だったのかもしれない。

  • ●本書の特徴

    絶滅に至る過程を,民俗学・生態学や進化論に基づく新たな枠組みと北米との比較を通じて再構成。特に北海道におけるエゾオオカミ絶滅政策とイエローストーンでの絶滅と再導入の歴史的背景を詳細に検討する。
    「狼の視点」からという斬新な軸に拠り,野生生物の「歴史」研究に一石を投じた,気鋭の著者による日本環境史研究の力作。
    ●目次

    まえがき
    序 章
       動物の感情世界
       歴史における自己・主体・主観性
       自然の時間の一瞬の光芒

    第一章 科学と日本オオカミ像の形成
       日本におけるリンネ以前のオオカミ分類
       一九世紀の分類学──日本のリンネ学時代
       帝国時代のリンネ分類学
       戦後の論争──ヤマイヌの帰還
       オオカミと日本犬
       む す び

    第二章 文化と日本の貴いオオカミ像の形成
       日本における自然と動物崇拝の伝統
       日本の支配者とオオカミ
       オオカミ信仰の聖地
       送りオオカミ
       綱吉──オオカミ将軍
       オオカミ崇拝とアイヌ
       北海道犬とオオカミ
       アイヌの叙事詩と民話に登場するエゾオオカミ
       オオカミ神を送る
       む す び

    第三章 近世日本における、人と狂犬病に罹った人殺しオオカミとの闘い
       古代のオオカミとの遭遇
       オオカミを殺す技
       近世の賞金制度
       狂ったオオカミの報告
       一八世紀日本における狂犬病
       狂犬病と北海道のイヌ科動物
       オオカミ殺しのリズム
       む す び

    第四章 明治の近代化、科学的農業とエゾオオカミの撲滅
       今日のオオカミ
       エドウィン・ダンの時代のオオカミ殺し
       エドウィン・ダン
       新冠牧場
       オオカミによる被害
       エゾオオカミを滅ぼす
       む す び

    第五章 オオカミに対する賞金と進歩の生態
       進歩の生態
       明治時代のアメリカモデルとオオカミ殺し
       カラス殺し
       日本のオオカミ猟師
       日本の進み行く文明
       オオカミの自然経済
       む す び

    第六章 オオカミ絶滅理論と日本の生態学分野の誕生
      一 有機体論的伝統と日本の生態学
       動物生態学と有機体論的伝統
       信仰の山と日本の理想郷
       柳田國男(1875~~1962年)と日本の生態学
       今西錦司(1902~92年)と動物社会学
       生態学と有機的な繋がり
      二 日本の生態学の歴史と民族誌学
       犬飼哲夫(1897~1989年)と絶滅の歴史生態学
       千葉徳爾(1916~2001年)とオオカミ絶滅の地理学
       む す び

    エピローグ
       オオカミ絶滅の結果


     付表 各支庁におけるオオカミ・クマの捕獲数と賞金支払額 
     注
     訳者あとがき  
     人名索引
     事項索引

  • 畑を食い荒らす鹿などを追い払ってくれる神様だった狼がいかにして「害獣」になり滅びた(滅ぼされた)か、の歴史的経緯を主題にした本。様々な要因が絡み合っていて不明なところも多いけど、ある程度具体的なイメージが出来た気がする。面白かったッス!

  • 狂犬病の日本上陸がオオカミの運命を狂わせた。
    庄内や秋田における狂犬病の記録あり。
    エゾオオカミは北海道の近代化・酪農化が致命的。

  •  古代から明治にいたるまで、日本人が野生の象徴といえるオオカミとどうつきあい、滅ぼすにいたったか、その歴史を検証した書である。 

     シベリアオオカミの亜種として、本州・四国・九州にはニホンオオカミが、北海道にはエゾオオカミが棲んでいたが、野犬や雑種もいた。これらを日本人は山犬や豺という紛らわしい名前で呼んだ。
     19世紀にシーボルトが採集した豺の標本をテミンクが誤って新種のオオカミと命名し、豺はオオカミと混同されてしまった。 
     真のオオカミは人前に姿を現すことも少なく、ひっそりと暮らしていたのに、人里に現われては害をなした豺の罪を被せられ、狩りたてられ滅ぼされた。
     エゾオオカミはアイヌに崇拝され平和に共存していたが、明治に至り、富国強兵のスローガンの下に開発を急ぐ開拓使は、牧畜に対する害獣として、オオカミを毒物、賞金制度を駆使して絶滅させてしまった。 
     人類がこのまま生物を滅ぼし続ければ生物の大量絶滅が起き、未来には沈黙のみが待ち受けているだろう。
     訳者:浜 健二

  • 2010.02.21 朝日新聞で紹介されました。
    図書室とかに置いてありそうな雰囲気のジャケット・・・
    手に取りたくなりました。

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著者プロフィール

1967年米国モンタナ州ボーズマン市生まれ。1997年オレゴン大学大学院で博士号(歴史学)を取得。イェール大学歴史学科助教授を経て現在はモンタナ州立大学歴史・哲学科教授。1995〜96年と2000年の2度にわたり北海道大学に留学。専攻分野は近世日本史で,主として近世アイヌ民族史や日本環境史などを研究している。著書には本書のほか,The Conquest of Ainu Lands: Ecology and Culture in Japanese Expansion, 1590-1800, University of California Press, 2001(秋月俊幸訳『蝦夷地の征服——日本の領土拡張にみる生態学と文化』北海道大学出版会,2007 年),Gregory M. Pflugfelder

「2009年 『絶滅した日本のオオカミ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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