わさびの日本史

著者 :
  • 文一総合出版
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感想 : 17
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  • Amazon.co.jp ・本 (239ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784829972335

作品紹介・あらすじ

粒粒辛苦な栽培植物起源学の研究でわかった!歴史ミステリー

一見何でもない野生植物が、いつか栽培植物となる。
そこに、人々のどんな思いがあったのだろう。
誰が、どういう動機で、何を思い栽培を始めたのだろう。
それに少しでも迫りたい。
名もなき人々の思いの復元を目指した栽培植物起源学の研究者が歴史の謎を掘り出してしまった!


和食で使われる野菜といっても,日本発祥の植物はごくわずか。日本の野生植物からうまれた数少ない食材の一つが,ワサビです。DNA解析を駆使する理系女子が『群書類従』など歴史資料に手を伸ばし,栽培ワサビの起源に迫ります。

・世界唯一?のワサビ研究者,山根京子先生による初めての本。

・ワサビはほんとに日本固有種か? 中国に乗り込んで調査を始めたら,そっくりな植物があって呆然。でも,ツンとくる辛さをもつのは日本のワサビだけ。やっぱり固有種だった。ほっとした~。

・日本にしかないこの野生植物が,栽培植物へと変わった現場をつきとめるべく,ピペットを古文書に持ち替えて,歴史的な記録の中にワサビの影を探索開始!

・そんなワサビの影を網羅した「ワサビ年表」つき。堂々30ページ!

・伊藤若冲のかわいい作品「野菜涅槃図」にワサビが描かれてるって知ってましたか? そう言われて絵を見ても,どこにあるのか見つからない! ところが,それが栽培の歴史を示す資料になる。芋づる式に出てくる情報が織り上げるストーリーは,まるで歴史ミステリー。

・ワサビ栽培の発祥地はおそらく静岡市有東木。しかし,DNAは原産地が山梨,群馬,長野エリアであることを示している。これは何を意味するのだろう?

・「ウェストにくびれのあるワサビは辛くない」「大トロはワサビが効きづらい」等々,「ワサビ応援団長」を自認する山根先生ならではの蘊蓄もちょこちょこ披露。

・知りたかったのは,ちいさな野生植物を栽培しようと思った先祖の想い。記録のない昔のこと,それはおそらくかなわないけど,少しでも迫りたい。それが栽培植物起源学の心意気。植物の好きな人も,和食に関心のある人も,歴史の好きな人も楽しめる本です。

感想・レビュー・書評

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  • わさびの歴史をひもとく。ありそうでなかった本だ。表紙を開くと本扉から目次まで、わさび色の紙が用いられている。うーん、凝ってるなあと感心してしまう。巻末のわさび歴史年表は、内容はもちろんだが、デザインも優れていて見るのも楽しい。

    著者の山根京子先生は、岐阜大学のわさび研究者。InstagramからTwitterまで、わさび尽くしの人である。本書を読んで強く感じるのは、わさびへの尽きせぬ愛。

    わさびの生物学的な研究課題から、日本史とのかかわり、食文化とのつながり等、てんこ盛りの内容に圧倒される。著者も版元もデザイナーも楽しみながら作った一冊だろうなあと想像できる。やや誤字が多いのはご愛嬌。素敵な一冊です。

  • 農文協・農業書センター 企画展「わさびの日本史展」(10/26〜11/16): 文一総合出版の書籍案内
    https://bun-ichi.seesaa.net/article/477794841.html

    日本に「ワサビ食文化」が定着した納得の理由|au Webポータル経済・ITニュース
    https://article.auone.jp/detail/1/3/6/7_6_r_20201106_1604637852071631

    文一総合出版 > 生物学の本 > わさびの日本史
    https://www.bun-ichi.co.jp/tabid/57/pdid/978-4-8299-7233-5/Default.aspx

  • 食材のルーツといえば、ニンジンで気になったことはある。和洋中で調理可能なニンジンはいつから日本国内で栽培・調理に使われるようになったのか。自宅にPCがなかった頃から疑問だったけど、スマホを手にしたらあっさり解決した。

    本書は日経の記事で知った。
    ふいに日本史学を専攻していたゼミ時代の感覚を思い出したくなり手に取ってみたら、「本来はこうやって調べていくんだ!」と言わんばかりの凄まじきわさび愛に溢れた歴史書だった。

    筆者の凄いところは、そのわさび愛に突き動かされて何度も山に、はては中国まで調査に赴き、時代を選り好みせず、文献の収集・解読にチャレンジされたところ。(古文書の解読は専門外だったっていうのがまたビックリ!)

    「好き」がぎゅうぎゅうで暑苦しい箇所もあったけど、文献を挟みつつ時系列で丁寧に紐解いてくれているので大まかな流れくらいだったらメモらんでもインプットされる。

    日本人のわさび離れについても懸念されている。今まで気にしたこともなかったけど、今回日本史/食文化の一端を担う彼らを知ってしまったから筆者が心配されるのも無理はないかなと思う。

  • 日本固有の植物として知られる「ワサビ」は
    現在は伊豆の山あいで栽培されているのが主
    流です。

    では野生のワサビはあるのか、といいますと
    実は存在しているらしいのです。

    しかし我々が知っているワサビとは違い、辛
    くもなく、あの根っこが大きくなったような
    姿形ではないらしいです。

    では、どうやって現在のような姿と形になっ
    たのでしょうか。

    そして日本食に欠かせないワサビはこの先に
    は、どうなってしまうのか。

    実はワサビは苦手という若者は増えているら
    しいです。

    寿司屋でも「サビ抜き」は昔は特別メニュー
    でしたが、今や回転寿司などではワサビを付
    けたい人が、サビ抜きの寿司にワサビを付け
    なくてはならない時代です。

    そんな現代の風潮に著者はワサビの未来を危
    惧しています。

    ワサビLOVEが満載の一冊です。

  •  ワサビ(山葵)は日本固有種でその辛みはアリルイソチアネートという揮発性の物質だそうだ。根茎を擦りおろすことにより物質シニグリンと酵素が反応してこの物質が発生するという。揮発性だけに時間が経つと辛みが減ってしまうと。なるほど。
     それと我々が目にするワサビは、著者が開発したDNAマーカーによると「だるま系」「島根3号系」「真妻系」、それに石川県の「白山」があるとのこと。
     現在、伊豆半島で栽培されているのは「だるま系」で江戸時代に駿河の有東木(静岡県葵区)で栽培されていたものを中伊豆の板垣勘四郎とが持ち込んだそうだ。ただし、それ以前からワサビが伊豆半島で栽培されていた文献も残っているが、DNAマーカーでは、現在、一種類しか残っていないという。なるほど。
     「ワサビ応援隊長」を自称する著者、研究対象に愛を注ぐその研究姿勢、若い人に学んで欲しいな。

  • 最初から最後まで読んだけど、スッキリしない本です。

    タイトルにも書いたが、なぜ西洋わさびに全く触れないというのは釈然としない。
    「日本わさびの歴史」とかだったらわかるが。
    また、ワサビ属は氷河期に大陸からやってきたと言っているが、中国の1ヶ所を調べただけで、日本原産と言いきっている。
    https://seisenudoku.seesaa.net/article/477318936.html

  • わさびが好き!日本史が好き!寿司が好き!この本を手に取るきっかけは色々ありそう。読むと学問のつながりが見えてくる本。
    [NDC]657
    [情報入手先] 蔵書
    [テーマ] ちょっぴり背伸び本(読むと賢くなった気分になる本)

  • ■一橋大学所在情報(HERMES-catalogへのリンク)
    【書籍】
    https://opac.lib.hit-u.ac.jp/opac/opac_link/bibid/1001204413

  • 飛鳥時代の苑池遺跡から出土した木簡にある「委佐俾三升」という記載が、日本の固有種ワサビの最古の記録だそうだ。同じ場所から「丙寅年六」(西暦666年頃)と書かれた木簡が見つかったので、天武天皇前後の時代とみられているというから、日本人はそんなに昔からワサビを食してきたのかと感心するが、一般に普及して刺身にワサビが普通になったのは江戸時代の後半らしい。飛鳥時代から知られていたにしては、意外だった。2020年10月4日付け読売新聞書評欄。

  • 岐阜大応用生物学部の先生の書いた本。
    理系の人が書いたからか、簡潔でわかりやすかった。
    わさびは、別に普段気にしてなかったが、トリビア含め、切り口として面白かった。

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著者プロフィール

岐阜大学応用科学部准教授。専攻は栽培植物起源学。日本のワサビが中国大陸の類似種とは別種であることを示した論文で注目を集めた。ワサビ属植物の系統保存も行う。「全国わさび品評会」審査員。

「2020年 『わさびの日本史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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