政治無知が日本を滅ぼす

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  • ビジネス社
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  • Amazon.co.jp ・本 (301ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784828416502

感想・レビュー・書評

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  • 懐かしい小室節にハマって続けて読んでいます。
    もとは1983年刊行の新装版ですが、昨今の舛添都知事の騒動を見ていても、日本人の政治観・政治家観は30年以上前と何ら変わっていないことがよく分かります。つまり、この本はいま読んでも全く古びていません。
    ※ただ、語り口が(小室先生の著書の中では)やや堅いので、ほぼ似たテーマを扱った著書としては『日本いまだ近代国家に非ず』の方を先に読まれることをお勧め。

  • 「政治無知」とは?「政治倫理」とは?本書は著者が考える「政治倫理」を十二分に提示している。

     古代ローマ帝国の「ネロ」、古代ユダヤの「ヘロデ」、秦の始皇帝、隋の煬帝、唐の則天武后、直近の政治家ではヒトラー、彼らは後世の史家から評価される事はあまり無い。しかし、政治家として残した実績は名君の範疇であった事を、現存する各種史料を根拠にして指摘する。という筆致で本書の大半が費やされる。ここだけを読んでいるとあたかも「政治倫理」や「日本人の政治無知」についての本であることをも一時忘れ、悪評高い政治家を中心に据えた歴史物語を読んでいる感さえある。

     しかし、最終章にきて著者の言いたいことを総括した内容が、ここまで延々と悪評高い政治家の事績が記述されてきたことの真意が、明らかとなる。

     「政治指導者及び其の他の政治家の義務は、国民の安全と生活を保障し、国を繁栄させ、外敵から守ることにある。近代では、其の上、デモクラシーと国民の権利を守るにある。此の義務を忠実に果たす事、其れが政治倫理であり、其れに尽きる。」(p260から引用)

     本書で繰り返し述べられているが、『政治は結果がすべて』あとは方法論がルールに法っていれば、庶民の正義感や倫理観は関係ねえ! となるのである。これに反して日本人(具体的に言論で行動を起こすのはマスコミであるが)は儒教倫理よろしく、『庶民の倫理観』で政治家を斬ることが当然のように行われている。この点が所謂「政治無知」と表現している真意であろうと思う。著者の考え方を汲むと、政治家に限らず各種職業でその負っている役目を果たす為に必要な行為こそが「倫理」となるのである。庶民の倫理や正義感は「目的達成の為の正しい行為(各種職業倫理)」と正面衝突する場合も少なくないのである。

     これを生涯通じて、あるいは一時的にでも体現した政治家が冒頭に列記した悪評高い政治家である。ヒトラーの場合最後は破滅に向かったが、在任期間の前半はまさに名君ぶりを発揮している。

     「政治無知が日本を滅ぼす」これは、即ち”目的達成の為に必要なあらゆる手段と行為を実践する”優秀な政治家が、”庶民の倫理と正義”で壟断され追いやられる事による政治の劣化、ひいては国家の衰亡を引き起こすことを指摘しているのであろう。

     この著者の主張を無批判に受け入れる必要もないが、この視点で改めて『政治倫理』を再点検することは必要ではないでしょうか。蛇足ではあるが本書の歴史描写自体は時々首を傾げる記述が散見されます。30年前の著書という点も考慮が必要でしょうが、あくまで本書は「政治」についてが主であるので、そこは銘記しておきたい。また小室氏の著作は何冊か拝見させて頂いているが、本書もやはり主張・論点が明晰であることは特筆しておきたい。

  • ――――――――――――――――――――――――――――――
    「権力は腐敗する」「絶対権力は絶対に腐敗する」。

    是れは政治学の大定理だから、四十年も同一政党に政権を任せ切って置いて腐敗したと言って喚くのは、夏も真っ盛り、刺身を冷蔵庫にも入れずに放っぽり出しといて、「腐っちゃったア」と泣き喚く様なものだ。2
    ――――――――――――――――――――――――――――――
    運河伝いに、何処へでも行ける。

    では、其の必要性とは。

    イギリスでは、産業革命以前、既に資本制社会が成立していた。

    因果関係は逆で、資本制社会が成立したので、其の機能的要請から、産業革命が起こったのである。76

    アメリカの資本制経済が爛熟期を迎えようとしていた頃には、エジソンの様な発明家が続出した。77
    ――――――――――――――――――――――――――――――
    日本人は、昔から政治アレルギーであった事を証明している。268

    「日本人の儒教誤読」は、「現代日本人のデモクラシ-誤読」と比較すると、興味は尽きない。269
    ――――――――――――――――――――――――――――――
    浜田に政治的責任があるかどうか、政治家として適任かどうか、其れを窮極的に決めるのは、大平首相でもなく、ジャーナリズムでもなく、国会でもない。

    選挙に於ける投票である。是れぞ国民主権の発動である。

    国民主権の発動を妨げる事、デモクラシー国家の政治家として、是れより大きな罪はない。287

    近代デモクラシーに於いては、法的な最終的決定は裁判官にあり、政治的な最終決定は選挙民にある。そして、倫理的道徳的な最終決定は、自分自身にある。288
    ――――――――――――――――――――――――――――――
    角栄なんか及びもつかない悪党なんか幾らでもいた。代表格が頭山満。スーパーギャングで人殺しも平気。294

    こんな大悪党に斯くまで信望が集まる理由は、一片の私心もなかったからである。

    「君と国」との為で、少しも私する処がない。こうなると日本人はぐっとくる。

    明治以来の日本人の行動様式は下級武士のエトスとなったからである。296
    ――――――――――――――――――――――――――――――

  • 近代国家の政治倫理を理解せよ

  • 日本人の政治無知がマスコミに依って政治無知が拡大している。偉大な政治家の倫理と一般庶民の倫理感は違いその倫理観で律することは愚かである。

  • 秦の始皇帝、ローマ皇帝ネロ等の過去の偉大な人物から、その業績、政治手法等を紐解きます。
    読み物として面白さも兼ね備えています。

  • 「我々は今なお、焼け跡に建てた間に合わせのバラックに住んでいるのだ」
    http://www.amazon.co.jp/review/R2ZUVEVBKD5QXJ/ref=cm_cr_rdp_perm

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著者プロフィール

1932年、東京生まれ。京都大学理学部数学科卒。大阪大学大学院経済学研究科中退、東京大学大学院法学政治学研究科修了。マサチューセッツ工科大学、ミシガン大学、ハーバード大学に留学。1972年、東京大学から法学博士号を授与される。2010年没。著書は『ソビエト帝国の崩壊』『韓国の悲劇』『日本人のための経済原論』『日本人のための宗教原論』『戦争と国際法を知らない日本人へ』他多数。渡部昇一氏との共著に『自ら国を潰すのか』『封印の昭和史』がある。

「2023年 『「天皇」の原理』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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