「させていただく」の語用論—人はなぜ使いたくなるのか

著者 :
制作 : 小林真理(STARKA)(装丁・装画) 
  • ひつじ書房
3.42
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本棚登録 : 226
感想 : 12
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784823410567

作品紹介・あらすじ

「させていただく現象」の謎を解く。「させていただく」を言われて怒れる人がいる一方で、「させていただく」の氾濫はとどまるところを知らない。なぜ人は使いたくなり、何が違和感を生むのか? この問いに答えるべく、意識調査で許容と違和の境界を探り、コーパス調査で発話行為的観点から他の授受表現との勢力関係変化を探った。それらをゴフマン的枠組みから再解釈することで、授受表現に生じているシフトに対する洞察を得た。

感想・レビュー・書評

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  • 氾濫する「させていただきます」表現、言語学者が解説する“ここまで使われる理由” | 文春オンライン
    https://bunshun.jp/articles/-/44660

    「させていただく」の語用論 椎名美智著 ひつじ書房 | レビュー | Book Bang -ブックバン-
    https://www.bookbang.jp/review/article/675249

    人はなぜ「させていただく」に違和感をおぼえる? 言語学者が解き明かす“敬意のインフレーション”|Real Sound|リアルサウンド ブック
    https://realsound.jp/book/2021/03/post-719765.html

    「させていただく」の語用論 椎名 美智(著/文) - ひつじ書房 | 版元ドットコム
    https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784823410567

  • 言い切り型ではない「させていただく」、元々のポライトな意味が形骸化したくらいではそこまでぞわぞわしないけど、結局[必須性]が備わったからきもいんだろうな、と思った。おもしろかった!

    首都圏と近畿の人々との違和感の差異、調査結果が待たれるで終わってたけど早く知りたい笑

  • ふむ

  • 研究本なので調査部分は読み込めなかったが、敬語が使われるうちに敬意が減っていって語句が加わったり他の語彙に変わられるというのが、なるほど…という感じ。
    補遺のさせていただくの現状、たしかにこれは敬意が減っていくかも…と例文で納得。

  • 歴史社会語用論アプローチにより、巷に氾濫しつつ、違和感を覚えさせがちな「させていただく」に係る言語学的諸問題を徹底的に解明。
    言語学の研究書は初めて読んだが、専門用語が頻発する以外は言語の専門家だけあって明晰な文章で読みやすかった。「させていただく」の違和感の最大要因は「必須性」であるということや、「させていただく」は遠近両用のストラテジーを持つ「新丁重語」といえるものであるといった本書の研究内容も非常に興味深かった。
    敬語に込められた敬意は使うにつれて減少し、ついには敬意が感じられなくなるどころか、尊大に聞こえてしまう方向に変化を続けるという「敬意漸減の法則」は、本書を読んで初めて知ったが、言われてみれば確かに、と得心した。

  •  
    ── 椎名 美智《「させていただく」の語用論 ~ 人はなぜ使いたく
    なるのか20210128 ひつじ書房》小林 真理 (STARKA)。装丁・装画)
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/4823410564
     
    〔〕 引用させていただく(20210329 05:01)
     
    …… 「させていただく」だらけ、敬意のインフレをどう捉えるべきか
    http://a.msn.com/01/ja-jp/BB1f2Jgr?ocid=st
     
    …… 自分を誉めてあげたい(有森 裕子)── 1996 流行語大賞。
     |
    ── 今村 昌平・監督《黒い雨 19890513 東映洋画》三木 のり平・他
    http://www.enpitu.ne.jp/usr8/bin/day?id=87518&pg=20030415
     ↑わたしのブログ(初出)↓以後(約3000日)に出没する引用例数
    http://www.enpitu.ne.jp/usr8/bin/search?idst=87518&key=%A4%B5%A4%BB%A4%C6%A4%A4%A4%BF%A4%C0
     
    https://twitter.com/awalibrary/status/1376263304700600322
     
    〔〕 原文ママ表記
     
    …… 「させていただく」は敬意が盛り盛りの言葉。広がった背景を法
    政大学の椎名 美智教授に聞いた
     ビジネスの場で、あるいはテレビなどのメディアで、「させていただ
    く」という言葉を見聞きしない日はない。なぜ、「させていただく」は
    これほど使われるようになったのか?「させていただく」はそもそも、
    正しい敬語なのだろうか?敬語は人との距離を示す言葉であり、言葉は
    世を映す鏡である。「させていただく」を使うことで、私たちは何を得
    て、何を失っているのか──。「させていただく」ブームの背景につい
    て、『「させていただく」の語用論 人はなぜ使いたくなるのか』(ひ
    つじ書房)の著者である法政大学の椎名美智教授に話を聞いた。(NEWS
    ポストセブン)
     
     ※ ※ ※
     
    「禁止させていただく」「努力させていただく」になぜ違和感を覚える
    のか?
    ──「させていただく」の使用について、先生が違和感を覚えたり、こ
    れは間違っていると感じる使い方はありますか?
     
    椎名:どんな使われ方をしていても、間違っていると感じるより、分析
    して面白がる気持ちのほうが強いですね。こうした本(『「させていた
    だく」の語用論』)を出しているので、私の前で使うのを控える方もい
    らっしゃるのですが、決して『「させていただく」警察』ではありませ
    ん(笑)。言葉は生物(ナマモノ・いきもの)、変わっていくものです
    から、自分が習ったときの意味や用法にこだわっていると、言語感覚が
    古くなってしまうと思います。
     
     ただ、私だったら違う言い方をするだろうな、と思うことはあります。
    たとえば、駅などで見る、飲食を「禁止させていただく」などといった
    ポスターの文言です。決定権があるのはあちら側なのに、こちら側に決
    定権があるかのように書かれているので、偽善的な印象を受けます。
    「申し訳ありませんが、ここでは~できません」という表現でいいと思
    うんです。またツイッターで、菅総理が「最大限努力させていただきま
    す」と書かれていたのが、ちょっと気になりました。謙虚な表現ですが、
    「努力」は人に許可されてするものではなく、自発的に行うものなので、
    ここは「最大限努力します!」と言い切ってほしいですね。
     
    ──「させていただく」は現在、誰かに敬意を払うというより、使って
    おけば丁寧で問題ない、みたいな感じで使われるケースも多いように感
    じます。そもそも「させていただく」はどのような言葉なのでしょうか?
     
    椎名:分解すると、「させて」と、“もらう”の敬語である「いただく」
    から成る言葉です。意味を見ていくと、「させて」で、人から何らかの
    「許可」をもらい、「いただく」で、人から何らかの「恩恵」を受ける。
    つまり本来は、許可や恩恵をもらう「他者=あなた」を前提とした言葉
    です。「あなたの許可を得て、ありがたいことに~をいただく」という
    ことです。
     
     しかし現在では、ついに相手を必要としなくなったというか、他者が
    いなくても使われるようになってきています。同時に、本来は自発的に
    行う行為に対しても、「させていただく」が使われるようになっていま
    す。それが先ほど挙げた、「努力させていただく」ですね。もはやどん
    な動詞にも付けられる助動詞になっていますよね。
     
    ──はい。どんな動詞にも付けられるから便利で、つい使ってしまいま
    す。
     
    椎名:その便利さが、ここまで広がった要因の一つだと思います。たと
    えば「食べる」だと、尊敬語は「召し上がる」で、謙譲語は「いただく」
    。敬語には言葉自体が変わるものがありますが、「させていただく」は、
    前に付ける言葉を変える必要がなく、うしろに付けるだけでいいんです。
    主語が常に「私」である、という点も大きいと思いますね。
     
     敬意はすり減る、上げると下がり、下げると上がる
     
    ──「させていただく」はいつごろから使われるようになったのでしょ
    うか?
     
    椎名:さかのぼると、明治維新の頃から、「敬意のインフレーション」
    が起きてきたようなんです。社会の身分制度が表向きはなくなったこと
    で、相手がどういう立場の人なのか、わかりにくくなったんです。そこ
    で、失礼のないようにと、敬語がたくさん使われるようになりました。
    敬語は、相手との距離や上下関係を調整する言葉だからです。19世紀後
    半には「させていただく」が誕生しています。「させて(許可)」に
    「いただく(恩恵)」が付いて、身分社会でなくなるにつれて、敬意が
    盛り盛りになっていくわけです。それが20世紀末くらいから使用が増加
    し、今、大ブレイクしているという感じです。
     
    ──「させていただく」と似た意味の敬語に、「いたします」(自分が
    へりくだる丁重語)がありますが、あまり使われなくなったと書かれて
    います。なぜでしょうか?
     
    椎名:背景には、どんな敬語でも、使われていくうちにどんどん敬意が
    減っていってしまうという「敬意漸減(ぜんげん)の法則」があります。
    みんなが使っているうちに聞きなれて、敬意がすり減っていくんです。
    「いたします」は、自分に焦点が当たって、だんだん自己が尊大化して、
    「偉そうに聞こえる」「上から目線的」という感じになり、使われなく
    なりました。「さしあげる」も恩着せがましい感じになってきて、使わ
    れなくなりましたね。
     
     敬語は相手を上げたり自分を下げたりして、相対的な上下関係をつく
    る言葉ですが、使われているうちに、この相対的な「上・下」が変化し
    ていくんです。「お前」「貴様」という言葉は、漢字を見るとわかるよ
    うに、もともとは相手を敬う意味だったのに、今は見下すときにしか使
    いませんよね。これは上にあげていたものが下がってきたということで
    す。反対に「いたします」は、自分を下げていた言葉なのに、上がって
    きてしまった。こうやって言葉は変化していくわけです。面白いですよ
    ね。
     
    ──ということは、「させていだだく」も敬意が減っていって、いつか
    使われなくなるのでしょうか?
     
    椎名:その兆候はすでに出ていると思いますよ。あるお役所の会議に出
    席したら、「させていただいてございます」と言っている人がいました。
    SNSを見ると「させていただきますね」と、共感の「ね」を付ける使い
    方が多いんです。「させていただきます」と言い切ると、一方的で冷た
    い感じ、あるいはぶっきらぼうで取り付く島がない感じがするのかもし
    れません。「させていただく」だけでは敬意が足りないとみんなが薄々
    感じているのでしょうね。ここまでくると、「敬意のインフレーション」
    を通り越して「敬意のナルシシズム」、ことによると「敬意のマスター
    ベーション」とでもいったほうがいいくらいです。それだけ現代人は、
    自分が丁寧であることを示したいと思っているし、対人配慮に心を砕い
    ているということだと思いますね。
     
     なぜそんなにも丁寧であろうとするのか?
     
    ──対人配慮に心を砕いて使われる「させていただく」ですが、その特
    徴として、主語が「私」であるという指摘がありました。「させてくだ
    さる」など、主語が「あなた(他者)」である敬語は使われなくなり、
    もっぱら主語は「私」になりつつある。そこに先生は、他者から離れよ
    うとするコミュニケーションのあり方を見ています。
     
    椎名:「させてくださる」と「させていただく」は、同じ文脈で使える
    場合が多いのですが、異なるのは、「くださる」は「あなたがくださる」
    と使い、「いただく」は「私がいただく」と使う。つまり、主語が違う
    んです。
     
     私が小さいころは「くださる」が丁寧だとされていましたが、今は、
    「(あなたが主語の)くださる」より、「(私が主語の)いただく」の
    ほうが丁寧だと、人が感じるようになっています。「あなた」から距離
    をとるほうが、丁寧だと感じるようになってきたのでしょうかね。
     
     とはいえ、先ほど述べたように、「させていただく」は本来、相手か
    らの許可や恩恵を前提とする言葉ですから、「私」を主語にしながらも、
    「あなたに配慮しています」とか、「あなたを認知しています」、とい
    うメッセージも同時に送っているわけです。
     
    ──「させていただく」は、あなたに触れることなく(遠隔化)、あな
    たとのつながりを創出(近接化)する言葉であると本に書かれていて、
    面白いなと思いました。
     
    椎名:そうやって遠近の距離感を調節しているという点で、絶妙な言葉
    だと思います。「させていただく」は、失礼のないように遠いところか
    ら、でも相手に手を伸ばしているようなイメージの言葉だといえますよ
    ね。
     
    ──「させていただく」の流行から、他者と直接つながったり、直接的
    な接触を回避する方向に向かっていることに懸念を示されています。
     
    椎名:「させていただく」を使いすぎると、その人の「顔」が見えにく
    くなります。今、「させていただく」は「私は丁寧でちゃんとした人で
    す」ということを示すマーカーのようになっていて、皆がマーカーを掲
    げて、安全な「させていただく」シェルターの中に入ってしまう。喋っ
    ている人の顔が見えなくなるくらい奥深く入り込んでいるように感じま
    すね。
     
    ──なぜそんなにちゃんとした人であろう、丁寧であろうとするのでしょ
    うか?
     
    椎名:学生たちと接していると、人に優しく、配慮が行き届いている一
    方で、人を傷つけること、怒られることを恐れる傾向が強いなと感じま
    す。傷つけたり傷つくのが怖い、だから丁寧にしていようってことでは
    ないでしょうかね。
     
     SMAPの「解散させていただきます」と、V6の「解散します」
     
    ──「させていただく」の流行には、SNSなど、不特定多数とつながろ
    うとするコミュニケーションの影響もあるように感じます。誰が読んで
    いるかわからないから丁寧であろうとする。叩かれたり炎上しやすくも
    なっています。
     
    椎名:それも大いにあると思います。そもそも人が敬語を使うようになっ
    た背景には、身分社会から近代化が進み、都市化、匿名化が進む中で、
    誰かわからない相手に失礼のないようにしたいという欲求があったから
    です。SNSなど、誰が見ているかわからないコミュニケーションが広がっ
    て、失礼のないようにしたいという意識は高まっているのかもしれませ
    んね。たくさんの人とつながりたい一方で、炎上して抹殺されたくない、
    という恐怖にもさらされていますよね。
     
    ──ただ、あまり使うと、顔が見えなくなると。
     
    椎名:そうですね。顔を見せるというのは、本人の意思や責任を示すと
    いうことです。とくに「させていただく」を、自分が主体的に行う動詞
    に使うと、誰の許可を求めているの?と聞きたくなります。たとえば芸
    能人の「結婚させていただきます」や「交際させていただいております」
    は、謙遜や周囲への配慮を表現していることはわかるのですが、勝手に
    やってください、とツッコミを入れたくなります(笑)。SMAPが解散し
    たときの「解散させていただきます」にも、それを感じました。「解散」
    は、強い意思をもって行う行為ですから、「解散します」と言えばいい
    のにと思ったのですが、そのように言えない事情があるのかなと勘ぐっ
    てしまいました。そういえば、V6は「解散します」と書いていましたね。
    そういう違いには、微妙なニュアンスが感じられます。
     
    ──「させていただきます」を乱発すると、慇懃無礼な印象を与えるこ
    ともあるように感じます。上手な使い方はありますか?
     
    椎名:以前、国分太一さんが出演されている料理番組を見ていたら、国
    分さんは最初からずっと丁寧な言葉を使っているのですが、料理が完成
    して、味見をしたときに一言、「うま~い!」と言ったんです。これが、
    うまいなあと(笑)。その後はまた、丁寧な言葉に戻るんですよね。こ
    うやって、タイミングよく敬語を外せる人ってすごいなあと思いますね。
    日頃は「させていただく」シェルターの中にいる人も、たまに「顔」を
    見せると意思が伝わって、人との距離がぐっと縮まると思いますよ。
     
    ──先生は、電車で女子高校生の言葉に聞き耳を立てるのが趣味なのだ
    とか。最近、気になる言葉はありますか?
     
    椎名:個人的な思い込みですけど、新しい言葉を使い始めるのは女子高
    校生なんです。今はコロナで、なかなか観察ができませんけどね。すこ
    し古いんですが、「ぴえん」「ぱおん」は可愛い言葉だなと思いました
    ね。これらは男女とも使っていて、ジェンダーフリーで使えていいなと
    思います。誰しも、自分の弱みを出してもっと本音で話せばいいのにと
    思っているので、こういう感嘆詞は大歓迎です。「させていただく」も、
    いつか新しい言葉にとってかわられると思うので、どういう言葉が出て
    くるのか、楽しみです。(内海 裕之・撮影)
     
    ♀椎名 美智(しいな・みち)19‥‥ 宮崎 /法政大学英文学科教授。
    /お茶の水女子大学卒業。エジンバラ大学大学院修士課程修了。
    (お茶の水女子大学大学院博士課程満期退学)ランカスター大学大学院
    博士課程修了(Ph.D)。放送大学大学院博士課程修了(博士(学術)。
    ── 共著《英語のスタイル 2017 研究社》
    ── 監訳《J.カルペパー、M.ホー《新しい語用論の世界 2020 研究社》
     
    (20210329)
     

    • shintaro20000101さん
      引用を越えた著作権侵害のレベルの紹介
      引用を越えた著作権侵害のレベルの紹介
      2021/04/19
  • 【書誌情報】
    『「させていただく」 の語用論――人はなぜ使いたくなるのか』
    著者:椎名 美智(しいな・みち)
    装丁・装画:小林 真理(STARKA)
    版型:A5判 上製 カバー装 
    定価:3,600円+税 
    頁数:304頁
    ISBN 978-4-8234-1056-7
    ひつじ書房
    [https://www.hituzi.co.jp/hituzibooks/ISBN978-4-8234-1056-7.htm]

    【目次】
    はじめに [iii-v]
    目次 [vii-xii]

    第1章 イントロダクション 「させていただく」という問題系と歴史社会語用論的アプローチ
    1.1. はじめに:歴史社会語用論的アプローチ
    1.2. ベネファクティブ体系の成立
    1.3. 本書の構成


    第2章 先行研究のレビューと分析の方向性 「させていただく」の問題系とは何か?
    2.1. はじめに
    2.2. 本動詞としての授受動詞の先行研究
      2.2.1. 授受動詞における視点の問題に関する先行研究
        2.2.1.1. 久野暲(1978)
      2.2.2. 対照方言学的視点からの授受動詞の先行研究
        2.2.2.1. 日高水穂(2007)
    2.3. 現代日本語におけるベネファクティブの先行研究
      2.3.1. 構文分析的・統語論的ベネファクティブ研究
        2.3.1.1. 益岡隆志(2001)
        2.3.1.2. 高見健一・加藤鉱三(2003a〜f)
        2.3.1.3. 由井紀久子(1990, 1993, 1996)
    2.4. 古典日本語におけるベネファクティブの先行研究
      2.4.1 歴史社会語用論的ベネファクティブの研究
        2.4.1.1. 宮地裕(1965, 1975, 1981)
        2.4.1.2. 森勇太(2014, 2016)
        2.4.1.3. 古川俊雄(1995, 1996a, 1996b, 1997)
        2.4.1.4. 荻野千砂子(2006, 2007, 2008, 2009)
        2.4.1.5. 山口響史(2015, 2016)
    2.5. 現代日本語における「させていただく」の先行研究
      2.5.1. 規範文法的「させていただく」の研究
        2.5.1.1. 文化審議会答申『敬語の指針』(2007)
        2.5.1.2. 菊地康人(1997a, 1997b, 2010)
        2.5.1.3. 井口裕子(1995)、東泉裕子(2010)
        2.5.1.4. 宇都宮陽子(2005, 2006)
      2.5.2. 意味論的・統語論的・構文分析的「させていただく」の研究
        2.5.2.1. 山田敏弘(2004)
        2.5.2.2. 金澤裕之(2007)
        2.5.2.3. 上原由美子(2007)
        2.5.2.4. 豊田豊子(1974)
      2.5.3. 社会言語学的・敬語史的「させていただく」の研究
        2.5.3.1. 井上史雄(1999, 2017a, 2017b)
        2.5.3.2. 山口真里子(2008)
      2.5.4. 語用論的「させていただく」の研究
        2.5.4.1. 原田登美(2006, 2007)
        2.5.4.2. 米澤昌子(2001a, 2001b, 2012, 2013, 2014)
        2.5.4.3. 茜八重子(2002, 2003)
        2.5.4.4. 熊田道子(2000, 2001)
        2.5.4.5. 伊藤博美(2010, 2011)
        2.5.4.6. 李譞珍(2015, 2018)
        2.5.4.7. 塩田雄大(2016)、塩田雄大・山下洋子(2013)、滝島雅子・山下洋子(2017)
      2.5.5. ポライトネス理論的「させていただく」の研究
        2.5.5.1. 橋元良明(2001)
        2.5.5.2. 滝浦真人(2008a, 2016, 2018a, 2018b)
    2.6. 先行研究のまとめ
    2.7. 「させていただく」という問題系とは何か?
     —3つのリサーチ・クエスチョン


    第3章 質問紙による意識調査
     「させていただく」の「文法化」と「新丁重語」の誕生

    3.1. はじめに
    3.2. 調査デザインと調査概要
      3.2.1. 2つの仮説
      3.2.2. 内的要因:[使役性][恩恵性][必須性]
      3.2.3. ‘Benefactive English’
      3.2.4. 外的要因:「回答者属性」「会話的役割」「言語意識」
      3.2.5. 本調査における従属変数と独立変数
      3.2.6. 調査文例とその素性について
      3.2.7. 調査概要
    3.3. 分析方法:決定木分析の有効性
    3.4. 「させていただく」の調査結果
      3.4.1. 回帰木からわかること
      3.4.2. 内的要因
      3.4.3. 外的要因
      3.4.4. 「させていただく」の使用目的
    3.5. 調査結果からの考察
      3.5.1. 恩恵性について
      3.5.2. 使役性について
      3.5.3. 調査参加者の偏りによる交絡要因
        3.5.3.1. 首都圏の人々の「違和感」の値
        3.5.3.2. 上下関係の問題
        3.5.3.3. 年齢層と特定の大学との関係
      3.5.4. 「話し手」と「聞き手」の立場について
      3.5.5. ポライトネス意識について
      3.5.6. 「させていただく」における「恩(恵)」とは何か?
    3.6. 「させていただく」についての意識調査結果からの考察
    3.7. まとめ


    第4章 「させていただく」の前接部と後接部 2つのコーパス・データの調査結果
    4.1. はじめに
    4.2. 2つのコーパスの概要
      4.2.1. BCCWJの概要
      4.2.2. 青空文庫の概要:コーパスとしての条件
      4.2.3. コーパス・データの整備
      4.2.4. コーパス調査の手順
    4.3. コーパスの分析結果
      4.3.1. 2つのコーパスにおける4つのベネファクティブの使用分布
      4.3.2. 4つのベネファクティブの前接部:サ変動詞との共起状況
      4.3.3. 4つのベネファクティブの前接動詞の分布状況
        4.3.3.1. BBコーパスにおける4つのベネファクティブの前接動詞の調査結果
        4.3.3.2. Aコーパスにおける4つのベネファクティブの前接動詞の調査結果
        4.3.3.3. 2つのコーパスにおける前接部の比較調査
        4.3.3.4. 2つのコーパスにおけるベネファクティブの使用状況の比較調査
        4.3.3.5. 「させていただく」の前接動詞句をめぐるA/BBコーパスの比較
        4.3.3.6. 2つのコーパスにおける「させていただく」と共起する動詞の種類
        4.3.3.7. BBコーパスにおける「させていただく」「させてくださる」の前接動詞の比較
        4.3.3.8. 前接動詞調査のまとめと考察
      4.3.4. 4つのベネファクティブの後接部の分布状況
        4.3.4.1. 2つのコーパスにおける「させていただく」の後接部の形式
        4.3.4.2. 2つのコーパスにおける「させてくださる」の後接部の形式
        4.3.4.3. 2つのコーパスにおける「させてもらう」の後接部の形式
        4.3.4.4. 2つのコーパスにおける「させてくれる」の後接部の形式
    4.4 コーパス調査から得られた洞察


    第5章 2つの調査結果の考察 ベネファクティブ「させていただく」使用拡大の要因と影響
    5.1. はじめに
    5.2. 2つの調査結果のまとめ
      5.2.1. 質問紙による意識調査のまとめ
      5.2.2. コーパス調査のまとめ
    5.3. 結語:「させていただく」という問題系への解
    5.4. 総括:ゴフマンの概念から見た敬意漸減のメカニズム
    5.5. (補遺)「させていただく」の今


    おわりに(2020年12月吉日 コロナ禍の終息を祈りつつ 椎名美智) [233-238]
    参考文献 [239-255]
    付録 [257-283]
    索引 [285-289]

  • 「させていただく」だけで1冊の本が出来上がることに驚く。
    筆者が長年研究している英語学の歴史社会語用語研究で培った方法論を用いてまとめられている由だが、あらゆる角度からの仮説検証に加え、他者の研究成果の引用などを駆使し、論理的かつ判りやすくまとめられている。

    第5章「2つの調査結果の考察」における5.3結語:「させていただく」という問題系への解で導きださされる結論にはなるほどと唸った。
    「させてくださる」から「させていただく」への変化の要因(第4章)と「させていただく」を使うことでの相手との距離感への変化に加え、「させていただく」は自分がへりくだっているという謙譲の感覚で使われており、「させていたただく」を新しい敬語であり「新丁重語」と名付けている。

    確かに、自分が「させていただく」を使うようになったのは、ビジネスの現場で社外の人に対するメール文面で粗相がないようにとへりくだって丁寧語を使わねばと思って書き出した記憶がある。

    この本を読んでいる最中に日本のメガバンクのwebサイトを見る機会があったが、「させていただく」の連発で思わず苦笑してしまった。

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著者プロフィール

1956年生。ランカスター大学大学院博士課程修了(Ph. D.)。法政大学文学部教授。言語学。『歴史語用論の世界―文法化・待遇表現・発話行為』(共編、ひつじ書房、2014年)、『歴史語用論入門―過去のコミュニケーションを復元する』(共編、大修館書店、2011年)。

「2015年 『目に見えるものの署名』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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