オタク経済圏創世記 GAFAの次は2.5次元コミュニティが世界の主役になる件

著者 :
  • 日経BP
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784822289980

作品紹介・あらすじ

日本のオタク文化商品は、いかにして世界的なブルーオーシャンとなり、成長を続けているのか。
「オタク経済圏」のキープレイヤーの戦略を解き明かし、5G時代のビジネスのヒントを提示する一冊。

<以下、序章より>
事件は2019年4月6日におきた。おそらくは歴史上はじめて、純日本のコンテンツ、それもプロレス団体がマディソン・スクエア・ガーデン(MSG)の会場を満員にしたのである。
(中略)
これをプロレスのようなマイナー競技の、一興行の事件として片づけてはいけない。なぜなら、このプロレスの北米展開を仕掛けている新日本プロレスは、親会社としてカードゲーム・モバイルゲーム・アニメ・音楽のキャラクターコンテンツを展開するブシロードを持ち、その展開は明確な戦略をもって行われたものであるからだ。キャラクターメーカーによるプロレス展開――一見無関係にもみえるこの組み合わせには、れっきとした物語があり、その物語こそは日本企業の海外展開を成功に導くカギを握っている。
(中略)
「ポケモン」も、「ドラゴンボール」も、「新日本プロレス」も、本書が事例として挙げ、米国で市場を築いた超日本的なオタク文化商品は、デジタルの力を借りてコンテンツをライブコンテンツ化し、「オタク経済圏」を構築することに成功した。2次元のアニメやゲーム、3次元のタレント・イベントなどの複数のメディアミックスチャネルを同時多発的に巻き込むことで、2.5次元の価値体験を創造する。コンテンツが静的なパッケージではなく、動的なサービスに、供給の仕方も消費のされ方も変化しているのが今という時代なのである。

感想・レビュー・書評

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  • ブクログのタイムラインで見かけ、気になったので購入。

    ポップなサブカル本かと思いきや、内容はとても体系的。アニメ・ゲーム・プロレス(?!)がたどってきた歴史を解説し、その可能性と海外への展開について語る。最後には、日本的経営に関する筆者の見解が述べられる。

    筆者の中山淳雄さんは現在、ブシロードの役員を勤める。海外展開のためにカナダに赴任もしていた。なるほど。知識と経験を兼ね備えた語り口には納得感がある。

    非常に学びの多い一冊だった。日本発のポップカルチャーのパワーを再認識できる一冊。

    (詳細は書評ブログの方でどうぞ)
    https://www.everyday-book-reviews.com/entry/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E7%99%BA%E3%83%9D%E3%83%83%E3%83%97%E3%82%AB%E3%83%AB%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%BC%E3%81%AE%E4%BD%93%E7%B3%BB%E6%9B%B8_%E3%82%AA%E3%82%BF%E3%82%AF%E7%B5%8C%E6%B8%88%E5%9C%8F%E5%89%B5

  • この本から
    「今の時代に必要なコンテンツの生み出し方、広げ方」
    を学んだ

    1. 複数のメディアミックスを持つ
     -趣味嗜好が分散された社会で同時代性を演出するには複数のプラットフォームを活用し、消費者とコミュニケーションすること
    ◎ポケモンはこれが上手いからキャラクターコンテンツで最も市場規模がデカい
     -流行を維持し続けることは難しいゆえにコンテンツを様々な角度で提供し続け、忘れない存在になる
    ◎ポケモンは流行ってはないが、未だに売れ続けている

    2. 愛着が湧く設計(ストーリー、余白)
     -ストーリーを生み出し、愛される
    ◎鬼滅の刃の鬼達が愛される理由
     -余白を生み出し、ユーザーをインタラクティブに介在させる
    ◎ゲームがアップデート式になった理由
    -物語の体験がその瞬間のみで消化しきれず、追加で深く味わう残余行動
    ◎君の名はのヒット理由(複数回見に行く、聖地巡礼)

    3. コミュニティ形成
     -モノ消費からコミュニティ消費へ
    └他人と感情を共有したい、他人を応援したい
    ◎AKBのCD握手券販売のヒット要因

    【NA】

    ・多方面のチャネルを活用し、プロモーションする
    └twitter, note, youtube, stand.fm, イベントなど
    ◎キンコン西野はこれができている

    ・余白をさらけ出せる人になる
    └自分の弱みを愛する、弱みを開示する
    ◎あえてアプローチ法を言わないでおくのが体験価値を生むのでは??言わないでおこう。

    ・自分のストーリーをさりげなく語る
    └キャリア支援を行ってる理由、自分の意思決定の背景、将来像

    ・完璧な価値提供をし切らない
    └相手に課題を残す、自身の全部を開示しきらない


  • 説得力のある歴史説明と、文を説明するのに分かりやすい統計。オタクではないけど80年代にアニメを沢山見て育った私。久しぶりに読み応えがある面白い本だった。

  • サブカルチャー、オタクカルチャーと言われる超日本的な文化商品が海外に受け入れられたのは、単純にインターネットの普及によるデジタル化が要因だろうと思っていたのだが、背景には緻密なプランニングがあったという。
    10年ほど前にはオワコンとも言われたプロレスが今北米でも人気となっていたり、バンドリの成功事例などが語られている。
    アメリカで生まれたアニメーション映画が、日本では独自のアニメとして発展した項目も紹介されていたのだが、その部分は江戸時代の浮世絵の分業体制と基本は同じではないかと感じてしまった。結局は日本人の基質って昔から変わってないのかなと。

  • マンガ、アニメ、ゲーム、そしてそこにプロレスを加えた「オタク」文化ビジネスが体系的にまとめられた良書。

    低賃金長時間労働が常態化することになる、算盤を欠いた利益度外視の作品量産体制となった理由から、パッケージ、グッズ販売、そしてライブコンテンツ化による2.5次元の体験価値の創造と、現在の世界レベルでのオタク経済圏が拡大している流れと業界の構造がとてもよく理解できた。

    そしてサブカルチャーがマスカルチャーとなった過程は、縮小している日本の他の業界へのヒントが詰まっている。

  • ライブ化とメディアミックスによりコンテンツを常に生かして接触させることの重要性はわかった。日本企業のゆるい協業的・ジェネラリスト中間管理職による現場からのボトムアップマネジメントが武士の歴史を発端としているという分析が面白かった。なかなか変わらんし馴染まないのはそういうところがあるなと。ただ結局海外に展開していくにあたるベストプラクティスはあまり分からず。キャラものではない物語性の強い作品も増えてきてると思うが、その場合はどうするのかな〜とか

  • FBのGフレンドからの紹介で読む。背景や目的なく。

    コンテンツビジネス(特にキャラクタービジネス)のお話。
    クールジャパンの根幹のアニメを中心とした。

    <漫画→アニメ の、当初のビジネスモデル>
    当初の漫画のビジネスモデルは、
    雑誌で試して、単行本で回収するビジネスモデル。
    雑誌連載時は、薄利。
    漫画文化を支えているのは、現場のブラック職場。
    (アマのアシスタントなどが支えている)
    漫画大国タイル所以の一つ。
    たくさんの漫画が切磋琢磨することで、レベルが高まる。

    (アメリカなどのように、規制が入ったり、
    (アメリカでは。、漫画表現に規制hが入り、社会的に正しい模範になるテーマしかできない(スーパーマンとか、ヒーローもの。)→ ユーザーが離れる
    → 賭博から、やくざ者なと、非常の幅広い作品が展開される。
    大手による合併が続くということも画一化→競争がなくなるとったことで、レベルの向上にはつながらなかった。
    (WWWEとプロレスの関係性においても)
    (日本語という言語の独自性が、その環境を育てたのかもしれない。ガラパゴスの恩恵の一つ)

    雑誌→単行本というビジネスモデルから、
    単行本→アニメ→メディアミックスというモデルへ
    転換せざるを得なかった。
    (アニメでは利益が出ないので)

    アニメ委員会方式(テレビ、広告代理店、映像、音楽玩具などが出資する)
    テレビの深夜枠+ビデオレコーダー
    (CMでペイするというモデルではなく、その後の著作権ビジネスで儲けるモデルへ)

    メガヒットアニメ、大人向け、ホームビデオという3つで、アニメ産業の変革。

    その後、
    ・深夜アニメ、BS,CSなど枠の拡大
    ・アニメ委員会というファイナンス手法
    ・ビデオ、など、OVAなどマネタイズ方法が多様化
    することで、ビジネスモデルが進化。

    動画配信によって、世界展開へ
    15000億 市場だったが、海外だけで10000億に。

    <ゲーム→キャラクタービジネス:任天堂→ポケモン>
    2010年までは、日本のゲーム会社トップ6社が、
    ゲーム業界の利益を独占してきた。
    2010年ごろから、中国をはじめとする海外勢に、浸食された。
    ドラクエ
    漫画とゲームを組み合わせた(ジャンプ放送局、鳥嶋編集長、鳥山明)新しいモデル。

    漫画では、メディアミックスの起点になるのは難しい。
    (決まっていないことが多すぎる)
    拝啓、声、音楽、など情報密度が不十分。
    なので、アニメ化は、「その世界を取り巻く情報を固める良い機会」なので、ライセンスのハブとなりえる。

    ポケモン:
    ゲーム→TGC(任天堂にはノウハウがないので、外注)
    ゲーム会社は、ゲームで儲けるノウハウ。
    小学館というrライセンシングビジネスにたけた会社がいたからこその展開。
    1業種1企業
    → 70社に ゲームを出すのは数年に一回。その間もブーム、キャラクターの鮮度を保つために、とても重要。

    パッケージメディアの衰退。
    ゲーム・アニメ関連のコンテンツビジネスは、伸長している。
    ほとんどが、携帯コンテンツ消費。
    携帯によって、隙間時間を制した。
    次の駅までとか、数分を蓄積することで新しい時間を創出した。

    にほんは特殊CDの売り上げが、そこまで落ちていない。
    AKB商法のおかげ。
    応援するという動機付け。

    サブカル→メインカルチャ
    サブカルのほうが、顧客単価が高い。
    アナ雪は、1600万ぐらいいるが、市場規模は50億程度
    一方、ラブライブなどは300万人ぐらいいるが、439憶

    テレビのライブ感を支えるコンテンつとしてのスポーツ。

    世界のどこにもないからグローバル化できる
    コンテンツを生み出すプラットフォームの変遷

    日本的コンテクスト
    日本的経営、非効率的な経営がもたらす、豊富な中小企業群の切磋琢磨から、
    優れた製品が結果として生まれてくる。
    欧米のように、すぐに合併してしまわない、ことは、生産性の低さにつながるが、
    そこで製品力が高まる。
    伝統的企業が変われるのも日本的特徴。

  • ライブコンテンツの高い効果と粘着性担保、2.5次元を狙う、メディアミックス、サブカルからの発展、キャラクター経済圏のことなど学べた。

  • アニメやゲーム、プロレスなど今や世界にまで浸透していています。この本では、マーケティング分野の視点から、どのようにして、現在に至っているのか、どんな動きがあったのか、今後どのように発展いていくのか語られています。主にアニメを中心として、語られていますが、プロレスも少々分析しています。
    時折、経済用語のような難しい言葉が出てくるので、ビジネスマン向けかと思います。
    最近は、アニメやゲームを見る機会は、昔よりも少なくなりましたが、今や想像もしなかったところまで広がっています。この本など一歩引いたところから分析してみると、裏側では、こんな動きがあったんだと思い知らされました。
    こうして知ってみると、純粋にアニメを楽しめないなと思っちゃいました。
    子供の頃は、アニメを見て、DVDやキャラクターのグッズを買って楽しんでいました。しかし大人になって、このようなお金の動きを知ることにより、やはり「ビジネス」なんだなと改めて思いました。
    漫画やアニメから始まり、グッズや舞台、CD、世界へと発展していく。その裏側で、数多くのお金や人々が動いています。日本が誇るサブカルチャーは、今後どんな更なる発展になるのか楽しみになりました。

  • 例えば、漫画『チェンソーマン』のアニメ化の様子を見ていると、OP映像で小ネタを散らし、洋画とリンクさせて海外ファンの好奇心をくすぐり、妥協のない作画と週替わりのEDで話題性MAX、以後クロスメディア戦略で影響範囲を最大化するなど、この本に書かれているブシロードのレッスンはすでにデフォルトになっているようだ。入念に練り込まれた仕掛けによるコンテンツ全体の消費。勝つ経営には明確な理由がある。

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著者プロフィール

ブシロード執行役員、早稲田大学ビジネススクール非常勤講師、シンガポール南洋工科大学非常勤講師1980年栃木県生まれ。東京大学大学院修了(社会学専攻)。カナダのMcGill大学MBA修了。リクルートスタッフィング、DeNA、デロイトトーマツコンサルティングを経て、バンダイナムコスタジオでバンクーバー、マレーシアにて新規事業会社を立ち上げる。2016年からブシロードインターナショナル社長としてシンガポールに駐在し、日本コンテンツ(カードゲーム、アニメ、モバイルゲーム、イベント、プロレス)を海外展開。著書に『ソーシャルゲームだけがなぜ儲かるのか』(PHPビジネス新書)、『ヒットの法則が変わった いいモノを作っても、なぜ売れない? 』(PHPビジネス新書)、『ボランティア社会の誕生』(三重大学出版会、日本修士論文賞受賞作)がある。

「2019年 『オタク経済圏創世記 GAFAの次は2.5次元コミュニティが世界の主役になる件』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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