経営学者の読み方 あなたの会社が理不尽な理由

著者 :
  • 日経BP
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  • Amazon.co.jp ・本 (472ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784822279462

作品紹介・あらすじ

16本の「論文」と12冊の「本」を
ビジネススクール教授と読んで「気づく力」を鍛える

「うちの会社の会議では、何億円もの失敗や投資より、お茶菓子代やタクシー代の議論に時間をかけるのはなぜだろう?」
「うちの上司は部下に言うことと自分でやっていることが全然違う。なんて理不尽な会社なんだ」――。
経済合理性を追及するはずの会社で、このような理不尽なことが起きるのはなぜでしょうか?
この疑問に、ビジネス書から小説まで幅広いジャンルの書籍と、経営学の必読論文を取り上げ、経営学者の視点で分かりやすくこたえていくのが本書です。
本書では、誰もが手に取ったことのある本や、MBAの学生なら誰もが読む論文を取り上げていますが、単なる読書案内や論文解説ではありません。
例えば小説を経営学者の視点で読み、現実の経営課題に役立つヒントを探っていきます。
本書で著者が指摘するのは、経営課題を前に、何か「よさそうな答え」を求めようとする発想が、かえって組織の停滞を招いているということです。
「MBAは役に立つのか?」「経営学は実際の経営に本当に役立つのか?」という問いかけにも、こういった「答え」を求める発想が根底にあると言います。
企業をはじめとした組織が先へ進み、成長し続けるためには、「答え」より先に、現実の課題をきちんと認識することが重要で、
言い換えれば「へんだぞ」に気づく「視点」を持つことがイノベーションの根源だと、筆者は強調します。
経営学の視点で本を読み、目の前にある仕事の課題を見つめ直す訓練をすることで、これまで見えなかった経営の「気づき」が得られます。
本書は、組織のリーダーはじめ、ビジネスパーソン全般にとって、課題解決のために必要な「気づく力」を鍛えるための必読書です。

感想・レビュー・書評

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  • いまマネージメントの立場にいる人、会社組織に疑問を感じながらその理由をうまく言葉にできないでいる人にとって、考えを整理するきっかけになる、整理の方向が見えて来る著書。手にとってよかった、肉になったと感じる著書でした。

  • 会社に限らず、何らかの組織にかかわると必ずといっていいほど出会う「なんでこうなの?」という疑問の数々。
    それらに対して、様々な書物や論文と著者の経験を交えて、論点を提示してくれる一冊。

    各トピックに対して、読者が自分で考え行動するための素材やその探し場所を紹介する構成になっている。
    自己啓発本などのように“答え”を教えてくれるわけではないため、それを期待して読むことはおすすめしない。
    自分の関わる組織の課題に関して着想を得たり、そのためのレファレンス集として使ったりするのに有用と思われる。

    なお、すでにこの世にある論点の紹介となるため、それらを知っているor気づいている人にとっては、気づきを得るというより自分の考え方を補強するものとなるだろう。

  • 本から教訓を引き出す本。厚くてよい。

    【書誌情報】
    発行元:日経BP社
    発行日:2016年5月23日
    ISBN:9784822279462
    ページ数:472
    サイズ:四六変
    著者:清水 勝彦
    装幀:水戸部 功
    定価:1,980円
    https://shop.nikkeibp.co.jp/front/commodity/0000/250830/


    【簡易目次】
    まえがき(2016年4月 清水勝彦) [003-007]
    目次 [008-014]


    ◆第1部 書籍篇 015
    第1章 なぜわが社は「何億円もの失敗」より「タクシー代」にうるさいのか? 017
    ――『パーキンソンの法則』C.N.パーキンソン著 

    第2章 攻撃は最大の防御 033
    ――『Yコンビネーター』ランダル・ストロス著

    第3章 「満足度調査で5点満点中4・5点」ではイマイチな理由 053
    ――『データはウソをつく』谷岡一郎著

    第4章 人材教育における「教」と「育」の本質的違い 069
    ――『ものづくり道』『石橋を叩けば渡れない』西堀榮三郎著

    第5章 部下を「指導」してつぶしていないか? 097
    ――『心理療法序説』『カウンセリングを語る』河合隼雄著

    第6章 40年前に語られた日本のグローバル化の課題 121
    ――『適応の条件』中根千枝著

    第7章 リーダーシップは自分の中にしかない 147
    ――『リーダーは自然体』増田弥生/金井壽宏共著

    第8章 「自分で気づく」から自分を変えられる 165
    ――『負けかたの極意』『そなえ』野村克也著


    ◆第2部 論文篇 189

    第1章 あなたの会社が理不尽な理由――組織の不合理さを説明する「制度派理論」 191

    第2章 「正しい」からではなく「interesting」だから心に残る――大学教授必読の論文「That's Interesting!」 213

    第3章 「戦略バカ」で日本に負けた欧米企業 ―― MBAの古典的論文「ストラテジック・インテント」 231

    第4章 「ワクワクするビジョン」のパラドックス――経営とはジレンマへの挑戦 253

    第5章 意思決定のスピードを決める意外な要因――シリコンバレー企業の勝因と敗因 277

    第6章 「分析」で人間組織は動かない――ポーター理論への痛烈なアンチテーゼ 299

    第7章 「知識」がないから失敗するのではない――失敗から学ぶための質問は「Why」ではなく「How」 317

    第8章 50年前のアメリカ企業の失敗の轍をより深く踏む日本企業――「グローバル・マインドセット」とは何か 349

    第9章 いまどき5年計画をつくっているのは旧ソ連くらい?――不確実性に対する「リーン・スタートアップ」という考え方 361

    第10章 そもそも「取締役」ってなんだろう?――コーポレートガバナンスの本質を考える 387

    第11章 なぜ愛は急に失われるのか?――本来ポジティブなのにネガティブにひかれる人間の性 417

    第12章 インドで考えた組織的コミュニケーション――国際化、IT化が迫る原点の再考 433


    ◆まとめにかえて 449
    この本を読んで「行進したい気持ち」になりましたか? 451
     ――『風の果て』藤沢周平著
      「ふつう」だから飽きない
      家柄や育ちは侮れない
      お金の使い方、生かし方
      「現場主義」と本当に言えるか?
      もう一度「酔っぱらいのジレンマ」
      「いい気」になっていないか?


    奥付 [471]

  • サラリーマンが遭遇する理不尽と思える事柄について「理由」を説明している。
    その理由にはもっともなものもあれば、人間の性質としてつい陥ってしまいがちなものもあり、後者の失敗を避けつつ前者を経営理論として学びましょうという本。

  • 慶應ビジネススクールの清水先生によるある種の「経営(学)談義」。世界の著名な経営学者や経営者による著書や論文の中から、実際の会社経営の本質や矛盾、違和感、不思議を紐解く内容になっていて、内容は比較的専門的だと思うが楽しく読める。取り扱われているテーマは、人材教育、グローバル化、リーダーシップ、取締役、組織的コミュニケーションなど20個。タイトルにある通り、合理的であるはずの会社経営に理不尽なことが多いのはなぜか、それをわかっていながら正せないのはなぜかなど、膝を打つものばかり。「何億円の失敗よりタクシー代にうるさい」「なぜ愛は急速に失われる?」などなど。これを苦笑いで終わらせるのではなく、自分の行動にも生かしたい。

  • 全て学説をベースにしているが、選択や解釈は筆者の個人的な思いが出ている。
    勇気は自信に先行する、は秀逸なコメント。

  • 経営学の名著(書籍と論文)の内容を紹介して、解説している
    わかりやすいし、あまり類書がないので、役に立つ。
    328ページまで読んだ

  • 意外と読みやすく、面白い 楠木建氏の読書日記を連想させる 本書は論文も対象だが

    「日本型成果主義」に厳しい評価 これは全く同感 →「仕事の金銭化」(77)
    わくわく感も、誇りも、喪失してしまった。
    成果主義の前提として。ビジョンや理念を構築しておくべきだった。
    高度成長の最期にバブルのあだ花が「拝金主義」をもたらした
    そしてその後のグローバル時代が「成果主義」を理念無しに広まってしまった。

    強い組織 失敗を公表・共有する組織は強い(336) 
    ミスを報告しても大丈夫という文化・風土
    →失敗から学び、形式知化し、共有する 学習する組織
    日本の企業の多くはミスを恐れ・回避する・隠蔽する
    これが不健康な企業体質になっている
    「コロナウィルスの検査数が少ないのも同じ」2020/04/30

    見せかけをする組織 Window Dressing
    グローバル化・ダイバーシティ 1人2人の取締役・部長を作る
    本質・実態は変わらない

    ガバナンスの本質は「リスクテイク」
    取締役会のテーマも、「どのように安全に経営するか」ではなく、
    「どのようにして企業価値を高めるか=どのようなリスクを取るべきか」
    チャンスを掴むこと 法令遵守
    アメリカで「弁護士」が社外取締役になっているケースは皆無

    経営戦略で大事なのは、「精緻な計画」ではなく、「どれだけ共有されているか」

  • ●社員に危機感を伝えるためには。
    「船をつくるなら、材木の切り方や鉋のかけ方を教える前に、海への情熱を伝えよ」
    自分がこの会社をどうしたいか、自分がやりがいを持って充実した仕事をしている姿をイメージできるか、経営者が社員と将来像を共有できているかどうか、問題の本質はそんなところにある。

    ●新規事業のアイデア
    あったらいいなとなくてもいいなは紙一重。
    あったら便利だろうと思えるようなサービスはあまり成功しない。
    ゴールドラッシュで儲けた人は金鉱掘りではなく、ツルハシ商人。

    ●リーダーシップ
    任せると放任は違う。
    任せたから勝手にやれではなく、陰ながら見守る態度がリーダーに必要。
    放任は罪悪。

    リーダーは自然体(増田弥生)
    KBS 組織マネジメント 中間テスト
    「自分の勝ちは何か」を自らに問いかけることが大事。
    起業家が必ず聞かれるのが、市場があるのかではなく、なぜ君たちでなくてはならないのかという指摘。

    ファシリテーターの役割は会議を仕切ることではなく、参加者全てが会議の結論について自分たちが出した結論だと納得し自らその結論にコミットできるような会議にすること。会議において、なるべく自分自身の姿が見えないほうがいい。影が薄ければ薄いほど成功だと思っている。

    本質的な質問をするときは、相手と対峙して詰め寄るように効くのではなく、できれば横に並んで同じ柄を見ているような感じで質問する。私達を守護にして、自分たちに対する質問に一緒に応えるような姿勢になれる。

    リーダーシップは自分の中にしか無い。
    「思い」から一歩進めて、小さくても「行動」にすることが必要。

    ●クリエイティブ人事
    サイバーエージェントの人事制度
    制度は細かく作り込んではだめ。
    しっかりした軸は必要だが、制度自体はなるべく軽めに作り、現場が運用しやすいようにしたほうがいい。
    運用しやすい制度は社内に浸透する。逆にいくらよくできた制度でも現場でうまく運用されなければ長続きしない。
    制度は計画2割、運用8割。(サイバーエージェント人事本部長)
    結局、さじ加減はやってみて初めてできるという当たり前のことが大事。
    新しいことをやろうとするときにはいくらでも問題を指摘することができるし、やらない決断をするのは簡単。
    しかし、それでは決してさじ加減をすることはできないし、その難しさを経験することも出来ない。

  • タイトルにひかれ、手に取ってみる方もいると思うが、タイトルに近いアプローチで書かれているのは最初の1章位で、ほとんどは、経営学の教授が様々な企業と対峙してきたり学会で得てきて知見を披露している書です。
    リーダーシップ、経営層に対しての意見が多いですが、一組織人としても読みがいがあります。
    本の中で繰り返し出てくるのですが、
    ・過去の分析から企画作りばかりやっても、不確かな世の中ではうまくいかないことの方が多い。実際に動いてみることの大切さ
    ・コミュニケーションの重要さ。いかに社員全員が経営者目線で考えるか
    の重要性。MBAともなると、分析や数値に重きを置いてそうですが、逆にソフトの重要性を繰り返し説いていることが印象的。
    また、本の中に、著者が感銘を受けた本、実際に現在の企業と当てはめて論じてもいますので、その本を今度読んでみようと思う副産物があるのも良いです。

    個人的なメモ
    ・負け方の極意、そなえ(野村克也著)
    一つの技術がすごいからそれさえ磨けば必ず勝てるというものではない。他は並みでも強みを活かすために、最低限出来なくてはならないレベルがある。
    ・その努力は正しいか?正しい努力を何回したか?

    セクショナリズムはあって当然。組織があって部門があり、その責任を果たそうとする以上。セクショナリズムを解決するには、「とことん対立し、意見を出し合う」しかない。

    社員に浸透しなければ意味なし
    →社員を信じる。

    社員を導くポイント
    社内に危機感を醸成する
    社内の全ての階層で競争相手に対する意識を持たせる
    社員にパフォーマンスを高めるためのスキルを教育する
    社員が一つのチャレンジを消化してから次のチャレンジを与える

    常に考えている
    1.もしあなたの会社がなくなったら誰が困るか?WHY?(会社を私に置き換えると良いと思う)
    2.1番困る顧客は誰か?WHY?
    3.どれくらいの時間で代わりとなる会社が現れるか?
    自分が話したことを通じて周りが気づき、やってみようと思ったか?

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著者プロフィール

清水 勝彦(シミズ カツヒコ)
慶應義塾大学大学院経営管理研究科教授
1986年東京大学法学部卒業、86~96年株式会社コーポレイトディレクション(CDI)にて戦略コンサルタント。同社プリンシパルを経て、研究者に転身。94年ダートマス大学エイモス・タックスクール経営学修士(MBA)、2000年テキサス大学A&M大学経営学博士(Ph.D.)。テキサス大学サンアントニオ校准教授(テニュア取得)を経て、2010年より現職。2012年より仏エクス・マルセイユ大学経営大学院でも教鞭を執る。専門は、組織変革、 戦略実行 、M&A。Strategic Management Journal、Journal of Management Studiesなどの編集委員を務める。著書に『あなたの会社が理不尽な理由』『戦略と実行』『戦略の原点』『リーダーの基準』(いずれも日経BP社)などのほか、学会のトップジャーナルに英語論文も多数発表している。 金融、メーカー、商社、エネルギー関係など 大手企業の幹部研修や講演も多い。

「2018年 『機会損失 「見えない」リスクと可能性』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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