- Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
- / ISBN・EAN: 9784822255114
作品紹介・あらすじ
脱・ウェルチの経営改革を徹底取材!
世界最大の重電メーカー、ゼネラル・エレクトリック(GE)は、金融事業の撤退に伴い、1兆9000億円にも上る特別損失を計上した。
これは、「20世紀最高のCEO」とまで呼ばれたジャック・ウェルチが作り上げた
コングロマリットとしてのGE、株式時価総額で常に世界1位を争ってきた
GEの挫折の象徴だ。
現CEOのジェフ・イメルトは、ウェルチ経営から大きく戦略を転換する。
社員30万人の巨大企業でありながら、
グーグルなどシリコンバレーのスタートアップを徹底的にまね、
「デジタル製造業」に姿を変えようとしている。
<事業>
金融中心から、「デジタル製造業」へ
<製品>
産業機器の販売中心から、産業機器の生産性を上げるサービスに拡大
<開発>
縦割りの開発体制から、ソフトウエアはデジタル部門でまとめる体制へ
失敗を許さない文化から、リーンスタートアップ方式で素早く失敗する文化へ
製造現場にセンサーを張り巡らせたブリリアントファクトリーへ
<人事制度>
「ナインブロック」で社員を評価する方式から、能力開発の「パフォーマンスデベロップメント」へ
<成長戦略>
M&Aとリストラによる成長から、自社開発サービスでの成長へ
感想・レビュー・書評
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2017/10/06 初観測
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2017.06.14 品川読書会
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GE 巨人の復活 シリコンバレー式「デジタル製造業」への挑戦
中田 敦
・GEの製造業回帰のきっかけ
①リーマンショックによる金融部門の特別損失(合計1.9兆)
②デジタル破壊(Googleがインフラ部門にも進出、IBMのスマーター・プラネットにより、GE顧客へのソリューションビジネスの開始)
・戦略の転換
ウェルチ:M&Aによる売上増加→人員削減による利益増加(ニュートロンジャック)
イメルト:自社で開発した製品・サービスによる自力成長。リーマンの中でも成長を続けたシリコンバレーのスタートアップを模範とし、愚直に真似た。リーンスタートアップ、デザイン思考を全社員に学ばせた。
・人事制度の転換
ウェルチ:バイタリティカーブ、ナインブロック(相対評価)により、部下を評価分類(Cの人は解雇)競争的過ぎて社内はギスギス、やる気を無くす人も少なくない。時間もかかった。
イメルト:パフォーマンスデベロップメント(PD)により、部下の行動に対し、「GEビリーブスにあっているか」という観点で「継続」「再考」というコーチングを行う。「People Review」で評価に落とし込み。
・GEデジタル誕生プロセス
①2011・シスコ副社長のビル・ルーをトップに据えロードマップ作成。
②産業機器のサービス事業を最初に選択。3年間で10億ドル投資。
③シリコンバレーでのIT人材採用は難航。専門リクルーター自体をまず採用し、デジタル革命というビジョンを見せて自社で採用。2000人採用。
④2012・インダストリアルインターネットの概念を顧客企業に説明。1%の効率改善が300億ドルの利益をもたらす(15年間、業界全体)
⑤2013・Predix発表、社内向け、各事業部横断。開発効率の削減、コスト削減で社内で成果が出た。
⑥2014・産業界で使えるオープンプラットフォーム化。プロダクトマネージャーを置いた(受託生産には無い概念、自ら製品を定義)。2015にGEデジタル創設。
⑦2016・Paas(Predixのクラウドサービス)提供開始。400のパートナーが周辺アプリを開発。
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斜め読み。
良書。
買うべし。 -
B2Bは地味に見えるし、戦略がシリコンバレーのパクリっぽくて、物語としてはあまり面白みがない。ただし、きたるIoT時代はこういう地道な戦略が身を結ぶかもしれないとも感じた。
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GEがどのように変化しようとしているのか。
その具体的な変革の一端が読み取れる。
GEをあまり知らない人にはわかりやすい書籍です。
GEの中の人からGEについてある程度情報を得ている人には情報の整理ができる書籍です。 -
大企業がシリコンバレーっぽくなれるか?という挑戦の記録。この本を読んだのちにGEは経営者が交代するが、それは本書の内容(リーンスタートアップ、デザインスプリントなど)の失敗による、、と安易に結びつけてはいけないと思う。いずれにせよ、大企業でも大学でもスタートアップらしい行動思考プロトコルを育成できるのはアメリカの強みになる。
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エジソンの時代からの老舗の電機メーカーGEは、ジャック・ウェルチの時代に一時はNBCや金融事業に業態転換をして高収益企業として生まれ変わったと言われていた。CEOのジェフ・イメルトはGEを時代に合わせて「デジタル製造業」へ生まれ変わらせると決断し、シリコンバレーのやり方を徹底的にまねて、実際に30万人の大企業のポートフォリオや人事施策を転換させた。本書が描くのはGEの「トランスフォーメーション」の実像となる。著者は日経BP社シリコンバレー支局勤務の記者。日本人が海外企業を取材をして一冊のしっかりとした本にまで仕上げるのは珍しいが、もっと多くの本が日本人の手により、日本人の視点も含めて書かれてほしい。
GEは、2017年2月の株主への手紙でこう宣言した(※)。
「産業界の多くの企業が20年前に進めた『デジタル筋肉』のアウトソーシングが、今日には敗者であると我々は学んだ。今後、GEのすべての新規採用者はコード(プログラミング)を学ぶことになる。彼ら全員がソフトウェアを書けるようになるとは期待していないが、デジタルの未来における『可能性の芸術(アート)』は、必ず理解しなければならない。
We have learned that outsourcing digital muscle – a move industrial companies made 20 years ago – is a loser today. Every new GE recruit will learn to code. We don’t expect them all to write software, but they must understand the “art of the possible” in a digital future.
GEはハードウェア企業からソフトウェア企業へと舵を切った。それが必要であると学んだからである。そのためにシリコンバレーのコンセプトである「リーンスタートアップ」や「デザイン思考」「アジャイル開発」などその方法論を全社員に学ばせたという。そして「FastWorks」というGE版のリーンスタートアップを作り上げた。問題発見-仮説特定-MVP開発-顧客によるテスト-結果反映、といったサイクルをぐるぐる回すということである。顧客自身もデジタル変革のために何が必要かわかっていないから、顧客に「要件定義」を求めないという。その代わりにGEが必要なアプリとサービスを提供するというのだ。
また、その方法論を徹底するためにそれまでの厳しい人事評価から、失敗に対して寛容な文化を作るための人事制度を大きく変更した。失敗を許容できるようになるには、素早くリカバリーできるスピードも必要となるため、組織のフラット化も同様に進められた。失敗を心地よく感じるようになる文化を作ることが目標でもあるという。コードを内製化できるようにすることも、この方法論を実践するために必要な結論でもあった。
10年前のGEは、金融や放送などの非製造部門の売上高が全体の4割を占めるコングロマリッド企業だった。2016年12月気には売上の91%がB2B向けの産業機器が占めるまでにそのポートフォリオを展開させたのである。そして、GEはこの世界においてプラットフォーマ―としてのポジションを戦略的に確立しようとしている(そのプラットフォームはPredixと呼ばれている)。
トップダウンのよいところはこうやって徹底させることができることだろう。徹底の中には、その結果として捨てるべきことを捨てるということも含まれている。
そもそもGEが脱・製造業への道を選んだきっかけは日本メーカーの存在であったという。インテルのメモリからCPU集中への戦略転換も日本電機メーカーの影響があったという。日本は韓国勢や中国勢の攻勢から何かを学び変化することがあったのだろうか。確かにSONYは金融分野にも進出し、メディアやネットにシフトしようとしたが、期待通りにはならなかったようではあるが。
デジタル変革に必要なものは、トップの決意、デジタル変革の方法論への理解、そしてデジタル変革に必要な人材を集めると同時に元からの従業員にデジタル変革の方法論を学ばせることだという。GEは、そのためにシリコンバレーにオフィスを構えたという。
GEという大企業がここまで大胆に動いているのは知らなかった。広く知られてほしい。
(※) LETTER TO SHAREHOLDERS
A Resilient Culture
https://www.ge.com/ar2016/ceo-letter/culture/