ベストセラーコード 「売れる文章」を見きわめる驚異のアルゴリズム

  • 日経BP
3.70
  • (10)
  • (21)
  • (21)
  • (1)
  • (1)
本棚登録 : 318
感想 : 27
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (344ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784822251840

作品紹介・あらすじ

『ダ・ヴィンチ・コード』、『ミレニアム』シリーズ、『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』――。ベストセラーが売れるのは偶然か? それとも黄金の法則が存在するのか? テキスト・マイニングの最新技術を駆使して「秘密のDNA」を探り出した、文学界騒然の注目作。

「人間の創造性の秘密の一端を、データとアルゴリズムを武器に説き明かした。」(統計家・西内啓)

……andやdoという単語が、ベストセラーではそうでない本にくらべて2倍の頻度で登場する。一方、veryやpassionの使用頻度は半分程度だ……『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』を分類してわかったことは、BDSM(性的虐待に対する嗜好)は確かに刺激的かもしれないが、それ以外の要素は決して奇異なものではない。鞭や目隠しはカムフラージュであり、コンマや動詞の使い方にいたるまで、ベストセラーの何たるかを深いところで理解している作家が物語を紡いで大成功を収めたケースにほかならない……。(本書より)

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 最新の自然言語処理技術と機械学習を用いて、「ニューヨーク・ベストセラーズ」にランキングされるために必要な小説の要素を分析した一冊。使われている技術は(基礎研究としては)特にこれといって新奇性のあるものではないし、分析の結果判った「ベストセラーになる要素」も特にこれと言って奇妙なものはない。しかし、基礎研究成果の丹念かつ有意義な応用という意味では非常に興味深い。著者たちはコンピューターが小説を書くことに関してはまだまだ懐疑的だが、良い小説を判定できるのであれば、良い小説を書くところまではもうあと 1ステップだという気がする。

  • AIを使ってベストセラーとそうでない本を自動的に文章から分類するアルゴリズムを作ったという話。どんな特徴を持つ本をAIはベストセラーと判断したかという結果よりも、AIを用いて文章から本の良し悪しを見分けるという発想が面白いと思った。

  •  たくさんの切り口があるなかで、何の本なのか、と言う題目は最高位にあると言っていいだろう。たとえば、あなたが友達に本をすすめるとき、あるいはあなたが作家で自分の作品を紹介するときに、真っ先に訊かれるのは「それは何の本なの?」ということだろう。伝記作家でもないかぎり、だれについての本なのか、舞台はどこなのか、いつの時代の話なのか、と先に訊かれることはないはずだ。先立つのは主題への興味である。そこから当然の疑問が生まれる。人の心をつかむトピックとはどういうものか?(p.50)

     単語の意味は文脈のなかにあるということだ。「セックス」「ドラッグ」「ロックンロール」もこのセクションの見出しとして描かれていれば、「ジェンダー」「アスピリン」「海辺の楽しみ」と同じ意味でとらえられるかもしれないが、文脈からここでは違うということがわかる。(中略)コンピューターはすべての他の語を文脈のなかで見ることを学ぶ。このように単語を大きな文脈で理解するようにつくられたアルゴリズムをトピック・モデルという。(pp.60-61)

     ふたりのベストセラー作家がわたしたちに教えてくれるのは、読者をひきつける大きなトピックがあるということ、それから、2番目以降のトピックは現状を脅かすような衝突を示すものがいいということだ。まったくつながらないばらばらなトピックを配するのはよくない。たとえば、1番目がセクシュアリティーで、2番目がガーデニングといったトピックだと、読み手を引きつける物語は期待できないだろう。その点、ベストセラー作家は抜かりがない。たとえば、子どもと銃、信仰とセックス、愛とヴァンパイア。いずれも実際に売れている。(p.85)

     読書をしているとき、本が単なる研究対象ではなくなる瞬間がある。どこか別の世界に連れて行かれて、説明できないある種のトランス状態に陥る、といったらよいだろうか。マルセル・プルーストが「孤独のただなかにあってもコミュニケーションを完結させることができる奇跡」と評した読書にどっぷりつかってしまい、研究対象であるはずの本に理性的に向き合うことができなくなってしまうのだ。そうなると、本が、文章が、そして読んでいる自分自身までもが変質し、「わたし」はそれまでとは違う何かになり、それまで浸ったことのない思考のなかに入りこむ。読書といえば、プルーストのマドレーヌのように思いだす、本によって感情の深いところを揺さぶられる感覚は触知できるものではないが、きわめて身体的なものでもある。(ジャニス・ラドウェイ、p.120)

     コンピューターが人間よりも賢くなるというのなら、それは機械的に記憶し、蓄積した事実や情報で測った場合の話である。それはいわゆるブックスマートな人のスキルであって、小説家のスキルではない。小説家に求められるのは創造性や批判的な思考能力である。コンピューターで書いた文章は、短いものなら意表を突かれて面白く読める。おそらく、コンピューター・ライティングの理想というのは、そのあたりにあるのだろう。(p.301)

  • クリストファー・ブッカー 7つのプロット

    トピック構成
    プロット
    文体
    キャラクター

  • ベストセラーコード、得れる文章、を見極める驚異のアルゴリズム

  • 翻訳された文章が読み辛いのとコンピューターサイエンスには興味が全くないので
    読み進めるのに苦労した。
    でもベストセラーになる小説の特徴は日本語の小説でも共通する点があるように思ったし
    言語に関係ないプロットやキャラクターについては同意できる点が多かった。
    特に第5章は誉田哲也氏の姫川玲子シリーズやディズニー映画「塔の上のラプンツェル」以降のディズニー映画に登場する女性主人公に共通する点が多くて一番興味深く読めた。

    近年のアメリカのベストセラー本のネタバレが多いので
    これから読みたい本がモデルとして選ばれてる人には注意が必要。

  • ベストセラーとなる小説にアルゴリズムは存在するのかをITを使って突き詰めた本。それらしい法則が提示されるが、自分は腹に落ちたわけではない。むしろ、日本語で書かれた小説の場合はどうなのか気になった。言語に関係ない法則(三幕構成にすること、規則的な力強い鼓動があることなど)もあるのだが、それを導いた経緯が説明されないので、なんとなく研究者自身が欲しい結果ありきで結論を出しているかのように誤解してしまう(そのようなことはないのだろうけど)。根拠が乏しいので、納得できないのが残念なところ。とはいえ、その分野の研究は面白そうだ。日本の小説をターゲットにした本を読みたい。

  • 「ガール小説はこれからも買いだ」
    英語で書かれたベストセラーをAIで分析し、何か共通の要素がないかを探した研究。なんと、『フィフティシェイズオブグレイ』にも『ドラゴンタトゥーの女』にも『ハリーポッター』にも通じる共通要素があるというのが斬新。
    中でも、第5章にあるノワールな”ガール”についての分析が興味深い。ヒロインは自らの行為主体性を自覚し、何かを必要needし、何かを欲しがってwant自信をもって実行する。実際、needやwantという単語がベストセラーにはそうでない本と比べると多く含まれるのだと分析している。確かに受け身なヒロインより、自分でどこかに旅立って問題に直面する話の方が面白いものね…

  • 使われている単語によるセンチメント分析(感情の上下)を行っている。その分析結果に基づき、物語の流れと、センチメント(感情)の起伏の上下をグラフ化(プロットライン)しており、グラフを見ると、著者らの主張がわかりやすい。

  • アメリカ限定のテキスト解析?の話なんで読んでない本がいっぱい出てくるのが痛恨なんだけど、もう一個一個の解析結果が面白すぎて。流石にデータの話なんで一気読みとはいかないんだけど、その分じわじわ味わいながら読んだ。確かに日本版もぜひやって欲しい。

全27件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

ペンギン(UK)でアクイジション・エディターとして勤務後、スタンフォード大学で英文学の博士課程を修め、アップルに入社。文芸(literature)分野の研究員として勤務。現在はフリージャーナリストとして活動している。

「2017年 『ベストセラーコード』 で使われていた紹介文から引用しています。」

ジョディ・アーチャーの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×