シャオミ 爆買いを生む戦略

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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784822251116

作品紹介・あらすじ

中国で150万部を超える大ベストセラー
設立6年、年間8000万台のスマートフォンを売りまくり、
世界トップクラスのメーカーにのしあがった小米科技(シャオミ)の知られざる戦略
共同創業者の黎万強氏が自ら初めて語ります!

シャオミのスマートフォンが売れるのは、アップルのパクリだから、格安だからと思われてきた。しかし、決してそうではない。これまでのメーカーにはありえなかったまったく新しいものづくり、売り方を推し進めたからこその成果だ。共同創業者の黎万強は、次のようなシャオミの強さの秘密を惜しげもなく公開する。

○ユーザーの要望をもとに毎週ソフトを改良する
ユーザー参加型の開発方式をつくり、毎週金曜日「オレンジ・フライデー」にOSをバージョンアップする

○マニア心をつかむものづくり
マニアが高く評価すれば、口コミの評判も上がる。当初はあえてマニアに焦点をあてたものづくりをして、一般ユーザーに対象を広げる

○SNSを駆使する
中国の数々のソーシャルネットワーク・サービス(SNS)を駆使。社員100人がSNS担当となり、サービスごとに独自キャンペーンを展開し、ムーブメントを巻き起こす

○ワクワクするイベント
ユーザー参加型のイベントを開催し、ユーザーを熱狂的なファンに変える

○徹底したユーザーサポート
KPI(評価指標)なしのサポートサービスで、ユーザーと「友達」になる

シャオミは熱狂的なファンとともに、「正直で、威張らず、少しバカ」の精神で突き進む!

感想・レビュー・書評

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  • とても参考になる情報でした。
    中国の印象も大きく変わるかと思います!市場も大きくこんなにもクリエイティブな企業があることを知れたのは大きな学びでした!

  •  4年前に「小米科技」を立ち上げたとき、私はこう考えていた。この会社が将来どんなに大きくなっても、まるで定食屋のように、ユーザーが気軽に入ってこられる会社にしよう。定食屋のオヤジとして、お店に来てくれるお客さん一人ひとりと友人であり続けよう。そうすれば、企業は長期にわたって成長を続けられる。
     こうした理念で最初につくり上げたのが、アンドロイドをベースにした「MIUI」だ。アンドロイドを独自にカスタマイズしたモバイルオペレーティングシステム(OS)である。OSの開発は非常に複雑で、長期間にわたるため、ユーザーの意見を取り入れている企業はほとんどない。私たちは、どうすればシステム開発にユーザーの意見を取り入れられるかを考えた。結局、反復型開発のプロセスで、毎週テストと評価を繰り返すことにした。最も難しかったのは、ユーザーの意見をどう管理するかだ。ユーザーが何を求めているかを正確に読み取り、品質を保ちつつ製品に反映させ、1週間でリリースする。シャオミはこの作業に大きなエネルギーを注ぎ、システムに磨きをかけてきた。OSの分野では世界でも最も早く、1週間単位の反復型開発を取り入れたと自負している。このプロセスでシャオミは最初のユーザーを獲得できたのと同時に、この開発モデルの有効性を確認できた。このやり方がうまくいくかどうかを検証するため、当初はプロモーションや営業活動を一切実施しなかった。口コミがどれほどの力を持っているか、実験したのだ。


    ■鉄の三角形
     口コミによる情報伝達には、動力システムに似た3つの中核的要素がある。シャオミではこれを「鉄の三角形」と呼んでいる。エンジン・アクセル・駆動系だ。
    1エンジン 製品
    2アクセル ソーシャルメディア
    3駆動系 ユーザーのネットワーク


     では、企業が、ユーザーにより早く参加意識を高めてもらうにはどのような経営をすればよいのか。
     それには、製品開発・サービス・ブランド構築・販売の過程を開放して、ユーザーに参加してもらい、「手が届く」「自分だけのものになる」「共に成長していく」ブランドを、一緒に育上げていくことだ。そのための3つの戦略と3つの戦術を、シャオミでは「3と3の法則」と呼んでいる。
     3つの戦略とは「ずば抜けた製品」「ファンの獲得」「独自メディアの構築」、3つの戦術とは「ハブの開放」「インタラクティブな企画」「ロコミによる話題の拡散」である。


    ユーザーの参加意識を引き出す 「3と3の法則」

    3つの戦略/戦略/戦略の効果
    1.製品戰略 「ずば抜けた製品」
     ひとつの製品に絞る/ナンバーワンを目指す
     膨大なユーザー/企業の資源の集約
    2.ユーザー戦略 「ファンの獲得」
     社員をファンにする/最初にサービスを提供/ファンのメリット:機能、情報、名誉、利益
     信用度/ユーザーとの関係の深さ
    3.コンテンツ戦略 「独自メディアの構築」
     コンテンツの質:ユースフル・ エモーショナル・インタラクティブ/ユーザーによるコンテンツ作成
     コンテンツの拡散スピード/コンテンツの合い

    3つの戦術/戦術/戦術の効果
    1.「ハブの開放」
     機能の需要に基づき核となるプロセスをオープン化/企業とユーザー双方にメリットを
     参加者の数/参加意識の持続
    2.「インタラクティブな企画」
     インタラクティブな企画:簡単でメリットが大きく、楽しくてリアル/ユーザーとのつながり方も常に 進化する
     つながりの広さ/つながりの深さ
    3.「口コミによる 話題の拡散」
     最初にコアなファンをつかむ/製品に組み込まれた、シェアしたくなるメカニズム: ツール、ひとりで遊ぶ、仲間同士で自慢し合う/オフィシャルな広告で話題を呼び拡散させる
     話題の拡散度合い/次の行動: クリック、フォロー、登録、購入など


    「ユーザーエクスペリエンスとは、使いやすく、美しいことです。プログラミング言語への翻訳も大事ですが、まずは『誰のためのデザインか』が最も重要な条件です」
     誰のためのデザインかが明確なこと。使いやすいこと。美しいこと。この3つが、ユーザーエクスペリエンスに与えられた課題だと、私は考えている。
    「誰のためのデザインか」という視点はおろそかにされがちだが、これこそがユーザーエクスペリエンスデザインの原点だ。それを明確にすることで、初めてデザインの方向性が定まる。ここがあいまいなままだと、使いやすく美しくするための努力の方向が定まらず、魅力的なデザインにはならない。ユーザーの求めるものは人それぞれ、千差万別だからだ。
     ターゲットは高齢者なのか、女性なのかによって、それぞれデザインを考える必要がある。高齢者向けのスマホなら、ボタンの色はグレーなどの目に優しい色にする。コントラストの強い配色は、高齢者には見づらいからだ。
    「誰のためのデザインか」を決めるのは、プロダクトマネジャーやデザインチームのリーダー、さらに言えば会社のCEOの仕事になる。もしCEOにこの視点が欠けていれば、デザイナーがその負担と責任を負うことになる。
     使いやすさと美しさを比べた場合、優先すべきは使いやすさだ。「使いやすさを保証しつつ、可能な限り美しくなるように努力する」のが原則だ。それには機能の取捨選択が必要となる。


     では、シャオミブランドの「心に入り込む」戦略とは何か。MIUIにしろ、スマートフォにしろ、熱心なマニアの間で知名度が高まり、それが徐々に次の層へと広がっていった。製品の機能面からも、人々の生活に浸透していった。たとえばMIUIの場合、ユーザーはまずその滑らかな操作性や速さに驚き、次に見た目の美しさに魅了された。そして、登録のない番号からの着信時に発信者を自動識別する機能や、無料Wi-Fiなど多様な機能を追加していくことで、より便利で使いやすく進化していった。次々に追加される新機能やサービスがもたらすワクワク感は、ユーザーの心に深く入り込み、浸透していく。MIUIを使えば使うほど快感を覚えるようになり、ほかの製品では満足できなくなる。製品の魅力を無理矢理「頭に植え付ける」のに比べ、「心に入り込む」戦略の効果は絶大なのだ。


     企業が独自メディアを通じて発信するコンテンツの品質で重要なのは「伝わる言葉で語る」ことだ。「3と3の法則」で示したように、コンテンツは「ユースフル(有用)・エモーショナル(感情)・インタラクティブ(相互)」でなくてはならない。ここでの「ユースフル」とは無駄な情報を流さないこと、「エモーショナル」とは伝わる言葉で語ること、「インタラクティブ」とはユーザーによる拡散を促し、一緒に楽しむということだ。
     重要なのは、製品情報やユーザーエクスペリエンスをうそ偽りなく表現することだ。内容は必ずしも体系化されている必要はないが、製品の弱点や問題解決の方法もさらけ出すほうがいい。そのため、メディア担当の社員はその製品で十分に遊び慣れていなければならない。シャオミでは、社員を自社製品のファンにするだけでなく、ファンを社員にすることもある。メディア運営チームのメンバーの中には、シャオミ製品のファンの中から選ばれ採用された人も多い。


     ユーザーの参加意識を高めるためには、コンテンツだけではなく、参加可能なアクティビティが必要だ。2011年8月、シャオミはウェイボー上で「私はケータイ依存症」と題したキャンペーンを初めて開催した。宣伝広告費は一切使わなかったにもかかわらず、短期間で100万人のユーザーが参加。今までにどんな携帯電話やスマホを使ってきたか、その輝かしい歴史を自慢し合った。
    「自慢したい」「存在感を示したい」というのは、デジタル時代に向けてインターネット上で最も顕著に表れる集団意識だ。成功を収めているネット上の行動は、この心理をうまく利用しているものが多い。フォトレタッチアプリ「百度魔図」は、ユーザーが自撮りした写真と一番似ている有名人を探してくれる。スターに似ていると言われれば誰でも気分がいいし、ちょっと試してみたくなる。「自慢したい」「存在感を示したい」という欲求をうまく利用し、大成功を収めた好例だ。また、大ブームを巻き起こしたウィーチャットのシューティングゲームダーフェイジー「打飛機(飛行機を撃ち落とせ)」も、ユーザーの競争心をうまくあおって成功した。みんな指がしびれるまでプレイして、友達とスコアを競い、ランキングを自慢し合った。


     シャオミのアカウントには、「最近の活動」「セルフサービス」「製品」という3つのメニューを設置している。メニューをクリックすれば自動でメッセージが届き、必要な情報が得られる。「セルフサービス」では、注文履歴の確認や、直営カスタマーサービスセンター「小米之家(シャオミの家)」の場所の検索ができる。「製品」をクリックすれば、各シャオミ製品のサイトにつながり、知りたいことの答えが見つかる仕組みだ。
     ウィーチャットのフォロワーが80万人に達する頃には、情報量が多すぎるため、人の手で個別に返信することは不可能になっていた。そこで、ウィーチャットのAPIとの連携で専用のカスタマーサポートセンターをつくった。上部には複数のIDが表示され、サポートスタッフがオンラインになっていることを示している。ユーザーから届いた問題点がランダムにスタッフに振り分けられ、担当したスタッフが対応の進捗状況を発信することで、情報を広く共有できる。また、特定のキーワードを送信すれば自動返信で回答を得られるシステムもつくった。カスタマーサポートを可能な限り自動化することに尽力した結果、2013年のウィーチャットでのメッセージ5000万件のうち、人の手による処理は10パーセント程度にとどまった。
     また、自動抽選のプログラムも開発し、ウィーチャット上でのキャンペーン時の懸賞などに活用している。プログラムが自動で実行するため、公正な抽選ができる。抽選の過程をサイト上でリアルタイム配信することで、ユーザーはますます参加してみたくなる。

     こうした経験から学んだことは、大規模なキャンペーンを実施すれば一気にフォロワー数を増やせるものの、似たようなものが続けば増加ペースは急速に落ちるということだ。だから、ウィーチャットの公式アカウント運営では、賞品が当たるキャンペーンに頼るのではなく、常に新しい企画を考え続ける必要がある。楽しく参加できる遊びを、相応の手間やコストをかけて開催しなければ、フォロワーを大幅に増やすことはできない。


    「一撃で急所を突く」――これが、シャオミのデザインの原点だ。
     具体的には、コピーやデザインに対する2つの要求を指す。ひとつは、誰が聞いてもわかるストレートで生き生きした言葉使い。そしてもうひとつは、急所をズバリと突き、人の心を動かす表現だ。
    「ほかとは違う、最高の品質」いろいろな広告で見かけるありふれた表現であり、シャオミの社内会議ではいつも批判の的になるフレーズだ。私はいつもこう言っている。
    「シャオミのマーケティングは口コミが命だ。製品のセールスポイントを考えるときは、実際のシチュエーションを想像してほしい。自分が友達にシャオミの製品をオススメするなら何と言うかを考えるんだ」
     友達に製品を薦めるときに「シャオミのスマホはほかとは違う、最高の品質だよ」なんて言わないだろう。きっと「シャオミのスマホはとにかく速いんだ」などと言うはずだ。
     同僚が考えた大量のコピーを見て、ひと言目に私が一番多く言うセリフは「こんなにひねらなくていい。もっとストレートで直接的な表現ができないか」だ。多くの企業が広告でやってしまいがちな失敗のひとつが、やたらと立派なことばかり語り、空虚な表現になってしまうことである。自社製品にこんな表現を使う人は、カッコいいとか流行の最先端だと感じているのかも知れない。しかし、大げさで空虚な表現は、いわば見栄えの良さだけを求めている。どんな場面でも使えるが、人の心はつかめない。もうひとつは、小手先のテクニックで凝った表現を狙うあまり、製品の本質的な魅力を十分に伝えきれないことだ。


    ■人の心を動かすのは、 造花ではなく本物の花
     プラスチックの造花が好きな人はいない。体温と感情を感じるデザインでなければ、人の心は動かせない。感情に訴えるデザインのポイントは2つある。ひとつは製品を出発点にして考えること。2つ目は、なにげない日常生活の風景や、記念日などをうまく利用することだ。


    ■優秀なデザイナーの見分け方
     優秀なデザイナーかどうかを見分けることは、「本当に実力がある人」と「実力がありそうに見えるだけの人」とを見分けることだと言える。私の面接のやり方は単純だが、少々乱暴かも知れない。一言でいうなら「1を見て、2を聞いて、3を見極める」だ。
    「1を見る」とは、その人の服装を見ること。
    つまり、風格のある人物かどうか、外見で判断するというわけだ。外見といっても、見るのは顔かたちの美しさではなく、その人の持つ雰囲気やオーラだ。立派なひげをたくわえていれば「風格がある」というわけでもない。やや帽子など、身につけるものの選び方には、デザイナーとしての美的センスやバランス感覚が表れる。だから、服装を見ればその人の個性や生活スタイルがわかるのだ。
     もっとはっきり言えば、デザイナーの仕事とは、ものを美しく飾ったりパッケージしたりすることだ。美しい作品を生み出すには、まず自分自身を美しく見せようという意識や習慣がなくてはならない。
    「2を聞く」とは、普段その人が何を楽しみ、どんなものを読んでいるかの2点を尋ねることである。
     日頃、何を楽しんでいるかを知ることで、その人が仕事や生活の中でどれだけ多くの優れたデザインに触れているかを判断できる。デザインの仕事とは、ある意味「すでにあるものを設計し直す」ことであり、さまざまなデザイン的要素を新たに組み合わせることだ。日頃から優れたデザインに多く触れていれば、アウトプットの効率がよくなると同時に、自分の立ち位置を確認する座標を持てる。どれだけクオリティの高いデザインに触れているかが、デザイナーの能力の限界を決めるのだ。
     スマートフォン向けMIUIのインターフェースのデザイナーを探しているときは、相手に普段よく使っているアプリを尋ね、時にはスマートフォンの画面を見せてもらって、いくつアプリが入っているか確認した。自分が仕事をする分野で、新しいものに対する好奇心を持ち続けられないような人は、仕事にも遊びにも情熱を持てないと思う。そういうデザイナーはなかなか成長しない。
     どんなものを読んでいるか聞くのは、しっかり本を読む習慣がついているかを確かめるためだ。ネット上だけで資料を見たり、探したりするのを好むデザイナーは多い。しかし、断片的な画像や情報、誰かの作品を見るだけでは、インスピレーションは得られるかもしれないが、系統的な知識は身につかない。
     何年か前、すでに現場で多くのプロジェクトを動かしていた私は、長い時間をかけて、昔から憧れていたデザイナーの一連の作品や著作を時系列に沿って最初から見返したり、読み返したりしたことがある。こうすると、その人のデザインの背景にある考え方をより系統的に理解することができた。
    「実力がありそうに見える」ことは、「実力がある」人物の前提条件だ。「見る」「聞く」をクリアした人は、少なくとも「実力がありそうに見える」ので、次は本当に実力があるかどうかを確かめなくてはならない。
    「3を見極める」とは、その人がデザインした作品のディテール、作品によって完成度にばらつきがないかどうか、デザインに取り組む姿勢の3点を見極めることだ。もちろん、すばらしい作品や本当に実力のあるデザイナーの前では、オーラや出身業界などはどうでもいい話である。
    また、デザイナー選びを失敗しないためには、具体的にどんな仕事をさせたいかを明確にし、それに合った人材を選ぶことだ。全知全能のスーパーマンを求めてはいけない。デザイナーにそれぞれ得意分野があり、ビジュアルデザインとインタラクションデザインでは、求められる能力が違う。


    ■デザイン・マネジメントの3要件
     シャオミが「直感的に理解でき」「一撃で急所を突く」デザインスタイルを守っていけるのは、優秀なデザイナーチームの力のおかげだ。チームでは、デザインをうまく管理して、彼らの能力を最大限に引き出せるよう努力している。私が考えるデザイン・マネジメントの3要件とは、戦略の堅持・徹底した実行力・チームの自由化だ。


     今の時代、多くの人が、これまで眠っていた「フェティシズム」を覚醒させている。前述のアロマディフューザーや、アップルのMacBookシリーズなど、質のいいデザインの製品に触れたとき、人の心は癒しを感じる。繊細で柔らかい、あるいは、たくましくエネルギッシュといった、そのデザインならではの表情が、心を潤してくれるのだ。

    ■良いネット企業の条件
     この点について私は、決して立派なセオリーを持っているわけではない。言えることはただひとつ。インターネット企業への転換は、内面と外面の両方で意識改革が必要だ。そこには3つの重要なポイントがある。
     第一に、爆発的にヒットする、ずば抜けた製品をつくること。何百種類もの製品をつくり、その一つひとつでユーザーと意見交換するなど、あまりに大変だ。30年以上の歴史を持つ家電メーカーのトップにこう尋ねられた。「君の話は正論だ。だが、わが社にはすでに数百種類の商品がある。それらの製品に対するユーザーの意見は膨大だ。どう処理すればいいのか」
     私はこう聞き返した。「なぜ数百種類もの商品をつくる必要があるのでしょうか」
    「ずば抜けた製品をつくる」というのは、シャオミにとって最も単純だが根本的な考え方だ。そういう製品をつくらない限り、ユーザーを歓喜させ、仲間に入りたいと思ってもらえないからだ。また、質のいい品を十数種類つくるのは簡単だが、それではいけない。たった1種類、せいぜい2種類、爆発的にヒットする特別な製品があればそれで十分なのだ。
     第二に、組織の構造を整理し、フラット化すること。インターネット時代の企業には、いわゆる「大衆路線」、すなわち「民の力を信じ、民とともに進む」という方針が必要だ。社員に対し、仕事への積極的な取り組みや革新的なアイデアを奨励したところで、7人も8人もいる上司にいちいち報告しなければならないとしたら、イノベーションなど起きるはずもない。エンジニアが何か新しい試みを始めようと思っても、自分の一存では何も決められず、何人もの上司に報告書を提出して3カ月も回答を待つようなら、思い切った取り組みができるだろうか。シャオミのユーザーたちは、どのエンジニアがどの機能やモジュールをつくったか、すべて知っている。ユーザーからのクレームには、エンジニアから「問題を確認しました。すぐに直します」と返信が来る。シャオミの研究開発部門には、基本的に、社員・マネジャー・経営陣の3段階しかない。重要な研究開発部門だからといって、正マネジャーだのサブマネジャーだのと、複雑な体制にはしていない。インターネット企業への転換は、中から外へと進めていくべきだ。まず製品構造と組織構造を整理して、ずば抜けた製品をつくり、組織をフラット化する。
     第三に、社員を幸せにすること。社員たちが気持ちよく仕事ができるよう、規則で縛ったり、自分のやり方を押しつけたりしてはいけない。シャオミのやり方が合う企業もあれば、合わな企業もあるのだ。根本的な問題は、経営陣が一段低い所へ下り、社員と同じ目線で話ができるかどうかにある。彼らの率直な本音に耳を傾け、どうすれば参加意識や達成感を感じてもらえるかを考える。気分よく仕事ができれば、社員たちのやる気もさらに増すはずだ。
     シャオミが求める人材とは、毛沢東の言葉を借りるなら「思想と専門性の両方に優れている」人物、すなわち経験豊富でベンチャー精神に富んだ人材だ。仕事には十分な見返りを与え、利益を分配している。十分な報酬を与えつつ、社員を表舞台に出し、社員人ひとりをスターにして、ユーザーへのサービスに務める。すばらしいことじゃないか。
    100の製品ラインを1本にまとめられるか。
    ややこしい役職や上下関係を極力少なくできるか。
    企業の安全管理や政治闘争のためだけに作られた組織機構を捨てられるか。

  • シャオミの成長戦略について書いた本
    マーケティングに割かれてる内容が多め
    顧客と友達になる、3戦略3戦術、CS徹底重視など面白い内容が多かった

  • 東2法経図・6F開架:007.3A/L61s//K

  • さまさみな手段でユーザー起点のマーケティングを成功させているが、根にある考えはシンプルで勉強になりむす

  • シャオミが支持されたのは、コミニティを作り、シャオミのファンを作ったことがかなり大きかったといえる。OS部分への要望を直接もらうなどその次代ではなかなか考えづらい方法をとっていた。

  • 単なる格安スマホメーカーではなく、インバウンドマーケティングを活用したインターネット的企業シャオミの姿はとても面白い。オリジナリティが爆発すればアップルを倒してしまうかもしれない。

  • 題名はあまりよくないと思います。中身はシャオミがどんな工夫をして人気を獲得していったか、を詳細にのべたマーケティングの本です。中国の中でどうやってSNS等を使ってブランドを高めたかよくわかる一冊です。

  • あまりに衝撃的な一冊!!!
    私が知らないだけでFBしてる人にとっては常識!?
    特にエンジニア、広報の人は必見!


    ・シャオミの人気の秘密はSNSをシェアしてもらうように仕掛けたこと。
    プロジェクトマネージャなどのエンジニアこそが適任。

    ・単に製品そのものを売る時代は終え、「参加する楽しみ」を売る時代へ(AKBビジネスモデルもその1つ)。
    だからこそ、ユーザーと友達になる、という思考の転換が必要。

    ・ユーザーと友達になれば、ユーザーの若者の「その場で体験したい」「世界に影響を与えたい」という欲求を刺激できる

    ・製品開発/サービス/ブランド構築/販売の過程を全て開放してユーザーに参加してもらう
    ⇒その結果、「共に成長していく」「インタラクティブな企画」「口コミによる話題の拡散」

    ・開発もユーザー主導。フォーラムを通じてユーザーと意見交換を行い、毎週金曜日には必ずスマホのファームウェアをアップデートする。全てのアイディアをユーザーへ開示し、ユーザーの意見を元に開発して金曜日にはリリース。その意見を元にさらに来週改良、改良、改良。
    ⇒早すぎる~ (@_@) 究極のアジャイル開発!
    ⇒こうするとユーザーは単にその製品を使うだけでなく「自分の作品」と思うようになる。
    問題が起きてもクレームを言うのではなく、改善したいという意識が生まれる。

    ・購入をイベント化。予約フローの中に気に入ってる機能やカバーを選んでSNSでシェアしてもらう
    ようにすることでさらに多くの人が無料で目にすることができた。

    ・直販サイトを開発した。テストのためにそのサイトを使ってコーラを自社内で9割引で売り出した
    ところ社員が殺到し、様々な問題を実運用の前にテストできた。
    ⇒うまい!

    ・全エンジニアは外部フォーラムへの書き込みを業務の一環としている。ユーザーと直接触れることによって日々の改善につなげる

    ・個人⇔個人のSNSであるウィーチャットもサポートに利用。
    特定のキーワードであれば自動返答も。年間5000万件のうち90%自動応答で処理できた!

    ・音声を使った試み。「シャオミのスマホを愛してる!」と叫べば音量順にランキング。
    上位ユーザーから抽選で商品なども。30万人がこの言葉を叫んだ。

    ・サブカルチャーのコミュニティにツールを提供することにより、ユーザーが2次製作を行い、それをシェアしてくれる。そのような参加が満足感を生む。
    ツール開発にも力を入れるべきだ。また、プロダクトマネージャはサブカルチャーを学べ!

    ・シャオミがスマートフォンを発売したのはMIUIというUIのみを発表してから1年後。
    この初号機発売時には既に50万人のファンがいた!SNSの力は偉大。

    ・シャオミのカスタマーサービススタッフ1800人には顧客の問題を解決する過程でマネージャへの
    申告なしに顧客へ小額のプレゼントを贈る権限が与えられている。
    スタッフが状況に基づいて適切に判断すると信じているからだ。

    ・たった数千人しか使わない社内システムのために製品と同様に毎週アップデートを重ねる

    ・優秀なエンジニアは仕事を遊びのように楽しみ、自然と自分や他人の心を動かす大きなことを成し遂げる。
    うるさく管理してはいけない。エンジニアを管理すべきなのは上司ではなくユーザーだ。
    いい製品を作って褒められれば一層奮起する。ユーザーに罵られればすぐに改善策を練るだろう。

  • 夢中になるって素晴らしい

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