- Amazon.co.jp ・本 (450ページ)
- / ISBN・EAN: 9784822248369
作品紹介・あらすじ
私たちは、偉大なリーダーの派手な成功(と失敗)のことは知っているが、ごく普通のマネジャーの日常については何も知らない。好ましいマネジャーとは、カリスマリーダーでも戦略家でもなく、次々に降りかかる「いまいましい問題」とエンドレスに付き合えるタフな実務家にほかならない-。透徹した観察眼で、マネジャーの実態とあるべき姿を描いた出色の「マネジメント論」。
感想・レビュー・書評
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ヘンリー・ミンツバーグの最新刊。原題は"Managing"でいかにも集大成的な野心的なタイトルになっている。
ミンツバーグは、『MBAが会社を滅ぼす』(Managers Not MBAs)という既刊のタイトルからも分かる通り、ビジネススクールで教えられているタイプのマネジャー像を否定し、個別のヒアリングやフィールドでの観察から得た実践し行動するマネジャー像をその理論構成の中心に据えている。経営者の短期業績に連動した成果報酬にも大反対だ。
そしてマネジメントに対する打ち壊すべき次の3つの神話があるという。
① マネジメントはリーダーシップと別物である
② マネジメントはサイエンスないしは専門技術である
③ マネジャーは大きな変化の時代に生きている
①については、リーダーシップはマネジメントの一部だとし、②はマネジメントとは科学でなく実践だと説く。③については、変わったものよりも変わらないことの方が多いのだと主張する。その辺りの徹底ぶりは筋金入りだ。
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「はじめに」にも書いてある通り、本書は1973年刊の『マネジャーの仕事』を掘り下げてみたものだという。同書では5人のマネジャーの仕事っぷりを分析して評価したものであったが、本書でも29人の様々な業界の様々な立場のマネジャーの実際の職場での行動観察の結果を分析し、取りまとめた実務的マネジメント分析の書となっている。改めて『マネージャーの仕事』を少し振り返ってみたが、同書ではマネジャーの仕事の特徴として次の4つを挙げていた。
http://booklog.jp/users/sawataku/archives/456124218X
・終わりなき性質(Open End)
・短時間で、変化に富み、断片的
・皮相化がマネジャーの職業病(Occupational Hazard)
・刺激-反応という環境の中で仕事をしており、即時的行動(Live Action)を好むようになる。
この結論は本書でもほとんど変わっていない。実際に本書の中でもマネジャーの仕事の本質は30年前と大きく変わっていなかったとしている。
具体的に本書でマネジャーの仕事の特徴を次のように列挙しているが、ほとんど同じだ。
・いつも時間に追われている
・さまざまな活動を短時間づつおこなう
・互いに関連性のない業務を細切れにおこなう
・頻繁に自分自身でものごとを実行する
・非公式・口頭のコミュニケーションを好む
・人との接触の多くをヨコの人間関係が占める
・しばしば目に見えない形でコントロールをおこなう
管理職でひいこら言っている人は、ああ他の人もそうなんだなと安心しないだろうか。マネジャーはいつも大変だ。当たり前だ、大変でない仕事ならマネジャーがやる必要なく解決しているからだ。常にジレンマを抱え、時間に追われて仕事をしているのがマネジャーだという。日々苦労を重ねている管理職の人には実感がわいてくるのではないだろうか。
それでも「マネジメントとは、永遠に、一時たりとも解放されることのない仕事なのだ。マネジャーに仕事を忘れる自由はなく、仕事をすべて片付けたという解放感はたとえ一時的にでも味わえない」(P.31)とまで言われるとその通りだと思うが、同時に相当にがっくりしてしまうが。
またこの30年間で起きたインターネットの影響についても「マネジャーの仕事の性格を根本から変えるのではなく、この仕事に以前から見られる傾向を強化している」と分析する。具体的には、主には電子メールの影響で、あわただしさや仕事の細切れさ加減が増えてきたということだ。「インターネットの影響でマネジャーはますます仕事に追われるようになり、その結果、マネジメントが機能不全に陥り、表面的になり、現場と乖離しすぎ、状況に流されすぎるようになるおそれがある」と指摘する。実感としてその通りで、改めて言われなくともというところだろうか。
著者は、実践する現場のマネジャーに肩入れし、特にヒーロー型のリーダーシップには反対している。 当たり前のことだが、マネジメントにはバランスが重要だと説く。
そして、ひとりのリーダーに頼るのではなく、協力関係を構築して仕事を進めていく力である「コミュニティシップ」という概念を提唱している。リーダーシップとコミュニティシップについては今後の研究課題としているが、組織論の中でも大きな要素になりうると思う。
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内容については、上記の通りとても共感するが、本としては冗漫であるとの評価を免れない。その辺は『マネジャーの仕事』も、その後に出た半分皮肉を込めた『戦略サファリ』も変わらない。
読後の爽快感はないけど、安心感はある。ちょっと読むのに疲れる本。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
1 マネジメントがいちばん大事
マネジャーの実像
リーダーシップはマネジメントの一部
マネジメントは実践の行為
仕事の環境はどこまで変わったのか
自分の頭で考えるということ
2 マネジメントのダイナミクス
インターネットの影響
計算された混沌
3 マネジメントのモデル
一般的なモデルの構築
マネジャーの頭の中
情報の次元でのマネジメント
人間の次元でのマネジメント
行動の次元でのマネジ
バランスの取れたマネジメント
4 マネジメントの知られざる多様性
外部的要素
組織的要素
職務的要素
一次的要素
個人的要素
個人的なスタイル
マネジメントの基本姿勢
5 マネジメントのジレンマ
思考 情報 人間 行動 全体的
6 有効なマネジメント
不幸せな組織を生む原因
幸せな組織の条件
マネージャーの選考・評価・育成
付録 マネジメントの八日間 -
グロービスのマネジメント本で引用されていたので手にとった本。分厚くて怯んだが読み物として非常に面白かった。
中盤は中だるみするので1章と最終章だけ読めばOK。笑
マネージャー初心者として、マネジメントのヒントを得るために読んだけれども、体系化された手法や技術などなく、実践し、経験から学び、ひたすら自分の頭で考えることを止めないことでしか成し得ないのだなということが分かった。
マネジメントとは、「仕事の喜びと責任と苦悩の世界」である。
仕事へのモチベーションをあげてくれる。
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『感想』
〇マネジャーの実像という論文であり、その実像がわかってもそれをどう活用するか、現実に生かしていくのかは書かれていない。読むのが大変つらくなったので、太字のみを追う形になってしまった。
〇マネジャーといっても様々な立場があるが、この本にあるのは主にかなり上の社長やその幹部のことだと思われる。
〇マネジャーの資質に関して、それはその人個人の問題だけではなく、環境や職の適性など多岐にわたる問題が絡んでいる。だからある1つの部署での失敗で全ての判断をしてはいけない。これはもっと上のマネジャーの仕事であり資質だ。
〇稀に環境や職の適性などに左右されず結果を出すマネジャーもいて、そういう人を探し出し、もっと上に引き上げるのも上級マネジャーの仕事なのだろう。
〇逆に命令を受けたマネジャーは、変えられない自分以外の要素のみに文句を言ってやれない理由とするのではなく、できることをしてマネジャーとしての仕事を進めなきゃな。その姿を誰かが見ていてくれる。
〇マネジャーの仕事は部下をサポートすることだけではない。自分がサポートされるような職場全体の環境を整えていくことだ。仕事を進めるうえで大事なことは職場全体の雰囲気である。
〇付録としてミンツバーグ氏が取材したマネジャーの一日が載せられている。こちらを見ていくと、日本人は働き過ぎという概念は正しくないのではと思えた。勤務時間内に仕事が終わるわけでもなく、休憩時間と思われる食事の間にも仕事をし、マネジメント以外の仕事もする。まあこれはマネジャーだからで一般の従業員は違うのかもしれないけれど。
『フレーズ』
・地位の低いマネジャーほど、マネジメントの仕事が細切れになる傾向が顕著だという。(p.33)
・成功するマネジャーは、誰よりも大きな自由を手にしている人物ではなく、手持ちの自由を最大限活用できる人物のようだ。(p.51)
・リーダーシップを過度に重んじれば、リーダー以外のすべての人を軽んじることになる。その結果、リーダー以外の人々を無理強いして働かせなくてはならなくなり、コミュニティーの中で協力し合おうとする人間の自然な性質を活用できなくなる。マネジメントを成功させるためには、人々を関わらせ、自分自身が関わること、人々を結びつかせ、自分自身が結びつくこと、人々をサポートし、自分自身がサポートされることが必要なのだ。(p.368) -
マネジャー本としては、参考書的な内容で賛同出来る部分が多い
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management= Art(intuition, vision and creativity) + Craft(experience, learning) + Science(data, analysis)
Manager's job :
information
people
action -
マネジメントを実践の中で捉え、より良いマネジメントをするためにはどのようなことが必要なのかということを検討した本。
アート(ビジョン)とサイエンス(分析)とクラフト(経験)の3つの要素のどれか1つだけに偏ったマネジメントは、結局のところマネジメントが求められる多様な課題には応えられないという指摘は、非常に大切なポイントだと思った。
また、情報の次元、人間の次元、行動の次元のそれぞれで、部署や会社の内外をつなぎ、課題に解決策を与えていくことが求められる、非常に複雑な役割であるということも、分かった。
そのため、マネジメントというのは決して予定通りに体系だって進んでいく仕事ではなく、細切れで予定外の様々な仕事を日々こなしていきながら、結果につながる方向へ周囲を導いていくということが求められている。
本書の中で紹介されている松下幸之助の言葉のように、マネジメントというのはトップの仕事とボトムの仕事をやることであるのかもしれない(中間は部下がやる)。組織の能力を発揮できなくしている課題は現場に落ちており、組織が進むべき方向性はトップを中心に方向性を出していかなければならないのだろう。 -
(1回目 2018/11/08)
タイトル通りの本だった。前半はマネージャの仕事が組織や個人の性質によって異なることを述べつつ、共通して、サイエンスで一刀両断出来るような単純な仕事ではない、ということを書いている。一番大きな学びは、マネージャという仕事がジレンマを抱えながら進めざるを得ない、ということか。全体を通して読むことはできたので、今後は再読を重ねて自分の知識にしていきたい。
なお、29人のマネージャが、それぞれの環境に適したまったく異なるマネージャとしての役割を果たしていたという事実には、画一的なマネージャー像しか知らない人にとっては励まされるものがあると思う。 -
【未読】他のマネジャーの人が考えていることをあまり知る機会がないので。余裕があれば読みたい。