なぜ世界は不況に陥ったのか

  • 日経BP
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784822247232

作品紹介・あらすじ

古い経済思想に囚われている政治家・官僚・ジャーナリストのための「世界標準」の経済学講義。

感想・レビュー・書評

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  • 発売当初に購入したのですが、本棚に埋もれていて6年後になってやっと読みました。その意味では、金融危機のメカニズムなどだいぶわかってきている中で本書を読んだのですが、特に池尾先生の解説は極めて明確で、自分の頭の中で整理できていなかった面も本書で整理できました。他の方が指摘されているように細かい箇所で間違いはあるのかもしれませんが、これだけの内容を2009年時点で明快に解説されているのはすごいと思います。良い本の定義は「何年後、何十年後に読んでも面白い本」だと思うのですが、その意味で本書はこれを満たしています。ビジネスマンにとっても読みやすいので、今読んでも面白く感じると思います。

     対談方式も読みやすさの点で良かった。本書を通じて池田先生が問いを投げかけて池尾先生が答えるパターンが多いですが、内容的にはそれで良い。申し訳ないですが池田先生のコメントは質的には池尾先生に劣る。池田先生は政治家や官僚の批判をたくさんされているのですが、感情的かつ抽象的なので、私は納得すると言うより気分が悪くなりました。「自分の考えが全部正しい」という傲慢さも見え隠れする。一方、池尾先生は、官僚は具体的にどこそこができなかったのが問題だが、しかし当時の世論は官僚にその策を実行させなかったのも事実だ、というように客観的に分析されていて共感できました。池尾先生などは大学生に教えるのもいいけれど、ビジネスエグゼクティブや政治家中心にティーチングした方が世のためになるんじゃないでしょうか。米国だとハーバード大学はケネディスクールやビジネススクールで一流のエコノミストがまさに政策実務担当者や企業のエグゼクティブを短期間プログラムで啓蒙しているわけで、日本にもそういう場が必要ではないでしょうか。

  • 2020/02/21再読了「歴史的評価」が加わり面白い
    論点①日本の失われた10年②米国の金融依存体質
    根本・本質は変わらず更に推移した上に「コロナ禍」
    世界経済のリスクは膨れ上がり、「爆発」待つのみか
    日本 バブル後、金融が萎縮 リスク取れない
    「市場の失敗」vs「政府の失敗」
    懐かしい議論 経済体制論 結局は「組合せの割合」
    経済戦略は長期的=産業構造を変え、時代適合・最適化
    成長分野「医療・介護」需給調整の不適・政府の失敗
    衰退産業=需要の減退→資源を引き上げる=倒産
    それを守る=雇用の確保→低い労働生産性を許容する
    ⇒皆で貧しくなる
     結局は「サービス業の生産性問題」(アトキンソン)


    2009/04/12
    2008年リーマンショックの総括。①不動産バブルの崩壊
    ②市場型間接金融 要は「異例の金融緩和」による。
    ITバブル後の、日本の金融緩和50兆円→100兆円乗数効果
    日銀福井総裁の引き締め転換が契機となったと思う

    1980年代ー資金余剰への転換が契機となった
    =金融産業の不況産業化 不動産融資・バブル投資→崩壊へ

  • リーマンショックに至る道筋が分かりやすく、かつ、詳述されている。CDO等債務担保証券と度を超えたレバレッジ、超金融緩和は実物経済発展には殆ど寄与することなく、貧富の差を広げて次のバブルの温床となる。黒田日銀がその事を改めて証明してみせたのはお見事でした。
    大手町丸善の池田さん池尾さんの座談会に参加して購入(お二人にサイン頂いた)。池尾さんには日銀審議委員を務めて頂きたかった。ご冥福をお祈り申し上げます。

  • あんま覚えてない

  • 「世界金融危機から経済の勉強を深めよう」

    所蔵情報
    https://keiai-media.opac.jp/opac/Holding_list/search?rgtn=074207

  • ジャーナリストと経済学者の「現在の世界経済の状況」についての対談集。内容は、・アメリカ金融危機の深化と拡大・世界的不均衡の拡大・金融技術革新の展開・金融危機の発現メカニズム・金融危機と経済政策・危機後の金融と経済の行く末・日本の経験とその教訓となっている。現在や過去の金融メカニズム説明、解説はなかなか面白いのであるが、金融リテラシーの低い私にとっては、ついていけない部分があった(一般的出ない用語は、注釈を入れてくれくれれば、なお良かった)。

  • 未読

    プロローグ(池尾和人)
    講義の構成
    エグゼクティブ・サマリー
    なぜ世界は不況に陥ったのか

    第1講 アメリカ金融危機の深化と拡大
    --サブプライム問題から全般的な信用危機へ

    その1 サブプライム問題
    その2 全面的な信用危機への拡大
    その3 リーマン・ブラザーズの破綻以降

    第2講 世界的不均衡の拡大:危機の来し方I
    ーー1987年、1997年、2007年までの節目を振り返る

    その1 長期不況:1970年代末~1987年
    その2 アメリカ経済の再活性化:1987年~1997年
    その3 マクロ的不均衡の拡大:1997年~現在

    第3講 金融技術革新の展開:危機の来し方II
    ーーデリバティブ、証券化、M&A

    その1 伝統的銀行業の衰退と金融革新
    その2 デリバティブ取引の意義
    その3 投資銀行の成功と変質

    第4講 金融危機の発現メカニズム
    --非対称情報とコーディネーションの失敗

    その1 過剰投機はなぜ起きる:エージェンシー問題と「美人投票」
    その2 取り付けの合理性とリスクテイク
    その3 市場型システミック・リスク

    第5講 金融危機と経済政策
    --「市場の暴走」と「政府の失敗」

    その1 「政府の失敗」の結果
    その2 経済思潮の変遷
    その3 経済政策をめぐる争点

    第6講 危機後の金融と経済の行く末
    --中長期的な展望と課題

    その1 投資銀行は終わったのか
    その2 規制監督体制見直しの課題
    その3 長期不況の予感

    第7講 日本の経験とその教訓
    --われわれは何を知っているのか

    その1 「失われた10年」の原因
    その2 「失われた10年」の教訓
    その3 不良債権問題への政策的対応

    エピローグ(池田信夫)

    新たな長期不況の予感
    コーディネーションの失敗からの脱却
    日本の宿題
    構造改革は終わっていない

  • 338.9||Ik

  • 久しぶりに積んでる本を読了。

    2008年の金融危機に関しての、2人の経済学者の議論。
    サブプライムローン問題という、アメリカの国内バブルが
    なぜ全世界の金融危機に至ったかという話。
    そこから得られる教訓と、これからの日本の行く末。


    ---
    本書に手を伸ばした動機は
    今後、日本に訪れるであろう財政危機への準備のためである。

    実際のところ、私は日本の財政は既に詰んでいると思っている。

    財政危機になったとしても、日本列島が沈没するわけではないが、そのうちIMFや債権者を含めて債務再編を行う必要が出てくると思う。


    現状、国債発行残高が800兆円を超えているのみらず
    2013年度予算でも
    歳出 : 92兆
    税収等: 47兆
    国債 : 45兆

    と、税収とほぼ同額の国債を発行しないとやっていけない財政状態にある。


    この財政構造は継続性に疑義がある状態であり
    早急に歳出を減らして歳入を増やすしか手はない。

    具体的には緊縮財政路線と上げ潮成長路線があるが
    どちらにせよ景気回復を果たして経済成長に持っていかないと話にならない。


    しかし何らかの政策で、仮に景気回復を果たしたとしても
    社会のあちらこちらが金利上昇(国債価格下落)に耐えられないのではないかと思う。
    日本は低金利になってから何年経つだろうか。
    我々は低金利が当たり前となってしまって、それが社会の前提となっている気がする。


    【国債の利払費の増加】
    金利が上昇すると、新規発行国債と借換債の利払費が増えてしまう。
    専門家の試算によると、1%の金利上昇で毎年1兆2000億円もの利払費増加となる。

    10年も経ったら12兆円も利払費が増えてしまう。
    野田首相が政治生命を賭けて上げた消費税も
    利払費増加で簡単にすっ飛んでしまうのだ。


    【国債価格の下落】
    金利上昇=国債価格下落である。

    利払費の増加はボディーブローのように効いてくるが
    国債価格の下落は、企業の財務諸表にストレートに突き刺さる。


    金利が上昇すると市中の国債価格が下落するため
    国債を保有している企業等のバランスシートが毀損する。
    満期有価証券として保有していれば時価評価する必要はないが
    その他有価証券として保有している場合は
    株式などと同様に決算時に減損する必要がある。

    金利が上昇した時に、どの程度の評価損が発生するのか。

    いくつか銀行等をピックアップして
    公開されている有価証券報告書から
    ざっくり試算をしてみた。


    金利が1%上昇した時に、保有する日本国債(その他有価証券)の評価損

    (1)三菱東京UFJフィナンシャルグループ
    ▲1300億円 (自己資本の約1%)


    (2)横浜銀行
    ▲ 360億円 (自己資本の約4.4%)


    (3)東北銀行
    ▲ 48億円 (自己資本の約 23%)

    (4)第一生命
    ▲4500億円 (自己資本の約 45%)


    さすがにメガバンクや健全な地銀は対策をしていて
    少しばかりの金利上昇では破綻なさそうだ。

    やはり危ういのは、地方銀行、信用金庫、そして生命保険会社。
    金利がジワリと上昇して、そこらへんがパタパタとしだすというのが嵐の前兆かなと思う。
    その前に、ゆうちょ銀行・かんぽ生命保険の方が危なくなるのかな。


    【というわけで・・】
    本書を読み、いくつか調べ、考えた上で出した結論。
    日本の財政・金融危機が始まるサインは以下の通り。

    ・長期金利が1~2%程度上昇する
    ・格付会社による日本国債格下げ、それに伴う金融機関の一斉格下げ
    ・財務体質の弱い信金・地銀・生保が2~3社破綻、または取付け騒ぎ


    サインが見えそうになってきたら、NYにADRで上場している日本株を
    ドル建てで信用売りしようかなと思っちょります。

    いつもの事ながら、全く書評になってないな。

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著者プロフィール

慶應義塾大学経済学部教授
1953年生まれ。京都大学経済学部卒業、一橋大学大学院博士課程単位取得。岡山大学・京都大学助教授を経て、1995年より現職。著書に、『銀行はなぜ変われないのか』(中央公論新社)『なぜ世界は不況に陥ったのか』(共著、日経BP社)『現代の金融入門』(ちくま新書)など

「2017年 『日本経済再生 25年の計』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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