ヒトデはクモよりなぜ強い

  • 日経BP
3.76
  • (24)
  • (42)
  • (42)
  • (3)
  • (1)
本棚登録 : 331
感想 : 45
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (247ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784822246075

作品紹介・あらすじ

繰り返されるヒトデとクモの戦いに最強の組織をつくるヒントがある。アメリカ国防総省も、クリントン元大統領も認めた衝撃の戦略、ついに登場。アルカイダ、ナップスター、トヨタ工場から学ぶ、最強の経営組織論。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 一言で言うと、分散型組織(ヒトデ)の方が中央集権型組織(クモ)よりも、
    フレキシブルに対応できて有利ですよって本。
    (かなりざっくり言っていますが。)

    ビジネス書なんですかね?それとも教養的なノンフィクションなのか?
    よく分かりませんが、テーマとしては興味深いです。

    ただし、洋書特有のちょっと冗舌で、長ったらしいのと
    自社に引き寄せて考えるのが結構難解なのが玉にキズ。
    というのも、ほとんどの企業は中央集権型の組織のはずで、
    だったら滅びるだけなのか?となってしまいそう。
    それを阻止するために後半、
    分散型組織と中央集権型組織のハイブリッド(中間的な組織)の紹介もあるのですが、
    できるだけ権限を委譲した組織という説明だと
    ちょっと記述があいまいかな。
    もう少し組織論に踏み込んでもらいたかったですかね。

    音楽業界の例も、歴史的に見れば、
    分散型組織と中央集権型組織を振り子のように
    行ったり来たりしているし、
    アメリカ政府とアルカイダの戦いも例えば「多様性の科学」では、
    組織問題ではなくアメリカ政府の多様性の欠如とまとめられていたし。

    トピックとしては興味深かったのですが、
    もう一押し欲しかったかなという本です。

    ちなみに、この本は既に絶版なのですが、
    最近新しい訳で出版されたみたいです。

    ※ヒトデ型組織はなぜ強いのか
    https://booklog.jp/item/1/4799327933

  • 分権型組織と集権型組織の解説書である。豊富な事例を提示しており、分析も説得力がある。予想以上に秀逸である。また、この手のビジネス書の中では、かなり平易な文で読みやすい。翻訳者が優秀なのだろうか。

    分権型組織と集権型組織を、ヒトデとクモに準えて、解説している(クモは、頭を破壊すれば死ぬが、ヒトデは、切断しても、それぞれの片が独立して蘇生し、なかなか死なない)。インターネットの誕生により、分権型組織が作られやすくなった。分権型組織に攻撃を受けた場合、トップと思われる対象を攻撃するのは誤りである(例:アルカイダのオサマ・ビンラディン)。従来の集権型組織も、分権型組織に一方的にやられっぱなしになるのではなく、いくつかの対策案が提示されている。その一つの案が、既存の集権型組織も分権型組織の要素を取り入れることである(ハイブリッドな組織)。集権と分権のバランスをどう取るか(スイートスポットをどう探し当てるか)がポイントである。

    また、本書はhttps://booklog.jp/users/nsugiura/archives/1/4569703666格差社会論はウソであるの参考文献である。

    ヒトデ型組織 vs クモ型組織の例(裏表紙より抜粋)
    ナップスター vs MGM、ソニー
    スカイプ vs AT&T
    アパッチ vs マイクロソフト
    アパッチ族 vs スペイン軍
    アルカイダ vs アメリカ

    目次
    はじめに
    第1章 MGMの失敗とアパッチ族の謎
    第2章 クモとヒトデとインターネットの最高責任者
    第3章 ヒトデでいっぱいの海
    第4章 5本足で立つ
    第5章 触媒のもつ不思議な力
    第6章 分権型組織と戦う
    第7章 ハイブリッドな組織
    第8章 スイートスポットを探して
    第9章 新しい世界へ

    メモ
    分権についての法則(第1章〜第5章)
     1 分権型の組織が攻撃を受けると、それまで以上に開かれた状態に開かれた状態になり、権限をそれまで以上に分散させる(1-29)
     2 分権型組織と集権型組織の見分けがつきにくい(2-35)
     3 開かれた組織では情報が一ヶ所に集中せず、組織内のあらゆる場所に散らばっている(2-40)
     4 開かれた組織は簡単に変化させることができる(2-41)
     5 ヒトデたちは、誰も気づかないうちにそっと背後から忍び寄る性質がある(2-42)
     6 業界内で権力が分散すると、全体の利益が減少する(2-46)
     7 開かれた組織に招かれた人たちは、自動的に、その組織の役に立つことをしたがる(3-79)
     8 攻撃されると、集権型組織は権限をさらに集中させる傾向がある(5-151)

    2-43 アコーディオンの法則:長い年月を経て、分権型から集中型へ、また分権型に戻るということが繰り返されること。

    触媒について
    5-135 人は、話を聞いてもらっていると感じたときや、理解してもらい、賛成してもらっていると感じたときは、変化しようという気持ちが強くなる。
    5-136 誰かにアドバイスすると、そこには自動的に、助言する人のほうが助言を受ける相手より上に立つという権力のヒエラルキーが生まれる。ヒエラルキーは、分権型組織では百害あって一利なしだ。

    分権型組織と戦うための戦略(第6章)
    1 イデオロギーを変える
     イデオロギーを少しずつ変えることに成功したのは、皮肉だが、イデオロギーを変えることが目的ではなく、人々を助けることが目的だったからだ(6-162)
    2 権限を中央に集中させる
     人々は、いったん財産を手にすると、すぐに利益を守るために集権的なシステムを求めるようになる(6-168)
     ウィキペディアは利益を上げすぎると危険だ。今、ウィキペディアが機能しているのは、皮肉なことに、予算が足りず、ほとんどの仕事をボランティアに任せているからだ。もし、ウィキペディアに人をうらやむような給料がもらえる職種ができたら、縄張り争いやヒエラルキーが生まれるかもしれない。
    3 自らを分権型に変える(奴らに勝てないならー奴らの仲間になれ)

    ハイブリッド型組織(第7章)
    1 顧客経験価値を分散させた中央集権型の企業(7-178)
     例:イーベイ、アマゾン
    2 中央集権型企業でありながら、ビジネスの一部に分権を取り入れる(7-191)
     例:GE

    スイートスポットを探して(第8章)
    8-206 NUMMI(カリフォルニアのGMとトヨタの合弁)が成功したのは、トヨタが常に、分権の「スイートスポット」を追い求めていたからである。
    8-209 自動車業界で分権のスイートスポットを見つけたのはトヨタだ。
    8-211 アップルのiTunes:レコード会社(集権型)と音楽ファイル交換サービス(分散型)の間のスイートスポットを探し当てた。
    8-213 匿名性と情報の自由な流れという二つの動きが、音楽業界の分権を進め、スイートスポットを動かした。
    8-214 
     インターネット黎明期:ヤフー:中央集権的:ユーザの安全志向
     インターネット成長期:グーグル:分権的:ユーザの慣れ
     ネット検索業界におけるスイートスポットはいまだに流動的である。

  • 分権型組織が、集権型組織に勝るという主張を事例を用いて説明してくれている。音楽共有型ソフトが形成するネットワークを分権型組織の一例に、彼らは、決して既存の音楽業界には負けない。何故なら、切っても切っても生き残るヒトデのような組織形態だから、と。

    この例に則って考えよう。分権型組織とは、目的に従い意志を持つ機能が分散した状態、かつ、その目的が一致しているという前提があって成り立つ。つまり、集権型組織は、トップが目的を持ち、その目的を共有化させる機序を要するが、分権型組織は、そもそも、同じ目的を持った集合体である故、目的を共有化するプロセスを要しないのだ。こう考えると、主張があながち間違いでは無いと考えられる。

    しかし、結局は、集権型組織であっても、目的、利害を共有できていれば、分散しなくても良いのだ。分権型イコール善という発想は、何となく日本的では無い。何故なら先述の通り、重要なのは、利害統一における状態であって、権限の集中度合いでは無いからだ。

  • 本のタイトルになっているヒトデとクモはそれぞれ「分権型組織」と「中央集権型組織」の例えとしてあげられています。強大なアメリカ軍がテロ組織であるアルカイダに苦労し、中心人物であるビン・ラディンを排除した後もアルカイダの組織を倒すことができないのは、アメリカがアルカイダの組織をヒトデであるお認識していなかったからだというのが本書に書かれている内容です。

    管轄する人間がいないと組織はまともに働かなくなるかを問いかけた本ですが、むしろ働かなくなるどころか「分権的」な組織でないとこれからの企業は時代を勝ち抜くことが出来ないと言っています。

    とはいえ闇雲に分権型組織を目指すのではなく、それが出来ないような大企業においては中央集権的でありながら分権的要素を取り入れることだと述べています。

    起業が強くあるにはリ-ダ-だ強くさえあればよいと考える人には、分権型組織の強靭さをしるためにも読んでおいた方がよい本だと思いました。

  • HCLのヴィニート・ナイアーから。
    ウィキペディア、ナップスターなどが取り上げられている。営利型の組織でヒトデ型を保つのは難しそうだ。
    下に抜き書きしたけれど、音楽が録音できるようになってコンテンツになるまでは楽譜だったんだ。いつか知識がコンテンツになって、そうか、昔は本が売られていたんだ、って事になるのだろうか。

    ・1887年にトーマス・エジソンが音楽を再生する方法を見つけ、フォノグラフを発明すると、すべてが変わった。音楽を家に持ち帰れるようになったのだ。多くの人がレコードを聞くようになり、何百ものささやかな録音スタジオが生まれた。音楽界の権力地図が変わり始めた。音楽家の一人ひとりが力を持つのではなく、録音スタジオが新しい才能を発見し、ラジオや店でその才能を売り出すことが可能になったのだ。
    …ヨアヒムの音楽家人生を、イツァーク・パールマンのそれと比べてみるといい。パールマンは、ヨアヒムの没後40年ほどたった1945年に生まれた。それはフォノグラフで録音した音楽の売上が、楽譜の売り上げを上回った最初の年でもあった。ヨアヒム同様、パールマンもまれな才能として認められた。ヨアヒムがロンドンでデビューしたように、パールマンはニューヨークのカーネギーホールで聴衆を魅了した。しかしヨアヒムとは違い、パールマンのファンのほとんどは、彼の生演奏を聴いたことがない。現代の有名音楽家の誰もがそうだが、パールマンの成功は、大きなレコード会社によるものだ。

  • 中央集権型の組織をクモに例え、分権型の組織をヒトデに例えて話が展開されて行き楽しく読めます。また、分権型の組織が常識を、覆し案外強固な組織であることを歴史的な話、アパッチ族、を交えて解説するなどわかりやすいです。昨今の反原発のデモもこのヒトデの考え方てみてみるとなるほどと思える。インターネット社会では、やり組織はヒトデになっていくのか?興味はつきません。

  • メタファーとして、蜘蛛とヒトデというものを用いた時点でこの著者の勝ちが決まっている。そんな印象を受ける。実際にこのモチーフはすごく印象的だ。

    組織形態としてヒトデ型組織というものが存在するという認識は(あるいは従来の概念だとそれは「組織形態」というものですらないかもしれないが)、自分がそれを取るにせよ、あるいは取らないにせよ、少なくとも共有されていたほうが様々な意味でより健康的だろう。

    僕の専門は宗教学なので、ヒトデ型組織という形態が宗教という媒体ではどのような実体を持って現れているのかというところにやはり関心が向く。多分島薗進が定義するような「新霊性文化」(個人の消費としてのスピリチュアリズム)と相関する形になると思うが、まだそこから別の発展形が存在するきがする。ちょっと考えを煮詰めてみたい。

  • 30~

  • ティールというよりはクラウドソーシングの話しかな。これのもう少し組織の意思決定に突っ込んだ話で、組織というアイデンティティがあるものを深めたのがティールかも。触媒の話は面白かった。宗教って究極のティール組織だ。

  • 09/8/29
    小山龍之介 推奨

全45件中 1 - 10件を表示

糸井恵の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×