電気自動車が革新する企業戦略 自動車、ハイテク、素材、エネルギ−、通信産業へのインパクト
- 日経BP (2009年10月29日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
- / ISBN・EAN: 9784822221867
作品紹介・あらすじ
自動車のパワートレーンはモーターや電池による電動化が進む。そのとき、自動車メーカーを中心とした産業構造はどう変わるのか。自動車を取り巻く電機・電子、素材、エネルギー、通信産業への影響は。電気自動車の時代に向かって、これらの企業が採るべき戦略の要諦を詳説。
感想・レビュー・書評
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電気自動車の発展が各業界にもたらす影響について書かれた本。
読めば読むほど、日本における自動車産業の影響力の大きさ、
関連する業界の多さが理解できる。
自動車業界は今後垂直統合から水平分業に進んでいくとされている。
しかし、電気自動車の普及が単なるエコに留まることなく、
正直ここまでのインパクトを与えるとは思ってもみなかった。
おそらく関係にでもない限り、自分と同じ感覚の生活者は多いはずで、
本書を読むと実に多くの知見も得られ、本当に楽しく読むことができるだろう。
また、物事を単なる事象としてだけ捉える危険性も教えてくれる。
いちビジネスパーソンとして、ある事象の裏側にあるもの、
その先にあるものまで考える癖をつける必要性を痛感。
ビジネスチャンスはそこにしか生まれない。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
4月1日から三菱・i-MiEVが一般販売された。
日産も再来年には電気自動車=EVを市販する予定。
トヨタやホンダは言わずもがな、世界的にハイブリッド自動車=HVのトップ企業である。
日本の自動車企業は、環境対応車=EVやHVの世界的な普及を視野に、確実に投資をシフトさせている。
じゃあ、北米は? 欧州は? 新興国は?
EV普及のためにネックとなる素材は? 技術は?
EV以外の環境対応車は? ガソリン車はどうなる?
自動車産業の周辺産業はどう変わる? 政府の役割は?
そういった疑問をデータを用いて、客観的に通りいっぺん教えてくれるのが本書。
自動車の関連企業(ハイテク、素材、エネルギ-、通信産業)の人ほど読む価値が高いかもしれない。
ガソリン車を作るためには、3万点とも言われる部品を下請け企業と一緒になって開発・製造・組立して、厳しい安全規制をクリアしないといけない。
そのノウハウ(改善の積み重ね)が競争力の源泉であり、既存の自動車産業がほとんど新規参入を許さず、収益を出してきた理由はここにある。
ところが、EVの時代にはこれがひっくり返る可能性が大いにあるという。
車の動力が変わるということは、もう全く別の乗り物になるということ。
革新的なアイデアで特許をとったベンチャー企業が一気に世界を席巻するかもしれないし
ネックとなる電池やモーターの製造に特化した新興国企業が、スケールメリットを生かしてそれらの供給を独占するかもしれない。
日本の基幹産業である自動車産業の衰退、それに伴う下請け企業・関連企業の衰退……。
日本沈没は決してフィクションではない、と。
そういった状況を知るとっかかりとしては読んでよかった。
だが別に煽ったり踏み込んだりしてるわけじゃない。
データをもとに、事実や予測を淡々と述べている書き方だ。
経営コンサルタントの考え方や文章ってのはこういうものかと、感心させられた。
ま、ここの社員であるY女は「EV? 興味なーい」と相変わらずだったが。
本書を基本に、もっと踏み込んだ本も読んでいこうと思う。 -
電気自動車は、電気自動車を社会を実現する一要素でしかないということが述べられている。それは、スマートフォンが、スマートフォンだけでは成り立たない事と似ている。
EVをそれを取り巻くエコシステムに含めた形で、いかに実現できるかが求められている。Closedで実現する企業がない事は自明であり、Openな取り組みのなかでいかに主導権を取れるかが肝であるはず。 -
電気自動車によって、電機メーカが自動車の生産をする時代が来る。
EBCおんえctと呼ばれるソフトウェアを使って一元管理している。
充電ステーションの拡充に伴い通信事業者自身が整備に関与するようになる。
ETC,おサイフケータイの利用。
Better Placeはアメリカに本社のあるベンチャー企業。 -
EV情報 網羅的
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内燃機関からEVに移行していく自動車(automotiveからmobillity)が各産業に与えるインパクトとEV普及の為の課題をまとめた一冊。EV普及の為には、(1)電池性能(2)電池コスト(3)充電インフラ(航続距離の延長)が不可欠であり、その課題を解く為の鍵が幾つか紹介されている。すり合わせ型or水平分業の議論も興味深い。また、第5章素材産業の戦略はどう変わるか、も興味深かった。電池、モーター、インバーターで増える素材需要の取り込みはリチウムを始めとして化学、電機の戦場。Siを大量に使用し、鐵損を防ぐHEV等に使われる電磁鋼板は日系高炉の戦場となっているが、共に日本産業の競争優位性が見られる部分であり、こうした資産を強みとして活かすことはやはり重要と感じた。
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多面的な分析がされている。電気自動車産業という切り口から次世代エネルギー社会の展望を綿密に予測していて、単なる夢物語に終わっていない。
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電気自動車の普及に向けては大きく3点問題がある
①コスト
②航続距離
③充電インフラ
また、
電気自動車が普及されるためにはある程度インフラが整備される必要があり、インフラが整備される(インフラに投資する)ためには、ある程度電気自動車が普及する必要がある。
(ニワトリと卵の問題) -
EVにトレンドが変化していくとき、既存の自動車メーカーを中心とした産業構造がどのように変わっていくのか。自動車を取り巻いている各産業のとるべき戦略を予測している本だ。
AT・カーニー著「電気自動車が革新する企業戦略」日経BP社(2009)
* 国としてのEVの支援策は大きく3つある①研究開発による支援策②購入促進策③インフラ整備
* EVは自動車の製品アーキテクチャーがオープンアーキテクチャー化へ進むことが十分考えられる。そして、コアの部品の担い手は市場において圧倒的なポジションと利益を獲得する。
* EVが普及するか否かの鍵を握るのはリチウムイオン電池である。そのため、電池ビジネスの主導権を握ることが将来の大きな成長と収益を得られる元となる可能性が大きい。そして、電気自動車の普及には、自動車メーカー単独ではなく、「システム売り」「ビジネスモデル開発」が重要となってくる。
* スマートグリッドを要約すると2点に集約される。①系統電力、分散型電源(太陽光電池ほか)、2次電池(EV含む)との接続。②ITによる双方向性を持つエネルギー最適利用のための予測、モニタリング、制御。
* 2020年の車載用電池市場は2兆円を越す。ハイブリッド車や電気自動車には産業を変えるダイナニズムがある。