成人発達理論による能力の成長 ダイナミックスキル理論の実践的活用法
- 日本能率協会マネジメントセンター (2017年6月15日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
- / ISBN・EAN: 9784820759829
作品紹介・あらすじ
■能力開発の領域で、欧米同様に日本でも近年注目されている成人対象の「発達心理学」。ハーバード大学教育大学院(HGSE)を中心に研究が進み、ロバート・キーガン教授らの成果が『なぜ人と組織は変われないのか』『行動探求』(ともに英治出版)、『なぜ部下とうまくいかないのか』(小社)などの書籍として日本で紹介されています。
■キーガンの理論では、人間の器(人間性)の成長を中心に取り扱うものですが、人間性が高いにもかかわらず、仕事の力量(スキル)は低いという人も見受けられます。そこで本書では、その矛盾を是正するものとして、スキルの成長にも焦点を当てた、HGSEカート・フィッシャー教授が提唱する「ダイナミックスキル理論」に基づく能力開発について事例をもとに解説します。
■キーガン教授およびフィッシャー教授とも親交のあった著者が、日本の人事部門や管理者など能力開発を担う実務家を対象に、スキル開発のメカニズムとプロセスを解き明かし、その実践法をわかりやすく丁寧に解説します。そして各項目ごとに「成長レシピ」というエクササイズを設け、本を読み進めながら実践を行う編集になっています。
■また、本書の内容を補完するコラムは、コーヒーブレークとして楽しい内容ばかりです。
感想・レビュー・書評
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「成人発達理論による能力の成長」加藤洋平
知性発達科学とは、私達が持っている様々な知性や能力が、どのようなメカニズムで成長し、どのようなプロセスを辿りながら成長していくのいかを解明する学問。
私たちが生きていく過程というのは、人格的な成熟と能力の成長を絶えず行うプロセス。
私たちの知性は環境、文化、身体と相互作用するダイナミックな特徴を持つ。多様な要因に影響を受けながらダイナミックに成長していく。
能力の成長プロセスはハシゴや階段状ではなく、網の目のようなもの。停滞や退行を含みながら様々な能力が互いに関係し合いながら非線形に成長していく。
私たちが発揮するスキルは自分が注いできた時間と努力の結晶であると同時に、他者、文化、環境の恩恵によって生み出された結晶。
私たちの能力には多様な種類があるだけではなく、その習熟度に応じたレベルが存在している。
私たちの能力は環境依存性という特徴を持つ。環境とは状況と言い換える事ができ、私たちの能力の種類とレベルは置かれている状況に応じて変化する。
私たちの能力は、置かれている状況の種類や特性に左右されるため、能力を開発するためには取り巻く状況の種類や特性を見極める事が最初に求められる。
私たちの能力は課題依存性という特徴を持つ。課題の種類や性質が変わると、発揮する能力の種類やレベルが変わる。
私たちの能力は、特定の課題に対して発揮されるだけでなく、具体的な課題を通じてしか育まれない。
特徴が明確になった能力は伸ばしやすい。
私たちの能力は変動性を持っている。変動性とは、能力の種類やレベルのばらつきの事。変動性は置かれている状況や取り組む課題のみならず、私たち自身の感情状態や身体状態などによってもたらされる。
昨日できていた事が今日できないのは子供でも大人でも自然な現象。
変動性とは、学習や実践の中で意図的に発生する変化であり、ノイズとは学習や実践の中で不可避的に発生する変化。
変動性がなくなると成長が止まるので、実践に変動性をもたらすような工夫と揺さぶりが必要。
ノイズの特徴は、外部環境が生み出す自然なものであったり、私たちが無意識的に生み出すような変化。ノイズに自覚的になり、意識的に取り入れる事は変動性が確保された実践に繋がる。
先週1週間あるいはこれからの1週間、日々の生活の中での取り組みを「充実感」という一つの感情を通して観察してみる。その時、充実度の度合いを0から10で尺度化し、そのばらつき度合いを観察する。
全ての領域に適用可能な能力はない。
私たちの能力は、個別具体的な実践を意識的に取り込むことでしか向上しない。
状況や課題を考慮して、一つの能力を構成するサブ能力を特定していくことが能力開発の上で最初に求められること。
「最適レベル」とは他者からの支援によって発揮される自分の最大限の能力レベルのこと。「機能レベル」とは他者からの支援なしに発揮される自分の最大限の能力レベルのこと。「発達範囲」とは最適レベルと昨日レベルのギャップ。
私たちは年齢を重ねるごとに発達範囲が広がり、他者からの支援がより必要になる。より高度な能力を獲得する為には、他者からの支援に基づいて最適レベルを発揮していく実践を行うことが重要。
「マクロな成長」とは年単位、「メソな成長」とは月、週単位。「ミクロな成長」とは日、時、分、秒単位の成長の事。マクロな成長が起こるためにはメソな成長が必要であり、メソな成長が起こるためにはミクロな成長が必要になる。
私たちのいかなる能力も点、線、面、立体のサイクルで成長する。
私たちの能力はそれを構成する多様なサブ能力が生み出すネットワーク。
ダイナミックネットワーク理論は、私たちの能力がそれを構成する様々な能力の相互作用を通じて成長していく事を説明する。
能力が質的に成長するというのは、一つの能力が点、線、面、立体の成長サイクルを経て成長していく事。能力が量的に成長するというのは、一つ一つの能力を構成するネットワークが縦と横に拡大していく事。質的成長の中にも量的成長が見られ、量的成長の中にも質的成長が見られる。
ネットワークを構成する一つ一つのノード(能力)は、環境、課題、自分の状態などに応じてリアルタイムに収縮する。
アイデンティティの発達には、社会から課せられる適切な要求と自分の発達段階の差から生まれる適度な葛藤が必要。
能力の5つの成長法則
統合化、、複数の能力が結びつき、新たなレベル(点→線→面→立体)に移行する質的成長。長大な時間を要する。
複合化、、複数の能力が組み合わさってより高度な能力(点、線、面、立体の数が増える)になる量的成長
焦点化、、ある課題をこなす為に必要となる能力を即座に選び抜く。
代用化、、培った能力を他の状況や課題に対して応用させる。
差異化、、生物の細胞分裂。差異化と統合化は同時に起こる。能力が分化する事で質的に新しい能力が生み出される。
能力のレベルとは、質的差異の事。つまりその人が長大な時間と努力を注ぎ込んだ末に習得される能力の高さや深さ。安易な量的拡大思想は、現代社会の至る所で見受けられ、それは質的な差異を平面化させる暴力的な側面を持つ。
能力の成長プロセスは13のレベルと5つの階層構造を持つ。
1.反射階層、、、、幼児が眼前の積み木を見て口に入れるような無意識な反応。
2.感覚運動階層、、言葉を用いずに身体的な動作を生み出す。
3.表象階層、、、、個別具体的なものが眼前になくても言葉によってそれをイメージする。
4.抽象階層、、、、目には見えない抽象的な事柄を言葉によって扱う。
5.原理階層、、、、抽象的な様々な概念をさらに高度な概念や理論にまとめ上げる。まだほぼ存在しない。
上記5つの能力階層の一つ一つには、「点、線、面、立体」の成長サイクルが現れる。
点、、、単一要素段階
線、、、要素配置段階
面、、、システム構成段階
立体、、、メタシステム構成段階
フィッシャーの能力レベル
レベル6(単一表象)、、、事物の具体的な一つの側面を言葉によって捉える事ができる。このレベルは「点」としての段階であり、言語表現は「定義的」
レベル7(表象配置)、、、事物の具体的な特徴を一つ取り上げ、その特徴についてさらに一つの具体的な特性を説明する事ができる。このレベルは線としての段階であり、言語表現は「線形的」
レベル8(表象システム)、、ある事物を取り上げ、その事物の具体的な特徴を複数捉え、それらをまとめる事ができるようになる。このレベルは「面」としての段階であり、言語表現は「多面的」
レベル9(単一抽象)、、、事物の抽象的な一つの側面を言葉によって捉える事ができる。このレベルは「点」としての段階であり言語表現は「定義的」
レベル10(抽象配置)、、、事物の抽象的な特徴を一つ取り上げ、その特徴についてさらに一つの抽象的な特性を説明する事ができる。このレベルは「線」としての段階であり、言語表現は「線形的」
レベル11(抽象システム)、、、ある事物を取り上げ、その事物の抽象的な特徴を複数捉え、それらをまとめる事ができる。このレベルは「面」としての段階であり、言語表現は「多面的」。プロに求められる最低限のレベル。
レベル12(単一原理)、、、レベル11で作り上げた「面」をさらに複数個作り出し、それらを関連づけ、一段高次元の概念の中でそれらをまとめることができる。これまでの知識と経験を総動員して自分が伝えようとする意味に最も合致した新たな言葉を生み出す傾向がある。往々にしてそうした新たな言葉は一般には馴染みがない。だがその言葉の裏には知識や経験が結晶化され、極めて複雑な意味の体系(面)が含まれている。
「抽象的」という言葉の本質は「曖昧なもの」ではなく、全体像を把握する事。
現象の本質を捉える為にも要点を得る為にも抽象化能力は不可欠。
経営者が行う意思決定は、具体的な経営事象を観察し、それらの現象の本質を抽出する事を行いながら、複数の現象に潜む本質の関係性をもとにして一つの経営判断を下す事。
あるレベルの問題を解決する為には、それよりも一段上のレベルで思考ができなければならない。
抽象化とは一般化であり、一般化によって知識や経験に再現性がもたらされる。
抽象化された知識や経験は教育可能なものとなる。
抽象化には再現性と教育可能性という特徴があるがゆえに、自分の知識や経験を抽象化し、持論を形成する事が大切。
能力が高まらない原因は、知識の圧倒的な欠落と言語化の鍛錬不足。
レベル12の人は博士課程並みの知識を持ち、博士課程並みの思考訓練を自らに課している。
レベル12に到達する為には、知識や経験を血肉化し、実践と言語化を通じて自分の知識や経験を絶えず検証していく事が求められる。
全ての元である「点」作りは、知識や経験に自分の言葉を当てる実践から始まる。
能力のレベルとは、思考の深さであり、それが高まる事により、これまで見えなかったものが見えるようになり、解決の糸口が見つけられなかった問題の解決策を発見できる。
思考能力のレベルが高度化するとは、扱える情報量の拡大であり、そのように拡張した情報を実際の現場の中で活用する実践力が高度化する事を意味する。
能力には位置エネルギーがあり、能力が高度になればなるほど発揮される実践力が高まる。
能力には次元があり、次元の拡張は情報量の増大を意味し、これまでの情報を一段高い次元で活用する事ができるようになる。
レベル11以下の人は情報を熱心に収集する情報の消費者。11以上の人は自らの知識と経験をもとにして、新たに情報を作り出す事に熱心な情報の生産者。
人はどのレベルにいたとしても一見高度な言葉を発する事ができるので、「何が語られているのか?」を見るのではなく、「何がどのような意味でどのように語られているのか?」を見る事が発話内容ではなく発話構造に着目する意味。
発話内容と発話構造の混同は、一見高度に思える語彙が盲目的に信奉され、それらの言葉が持つ深層的な意味を理解しない状態でそれらの言葉が社会で表面的に広く用いられるようになる危険性があり、また、本物と偽物を見分ける事をさらに難しくしてしまう。発話内容と発話構造の違いを見極める目を獲得する第一歩として発達理論の枠組みを学習する事。
<後半>
既存の能力開発の考え方や方法に潜んでいる問題点
・変動性の無視、、、意味の不明瞭な単調な実践はモチベーションを下げるだけでなく、能力開発にほぼ意味がない。
・生態学的妥当性の無視、、、生態学妥当性とは、練習と実際の現場の乖離具合。研修が実際の現場とどのような繋がりを持っているのかを絶えず考え、妥当性の高い研修を提供する事。
・各々には、多様な能力領域があり、それぞれに独自のレベルが存在し、それらは多様なプロセスを経て成長していくという考え方が浸透していない事。客観的なアセスメントが必要であり、その結果に基づいた、さらなる成長を支援するプログラムが必要。
ニューウェルの三角形
人、環境、課題の制約条件(保持する能力の種類とレベル、状況の性質、課題の種類とレベル)を考慮し、それらの相互作用を考えながら能力開発をする。
ピンクノイズとは1/fゆらぎやバッハの音楽。
能力開発に変動性は不可避であり、変動性と安定性が最適なバランスにあるピンクノイズを意識する事。
実践者が変動性の激しいホワイトノイズを発していれば安定性を高める介入が、安定性が強いブラウンノイズを発していれば変動性を高める介入が有効。
成長支援をする者は、人、環境、課題のそれぞれに変動性がある事を理解し、どこの変動性を上げ下げすればよいのかと判断する事。
能力が停滞する時期や退行する時期は成長に必要な熟成期間である。
小さい頃に無理に能力を伸ばす事を強制された場合、20歳を過ぎるあたりで成長が止まる現象をピアジェ効果と言う。
高度な能力レベルに近づくほど、成長速度は遅くなる。
最近接発達領域とは、他者からの支援があった場合に1人ではできないことができる事に変わる領域。
能力が成長すればするほど1人で成し遂げられる事が増える一方で、より高度な課題と向き合わざるを得なくなるため、1人では成し遂げられない事も増えていく。その為、他者の支援を受けながら能力を開発していく事が重要になる。
支援を求める勇気と与える勇気が重要。
成長支援の肝は、「できない」事を適切な支援のもとに与え続ける事。
「やればできる」から「やればできた」へ支援する。
「つまり?」と問う事は、相手に本質を考えさせ、一段高い視点から説明内容を眺める素晴らしい機会を与えている。
「例えば?」と問う事は、相手にその説明内容の具体例を考えさせる事を促すため、一つ下の能力レベルで物事を考えさせる事になり、その能力の土台をより確固としたものにする支援となる。
直接的、間接的スキャフォールディングは、成長プロセスを歩む足取りを確固としたものにする為の支援を指す。口頭で実践のコツや作業手順を伝える間接的スキャフォールディングでも直接的と同じくらい効果がある。
マインドフルネス瞑想の目的は毎日を深く生きる事であり、多く生きる事ではない。量的な成長ではなく、質的な成長。
瞑想が自己目的化し、現実世界の状況と課題から切り離されていては質的な成長は起こらない。
能力を高めていく際に重要なのは、実践を長きにわたって継続させていく事。(1万時間の法則)
フロー状態の作り方
難し過ぎず簡単過ぎない課題に一定時間取り組む。
能力の成長に必要な三要素
1.適切な支援の存在
2.能力レベルと課題レベルの均衡
3.変動性と安定性の均衡
リフレクションとは、自分の体験や経験を振り返り、そこに自分なりの意味づけを行い、新たな行動指針や考え方を形作っていく実践の事。能力は具体的な課題を通じて得られた体験を経験に変えていく過程の中で高まる。
真のリフレクションは、過去の経験を思い出すだけでなく、自分の経験をより高い次元でまとめあげる新しい言葉を自分で生み出す事。
自分独自の経験を真に掴まなければ成長の歩みは進まない。
自分の言葉を見つけようとする試みと、自分の言葉を紡ぎ出していく試みが極めて重要。
経験を抽象化する事によって、再現性のある持論が形成されていき、それを新たな経験と照らし合わせながら持論を磨いていく作業を継続する事により、経験が真の意味で「深化」していく。その経験の深化が、私たち自身の進化。
発達心理学におけるシステム思考とは、システムを眺めるのではなく、概念的なシステムを構築していく思考の事。創造的思考方法。レベル11で初めて可能となる。
自分の問いが新たな経験を開き、その経験がさらなる成長に導く。その成長がさらなる問いを開く。このサイクルが生涯を通じた成長。
人間の成長の三要素は「人、環境、課題」
人間関係がもたらす適度な揺らぎは、成長にとって不可欠なもの。そうした揺らぎと向き合いながら生きていくことこそが他者を通じた一生涯の成長プロセス。
成長とは、人、環境、文化、時期の相互作用が織りなす賜物。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
能力はどのようにして開花していくかを学術的アプローチによって体系化した本。
成長論がここまで言語化されている本は見たことがない。
○簡略まとめ
(1)能力開花はいろんなことをやること、やらせることが最も手っ取り早い
(2)「持論形成能力」をもつと成長が加速化する
イチローは「自分がなぜ打てたのかをすべて自分の言葉で説明することができる」と言っている。
大谷翔平のマンダラートや中村俊輔のサッカーノートなど、一流は絶対に持論を常に持ち、持論を磨きつづけている。
持論を持つひと、持論を形成できる人は、成長がはやい。
◯ダイナミックスキル理論とは
・ダイナミックスキル理論=わたしたちの能力がどのようなプロセスとメカニズムで成長していくのかの論理
・能力は網の目状の知的ネットワークを形成していくことで開発されていく。1つの領域だけではなく様々な知見が結びつくことで開花して成長となる
・例えば、長所を伸ばした後はサブ長所も活かすと、要因の融合につながる=能力開発につながる
→サブ能力の特定を行ってそれも伸ばすための試みも大事ということ
◯成長促進の根源は「持論形成力」
・言語化、アウトプット化される場面に到達すると安定して能力発揮できるようになる
・何故自分の能力が高まらないか?の理由は明白で「知識の圧倒的な欠落と、言語化の鍛錬不足」。
→成長したいと言ってる口ばかりのひとの100%に当てはまる。シンプルに勉強不足&アウトプット不足 -
「能力が成長するということはどういうことか?」について、
徹底的に考え抜いて、言語化した本。
結構、骨太な内容で、読むのにすこぶる時間がかかってしまいました。。
なるほど、能力の成長に「環境」や「課題」が影響を与えるというのは、その通りだと思うし、
能力自体も直線的でなく、ダイナミックに成長していくというのも、
確かにそんな感じがする、という読了感。
他にも「言語化」の重要性なども語られていて、
自分の今のやっている仕事とのリンクもたくさんありました。
ゾーン(フロー状態)などについても言及されていますが、
もう少し深く考察してほしかったのが少し残念。
後半は、すこし尻すぼみ感あり(コラムでも良かったかも)。
「能力の成長」について、真面目に考えようとする人なんて、
ほとんどいないと思うのですが、興味のある人にとっては一度は読んでおくべき本と言えるでしょう。
本の内容とは直接関係はありませんが、
「言語化」について自分の感じたことをメモ。
学びにおいて、「言語化」が大切であることは間違いがない事実ですが、
これに気を取られ過ぎてしまうと、自分が「言語化」しようともしない事象に対して、
見逃してしまうので注意が必要かとも感じました。
(そもそも「言語化」しようともしない時点で、
見逃してしまいがちなのですが…。)
それでも、「言語化」するのが難しかったり、大変だから、
「言語化」せずに学びのチャンスを逃してしまうケースと、
そもそも「言語化」しようともしない事象(例えば、センスや感覚に近いもの)があることは分けて考えるべき、というのが個人的な見解です。
ま、こんなこと気にする人はほとんどいないと思うけど。。 -
人の成長とは人間としての器の拡大・深化と具体的スキルの獲得・向上の二つともが、進歩と後退を繰り返すダイナミズムの中でなされていくことをいう。能力を構成するサブ能力を特定し、その能力レベルを把握した上で、人の助け(スキャフォールディング)を得ながらなんとか達成できる課題に、レベルや環境を変えるノイズを組み込み、最適レベルを高める必要があり、成長プロセスは人それぞれのものであり、想像以上に時間がかかる ものである。具体的体験を得たときに内省し、自分の言葉でその体験を抽象化・言語化すると具体的体験が再現性のある経験に変わり、複数の経験を組み合わせて持論を形成することができる。持論や仮説を持った上で実践を行い、そこで得た具体的体験をさらに抽象化して自分の言葉でまとめ上げることができると、一次元高いところへの飛躍的成長となる。プロフェッショナルは、どのような分野・領域でも、専門分野に関する知識基盤を確立する作業に継続的に取り組み、そこで得た知識を自分の言葉に変換・咀嚼して持論を生み出し、実践の中で活用してそこでの体験をさらに体系化することが必須となる。新鮮な学びだったのは、高度な能力を開発する場合や成長がより進んだ段階では、他者からの助けを借りて到達できる最適レベルと1人で到達できる機能レベルの差が大きくなっていくということ。大人になると自分1人でできることが増えるのではなく、むしろ1人ではできない課題が設定され、あるいは1人では到達することが難しい環境におかれることから、子供の時の能力開発よりも他者の助けを必要としている、ということ。そうであるにもかかわらず、大人の成長支援は適切な成長プロセスへの理解がないままなされることが多いと感じる。他者の成長支援や人事評価を行う立場に立つ人がまず、人間の成長に対する理解が必要だろう。今回私が設定した能力は意思決定能力。成長のレシピへの現段階での回答→lv.9:意思決定とは自己の思考や感情に自覚的になった上で、決定の前後でどのような変化が生じるかを理解し一定の変化を生じさせることを選択すること。lv.10:意思決定による変化には内的変化と外的変化があり、前者は決定プロセスを通じて生じる一方、後者は決定した意思に基づく行動を伴うことで初めて生じる。lv.11内的変化は意思決定の前提となる自己理解や取捨選択をする過程で生じ、最終決断をした時点で変化を受け入れる準備をすることができる状態に至る。変化を受容する準備が整うと、変化に対する恐怖を行動意欲が凌駕し、外的変化を起こす行動に繋がる。すなわち、内的変化は外的変化に先行し、外的変化を促すという関係にあるといえる。lv.12は現時点では説明困難のため、今後の課題にしたい。こうして意思決定能力とはどのようなものか?を考えると、説明の過程で意思決定するためのサブ能力(自己理解能力、取捨選択能力、変化予測能力、変化受容能力等)がサブ能力として分解・抽出でき、言語化することで高めたい能力の理解を深め、実践していくことができる。
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まず1回目読了。
見た目とっつきにくく感じたが、成人後の発達について詳細に書かれていて読み進めるうちに惹きこまれ一気に読むことができた。
2回目は途中に出てくる「成長レシピ」を実践しながら読み進めたい。
能力の「環境依存性」「課題依存性」「変動性」、どれもあたりまえのことなのに、いざ課題がうまく進まない時になるとそこに思い至らないことにあらためて気づかされた。
高めたいと思っている能力が漠然としていては能力は伸びない一方、個別具体的にサブ能力を少しずつ高めていくと、ある時全体として能力が高まる現象が起こるということはとても興味深い。
学んだこと、体験を自分の言葉で言語化し、抽象化、一般化することは時に面倒に感じてしまうが、言語化することがまさに高めたい能力を具体的に磨いていくことであるならば楽しみにもなった。 -
一見、「英治出版」の本かと見まごうブックデザイン。
内容的にも、キーガンの「なぜ人と組織は変れないのか」(ITC=Immunity to Change)と関連性が高いもの。
世の中一般では、大人になると人間は変らない、新しいスキルは習得できないという固定観念があるが、キーガンは、大人でも「知性のレベル」は発達すると言う。
この考えは、とても勇気づけられるものだし、「大人の成長」にかかわることを最近は仕事にしているので、「便利な」考えである。
が、キーガンの本を読み進めると、大人の「知性レベル」なるものは、かならずしも世間一般でいう「知性」とは違いそう。
というわけで、もともとの表現を調べてみると、"mental complexity"というわけで、「心の複雑性」ですね〜。日本語的に「複雑性」はいいイメージではないけど、「心の成熟」みたいな感じなんでしょうね。
そういう感じなら、分かるのだが、では、普通の意味での「知性」とか、具体的なスキルって、大人になっても習得したりすることはできるのかという疑問をひそかにいただいていた。
という疑問に対して、フィッシャーという人の理論にもとづいて解説してくるのが、この本。
この本によると、キーガンは大人の「器」としての成長で、フィッシャーは「器」の中身のスキルのダイナミックな成長を扱っているらしい。
内容的にも、とてもコンパクトに分かりやすく書いてあるので、この分野でのわたしの知的欲求は満たされた。
また、マインドフルネス瞑想とか、内省、システム思考との関係性なども整理されていて便利。
しかしながら、スキルの習得は、高度のレベルになると、言語化、抽象化ということがポイントになってくるらしく、そういう面もあるかもだが、スキルや知識の種類によっては、より具体的/身体的なものが大事なものもあるのではないかなという素朴な疑問は残る。
たとえば、大人になっても、外国語とか、わたしの苦手な数学とかが、習得可能なのか、そうであれば、どういう学習法が効果的なのか、みたいなことに関する個人的な疑問はまだ解消せず。
「大人の成長」は、もう少し、研究テーマかな? -
ダイナミックスキル理論の解説と実践。
発達学の案内。コレはすごい。
システム思考や内省にゴルフの話の定番どころに専門的な解説が入りスッキリ。
フィッシャーのレベルの深さも納得でき、レベル1の意識が芽生えた。
人との学習を通じるOSやアプリケーションのスキルの発達と成長の分類。
どれをとっても今まで学んだ理論と実践が明快。
この本をベースに今書いてるような言語化を通じた自分自身の理解の創出を心がけたい。
成長レシピという考えは画期的でいろんな点、線、面、立体構造があるなと感じた。 -
抽象性が高まるというのは、実践でも再現性が高まるということを意味する。自分で抽象的な理論にして身に付けている人はパフォーマンスが高い。
私たちは日々、貴重な洞察を含む体験を様々に積んでいながらも、それらを自分の言葉で捉えないゆえに、体験が無かったものとして滑り落ちていく。要するに、点としての知識を真に自分の中で血肉化させるというのは、その知識に自分の言葉をあて、自分での言葉で再解釈された知識を自分の中で取り入れることが必要。 -
成長したいという誰もが持つ感情に対して、成人発達理論から論理的に何が大切かを学ばせてくれる一冊。
例えば、リーダーシップを伸ばしたい。と感じていてもどんな場面でどんな環境や状況や課題の中でのリーダーシップなのか、そもそもリーダーシップとは具体的にどんなスキルのことを言っているのか、どのレベルなのか、(そもそもどういった段階のレベルがあるのか)などなど、一つ一つを学術から体系化してある。
なんとなく成長したいがどう考えていけば良いか悩んでいる人に薦めたい。