越境学習入門 組織を強くする「冒険人材」の育て方

  • 日本能率協会マネジメントセンター
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784820729952

作品紹介・あらすじ

越境学習とは 〝冒険者〞を育てる学習のメカニズムである

日本企業にはイノベーションが足りない、と言われるようになって久しい。
足りないイノベーションを求め、多くの企業で毎日のように会議が行われている。
だが、足りないのは、イノベーションではなく、〝冒険〞なのではないだろうか。
「冒険だなんて、中二病じゃあるまいし…」と笑わずに聞いてほしい。

未知なる領域に足を入れ、思いもよらないような出会いをしたり、
これまでの常識が通じない世界で、自分の意外な能力に目覚めたり、
仲間と共に困難を乗り越える経験を通して、新たな智恵を授かったり、
広い世界を知ることで、自らの新たな使命に気づいたりする〝冒険〞。
トラブルに巻き込まれて道に迷ったり、
リスクを取って挑戦してみたものの、大失敗したり、
想定外のことばかり起きる〝冒険〞。
苦い現実と格闘し、泥沼を夢中で進んでいった先に見える新しい世界、新しい道、
新しい自分、なにか新しいものを手に入れる〝冒険〟。
ドキドキハラハラする…からこそ、ワクワクする〝冒険〟

日本企業に足りないのは、そんな〝冒険〟であり、
冒険する力を備えた〝冒険者たち〟ではないか。
そして、境界を超え、冒険に身を投じる力、冒険を楽しむ力、冒険し続ける力を持った
冒険者たちを育てるプロセスこそ越境学習なのではないか。
それが、働く人たちを対象とした越境学習の研究を通して、我々が見出した仮説だ。

本書は、企業がどうすれば〝冒険者たち〟を育て、
その力を企業が前進する力にできるのかを、
企業における越境学習の研究を通して著したものである。
ただし、〝冒険者たち〟と共に進む道は、これまで歩んできた道から外れ、
行く先も分からない道なき道になる…かもしれない。
そんな〝冒険者たち〟と共に自らも〝冒険者〟となる覚悟のある方にこそ、
この『越境学習入門』を勧めたい。 

越境学習の世界へようこそ

越境学習とは、個人にとって居心地のよい慣れた場所であるホームと、居心地が悪く慣れない場所だがその分刺激に満ちているアウェイとを往還する(行き来する)ことによる学びです。越境学習者は、アウェイで違和感を抱き、葛藤や無力感、もどかしさを味わいますが、それを乗り越えた結果、前提を疑い、不確実な状態に耐えられようになります。

つまり、越境学習とは冒険者を育てる学習のメカニズムなのです。

近年では、越境学習に多くの企業が注目していますが、そのプロセス、全体像は明らかになっていませんでした。

本書は、多くの越境学習者への詳細な調査に基づき、その全体像を解説し、企業と個人が越境学習を開始・実践する方法を詳細に提案します。

感想・レビュー・書評

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  • サブタイトルが「組織を強くする冒険人材の育て方」である通り、あえて、異文化に飛び込むことで、「人材」を育てるための指南書。
    正直なところ「なんでそんなことをあえてするの?」と思う自分は、3〜5年で異動したり転勤したりと仕事環境が変わるので、自然と「越境学習」する環境で育ったんだな、と思いながら読んだ。

    特に気になったところを3つ述べてみる。

    1つ目。P76付近の「述語主義」。本文から引用すると「述語主義とは、日常的にいつも同じ文脈で暮らしてる人が、だんだん守護を省略するようになること」とある。
    越境して最初に感じる違和感はこれだなと思う。確かに、ずっとそこにいる人は主語を省略しても文脈から推測できるから問題ないだろう。ただし、越境者からすると、最初に困るんはこの主語の省略であり、仕事を進める上で、毎回確認が必要になる。
    これは、越境者のみならず、新卒採用者に対しても仕事を教える上でボトルネックになるし、日々のやり取りの中で、いわゆる「現地にいる人」ですら主語を取り違えて仕事上のミスを起こしていることがある。特に、ビジネスがグローバル化している現代では、電話やメールで「越境」して連絡をすることもあるわけで、「通じるだろう」という楽観的な推測は必ずあてはまるとは限らない。原点に帰って5W1Hを必ず確認することは必要だろう。

    2つ目。P186付近の「迫害をどう防ぐか」。越境者は必ず迫害される。
    迫害というと大げさだが、そういうものである。
    1つ目でも述べたように、述語主義で通じる集団に異物が入ってきて、毎回確認したり、いわゆる「現地にいる人」の「常識」が通用しないからこそ、「あの人なにしてんの?」と白い視線を感じる。「越境者は2度死ぬ」の項でも述べられているが、異質な文化に混ざるということは、実は大変な労力を要するし、元の組織に戻っても「かぶれてる」と冷ややかな態度をとられがちである。
    越境に対して、セルフケアが可能な人材なら問題はないが、そうでない人には組織的なケアが必要となるであろう。
    さらに、「迫害」とまで行かなくても、「異分子に対しての態度」は、気をつけないとグローバルなビジネス交流についていけずに、自社が滅びる結果になりかねないと思う。
    組織の「対外的な対応」にも通じる部分と思えた。

    3つ目。P204付近の「発信スタイルの変更」。
    越境者が「こうあるべき、こうやるべき」と自分の意見を述べたところで冷ややかな目でしか見られないのはごく当然のことだ。であれば、「自分はこんなことやりたい!こんなことが好き!」とポジティブに楽しく仕事して人を巻き込むしかないと思う。
    これについては、越境に限らず、日々、そういう態度でありたいと思う。

    日々の「当たり前」と思っていることが、実は、他の文化圏に行けば当たり前ではなくなる。「視野を広げる」とは「越境したことも想定して相手の気持を慮ること」だと思う。
    そんな当たり前のことを改めて気が付かせてくれる、そんな1冊。

  • 前半はエンゲストローム、ヴィゴツキーといった学習理論から越境学習の系譜を紐解き、後半に向かうにつれ、越境学習がもたらす個人的体験と組織との関わりが事例を交えて紹介される。人事や働く人の現場をよくわかる人が書いたかなり入門的ではあるが網羅的で実践的にまとめられた良書だった。

    後半で特にページが割かれていた越境学習者のカスタマージャーニー的なプロセスの記述は興味深く、自らの社会人大学院通じた越境学習体験と深く重なり納得感があった。確かに私も二度死んだ。ただただ分かりやすい。概念浸透の段階で、難解な学習理論の書籍が多い中で、この分かりやすさは社会の宝だ。

    これから制度の導入もそうだが越境学習者への支援も組織課題として組み込まれるようになるだろう。
    越境学習のルーブリック評価基準は大変実用的に見える。

  • 越境学習は二度死ぬ。
    葛藤をホーム&アウェイで感じて学びとする。
    会社の仕組みとして考えてルーブリックとして経済産業省と作る最後の話は学術視点ならでは。
    ただ単純にweb業界におけるコミュニティと運営と発表につながる話でもある。
    どこまで当たり前と思うかもあるが、知の深化だけでない探索の時代において
    外の情報をとりに行くのは当たり前と思えるようにしたい。
    企業であれば推奨であり支援でありとなりイベントとなるのだろう。

  • 学術的な根拠と、丹念な調査結果、そして越境者の生の声を組み合わせ、わかりやすくかつ納得感がありました。

  • 違う組織に行って戻ってくる。行った先で一回、戻ったあとでもう一回の違和感を覚える。
    全体として納得感はあるものの、目新しさがあまり感じられず。誰もが行ったり来たりできる(単発的な往復だけでなく)、そしてそれぞれの異なる背景が混じり合う、そんな流動性のある状態が心理的安全性のある状態で実現できればよいが。

  • アウェイ

  • 越境するだけでなく、越境して戻ってくることによって、より学びにつながるというのは新たな気づきでした。避けたいこととして「迫害」「風化」そして「活躍を過度に期待すること」が挙げられていて大きな納得感。

  • ここ最近の自分の状況に合っていてとても良かった。

    本当に良いタイミングでこの本に出会えたと思ってますが、米教育学者メジローによる「変容的学習」と「混乱するジレンマ」の話は今の自分を表しているようで。

    この本を読んだことで、しばらく指摘され続けていた「自己変容型知性(参考:https://globis.jp/article/6365)を身につけろ」ってところがようやく腹落ちした気もしています。

  • 越境学習者は2度死ぬ

    この表現に全て集約されている
    学習者も、それをサポートする周りの人もその点を理解しおくことで、越境の効果を最大限活かせるのではないか。

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著者プロフィール

石山 恒貴
法政大学大学院政策創造研究科教授。
一橋大学社会学部卒業、産業能率大学大学院経営情報学研究科修士課程修了、法政大学大学院政策創造研究科博士後期課程修了、博士(政策学)。
一橋大学卒業後、NEC、GE、米系ライフサイエンス会社を経て、現職。

「2022年 『越境学習入門』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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