組織も人も変わることができる! なぜ部下とうまくいかないのか 「自他変革」の発達心理学
- 日本能率協会マネジメントセンター (2016年3月24日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784820719458
作品紹介・あらすじ
自分と部下が成長していく、対話力と行動力。あるワインバーでの偶然の出会いによって、人間関係に悩む気弱な課長が部下育成と組織マネジメントに自信を持つようになったビジネスストーリー。
感想・レビュー・書評
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組織も人も変わることができる! なぜ部下とうまくいかないのか 「自他変革」の発達心理学。加藤洋平先生の著書。権力を振りかざして偉そうな言動で指示命令したところで、その場限りで言うことは聞くかもしれないけれど、結局は良い結果にはつながらない。無意味な思い込みやプライド、傲岸不遜な態度を捨てて、冷静に対話をすれば、人の心は動かせる。
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「なぜ部下とうまくいかないのか」加藤洋平
人間は、知識やスキルを獲得するだけではなく、質的な成長を継続的に実現しうる。
発達理論の世界では、各意識段階は固有の価値を持っている事を尊重する。
人は自分よりも上の意識段階を理解する事ができない。建物のそれぞれの階から見える景色は多様。
人間の意識の発達とは、曖昧さに対する耐久性の増加。
意識が成長することによって、人としての器の容量そのものが拡大していく。それに伴って人は多様な知識や経験をそこに蓄えていけるようになる。
意識段階の違いによって世界の見え方が異なっており、知識や経験の取り入れ方も違えば、各人固有の容器によって加工されたアウトプットも質的に異なるものになる。
意識の成長発達は一概に年齢によって決定されるわけではない。
人間を人間たらしめているのは、意味を構築する事。
人間の意識の成長発達は、主体から客体へ移行する連続的なプロセス。
ある意識段階から次の意識段階へ移行していくほど、客体化できる範囲が広がり、世界の捉え方が変化していく。
段階2の人は自分中心的な発想で動いているだけでなく、白黒はっきりさせるような二分法的な世界観を持っている。なので自分中心の視点から一歩離れた視点を取ってもらうような問いを投げること。
成人は一つの段階を少なくとも5-10年、あるいはそれ以上かけて成長していく。
適切な課題と支援を与えながら自らの力で成長してもらうこと。
強引な早期英才教育は、植物を育てる際に化学肥料を大量に与える事に等しい。
人には発達範囲があり、状況や文脈、体調、感情状態が変わると発達段階が上下動する。
段階2の人とのコミュニケーションで最も避けなければならない事は、相手が感情的になった時、それに対して感情的な反応をしてしまう事。相手が感情的な態度を示したら、自分の意識を下に下にさげる。
発達理論には様々な段階モデルがあり、マズローは人間の欲求に焦点を当て、キーガンは人間の世界認識方法に焦点を当てた。
大企業には、組織階層の上の者が知らず知らずのうちに、階層の下の者に対して抑圧するような見えないメカニズムが生み出されていたり、階層の下の者が上の者に意見をしにくいメカニズムが生み出されている。
社会は段階3の人たちが大量に生み出される事を望んでいるので、段階3から逸脱するような人たちを抑圧する傾向にある。その為、段階3を乗り越えていくのは相当過酷なプロセスになる。
人間の成長は曖昧なものを受け入れいていくことによって初めて成し遂げられる。
段階3は権威主義的段階。段階4は権威超越的段階。
段階4は、既存の情報を鵜呑みにするのではなく、自分の頭でそれらを咀嚼し、自分なりに意味を再構築していくという、これまでとは異なった新たな意味を生み出していけるような知性が求められる。
既存の物の見方や権威の主張に対して疑いの目を持って、それらを超克していけるだけの意識の器が必要。
段階4の振る舞いは、単なる欲求に従った利己的なものというよりも、心の内側にあるより高度な規範に基づいている。
社会や組織の声に盲従するのではなく、内発的な問いを自ら発せられる事が、自律的な自己を確立する事に不可欠。
段階4は自分の価値体系に縛られるという限界を持つ。
プロフェッショナル人財とは、単になにかの専門家を意味するのではなく、主体的自律的に行動できる個人のこと。
水平的な成長とは、知識やスキルの獲得、垂直的な成長とは、意識の器の拡大、認識の枠組みの変化を表す。
段階5の要素が芽生えてくると、他者の存在は自分の成長に不可欠であるという認識が生まれてくる。
水平的な成長とはPCのソフトを増やす行為、垂直的な成長とは、PCのOSそのものを変えていくこと。
他者の成長に関わる者自身の発達段階は、支援の質と効果に極めて大きな影響を与える。
垂直的な成長は意識段階の低いコーチからでは起こらない。
既存の価値観を乗り越えていく為に必要な事は、異質なものに触れる事。
人間の成長発達は葛藤を乗り越えていくプロセス。
段階5に近づきつつある人は、自分の性格や個性、さらには自分の歴史までも客観的に捉えることができ、それらが自分を超えた世界の中で脈々と形成されていったことを的確に認識できる。
驚きが小さな自己の殻を破っていくきっかけになる。
生涯続く学びそのものが自分の人生になる。
段階5の人は、他者との共同は異なる認識の枠組みを理解する素晴らしい機会であると認識する。他者との協同を通じて自分自身と他者をより良く理解する為に、自分の価値体系や認識の枠組みの限界を頻繁に曝け出そうとする。
段階5に到達してはじめて人と組織の永続的な成長を促し、人と組織を導いてくれる真のリーダーになる。
段階5の人は優れたシステム思考を持つ。相反する事から逃げずに対極にあるものを統合させるような働きかけができる。
段階5の人は、他者の発達段階を見極める直感力が研ぎ澄まされているだけでなく、他者がどれくらい発達可能性を秘めているのかもわかってしまうような感性を持っている。
発達段階が高度になっていくにつれ、必ずしも生きる事が楽になったり人生が良くなったりするとは言えない。どの段階でも必ず固有の課題を乗り越える事が要求される。
意識の成長が進めば進むほど、自分が保持する過去の成功や社会的な地位名誉などはちっぽけなもに過ぎず、自分という人間は宇宙における一粒の砂のような存在にすぎないという明確な認識を獲得していく。
自律的な人材が増え、組織が活性化する事によって、新たな価値を創出する土壌が生まれてくる事を「組織の生産性の向上」と呼ぶ。
キーガンの5つの発達段階
段階1:具体的思考段階
具体的な事物を頭に思い浮かべて思考する事はできるが、形のない抽象的な概念は扱えない。幼少期。
段階2:道具主義的段階(利己的段階)成人人口の10%
極めて自己中心的な認識の枠組みを持つ。自分の欲求を満たす事に焦点が当てられており、他者をその達成の道具とみなす。他者の感情や思考を理解する事が困難。他者の視点も考慮し始めると段階3への移行サイン。
段階3:他者依存段階(慣習的段階)成人人口の70%
組織や集団の従属し、自らの意思決定基準を持たず他者に依存する形で意思決定する。
段階4:自己主導段階 成人人口の約20%
自分なりの価値観や意思決定基準を設け、自律的に行動する。自己成長に強い関心があったり、自分の意見を明確に主張する。
段階5:自己変容・相互発達段階 成人人口の1%未満。
自分の価値観や意見にとらわれる事なく、多様な価値観・意見などを汲み取りながら的確に意思決定ができる。他者の成長にベクトルが向かう。他者が成長する事により、自らも成長するという認識を持ち、他者と価値観や意見を共有しあいながらコミュニケーションを図る。 -
発達心理学について知ることができた。
読みやすい。 -
発達心理学について初めて読んだ本。
大人の学びを知りたくて。
今後部下をもつことになる、自分の成長具合の頭打ちを感じてた今読んで本当によかった本。
最近、上司にお願いして、リフレクションを始めたが、その時にどう考えれば垂直的な学びができるのかヒントになりそう。
発達心理学について知っている人は、会話形式、繰り返しの記載がまどろっこしさを感じるかも。
初めての人にはおすすめ。 -
感想
他者は乗り越えるべき障害ではない。排除すべき敵でもない。対話を通じて部下や上司とともに自己を実現する。ティール組織への足がかりとなるか。 -
・いきなり本家のキーガンを読むのではなく、こちらをざっと読むと発達心理学の概要がつかめてよい。ポイントが太字になっているので、太字を目で追うだけでも発達心理学のアウトラインが理解できるのがいい。キーガンを理解するよりもケン・ウィルバーの「インテグラル理論」を理解するのに良いかもしれない。
・認識できる範囲が広くなり深くなっていくと、ある時から自己が溶け出して他者と融和していくということなんでしょうね。この自他の溶解・融和の境地はまさに「広くなる」ということ。広くなるというのは宇宙的になるということ。人は成長して地球にいながら宇宙の一部になっていく。だから成長は必ずしも幸福ばかりではなく、孤独や苦悩も伴うという指摘も合点がいく。
・5つに分けた発達段階の整理はわかりやすく、伝えやすい。
■発達段階1 具体的思考段階
・言葉を獲得したての子供。すべての成人はこの段階を越えている
・形のない抽象概念はあつかえない
■発達段階2 道具主義的段階(利己的段階)
・成人人口の10%
・自分の関心事項や欲求を満たすことに焦点が当てられている。
・他者の感情・思考の理解が難しい
・例)自分に関係することにしか関係を寄せない部下
■発達段階3 他者依存段階(慣習的段階)
・成人人口の70%
・自らの意思決定基準を持っていないので、他者の基準によって行動が規定されている。組織や社会の決まり事を従順に守る。
・例)上司には従順だが自分の意見は言わない部下
■発達段階4 自己主導段階
・成人人口の20%
・自分なりの価値観・意思決定基準を設定でき、自律的に行動できる。
・自己成長に強い関心があり、自分の意見を明確に主張する。
・例)自律性が強すぎて他者の意見を無視する部下
■発達段階5 自己変容・相互発達段階
・成人人口の1%
・自分の価値観・意見にとらわれず、深い内省によって自分の行動を制限していた思い込みに自分で気づき、新しい自己を作り上げていける。
・自分(性格・個性・歴史など)を客観的にとらえる。個性・地位・お金・名誉といった価値体系を構成する対象に対して、強く自分自身を同一化させることはない。自分が認識できているすべてが世界の限られた側面しか映し出していないと知っているので、自分を構成する諸々のものは虚構の産物であるとの認識がある。
・自分の価値体系に囚われず、価値体系をオープンにし、多様な価値観・意見をくみ取りながら的確に意思決定ができる。
・他者との関わりあいによってお互いの成長・発達を促す触媒の役割を担う。他者の成長を支援するが、それによって当の自分自身が支えられているとの認識にいたる。
・人生は一生にわたる「学びの場」であると深いレベルで理解しているので生涯続く学びそのものが自分の人生であると捉えることが出来る。
・例)多様な部下とのかかわりから他者の成長に目覚める上司 -
成人発達理論の概要
各段階の推移は垂直的な成長により行われる
4から5への推移は既存の価値観、前提に気づき自らの価値体系を破壊し構築することにより行われる。
また人生とは何か、自らの生きる意味とは何かといった抽象的な問を自問するという段階を経る
人間は直感的に他者の精神の段階を判別できる
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人材開発のお勉強。
・ピアジェ効果
無理に成長・発達を促そうとすると、どこかで成長が止まってしまうということを示す概念。
「当時のアメリカにおいて早期英才教育が盛んに行われており、長期間に及ぶ追跡調査をした結果、無理に成長を強いられた子供たちの多くは、20歳を過ぎるあたりでピタリと成長が止まってしまうということが確認されたのです。」
◆5つの発達段階の要約
発達段階1 具体的思考段階
発達段階1は「具体的思考段階」と呼ばれます。この段階は、言葉を獲得したての子供に見られるものです。そのため、すべての成人は、基本的にこの段階を超えていると言えます。
具体的思考段階の特徴は、具体的な事物を頭に思い浮かべて思考することはできますが、形のない抽象的な概念を扱うことはできません。
例えば、この段階において、算数の計算はできますが、自ら方程式を立ててそれを解くことは至難の技です。この段階は成人期以前のものなので、本書では省略しています。
発達段階2 道具主義的段階(利己的民階)
発達段階2は「道具主義的段階」、あるいは「利己的段階」と呼ばれます。この段階は、成人人口の10パーセントに見られます。一言でこの段階を表現すると、極めて自分中心的な認識の枠組みを持っている」と言えます。
この段階は、自分の関心事項や欲求を満たすことに焦点が当てられていおり、他者の感情や思考を理解することが難しいです。自らの関心事項や欲求を満たすために、他者を道具のようにみなすという意味から「道具主義的段階」と形容されます。
段階2において、他者の視点を考慮することは大きな難題です。自分の視点のみならず、他者の視点も考慮し始めると、それは発達段階2から3への移行のサインとなります。
発達段階3 他者依存段階(慣習的段階)
発達段階3は「他者依存段階」、あるいは「慣習的段階」と呼ばれます。この段階は、成人人口の約70パーセントにみられます。一言でこの段階を表現すると、「組織や集団に従属し、他者に依存する形で意思決定をする」という特徴があります。
この段階は、自らの意思決定基準を持っておらず、「会社の決まりではこうなっているから」「上司がこう言ったから」という言葉を多用する傾向があります。つまり、他者(組織や社会を含む)の基準によって、自分の行動が規定されているのです。
この段階は、組織や社会の決まりごとを従順に守るという意味から、「慣習的段階」とも呼ばれています。
発達段階4 自己主導段階
発達段階4は「自己主導段階」と呼ばれます。この段階は、成人人口の約20パーセントにみられます。
この段階では、ようやく自分なりの価値観や意思決定基準を設けることができ、自律的に行動できるようになります。段階3では、行動基準が周りの存在によって築き上げられていたのに対し、段階4は、自ら行動基準を構築することができます。自らの行動基準によって、主体的に行動するという意味から「自己主導段階」と呼ばれます。 この段階は、自己成長に強い関心があったり、自分の意見を明確に主張したりするという特色を持ちます。
発達段階5 自己変容・相互発達段階
発達段階5は「自己変容・相互発達段階」と呼ばれます。この段階に到達している成人人口は1パーセント未満です。
この段階では、自分の価値観や意見にとらわれることなく、多様な価値観・意見などを汲み取りながら的確に意思決定ができるという特徴があります。段階4は、自らの成長に強い関心を示していましたが、段階5は、自らの成長に強い関心を示すことはなく、他者の成長に意識のベクトルが向かいます。そのため、部下を育てるのに適した段階であるといえます。
他者が成長することによって、自らも成長するという認識(相互発達)がり、他者と価値観や意見を共有し合いながら、コミュニケーションを図るという特徴もあります。