技術法務のススメ 事業戦略から考える知財・契約プラクティス

制作 : 鮫島正洋 
  • 日本加除出版
4.11
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感想 : 12
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  • Amazon.co.jp ・本 (379ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784817841681

感想・レビュー・書評

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  • 法務関連はより多くより深く知っている方が有利であるので、本書は一読するだけではなく、そばに置いておいてリファレンスとして使いたい。
    業務中の発生頻度が高くない事柄も多いので、参照したいときに確認したい内容でした。

  • 大きく、知財戦略のパートと契約プラクティスのパートからなる。前者は、基本的にスタートアップから中小企業等の成熟した知財組織を有しないエンティティを主体に想定したような内容で、原則論として基礎から丁寧に解説されている。後者も、代表的な契約いくつかについて、具体的なケースを交えて解説されておりわかりやすい。総じて、入門書として非常に良書と感じた。

  • ・契約書の作成はビジネスを考えて行う。
    ・技術法務の特徴 : 法務面でリスクヘッジを行うとともに、知財面で競争力を図る

  • 技術法務とは
    技術を付加価値として事業を展開する事業体が、その事業を遂行するに当たって直面する様々な問題について、法務・知財をボーダレスに駆使するとともに、単に法的・知財的な視点のみならず、ビジネス的な視点から、当該事業体の経営者と議論し、アドバイスし、その事業の競争力を向上させるべく行う法律的な業務。


    知財戦略のセオリ
    第1理論:必須特許ポートフォリオ理論
    必須特許とは、ある製品を生産する際に、不可避的に実施しなくてはならない特許のこと。必須特許を取得できなければ市場参入はできないし、市場参入を果たしたとしても必須特許を取得している企業から追い出されます。
    一方で、ロイヤリティが少ないから、特許取得は費用対効果が合わないという主張があります。しかし、ロイヤリティに関しては、アルダージ株式会社の中村嘉秀社長は以下のように言っています。
    「ロイヤリティを取得しているというのはビジネス上よろしくない状態を意味する。なぜなら自社特許を使っている競合他社が存在する=他社の参入の受け入れを余儀なくされていることを意味するから。本当に強いビジネスでは、ロイヤリティ収入はゼロ。なぜなら、これこそが自社が当該分野でビジネスを独占している状態を意味するから。」
    なお、基本特許は、技術が生み出される過程で、その初期段階に出される概念的な特許なので、意味合いが異なります。

    第2理論:二軸マーケティング理論
    ①将来的な市場規模が大きい、②先行特許出願が少ない 
    上の2つの軸でマーケットを精査し、開発投資テーマを決めると必須特許が取得できるという理論。
    開発テーマの選定前に特許調査を励行することで、必須特許取得の可能性を高め、投資回収の確率の高い開発を実践することができます。

    第3理論:知財経営定着理論
    知財活動は経営・事業の課題を解決するために行われるべき、という原理原則が徹底されている状態が、知財経営が定着した状態といえるという理論。

    第4理論:技術のコモディティ化理論
    満了特許にかかる技術のみで生産することのできる製品スペックが、市場の要求するスペックに合致するという現象が生じた場合には、もはや知財戦略は通用しなくなる可能性があるという理論。

    例えば、シャープの太陽光発電パネルの特許が切れました。そのときシャープは新しい特許技術で効率20%を実現していました。しかし、海外他社は期限切れの特許を使い効率15%だが価格は半分で製品を上市しました。このとき15%の効率と半分の価格で十分と市場に判断されると、それ以上の効率を実現する特許は、たちどころにその効力を失ってしまいます。


    知財マネジメントの実践
     上位概念化し広い技術をおさえる
    =「ニッケルと亜鉛を混ぜて利用する」ではなく、「ニッケルの微結晶を採用する」と書くと広い。
     狭い範囲の権利でも、自社製造プロセスで避けて通れない場合や、他社の製造プロセスの邪魔をできる場合には取得する
     権利侵害を確認できず、かつ他社が将来的に特許化しなさそうなアイテムは特許化せずノウハウとして保持。一方、そうでないものは特許化していくのが原則


    その他、契約書の起案法や、特許ライセンス契約、秘密保持契約、共同開発/出願契約の注意点などの記載もあり、おもしろかったです。なにかプロジェクトを始めるときに、都度見直したいなと思いました。

  • 前半の知財戦略に関する章は非常に面白かった。法律家がこのようなことを書いた類書はあまりないのではないか。後半の契約書に関する章は比較的オーソドックスな印象。時間がなかったので後半は流し読み。

  • 本当に強いビジネスではロイヤリティ収入はゼロだ。なぜかというと,これこそが競合他社が誰も参入していない状態つまり,自社が当分野でビジネスを独占している状態を意味するからだ。

    企業の知財人としての一つの理想像が描かれていると思いました。本書に挙げられていること全てやり切れたら素敵だと思います。再読に値する良書です。

  • 知財・契約実務の入門良著。

  • 編集代表の鮫島弁護士は、池井戸潤「下町ロケット」に登場する神谷弁護士のモデルとなった方で、企業勤務経験のある技術に精通した法律家である。
    企業知財法務に携わって1年~3年の人は、ぜひこのテキストを通読して、実務で関係する案件に遭遇した際に読み返してほしい。
    要約すれば、この本は企業の知財の担当者が、自分が付加価値を生み出すためには何をすればいいかを理解させてくれ、ビジネスの観点から知的財産戦略を見直させてくれる、実務に即した最適の教科書である。

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