麹町中学校の型破り校長 非常識な教え (SB新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784815601317

作品紹介・あらすじ

東京のど真ん中に「学校の常識」をひっくり返している公立中学校長がいます。
宿題は必要ない。固定担任制も廃止。中間・期末テストも廃止。
多くの全国の中学校で行われていることを問い直し、本当に次世代を担う子どもたちにとって必要な学校の形を追求しているのが、
千代田区立麹町中学校の工藤勇一校長です。

大人が手を掛けすぎて、何でも他人のせいにする…。
そんな今の教育に反し、改革を断行し、話題を呼んでいます。
一部始終を表した『学校の「当たり前」をやめた。』はベストセラーに、朝日新聞、NHKなどメディア出演も昨年後半から急増。
文部科学省など視察は後を絶たない。
現役ビジネスマンであっても関心の高い、日本の教育問題。
それを根底から変える、稀代の教育者が初めて親向けに子育て論を出版!

感想・レビュー・書評

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  • 何冊か著作を読みましたが、この本は、後半が特にビンビンと響きました!!長いけどけど引用させてもらいました。う~ん。この先生は勉強されてるな!すごいな!

    p118~
    「みんな仲良く」を否定した全校集会
    全校集会でアップル創業者のスティーブ・ジョブズについて、こんな話をしたことがあります。
    「スティーブ・ジョブズは嫌われものだったって知ってるかな。相当嫌われてたらしいよ。じゃあ、彼はどんなことに優れていたかわかるかな?それは『目的』なんだ。彼はアップルの製品を通じて世界中の人を楽しませたいという目的を持っていた。だから、(中略)一切の妥協をせず、細部にこだわって自分の理想とするアイデアを押し通した。(中略)
    ただ、ここでちょっと考えてほしいんだけど、『みんなの意見を聞いて目的を達成できないこと』と『意見を聞かずに目的を達成すること』。
    どっちが大事かな?
    どっちを優先したらいいかの判断はみんなの今後の人生で何度も起きることなんだ。そのときに覚えてほしいのは、みんなと仲良くすることや協調ふることは決して目的ではないということなんだよな」(中略)

    協調性とはあくまでも目標を達成するためのひとつの手段であって、「目的」ではありません。(中略)
    日本社会は「出る杭を打つ社会」です。
    しかし、各自がより主体性を発揮していくこれからの社会は、その真逆をいきます。つまり、出る杭だらけの社会、もしくは出る杭が尊重される社会です。大人世代も含め、出る杭だらけの社会の感覚に慣れた人は多くありません。だからこそ当校では出る杭だらけの社会における身の振り方を教えるようにしています。
    具体的には、こうです。
    ・人はみな違うと理解してもらう
    ・感情をコントロールする重要性を教える
    ・対立があったときの合意形成のはかりかたを学ぶ

    そしてこれこそが子どもたちが社会に出たときに必ず役に立つ、ダイバーシティ教育の根幹だと考えています。

    p128~
    「協調性」は子どもへのストレスになる

    協調性ばかりを子どもに教えていると、自分が周囲と馴染めないことを必要以上にストレスを感じる子どもが増えます。
    たとえば日本社会でよくある悩みが、同調圧力問題。仲良し教育のもたらす典型的な弊害です。「クラスで浮いた存在になりたくない」と必要以上に不安がって、必死になってみんなと同じように振る舞おうとします。(中略)自己否定や劣等感が強い子どもが多いコミュニティほど周囲への攻撃性が増すため、同調圧力も強まる傾向にあります。
    もし子どもが同調圧力に疲れているようであれば、「みんなと合わせるか・合わせないかは自分で決めればいい。全然たいした問題ではないよ」と、はっきり伝えるべきだとおもいます。

    ただ、そうは言っても、子どもとしては仲良しグループとの間に微妙な空気が流れることを嫌がるでしょうし、親としても子どもがいじめの対象にならないか心配だとおもいます。そんなときは、こんな声をかけてみてはどうでしょう。
    「じゃあ、みんなに嫌われないためにはどんな言い方をすればいいだろうね?

    一緒に対策を練ってみるのです。むやみに対立を深めることなく自分の流儀を通す。これこそ多様化社会で重要になるスキルです。(中略)
    多様性の感覚は一朝一夕で身につくものではありません。訓練の賜物だとつくづくおもいます。でもことあるごとに「人は違って当然。じゃあどうする?」の視点で物事を見るように仕向けていると、子どもたちは次第に他者を尊重することを覚え、「出る杭を打つ」が起きづらくなります。(中略)

    「あの子がいてくれたおかげで、いろんな考え方があると知れました」

    p125~
    違いをみとめる姿勢は、しずかちゃんに学べ

    個となる意見や立場をいったんOKと受け止めた上で、相手との対立を無駄に激化させないように言葉を選び、働きかけていく。これが多様化社会における理想的なコミュニケーションの仕方であり、合意形成を図るとき、対人関係を構築するときに使える協力な武器になります。
    (中略)
    では、子どもがしずかちゃんのようなアサーション(肯定的な会話の技術)を身につけるにはどうすればいいか。それは、周囲の大人がその子のやることなすことを否定せず、積極的に肯定しながら育てることです。

    p128~
    意見の対立からすべては始まる

    多様性を受け入れる最初の1歩は、なにはともあれ違いを認識すること。

    一方向から見た価値観を押し付ける教育は道徳教育としてふさわしくないと感じてきました。(中略)たとえば平和教育。平和は尊いもので戦争は愚かな行為。でも実際に戦争はなくならず、今も世界の土鼓かで起きているわけです。だから私は子どものころ学校の先生が「戦争反対」と連呼する姿を見て、強烈な不信感を抱いていました。子どもながらにしりたかったのは「なぜ戦争をしなければいけないのか?」という戦争をする人の見解だったからです。(中略)

    高い次元に駆け上がって、利害関係者全員が納得できる共通の目的を模索する必要があります。そのファーストステップが、「異なる立場の人の意見に耳を傾け、対話をすること」なのです。
    誰かを悪者扱いしたり、敵視するだけでは世の中の対立はいつまでも解決しない。「戦争反対」のプラカードを掲げて誰かを罵ったり、「友だちとは仲良くしなきゃだめよ」と一方的に子どもに教えることは、問題解決の糸口になっていないとおもいます。

    p133~
    多数決に頼らない生徒に育てる

    そのために、ビジネスの代表的なフレームワークである、
    「ブレーンストーミング」とKJ法の活用
    「どんなアイデアでもウェルカム」
    「お互いが納得できる上位の目標を見つけること」→「じゃあどんな手段がベストだろう?」と議論を「落として」いけるわけです。ここに感情的が入り込むと、握手をするところまで到達できません。
    交流があるロンドンの中学校の先生も、「これからの時代は多彩な意見を取り入れながら、アイデアを構築していく技術的も重要なんだ。だからこそ、折に触れブレーンストーミングをやっている」とのこと。

    私自身も、自分の考えに基づいて人に働きかけ、状況を変えていくことをずっとやり続けてきました。意識的にやっているのは、反対側の意見を理解することです。(中略)
    「アクションを起こせば人は反発するのが現実であると教え、そこから発想をスタートさせるほうが重要」だと私はおもいます。

    「挑戦する意欲=心的安全」が生まれやすい脳とは?
    1、ヤング・アメリカンの実践のように、「失敗してもOK」「人と違ってOK」の文化
    2、「心的安全状態をつくりやすい脳」に変えていくために大人ができることといえば、「失敗は悪いことではない」と教え続けること
    「子どもたちの工夫や試行錯誤といったプロセスを大人が言語化してあげた上で褒めてあげる」
    「ネガティブなものとして捉えられている弱点を克服しようとしているポジティブな自分」がメタ認知として定着していく

    子どもが失敗したときのフォローも大切です。叱ったり、次はがんばろうね、と言ったりするのも、暗に「今回はがんばらなかった」と言っているのでフォローになっていません。火とは失敗から学べると意識づけるためには、うまくいかなかった原因や、逆に良い面を伸ばすところに焦点を合わせて、課題設定や具体的な手法に目を向けさせることが大切です。こうやって子どもの「がんばり」を具体的に言語化してあげることで、試行錯誤をすることが価値づけされていくのです。

  • 良い心と良い行い、のところが印象に残った。「偽善」って言葉はわかるけど、みんながみんな聖人君子なわけない、偽善になるから行動しないって意味わかんないなと思っていたが、その疑問について答えを示してもらえた感じがする。心からそう思っていなくても、頭では正しいってわかっているし、心は簡単に変えられるものじゃない。「心と行動が一致した状態」じゃなくてもいいんだ、と思わせてもらった。
    それと「言葉」についてもっと意識的にならなきゃなとも思った。自分の言動が相手にどう思われるか、客観的な視点もつことはいつまでも必要だと思う。
    自分の子ども自体を振り返りながら読むと、グサッと刺さるところがたくさんある。そんな自分を受け入れながらいい大人にならなくては。そして、将来生まれてくる子どもには良い距離感で接せられるようにしたいと思う。

  • 何のために=目的
    が忘れられて、手段ばかりになっている学校現場

    シンプルに。
    子どもの自立と自律

    そのためには、
    子どもが自分でやってみるしかない。

    どうする?考えて
    違いを乗り越えて
    失敗して
    自分と周囲のことを知って。

    大人は子どもの声を聞いてアドバイスする


    総合的な学習の時間を
    もっと活かしたい。

  • ☆人のせいにしない、主体的にに課題解決に挑むことができる子。違いを尊重し、地道な対話を通じて、合意形成をはかることができる子。
    ☆しつけの最上位目標
    「これは何を目的として子どもを叱ろうとしているんだっけ?」
    ☆1命に関わる危険なことはしない2人権的に反することはしない(犯罪、差別、いやがらせ、無視)
    ☆差別をしないとは知識と技能です。心のあり方ではありません。
    ☆ストレスには積極的コーピング。主体的に問題を解決する姿勢。
    ☆言葉と行動を変えようと繰り返し意識し続けていると、自分そのものが変わる。
    ☆①人は皆違うと理解する②感情をコントロールする重要性を教える③対立があったときの合意形成のはかり方を学ぶ
    ☆動かない人がいるのは当たり前。動かない人をその気にさせるには、目的、理由、目標を腑に落ちるものにしないとダメだ
    ☆時間は有限。
    ☆うまくいかないことがあったときに自分で解決しない子に育ってしまう。不幸を感じるのが得意な子になる。
    ☆子どもの中に「ネガティブなものとして捉えられている弱点を克服しようとしているポジティブな自分」がメタ認知として定着
    ☆最後は家族全体の幸せ

  • 総じて、先生っぽくない先生で、
    言ってることがことごとく納得する言葉でスッと入ってきて驚き。なんでだろう。

    こどもの持っている能力を信じられるか。それが大事か。
    あと、子どもに教えないといけないことって、大人にとっても当然大事なことで、うまくやることは大人にも難しいことな気がした。タイムマネージメント、狭めてやる、…


    P57
    いま世の中で活躍している大人は何かの領域で尖っています。
    「狭めるほど広がる。広げると狭まる」尖るためには多くの時間を割く必要がある。時間を割くためにはやらないことを決めないといけないのです。

    →タイムマネージメント!

    P72
    (先生が)細かなことで同じように叱ってしまうと、子どもは本当は何が大事なのか区別がつかなくなる。

    叱る基準、しつけの優先順位を決めていけば、叱る頻度が減り、大人も子どもも不要なストレスを抱えなくてすみます。
    本当にダメなことはっきりと子どもに伝わるようになるので、子育て自体が楽になるはず。
    すくなくともいえるのはしつけの判断基準として「本に書いてあったから」「じぶんがそう育てられたから」「近所の家ではそうだから」といった、外の物差しを絶対的なものだと信じこまないことです。参考にはなるでしょうが、基準とはあくまでもその子の特製や反応をつぶさに観察しながら、徐々に決めるべきものだと思うからです。

    p78
    実は、わがままなこに育つ可能性が高いのは、「社会性の教育なき放任主義」の場合です
    もし子どもの自由を尊重してあげたいのだとしたら、「世界はあなた一人のものではなく、みんなで共存している。自分がやりたいことであっても、結果として他人の自由を尊重できないのであれば、それは価値がない」
    これが、「人権的に反することはしない」につながります。
    p97
    げーむに没頭する子へ
    基本的に中学生くらいになれば、タイムマネジメントの概念ややり方さえ教えれば、試行錯誤をしながら自分でルールw-決めていけるようになる
    小学生以下はあるていど親が軌道修正
    添うんア時でも、親が一歩的にルールを決めて子どもに強制するのは避けあ法がいい
    親の言いなりでは子どもが自立心や主体性を身につける機会がどんどん奪われていく。おやこで話し合いの場を設け、親からいくつか条件を提示して、最終的に子どもに選ばせる形をとる

    ブレインストーミング→アイデアをどんどん出して付箋にどんどん書いていく、アイデア発散作業
    KJ法→それを収束(分類)させていく

    →いろいろな意見が出る。感情をコントロールする手段となる→イライラせずにお互い話し合おう、ということ!合意形成、メタ認知
    p145
    どんな子でも絶対にリーダーになれる。

    ありのままをうけいれることができる
    自分をよく知っている
    相手をよく知っている(差分を知っている)
    自分の言動がもたらす相手の反応を予測できる
    予測に応じてアプローチの手法を工夫できる

    人を動かす言葉遣いをいかにうまく
    巻き込み力、対話を通じて合意形成、人の心を動かす、みな強い言葉を持っている!

    …まだふせんあったけど略。勉強になる一冊~

  • タイトル通り、学校の常識を打ち破った斬新な学校教育改革について述べられている。担任制廃止、定期試験廃止などの従来の教育を一新したスタイルになっているらしい。

    前々から気になっていて、実際読んでみるとどれも画期的で率直に面白かった。言われてみれば多くの一般的な校則や学習法は形式的なもので、手段が目的化しているものさえある。学生の自主性を最大限に尊重し、自分のやるべきこと考えさせ実行を促す環境が整っている学校であることがよくわかった。

  • 読み返したい

  • 何をするにも目的が一番。

    子育ても、何を目的とするのか。ついつい、口を出したり、躾と称して色々とやってしまう。手段の目的化になってしまっていないか、具体的な事例も載っていて参考になる。

    一番印象的だったのは、幸せと不幸の線を大人が引いてしまうこと。子どもが転んでしまって、慰めるのは不幸なことだと子どもに教えてしまっている。特に、何も反応しなければ、不幸とは思わなくなる。

    学校もそうだが、子育ての親として、仕事をしている職場の最上位目的は何なのか。常に意識したい。

  • あらゆる立場の人が読むべきだと思いました。

  • 宿題-- わかりきっていることをやるだけ、宿題だから、ただやるだけだったら意味がない。時間の無駄。
    わからないところをわかるようにしてね。と声かける。わからなかったら自分で調べる。本で調べる、ユーチューブで調べる、人に聞く。

    非認知スキル-- 感情をコントロールする力、人を動かし、協力させる力、ゼロから価値を生み出す力、情報活用力

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著者プロフィール

【工藤 勇一】(くどう・ゆういち)
 横浜創英中学・高等学校長・堀井学園理事/前東京都千代田区立麹町中学校長 1960年山形県生まれ。東京理科大学理学部応用数学科卒。山形県中学校教諭、東京都中学校教諭、目黒区教委、新宿区教委等を経て2014年4月より2020年3月末まで千代田区立麹町中学校長。2020年4月より現職。麹町中での教育改革を加速させ、横浜創英中で2022年4月より中高一貫6年制の「サイエンスコース」を立ち上げる。社会で活躍するさまざまな人を学校とつなぎ、「社会に貢献する科学」を創出する新しい時代の学びを構築する。内閣府の教育再生実行会議(2021年9月に第12次提言を出し終了。後継会議が設置予定)委員。

「2023年 『社会を変える学校、学校を変える社会』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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