NEVER LOST AGAIN グーグルマップ誕生 (世界を変えた地図)

  • TAC出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (464ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784813271604

作品紹介・あらすじ

いまや、世界中の人たちの必須アプリ「グーグルマップ」の知られざる誕生物語が緊急翻訳出版!
著者は、グーグルマップの生みの親ジョン・ハンケの学生時代からの友人で同僚のビル・キルデイ。

ジョン・ハンケをして、「君が書くのはぴったりだと思う。そこにいて全部見ていたのだから」とまで言わしめるビル・キルデイが、ジョン・ハンケとの出会いからKeyhole社の立ち上げ、Googleによる企業買収、そしてグーグルマップが世界的な成功を得るまでの軌跡を描く。

本書は、前半(Googleに買収されるまで)と後半(Googleに買収されたあと)に分かれ、グーグルマップを支える技術の話はもちろんのこと、内部の人からしか見えないジョン・ハンケやGoogleの雰囲気が、筆者とジョン・ハンケ、Keyholeの個性豊かなチームメンバーとのやりとりなどを通じて、伝わってくる。また、Google創業者であるラリー・ペイジとセルゲイ・ブリンとのやりとりや、マリッサ・メイヤーとの確執など、多くのエピソードが挟み込まれていて臨場感も満載。
ジョン・ハンケが描いたビジョンからプロダクトが生まれ、成長し、Googleの元で世界中の人々に使われるようになった道のりは山あり谷ありで飽きさせない物語になっている。一方で、著者のビル・キルディが安定を求めるタイプで、起業やスタートアップに対して及び腰な姿勢なのも、ある意味、読者目線を代表する常識的な感覚で、親近感が感じられる1冊になっている。

感想・レビュー・書評

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  • 普段、当たり前のように使っているGoogle mapも
    社会に馴染むまでに紆余曲折があり、どのような困難があったのか詳細に物語が描かれている。
    島根のど田舎でストリートビュー撮影車が10年近く前に走っていたことを思い出し、やっぱりGoogleって凄いんだなと本を読み、より思えた。でも、凄かったのはGoogleだけじゃ無かった。
    何でもそうだけれど、物事の背景を知ると、大切にしたい思いや自分の中で興味が広がり楽しい。
    Google earthももっと活用してみようと思えた。

  • 度肝を抜かれるような壮大なスケールで展開する、グーグルマップ・グーグルアースの開発物語。

    グーグルアースの原型は、"キーホール" というスタートアップが始めた "アースビュアー" という画期的なデジタル地図サービス。魅了的なサービスながら、なかなかマネタイズできず資金難に喘ぎ、少しずつ顧客を獲得してギリギリ食い繋いでいた。それが、CNNの報道番組でキャスターがアースビュアーを使って宇宙空間からバグダッドにライブでズームインし、アメリカ軍のイラク爆撃の跡を写すと、利用者数が爆発的に増加。政府や軍、諜報員、災害救助の必須ツールとなっていく。

    と、ここまではよくあるスタートアップの成功物語なのだが、本書が凄いのはここから。グーグルに買収されると、たちまち莫大な予算と人、マシンパワーがそれこそ湯水のようにつぎ込まれ、地球全体をカバーする無償の写真・地図サービスへと一気に生まれ変わっていく。しかも利益を全く考えない、途方もない規模とクオリティの無償サービスとして! 地図作り・更新作業はとにかく気の遠くなるような地道な作業だが、躊躇することなく、手に入るあらゆる地図・写真データが集められ、蓄積・更新されていく。データを自前で揃えるために人工衛星まで打ち上げているという。ここではもはやビジネスの常識は通用しない。 ラリー・ペイジが掲げたグーグルのミッションは「世界の情報を整理すること」。「地図や地理データを中心に、あらゆる種類のデータを整理する」グーグルマップ・グーグルアース事業は、まさにグーグルの中核事業について位置づけらたのだ。

    「売上とか利益とかそういうものは、グーグルが地図プロジェクトを作るための動機ではなかった」、「グーグルが関心を持っているのは一つだった。世界の地理情報を整理するため、プロダクト開発に大胆に投資すること。そしてそれらをグーグルマップとグーグルアースという素晴らしいプロダクトを介して無料で世界に開放すること」、「グーグルマップとグーグルアースは世界への贈り物なのだ」。本書のこれらの記載がとても印象的だった。

    グーグルアースが公開されると、「今日、仕事が進まなかったのは仕方がない。それくらいグーグルアースの魔法に魅了されてしまったのだ。無料ソフトウェア史上、最高のソフトウェアだ」と絶賛されるのも当然だ。

    そして、アップルのアイフォンが発売されると、これまた爆発的に利用が伸び…。ストリートビュー画像から地図の掲載情報を更新する野心的な地図プロジェクト「グラウンドトゥルース」もスタートして、事業規模拡大はとどまるところを知らない。

    なお、政治的な配慮から「いくつかのケースでは、ユーザーがグーグルマップにアクセスしている場所によってグーグルマップのバージョンを切り替える方法を取っている」とのこと(日本海、韓国ユーザーには「東海」として見せているなど)。知らなかった。地名や国境などについて、未解決の政治的問題が結構あるんだなあ。

    キーホールの創業者で、グーグルマップ・グーグルアース事業の責任者だったジョン・ハンケが、ポケモンGOの産みの親だったことも驚きだった。

    グーグルという巨大企業の力(莫大な資金力、そして恐ろしいまでにピュアな企業理念)をまざまざと見せつけられた一冊だった。

  • Google Map創造の物語。彼らのGoogle Earthを最初に見たときは、まるで魔法を使っているようでとても驚いた。Google Mapは、AJAXという技術を使っているということだったが、それまでのWeb体験を一変するものであった。技術がブレークスルーを起こしている瞬間を見た体験だった。それ以上に、Google Mapの存在が世の中をいかに便利に変えたかはここでは(どこであっても)書ききれない。Google Mapは、いまやあって当たり前、ないと困るプラットフォームになっている。
    その技術はキーホールというベンチャー企業が作ったものだというのは、もしかしたらすでに聞いていたことかもしれない。本書はそのキーホールという会社の創業と発展に、創業者であるジョン・ハンケとともに最も近い人の一人としてかかわった著者が、会社誕生からGoogleによる買収、そしてGoogle Map/Google Earthを世に出す苦難と成功の物語となっている。

    幾多のベンチャー企業の例に漏れず、一時期はキーホールも資金調達に非常に苦労することとなった。従業員の給与カットにまで手を付けたので、よほどのことだったろう。著者は次のように書く -

    「それでもキーホールが生き延びられたことが信じられない。失敗への道は無数にあった。私たちはとてつもなくラッキーで、あらゆることが奇跡的にうまく運んだ」

    一方で続いて、「キーホールで働いた人たちのことも私はよく知っている、今思えば、失敗する可能性なんてなかったのかもしれない。どんな障害があろうと、どれだけ道を間違えようと、私たちはきっと最後には正しい道に出られたのだ」

    キーホールがそれほど期待せずにCNNに使ってもらうときに、キーホールのクレジットをテレビに出すことにした契約は同社の飛躍に役に立った。CNNがイラク侵攻のニュースレポートでキーホールの地図を使い続けたからだ。それはある意味では偶然のきっかけだったかもしれないが、その幸運がほほ笑むためには日々の限界までの努力が必要だったのだ。

    Googleに買収された後は、ラリー・ペイジの「君たちは、それよりもっと大きく考えた方がいい」という言葉と、マリッサ・メイヤーらとの社内政治に翻弄された。いずれにせよ、キーホールがGoogleに買収されたのは、今では必然であったように思えるが、少なくとも世界にとっても大きなできごとになった。

    Google Mapは、米国以外では初めて日本で2005年にサービスリリースされたという。そのときにケイ・カワイ(河合圭一)が「日本の東北地域にいた根性あるプロダクトマネージャー」として主導したと書かれている。今は本社でプロダクトマネージャーとして活躍されているそうだが、著者にとってもその活躍は相当印象的だったようだ。「データ契約を取り付けるため、たゆみなく働いた」と書かれているが、ゼンリン社との交渉だったのだろうか。「東北地域にいた」とわざわざ書かれているが、東日本大震災の際にもたゆみなく働くことになる。

    なお、Google Map APIは当初無料だったが、数年後に有料化された。これはロケーションベースサービスを提供する側の企業が求めたことだったという。無料でも、Googleの都合でサービス内容を変更できるようなAPIを重要なビジネスで使うことはできないからだ。そのようにして、Map APIは企業家とデベロッパーを惹きつけ、Google Mapは社会のインフラとなっていった。Map APIを活用するデベロッパーのためのイベントとして開催されたGoogle Geo Developer Dayが今のGoogle I/Oになったという。こういうところに歴史が潜んでいるのだ。

    最後に「この冒険で私が最も面白いと思うこと」として、Google MapとGoogle EarthがGoogleに利益をもたらしたかどうかわからない、ということを挙げている。「君たちは、それよりもっと大きく考えた方がいい」という経営者のいる会社では、お金を稼ぐこと自体、優先事項のトップ10にすら入っていなかったという。Google Mapのプロジェクトに対して、誰も投資対効果や投資回収期間について聞かなかったという。「Google MapとGoogle Earthは世界への贈り物」であるらしい。これについては、著者ならずも、ひどく方向音痴な自分も含めて多くの人がその贈り物に感謝するべきだろう。

    キーホールの創業者兼元CEOのジョン・ハンケは、Google Mapの大成功を導いた後、Googleを出てNIANTICという会社を興し、ポケモンGOを大ヒットさせている。ハリーポッターのゲームをリリースするそうだ。ポケモンGoでは、日本人の名前もたくさん出てくる。Google Street Viewの進化、ARゲームの進化、Google Mapの物語はまだ終わらない。

  • 1999年。キーホールのジョン・ハンケは、新しいソフトのデモ版をテキサスのビル・キルディの家に持ってきて、デモンストレーションをした。画面には青い地球が映っていた。そして、家の住所を入れるとなんと地球からズームダウンして地表が見え、ついにこの家が画面に映っている!これが後にグーグルマップとなる製品の元であった。ジョン・ハンケは開発全般をリードし、ビル・キルディは主にマーケティングを担当した。この小さなキーホールは、ついにはグーグルマップ、グーグルアースを開発することになる。スタートアップ企業がどのような軌跡を通ってグーグルの中核の製品を開発することになるか。これはそのわくわくする物語だ。

  • エキサイティングな起業家のサクセスストーリー。マーク・ザッカーバーグを扱った映画の原作『フェイスブック』に似た読後感。
    主人公はジョン・ハンケ(Googleマップ&Googleアースの前身となる製品を産み出したキーホールのファウンダーであり、Googleに買収された後もGoogleマップチームを率いていた人物。更にその後はポケモンGOを生み出すナイアンティックのファウンダーとなる)。著書は、そのジョンとすべてを共にしたマーケティング担当のビル・キルディ。

    すべての始まりであるキーホールの起業から、Googleに買収され、世界中の人たちの生活を激変させるところまで、が本著では描かれてる。(更にポケモンGOが世界を席巻するところも少しだけ書かれてる)

    初めては小さな規模で始まった、キーホールのアースビューワーも後にCNNがニュースで使うようになって爆発的にトラフィックが増える、みたいな話も、Google買収後と比べるととてつもなく小さなスケールに感じてしまうくらい、ぐんぐん話がデカくなる。

    みんなが使ってるGoogleのキラーサービスのひとつGoogleマップも、Googleの中から生まれたのではなく、キーホールというベンチャーの革新的なアイデアとテクノロジーを買収したところから始まっているが、だからと言って、Googleは金にモノを言わせて、自分では何もしないのかというとそうではなく、明らかにGoogleのおかげでキーホールのアースビューワーはGoogleマップ・Googleアースとして、世界的なモンスターサービスに生まれ変わったことがよくわかる。
    Googler(特にラリー、セルゲイ)が物事をどう考えて、どのようにアクションを取って事業を拡大しているのか、そのスケールの大きさが本著の中で一番面白い。

    今やGoogleは自前で撮影用衛星を持ってて、災害が起きたらすぐそこを撮影し直して、レスキュー隊がGoogleアースを見ながら、人命救助ができるようにする…、もはや誰にも越えられないほど先を行ってる。

    同時にGoogleの中でも政治的な権力争いがあって、その辺りも面白い。


    当事者が書いているだけあって、リアリティがあり、とにかく面白いが、この手のサクセスストーリーは、同じことをやったところで同じことが実現できる訳ではないという意味で、学びというより、娯楽として、あるいは仕事に対するモチベーションの材料として読むようにしてる。

  • スマホのキラーアプリであり、多くのアプリのテクノロジーを支えるグーグルマップ誕生の物語。ムーンショットから火星を目指すストーリーは痛快。彼らのイノベーションに最大の賛辞を贈りたい。

  • 私が子どもの頃、親父が運転する車でお出掛けしていた記憶が蘇る。助手席には、地図を眺めながら、行き先を親父に伝える母親の姿があった。

    地図を見ただけで、「よく行き方が分かるなあ」と子どもながらに感銘を受けたものだが、それでも渋滞にハマったり、工事中で通行が出来なかったりといったトラブルは珍しいものではなかった記憶がある。いまや、Googleマップのお陰でどれ程の人々のドライブが快適になったことだろう。

    方向音痴の私は、見知らぬ土地を旅するのが好きだ。気になるところがあれば、多少危ない匂いがする場所でもどんどんと歩みを進めてしまう。自分の居場所が分からなくなった私を宿まで連れ帰ってくれるのは、いつもスマホの中のGoogleマップだった。

    普段から何気なく使っているGoogleマップというサービスが作られてきた変遷を知ることで、夢中になって働くことの尊さを、Googleマップというサービスの偉大さを、そして子どもの頃にしたドライブの懐かしさを思い出した。素晴らしい読書体験だった。

  • 図書館で見かけて、グーグルマップはいつも使っていることもあり読んでみた。本としては出来事をだらだら書いてて並の出来だが、ジョン・ハンケ率いるベンチャー企業のキーホール社が資金不足に悩まされながらもグーグルに買収されて飛躍するストーリーは文句なしにおもしろい。2005年に買収されてすぐリリースにこぎつける旧キーホール開発陣のスピード感が信じられない。 
    とはいえグーグル創業者たちの先見性こそがグーグルマップを作ったと言わざるを得ない。ビジネスモデルもスケールも全然違った。地図がその後スマートフォンにも使われ、自動運転にも使われるって2005年の時点で読んでた? How Google Worksにも書かれている「その10倍スケールで考えろ」に似た話も出てきた。
     
    ・「1000万人のユーザーを獲得することか、売上を1000万ドル上げるか、どちらが望ましいですか?」 ラリーとセルゲイはどちらが答えるかを無言のうちに決めるようにお互いを見た。そして、ラリーは彼のトレードマークとなっている白い歯を見せた笑みを浮かべて「君たちは、それよりもっと物事を大きく考えた方がいい」と言った。(p196)
     
    ・「ライブラリをまるごと買い上げたらどう?」とラリーは答えた。ダニエルとジョンは驚いて、黙ったままお互いを見た。デジタルグローブの全データベースを買い取ったことがあるのはアメリカ軍だけだ。カーペットの床でロボットが走り出す。「そうだね、もう一回話して、 全データベースを買い取る方法を見つけてくるといい」とセルゲイも同意した。「全800万平方キロメートル分をさ」。(p245)

  • Googleマップのない頃は、まだ子供だったので自分ひとりで遠くまで出かけることなんてそうなかったけど、そういえば当時車で遠くに行く時は、母がいつも助手席で分厚い地図と格闘していたことを思い出した。
    私は方向音痴で、片道10分ほどの単調な道のりであっても、Googleマップを手放せないので、Googleマップのある時代に生まれて本当によかった。
    そしてこれだけ身近にGoogleマップが広まっているのは、Googleの目的が「より収益をあげること」ではなく、「世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスできて使えるようにすること」であるが故だとわかった。
    面白いなと思ったのは、世界中の国境を引いたが故に、国名やら領有権の問題を刺激してしまって、抗議デモが来たこと。どう解決するんだろうと思ったら、国境紛争はどちらも黄色の破線で表示したり、双方が主張する国名を併記したり、アクセスしている場所によってバージョンを切り替えたりしていて、なるほどなと思った。

  • Googleがもっとベンチャーだった時の開発過程って映画みたいな面白さ

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