- Amazon.co.jp ・本 (284ページ)
- / ISBN・EAN: 9784812445044
作品紹介・あらすじ
1999年。身に覚えのない事件の殺人犯だと、ネット上で書き込まれ、デマが広まった。それからずっと誹謗中傷を受け続けた。顔の見えない中傷犯たち、そして警察、検察…すべてと戦った10年間の記録。ネット中傷被害に遭った場合の対策マニュアルも収録。
感想・レビュー・書評
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インターネット上には膨大な情報が氾濫している。
利用法によってはとても便利で有意義だ。
けれど、諸刃の剣のように使い方によっては怖ろしい存在にもなってしまう。
中傷をする人たちの特徴として次のようなことが書かれていた。
・他人の言葉に責任を押しつける。
・自分の言葉には責任を持たない。
何が真実で、何が虚偽なのか。
判断するのはとても難しいことだとは思う。
利用者本人が見極めていくしか対処法はないような気がする。
本書でも取り上げられているけれど、インターネットに書かれていたから…本に書かれていたから…などという理由で間違った情報を信じてしまった人たちもいた。
警察が介入し事件が公表された後も、大手新聞社の記事の一部が間違っているにも関わらず信じてしまった人たちが多かったようだ。
雑誌に載っていたから。
テレビで言っていたから。
新聞に載ったから。
本に書かれていたから。
メディア媒体を通した情報は、まるで真実のようにひとり歩きしていく。
けれど、本当に真実なのだろうか?
けっして少なくはない販売数をほこる雑誌に間違った情報が載っていたことが何度あることか。
多くの視聴者がみるテレビ番組で間違った情報があたりまえのように流されているのを何度見たことか。
メディアに対して100%信頼する気持ちは、いまはもうない。
故意であれ、過失であれ、そこに人が介在すれば必ず間違いが起こる可能性があるからだ。
10年間という期間。
大変な思いをしたことだろう。
読んでいるだけで、その苦しみややりきれなさ、怒りが伝わってきた。
当時とは比べものにならないほどインターネットは身近なものになった。
警察の対応もいくぶんは良い方向へと変わってきていることだろう。
インターネットの知識がある警察官も増えているにちがいない。
それでも、いまもインターネットのトラブルで悩んでいる人はたくさんいるはずだ。
本書の後半部分は、そういった人たちへの対処法が詳しく書かれている。
【批判】 ものごとの善悪を批評し、判断すること。
【中傷】 事実でないことを言って他人の名誉を傷つけること。
【脅迫】 ひとい目に遭わせるぞ、と脅すこと。
※本書より抜粋
インターネットはけっして匿名ではない。
自身が最初に書き込んだものでなくコピペして貼り付けたものでも、貼り付けた者が処罰対象となる。
インターネットは誰もが気軽に楽しめるものだ。
だからこそ、リアルよりも多くの自制が必要なのかもしれない。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
夏休み一冊目。匿名の嫌らしさ。警察と検察の問題点。いじめの問題と同じような後味の悪さ。ネットに書き込みをする前に読んでおく本か。
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10年にも渡るウェブ上での誹謗中傷との戦いを綴った記録。この本を読むと、芸能人でなくとも、自分もある日突然殺人犯としてでっち上げられてしまうんじゃないかと思ってしまいます。そして、ウェブ上の根も葉もない話を信じる人は予想以上に多く、それに対処できる人は予想以上に少ないんだということを痛感させられました。
こうして声をあげられる人がどんどんこういう本で発信していけば、声をあげずに苦しんでいる人にも一助になるのではないか。僕はそう思います。スマイリーさんは、声をあげることができた。それはきっと、自身の強さもあると思いますが、周囲のたくさんの人の助けがあったからだとも思います。逆に言えば、誰かの助けなしにこのような問題は解決できないということ。高度情報化社会は、思っているより幸せではないかもしれないことを垣間見た気持ちです。
ちなみに、ICレコーダーで記録していたということなのでおそらく本当なのでしょうが、担当検事さんとのやり取りが恐ろしい。検事さんってここまで陳腐な話をするものなのだろうか。もし本当にこんな話をしているのだとしたら、泣き寝入りしている(させられている?)人はいっぱいいるのだろうなあという気持ちになってしまいます。
スマイリーさん、辛かっただろうなあ。奥さんと、ゆっくり楽しく過ごして欲しい。そして、自分も気をつけないと。 -
突然、僕は殺人犯にされた スマイリーキクチ
(以下、赤字部分は本に書かれていないが明らかなこととして私が補足している部分です)
お笑い芸人である著者が、東京で1988年に起きた「女子高生コンクリート詰め殺人事件」の犯人の一人だと、ネット上でデマを流されて苦しみ、闘っていった10年にわたる様子が書かれた本。
あの事件は少年犯罪で犯人の名前が出なかったものの、実名を出しているサイトはいくつもあり、そうしたサイトの中にスマイリー氏の名前を見かけました。本人は否定しているとしか書かれていないので、意に介していなのかと思っていたけど、大変に苦しみ、人生が変わるほどの事態だったことがこの本を読んで分かりました。
本人は若い割にネットに疎く、1999年に自分が殺人犯にされていることを人から教えられた時にも、それほど重大には考えていなかったようです。しかし、次第にエスカレートし、事務所のHPで事実無根だと否定しても収まらず、いったん、事務所のHPの一部を閉鎖することに。
しかし、2005年になって、テレビによく出てくる北芝健という元警視庁刑事が、「治安崩壊」なる本を出し、かの事件について、犯人の一人が刑務所から出てきてお笑いコンビを結成していると、でたらめなことを書いたためにスマイリー中傷が再燃。彼にとって地獄のような日々が続くことになる。
殺す、などの脅しを連日受け、夜は寝られず、帰宅する道順を変えて警戒する。ライブに来る客から不審の目を向けられ、テレビ局やスポンサーにも脅しの電話やメールが入る。
警察には、山のようなプリントアウト資料を抱え、何度も何度も足を運ぶが、たらい回しにされ、そのたびに1から説明させられ、挙げ句の果ては「こんなの誰も信じませんよ」「あなたがネットをやめればいい」の決まり文句で終わり。その中で、やっとネットに精通した警部補に出会え、その人が熱心に取り組んでjくれたお陰で捜査が始まる。
最初に浮上したのが、本には書いてありませんが、京都大学だと思われる大学の職員。大学からも書き込んでいる。
そして、次々に容疑者が浮かび上がり、立件され、検察に書類送検される。もちろん、全員検挙などできるわけないが、かなりの数になった。ところが、検察で彼らは不起訴、または、起訴猶予となる。
その理由は、とうてい納得できるものではない。
ただ、警察での立件があり、報道もされたことで、急速に彼への中傷は収まった。きっと、去年、この本を出すことで気持ちにも生活にも区切りをつけたかったのでしょう。
印象に残ったのは、1999年に発覚した最初の騒ぎの後、彼はネットを見ると気になるから見ないでおこうと決意した時のこと。仕事で調べごとがあると図書館へ行き、電車の時間は時刻表で調べ、という生活をする中で、人に尋ね回ることで新たな人脈ができたと書いていることなど、考えさせられるものがありました。暫くの間でもネットをやめ、リアルの関係を取り戻せた体験がとても素晴らしかったというような感じが、本から漂ってきました。 -
警察、弁護士、検察にもアタリ・ハズレがあって、ハズレを引くと人生狂うくらいのダメージを貰うっていう話。
黎明期のインターネット上での無茶苦茶も酷いけど、現実世界でも新しい物事についての法律がないので対応出来ない、無法状態というのは本当に怖いと思った。 -
社会
ノンフィクション -
ネット中傷被害に遭ったとき、非常に参考になる本と思う。10年に及ぶ苦悩を我がことのように感じることができる。警察が力になってくれたという話しを読めたのは収穫。残念なのは検察。インターネットに詳しい人というのは、やはり少ないのだろうなと思った。
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ネットで誹謗中傷・恐喝・風評被害にあった時の実例書。インターネットにより人々の交流が増え、新たな人類の発展に繋がるというのがプラスの局面であれば、ネットの誹謗中傷・恐喝・風評被害というのはマイナスの局面である。よく耐え忍び刑事告訴に至ったと思う。また、捜査にあたった中野警察署、警視庁捜査一課の刑事の方々にもエールを送りたい。
そしてちょうど今、スマイリーキクチ氏が結婚された。本書を上梓したことで、人生において一区切りついたのだろう。おめでとうございます。
http://naokis.doorblog.jp/archives/51689308.html本のキュレーター勉強会二軍キャンプで紹介してもらいました。