- Amazon.co.jp ・本 (159ページ)
- / ISBN・EAN: 9784808709822
感想・レビュー・書評
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美しい。ああ、たまらなく、美しい。わたしの価値観の真ん中にある「美しさ」。その美しさの中心にあり、理想像の集合体ともいえる、ウォーターハウスの描く耽美な女性たち。神話や文学作品に登場する儚くも強く、男性たちを破滅の道へと導くファム・ファタール。
彼の人生は他の激動の芸術家たちに比べ、あるいはドラマに欠けるかもしれない。しかしながら圧倒的なその技術と才能は疑念の余地がない。彼の絵によって、多くの人が心を震わせた。それで十分なのではないか。
彼がフランスの印象派に影響を受け、外光派のテクニックを写実的な描き方におり混ぜて仕上げた作品、1度目のオフィーリアは初めてロイヤル・アカデミー出品後、買い手が見つからず苦渋を味わったという。その後は再度「ロイヤル・アカデミーに落選せず」それでいて「新しいことに挑戦しながら」、そして「イギリスのパトロンたちの保守的な好みに沿うもの」を描く。彼は自分の描きたいものと、この受け取る側のニーズとの交錯点で作品を作ることに非常長けていたと感じる。3,40年続けてロイヤル・アカデミーに選出され、しかもオン・ザ・ライン(好位置)を陣取り続けたのには、ただの芸術的才能だけではなし得られなかっただろう。彼の商業的な感覚(本書で言う”通俗性を理解していた”という点)も大きく関与しているに違いない。
また、何より彼に惹きつけられるのは、他の著名な画家に比べ、圧倒的に文献や作品集、画集が少ないということだ。洗礼を受けた日はわかっているものの、誕生日すらわかっていない。そしてこれだけ人気であれば注文も殺到しただろうに、ほとんど依頼は受けていなかったようである。肖像画作品は身近な、ごく限られた人のみだ。ある種謎に包まれた存在に、わたしの好奇心はとてつもなくくすぐられる。彼はどんな人物だったか。どんな趣味嗜好、思想、想いを持って、これらの美しい絵画を人生を通して描き続けてこられたのか。もっと学びたい。知りたい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ウォーターハウス素晴らしいな!展覧会行きたい。
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ファムファタール
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年代順かつ題材の出典別の解説が、わかりやすい。
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宮崎駿氏曰く「通俗文化の先人」。頭でっかちの人は馬鹿にし、下に見がちだろう。が、いいものはいい。