もっと知りたいルドン 生涯と作品 (アート・ビギナーズ・コレクション)

著者 :
  • 東京美術
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感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (80ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784808709372

感想・レビュー・書評

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  • 象徴主義絵画を代表する画家の一人である、「オディロン・ルドン」の人生を辿りながら、その時々の多種多様な作品を眺めていくと、画家の人生を知ることが、作品を理解し、より感慨深いものになることを教えてくれます。

    目に見える現実ではなく、幻想的で神秘的なイメージを多用し、独自の「光」を創造することで、夢の世界をさらに普遍的なものにしていった、彼の画歴には、主に、詩人「シャルル・ボードレール」が仏訳した「エドガー・アラン・ポー」の著作が影響しており、特に、「眼」に対するこだわりには、共通性があるそうです。

    それから、普仏戦争でのフランスの敗北、天体望遠鏡の発達による、宇宙というマクロの世界への興味、ダーウィンの科学的進化論、ハルトマンの無意識の哲学など、そうした当時の歴史的出来事が、彼の作品に影響を与えていることや、黒(ノワール)の時代から色彩の世界へと、人生の半ばで大きく転換していく様に、彼の人生観や人間性が垣間見えるようで、とても興味深いものがありましたし、何か遥か天上から臨んでいるわけではない、親近感のようなものを感じました。

    また、妻「カミーユ」のために個人的な思いを込めて描いた、《刺繍をするルドン夫人の肖像》や、毎年のようにパステルで息子を描いた中の一つである、《アリの肖像》といった、家族への思いを覗かせる一面もあったり、《グラン・ブーケ》や《ヴィオレット・ハイマンの肖像》といった、後期の花々と女性を描いた作品の美しさも印象深く、読み終わった後には、実際の作品を美術館で鑑賞したくなりましたし(私の人生において、初めてこう思えたことが嬉しい!)、これだけ一人の画家にすごく惹きつけられたのは初めての思いです。

    ちなみに、私が最も好きな作品は、《ペイルルバードへの道》で、ルドンの「黒」の創造の場であった故郷を失った、そのやるせない思いを回顧するような寂寥感や孤独さに、私も共感できるものがありました。

    正直なところ、一つに絞るのは難しいのですがね。他にも、《樹(樹のある風景の中の二人の人物)》や、石版画集『起源』の中の第2葉、《おそらく花の中に最初の視覚が試みられた》や、《オフィーリア》や、《金色の細胞》等々、それぞれタイプが異なるようにも見えますが、全てルドンの作品です。

    上げるときりが無いので、この辺で。

  • 紙に木炭で描かれた「笑う蜘蛛」をオルセー美術館で見たとき、なんだこの奇妙な絵はと仰天した。たしかに蜘蛛なんだけど、猿みたいな顔をしている。
    この時以来、ルドンの絵を見るチャンスがあるときはなるべく見に行くことにしている。

    ルドンは木炭やリトグラフなどで、このようなちょっと愛嬌のある奇妙な怪物たち(人面花とか一つ目の獣とか、目玉のついた気球とか)をいくつも描いている。しかもさらに奇妙なことに、1880年代(40歳くらい)に入るまでは、「黒の時代」と呼ばれ、黒々とした作品ばかり制作している。象徴主義の詩人たち、たとえばマラルメなどはルドンの絵をいたく気に入っていたらしい。また、バイオリンが得意だったらしく(兄はピアニスト)、ドビュッシーとも交流があったそう。

    その時期の絵も好きだけど、ルドンはなぜか次第に、色鮮やかな絵を制作しはじめる。同じくオルセーに「縦長の花瓶に生けられた野の花」という作品も所蔵されていて、これはヒナゲシやグラジオラスなどがパステルで描かれた鮮烈な作品で、黒の時代とのコントラストにもう一度驚かされた。

    ひとつ、どうしても見たい作品がある。
    フランスはナルボンヌのフォンフロワド修道院の図書室にある2点の作品「昼」と「夜」。これはルドンが晩年に手がけた装飾画で、降り注ぐ黄金色の光に植物たちが輝いている。
    本書によると、同時にいたるところに、ルドンが敬愛していた音楽家シューマンや、ピアニスト、コントラバスを弾くケンタウルスとペガサス、それに、彼が生まれ育ったペイルルバード荘園でお気に入りだった人たちの顔などが配されていて、まさに集大成的な大作だ。

    国内では岐阜県美術館が複数作品を所蔵しているようだ。いつか足を運びたい。というか常設展示してあるのかな。

  • ルドンは、創作における個人的な進化の歴史を美術史に直結させた画家で、観る者は芸術的真実の清新な衝撃を経験する。黒と白の世界に沈潜していた時代は、芸術において何が壮麗であるかを見極めていたのかもしれない。文学も音楽も神話も輻輳の哲学的な瞑想が〈聖アントワーヌの誘惑〉等から感じられる。晩年になって、深い静謐な内奥から放射される燦爛とした色彩の世界へ飛び込み、油彩やパステル画に神秘的な花を咲かせている。
    三菱一号美術館が所蔵する〈グラン・ブーケ〉がわたしの特に好きなルドンの絵で、夢幻的な生命感が身体中を泳ぎ回る。

  • T図書館
    1840年生まれ
    黒から色彩へ転身
    「グランブーケ」三菱1号館

  • ルドンは、花やペガサスのブルーの美しい絵から入ったので、美術展で黒の目玉や蜘が出てきた時は驚きました。
    だからルドンにも、興味がわいたのかも?

  • 他のルドンについての本を読んでないので比較は出来ないけど、ルドンという作家について広く知ることが出来る。
    「眼をとじて」がたくさん載ってるの、すきだな、どれも作風が違うのに魅力的。
    もともとルドンが好きだったけど、この本のおかげでギュスターヴ・モローとエドガー・アラン・ポーにも興味が持てた。
    さっさと読めて分かりやすい、良い入門書だとおもう。

  • <閲覧スタッフより>
    初期の作品から晩年まで、画家の人生を通して作品を紹介する美術シリーズ。オールカラー、そしてわかりやすい文章で入門書にぴったりです。
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    所在記号:723.35||ルト
    資料番号:20102713
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  • 本は沢山読無よりも、読んだ本の感想を書く方が身につくらしい。それで、美術しょでも感想を書く事にした。
    ルドンの絵は魅力的だが、好きになる絵は少ない。家に飾るのではなく美術館で観る絵だと思う。
    「私は私なりにひとつの芸術を作りました。私はそれを、目に見える世界の驚異に目を開くことによって、そして、だれが何といおうとも、自然と生の法則に従おうと、たえず骨折ることによって作り出したのです。」
    ルドンは自分の世界を創り出したのだ。

  • ルドンのような色彩豊かな画家こそ最適のシリーズだと思った。後半の「色彩と結婚」して以降のルドンのパステル画・油彩画における自由に踊るモチーフや煌めく色彩は、いつ見ても心奪われる。

  •  不気味な目玉植物や幻想的な花の絵で知られているオディロン・ルドンのビギナーズガイド。絵の写真が大振りのフルカラーで見やすい。ルドンが影響を受けた文学者やルドンから影響を受けた文学者などの紹介が興味深く感じる。

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著者プロフィール

1942年8月4日 京都四条通に江戸後期より続いた呉服店の七人兄弟の末子一人娘として生まれた
1955年 同志社女子中学入学
1960年 同志社女子高校二年修了、宝塚音楽学校入学
1962年 宝塚歌劇団入団
1966年 同団退団
1973年 上京
京呉服の創作 年二回創作デザインした着物の展示会
パーティと着物ショーを開催・頒布
1981年 楠本憲吉に俳句入門
1982年 紀尾井町ホテルニューオータニに呉服店「㈱みや美」出店
憲吉門下 鈴木明と出会う、結婚
1983年 鈴木明指導の「実の会」俳句会に参加
2003年 鈴木明が結社「野の会」主宰継承、同会同人として入会
2016年 「野の会」無鑑査同人として現在に至る

「2019年 『八月四日に生まれて』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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