パリのおばあさんの物語

  • 千倉書房
4.10
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本棚登録 : 450
感想 : 52
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  • Amazon.co.jp ・本 (37ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784805109137

作品紹介・あらすじ

パリに暮らす一人のおばあさんが、昔を振り返りながら、いまを語る。フランスで子供から大人まで読みつがれている絵本を女優・岸惠子が初めて翻訳。

感想・レビュー・書評

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  • 地区センターにて。
    岸惠子さんが初翻訳した大人のフランス絵本です。

    <あらすじ>
    この絵本は、パリに暮らす一人のおばあさんが、自分の人生を振り返りながら、老いと孤独に対する前向きな姿勢を語る物語です。おばあさんは、ユダヤ人としてナチスの迫害を受けた過去を持ちますが、それを悲観することなく、今できることを楽しんでいます。買い物に行くのも一苦労だし、目が悪くなって本が読めなくなったり、夜は不安になって眠れなかったりしますが、それでも「やりたいことが全部できないのなら、できることだけでもやっていくことだわ」と言っています。おばあさんは、白髪やしわを美しいと思い、変身するのが好きだった子供時代を思い出します。また、家族や友人との思い出や、パリの風景や文化についても語ります。おばあさんの言葉は、ユーモアと哲学に満ちており、読者に心の豊かさと優しさを伝えます。

    パリのおばあさんの物語は、老いることや生きることについて考えさせられる絵本です。岸惠子さんの翻訳は、原作の温かさと切なさを忠実に表現しています。絵本としては珍しく、大人向けの内容ですが、子供にも読んでほしい一冊です。


    出版社からのコメント

    ▼岸惠子さんがフランスで20年以上も読みつがれている絵本を翻訳し、上品な大人の物語にしてくれました。
    ▼パリに暮らす一人のおばあさんが、過ぎ去った昔を振り返りながら、いまの日常を語ります。

    内容(「BOOK」データベースより)

    パリに暮らす一人のおばあさんが、昔を振り返りながら、いまを語る。フランスで子供から大人まで読みつがれている絵本を女優・岸惠子が初めて翻訳。

    抜粋

    ともかくも、と彼女は思います。
    「やりたいこと全部ができないのなら、できることだけでもやっていくことだわ」
              ---   本文より

    著者について

    ▼著者/スージー・モルゲンステルヌ:アメリカ生まれの作家・イラストレーター。60冊以上の児童・若者向け絵本・小説をフランス語で執筆。

    ▼イラストレーター/セルジュ・ブロック:1956年フランス生まれ。絵本作家。2007年ボローニャ・ラガッツィ賞をノンフィクション部門で受賞・2006年に発売され日本でも定番となった『まってる。』(千倉書房)のイラストも担当。

    ▼翻訳/岸惠子(きし・けいこ)
    女優・エッセイスト。 40年間のパリ暮らしの後、現在はベースを日本に移しながらフランスと日本を往復する。
    主著に「巴里の空はあかね雲」「ベラルーシの林檎」「私のパリ私のフランス」などがある。2002年、フランス共和国政府よりフランス芸術文化勲章オフィシエ。2004年には旭日小綬賞を授賞。

    著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

    モルゲンステルヌ,スージー
    アメリカ生まれの作家・イラストレーター。60冊以上の児童・若者向け絵本・小説をフランス語で執筆。現在、大学で英語も教えている。ニース在住

    ブロック,セルジュ
    1956年フランス生まれ。絵本作家。2007年ボローニャ・ラガッツィ賞をノンフィクション部門で受賞。ニューヨーク在住

    岸/惠子
    横浜生まれ。女優。「亡命記」東南アジア映画祭で最優秀主演女優賞。「おとうと」ブルーリボン賞。毎日新聞コンクール主演女優賞。「かあちゃん」日本アカデミー主演女優賞。作家。「巴里の空はあかね雲」文芸大賞エッセイ賞。「ベラルーシの林檎」日本エッセイストクラブ賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

  • 素敵な装丁の薄い本…図書館で目にとまりました。

    一人暮らしのおばあさん、物忘れが頻繁になり、目が見えづらくなって好きだった編物もできなくなる。でも悲観しない、老いを静かに受けとめる。時々電話をかけてくる息子にも愚痴を言わない。
    自分の顔のしわを見て来し方に思いを馳せる。

    おばあさんの、静かだけれどそれまで歩んできた道に誇りをもっている姿勢が素敵です。岸惠子さんの訳もいいですね。

  • あとがきからこの物語のおばあさんの一家はユダヤの人たちであり、ひどい迫害を受け暗黒の時代を苦しみ生き抜いてきたことがわかる。

    この物語は、おばあさんが老いながらも愚痴ひとつこぼさずに、前向きで明るく過ごしている様子が、優しい絵で描かれている。

    丸まった背中に老いと哀愁を感じる。
    鍵を開けるのに苦労するけどおちゃめに「わたしの
    可愛い扉ちゃん、わたしを早く中に入れてちょうだい」と言う。

    気力も無くなってきたけれどそれならできることだけやっていくと考え、時々昔のことを思い出す。

    忘れてしまうこともあるけれど、「一つ失えば、もっといいものが十も転がり込んでくるさ」と。
    今日うまくいかなくても、明日になればきっと良くなるわ。と、おばあさんは思う。

    おばあさんにもういちど、若くなってみたいと思いませんか?と問うとためらうことなく、「いいえ」とその答えはやさしいけれど、決然としていて

    「わたしにも、若いときがあったのよ。私の分の若さはもうもらったの。今は年をとるのがわたしの番」
    「もういちど、同じ道をたどってどうするの?だってわたしに用意された道は、今通ってきたこの道ひとつなのよ」

    このことばに、胸を打たれた。

    この辿ってきた道のりを悲観することなく、立派に言い切る潔さに惚れ惚れした。

    それは、苦難を知り厳しさを経験したからこそ冷静に言えることなんだろう。

    けっして愚痴をこぼさず、明るくておちゃめで優しいおばあさん。

    老いてこそ、これからどう生きていくのか…
    感謝の気持ちで他人にも自分にも優しくなれるのか、そこが人間としての勝負どころ。
    確かにそう思う。

  •  パリで一人で暮らすおばあさん。色々ということをきかなくなった身体と共に、ゆっくりと毎日を過ごす。時にユダヤ人が迫害され、おばあさんの一家も散り散りになった辛い過去を思い出し、また突然の不運におそわれるのではないかとおびえることも。

    訳者の岸恵子さんが後書きにこう書いています。
    ○老いの身の孤独をどう生きてゆけるのか…愚痴っぽくて自分勝手な頑固者になるのか、感謝の気持ちで他人にも自分にも優しくなれるのか、そこが人間としての勝負どころです。

    本当にそうだなと納得。周りを見渡しても、素敵な年の取り方をしている方は僅か。老害なんて言葉も出だして、そんな事はないと否定できない現実。今より老齢になった時に、また読み返して、その時の自分の在り様をチェックしなくては…と思いました。

    私にも若い時があったのよ。私の分の若さはもうもらったの。今は年をとるのが私の番。
    もう一度同じ道をたどってどうするの?だって私に用意された道は、今通ってきたこの道ひとつなのよ

    おばあさんの言葉が切なくも美しく胸に響きます。

  • 『まってる。』の絵描き担当Serge Blochさん(仏)がSusie Morgensternさん(仏米)と組んで出版し、日本語には岸惠子さんが訳をつけた作品。原題は『Une Vieille Histoire』で(古い話・年老いた話)という意味。

    本作の一つのテーマは「老い」で、朗らかに老いと付き合う様子はとても素敵。

    (引用)
    おばあさんは鏡をのぞきます。
    「なんて美しいの」とつぶやきます。
    顔はたくさんの歴史を物語っているのですもの。
    眼のまわりには楽しく笑い興じたしわ。
    口のまわりには歯をくいしばって悲しみに耐えた無数のしわ。
    しわ、しわ、しわ、いとおしいしわ。
    四分の三世紀ものあいだに味わった
    わたしの人生の苦楽が刻まれた顔。

    もう一つのテーマはユダヤ迫害。

    16ページ目で早くも「これはユダヤの話!」と目ざとく気づいてしまうくらい、自分も過敏になっているし、ヨーロッパのお話にはナチスの話は頻出で、正直少し食傷気味。
    今、絵本がカバーしうるテーマの幅広さに惹かれて、絵本というジャンルにハマっているので、より「あら同じテーマ」と思うことにがっかりしているのかもしれない。
    もちろん、ナチスのやったことは忘れてはならない非人道的行為であるし、ドイツだけでなくフランスでもイタリアでも語り継ぐことが大事なことは言うまでもない。

    期待や想像とは少しズレていたけど、良い絵本でした。

    “Un de perdu, dix de retrouvés”

  • おばあさんになると、できなくなることもたくさんある。
    しわも増えるし、物忘れも多くなる。
    でもできなくなることが増えても、しわが増えても、ポジティブに捉えるおばあさん。
    おばあさんは、過去の悲しい記憶、辛く苦しい記憶、幸せな記憶、一日いろいろと思い出していく。

    もういちど、若くなってみたいと思いませんか?と問われるおばあさん。
    驚いて否定する。
    「もういちど、同じ道をたどってどうするの?だってわたしに用意された道は、今通ってきたこの道ひとつなのよ」
    …とてもすてきなおばあさんだと思った。
    わたしも同じ道をたどりたくはない、考えは同じ。
    けれど、このおばあさんのように、やさしく人生の苦楽をすべて受け入れて同じセリフを言うことはできない。

    表紙といい、水彩の淡い色合いがとても素敵なのです。

  • もしもおばあちゃんになれたら、終わりの日までこんなステキな強いおばあちゃんになりたいなぁって憧れます。

  • おばあさんから学ぶこと。
    自分の人生を生きること。
    全てを受け入れること。

    生まれる国は自分では選べない。
    日本に居ると、人種差別や戦争などとは関係無く生きていくことが出来てしまう。
    自分では変えられないこととどう向き合えば良いのか?想像してみてもどこにも解決策が見つからない。
    辛い出来事があったからこそ、人生の果てで全てを良い方向に捉えることが出来るのかな?

    私も人生の終わりには、一人でも心穏やかなおばあさんの様な終末を迎えたい。

  •  じんわり心にしみる絵本。
     確実に進む老いに不自由を感じ、最愛の息子にはちょっぴり強がってみせながら、自由にしなやかに生きるパリのおばあさんの姿に、女優の岸惠子さんの訳がナレーションのように重なって聞こえてくる。著名人の訳ならではの特典映像みたいなものかな。
     人は誰しも歩んできただけの過去の道と、これから進む未来の道を持つ。その重みと軽やかにつきあっていける人生はすてきだ。いまの自分がいちばんいい自分と思わせてくれる、お気に入りの一冊になった。

  • フォローしている方の本棚で知った本。素敵なおばあさんが出てくる物語が好きなので、さっそく図書館で借りました。

    おじいさんに先立たれ、子どもたちも巣立ち、今は一人暮らしのおばあさん。
    年老いてできなくなったことを数えて嘆くのではなく、そっと受け止めて良いこともあると前を向く。
    しわも白髪も千一夜物語だわとは、なんてすてき!
    長い人生の中の美しいこと、悲しいこと。
    暖かさと切なさの入り混じった気持ちになりました。

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