- Amazon.co.jp ・本 (37ページ)
- / ISBN・EAN: 9784805109137
作品紹介・あらすじ
パリに暮らす一人のおばあさんが、昔を振り返りながら、いまを語る。フランスで子供から大人まで読みつがれている絵本を女優・岸惠子が初めて翻訳。
感想・レビュー・書評
-
詳細をみるコメント0件をすべて表示
-
素敵な装丁の薄い本…図書館で目にとまりました。
一人暮らしのおばあさん、物忘れが頻繁になり、目が見えづらくなって好きだった編物もできなくなる。でも悲観しない、老いを静かに受けとめる。時々電話をかけてくる息子にも愚痴を言わない。
自分の顔のしわを見て来し方に思いを馳せる。
おばあさんの、静かだけれどそれまで歩んできた道に誇りをもっている姿勢が素敵です。岸惠子さんの訳もいいですね。 -
あとがきからこの物語のおばあさんの一家はユダヤの人たちであり、ひどい迫害を受け暗黒の時代を苦しみ生き抜いてきたことがわかる。
この物語は、おばあさんが老いながらも愚痴ひとつこぼさずに、前向きで明るく過ごしている様子が、優しい絵で描かれている。
丸まった背中に老いと哀愁を感じる。
鍵を開けるのに苦労するけどおちゃめに「わたしの
可愛い扉ちゃん、わたしを早く中に入れてちょうだい」と言う。
気力も無くなってきたけれどそれならできることだけやっていくと考え、時々昔のことを思い出す。
忘れてしまうこともあるけれど、「一つ失えば、もっといいものが十も転がり込んでくるさ」と。
今日うまくいかなくても、明日になればきっと良くなるわ。と、おばあさんは思う。
おばあさんにもういちど、若くなってみたいと思いませんか?と問うとためらうことなく、「いいえ」とその答えはやさしいけれど、決然としていて
「わたしにも、若いときがあったのよ。私の分の若さはもうもらったの。今は年をとるのがわたしの番」
「もういちど、同じ道をたどってどうするの?だってわたしに用意された道は、今通ってきたこの道ひとつなのよ」
このことばに、胸を打たれた。
この辿ってきた道のりを悲観することなく、立派に言い切る潔さに惚れ惚れした。
それは、苦難を知り厳しさを経験したからこそ冷静に言えることなんだろう。
けっして愚痴をこぼさず、明るくておちゃめで優しいおばあさん。
老いてこそ、これからどう生きていくのか…
感謝の気持ちで他人にも自分にも優しくなれるのか、そこが人間としての勝負どころ。
確かにそう思う。
-
パリで一人で暮らすおばあさん。色々ということをきかなくなった身体と共に、ゆっくりと毎日を過ごす。時にユダヤ人が迫害され、おばあさんの一家も散り散りになった辛い過去を思い出し、また突然の不運におそわれるのではないかとおびえることも。
訳者の岸恵子さんが後書きにこう書いています。
○老いの身の孤独をどう生きてゆけるのか…愚痴っぽくて自分勝手な頑固者になるのか、感謝の気持ちで他人にも自分にも優しくなれるのか、そこが人間としての勝負どころです。
本当にそうだなと納得。周りを見渡しても、素敵な年の取り方をしている方は僅か。老害なんて言葉も出だして、そんな事はないと否定できない現実。今より老齢になった時に、また読み返して、その時の自分の在り様をチェックしなくては…と思いました。
私にも若い時があったのよ。私の分の若さはもうもらったの。今は年をとるのが私の番。
もう一度同じ道をたどってどうするの?だって私に用意された道は、今通ってきたこの道ひとつなのよ
おばあさんの言葉が切なくも美しく胸に響きます。 -
おばあさんになると、できなくなることもたくさんある。
しわも増えるし、物忘れも多くなる。
でもできなくなることが増えても、しわが増えても、ポジティブに捉えるおばあさん。
おばあさんは、過去の悲しい記憶、辛く苦しい記憶、幸せな記憶、一日いろいろと思い出していく。
もういちど、若くなってみたいと思いませんか?と問われるおばあさん。
驚いて否定する。
「もういちど、同じ道をたどってどうするの?だってわたしに用意された道は、今通ってきたこの道ひとつなのよ」
…とてもすてきなおばあさんだと思った。
わたしも同じ道をたどりたくはない、考えは同じ。
けれど、このおばあさんのように、やさしく人生の苦楽をすべて受け入れて同じセリフを言うことはできない。
表紙といい、水彩の淡い色合いがとても素敵なのです。 -
もしもおばあちゃんになれたら、終わりの日までこんなステキな強いおばあちゃんになりたいなぁって憧れます。
-
おばあさんから学ぶこと。
自分の人生を生きること。
全てを受け入れること。
生まれる国は自分では選べない。
日本に居ると、人種差別や戦争などとは関係無く生きていくことが出来てしまう。
自分では変えられないこととどう向き合えば良いのか?想像してみてもどこにも解決策が見つからない。
辛い出来事があったからこそ、人生の果てで全てを良い方向に捉えることが出来るのかな?
私も人生の終わりには、一人でも心穏やかなおばあさんの様な終末を迎えたい。 -
じんわり心にしみる絵本。
確実に進む老いに不自由を感じ、最愛の息子にはちょっぴり強がってみせながら、自由にしなやかに生きるパリのおばあさんの姿に、女優の岸惠子さんの訳がナレーションのように重なって聞こえてくる。著名人の訳ならではの特典映像みたいなものかな。
人は誰しも歩んできただけの過去の道と、これから進む未来の道を持つ。その重みと軽やかにつきあっていける人生はすてきだ。いまの自分がいちばんいい自分と思わせてくれる、お気に入りの一冊になった。