- Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
- / ISBN・EAN: 9784803803976
作品紹介・あらすじ
作家生活30年目にして初めて持ったオーダーメイドの机。
山形の家具職人・Nさんの手になる机に向かい、
振り返る文学的半生——当代きっての私小説作家が
ものの記憶にからめて綴った滋味あふれるエッセイ!
装画/挿絵 オーライタロー
感想・レビュー・書評
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静かなエッセイを読んで、静かな休日を過ごした。
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山形の木工職人に作ってもらった楢の木の机から見渡す世界。机の上に置かれる石だったり貝だったり、酒だったり食器だったり、果物だったり図鑑だったり、机の先の窓から見える植物だったり鳥だったり。そして、机に座って思い出す人だったり、出来事だったり。いかに著者の文学が、半径2メートル以内のディテールから出来ていることが感じられます。なので、この本のサブタイトルは「ものをめぐる文学的自叙伝」です。新聞連載の作家のエッセイという建て付けから始まっていますが、佐伯一麦という小説家の構成要素がすべて網羅されているような気がしました。一個一個のモノが、そのモノを巡るエピソードが濃厚なストーリーを持っていて、またそのストーリー同士が絡み合ったりして、彼の人生の忘れられないこまごまが、彼の小説のすべてなのかもしれません。庭木 ドクダミの章で語られている私見、作家の中で最も植物に詳しかったのは井伏鱒二、その反対なのが三島由紀夫という部分が印象的で、現代の文学における私小説という位置づけはまったく理解していない上で、佐伯一麦が私小説の作家とされることに納得しました。東日本震災後の内向の世代の古井由吉との新聞紙上の往復書簡の連載も、その流れで成立しているのでしょう。「空にみずうみ」読んでみようかな…
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『机』から始まり『椅子』に至るまで、モノについて書かれた全百回の新聞連載エッセイ。著者がこれまでの人生で出会った人々との記憶を、モノを頼りにじっくりと辿っていくような文章です。