世界一カンタンで実戦的な文系のための人工知能の教科書

  • ソシム
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  • Amazon.co.jp ・本 (212ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784802612470

作品紹介・あらすじ

人工知能(AI)にまつわる素朴な疑問や知っておくべきことを、第一線で活躍するAIの研究者が、最先端の研究を踏まえながら、ていねいに解説する一冊。

「AIで人の仕事がなくなる」「AIにいま投資しないと生き残れない」など、AIの進化や普及にともなう不安を刺激する情報があふれているいま、AIの仕組みや、強み・弱みを正しく知ることが求められています。

本書では、読者の疑問や知りたいことに応えるために、専門用語はもちろん、数学も、プログラミングの知識も必要としないように、一問一答方式で説明します。「効率よくAIの今と近未来を知ることができる本」です。

【本書でわかることの一部】
・AIの正体とは?
・なぜ人はAIに不思議なもの(神秘性)を感じるのか?
・何ができたらAIと呼べるのか?
・AIはどうやって学ぶ?
・AIは人の気持ちを理解できる?
・AIが出した答えは信用してよい?
・どんなときにAIは間違う?
・AIはどのように予測や決定の根拠を説明してくれる?
・AIが感情を持つようになるって本当?
・AIが人を差別するって本当?
・AIの内部に潜む悪意とは?
・AIがAIを作るってどういうこと?
・囲碁AIどうしが対局したらどうなる?
・悪意のあるAIとそれを取り締まるAIを競わせるとは?
・世界でAI研究をリードしているのは誰?
・AI研究の最前線。いまの課題は?
・AIを使いこなすには?
・AIにできること、できないことは?
・AIに投資するには? そのタイミングは?
・近未来のAIはどうなる? ほか

本書を読むことで、AIの仕組みや得意・不得意などを正しく理解できるようになります。
また、AIの研究者が何を考えているのか、これから先のAIとそれを取り巻く環境が、
どのように変わっていくかを知ることができます。
教養として、そしてビジネスで正しくAIを語れるようになるための必読書です。

感想・レビュー・書評

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  •  ついこの間だが、維新の会支持者の上司が、嬉々としてこう述べていた。
    「これからはAIやで~。AIやで~、お前らのやっている事務仕事は、これからAIが全部やってくれるんやで~仕事なくなるで」
     私たち下っ端は、決して抽象化され得ない奇々怪々の現実を最前線で相手取って事務仕事をするので、おそらくAIに代用させるのは膨大なコストがかかるだろう。というか、事務仕事の一番重要なポイントと、ビッグデータは、とても相性が悪い。事務仕事とは、固有名詞と数字を扱うことである。固有名詞はビッグデータにはならないし、数字はあえていえば「AIが出した後のもの」である。これからはむしろ、AIに処理不可能と排除された人々を相手取るのが人間の役割となるだろう。AIに適度に処理されていく人間となるか、そうはならない人間となるか。その部分を丁寧に見て行って処理することが事務仕事のこれからとなるのかもしれない。よって、仕事は増えていく。これからも、単純に、必要になるスキルは「ほうれんそう」ができることと簿記とエクセルを使える力ぐらいのものである。

     この上司は、新しい社員が入社するたびに、「この人はめっちゃパソコン使えるねんで~」と私にどや顔を浮かべてわざわざ告げに来る。いったいなんの意味があるのかわからないが、その新しい社員は6名ほど入ってきたが、みな辞めていった。あまりにも馬鹿馬鹿しい職場だからだろう。天下り先みたいなところで私は事務仕事をしているので。なので、仕事が終わったあとが、私の人生の本番である。なんで辞めないでいられるかはわからない。転職が怖いだけだろう。

     さて、本書はその上司や維新の会が、コスト削減や、改革のために使う便利な言葉である「AI」という単語を非常にわかりやすく説明した良い本だと思う。

     AIは勝手に考える神のようなものではない。
     あくまで人間の手で制御されるものである。
     その核心部分は実にシンプルで、「褒められたらその行動をより多くとるように効用関数を変化させ、怒られた場合にはその行動を抑制するように効用関数を変化させる」のだ。
     このようなAIの調整力における、どれだけそれらが良かったか、AIがなにを達成しないといけないのかをフィードバックする「親」に相当する部分を「目的関数」という。
     目的関数は「こういうAIが欲しい」という目的部分の評価軸だ。目的関数は最初に人間が設計する部分であり、これらは多くの場合シンプルなプログラムで記述される。画像認識なら「AIの出力の正解率」を計算して出力するプログラムである。

     AIと言えば、人間のように思考するものだと考えがちだが、現在のAIというものは、ジョン・サールにおける「中国語の部屋」という思考実験と同じであるという。中国語の手紙が届くのだが、部屋の中の人間はそれが読めない。でも、手元にマニュアルがあり、こういう中国語が来たらこういう中国語を返せと書かれてある。人間はそれで返事してやり取りを成立させるのだが、これは人間が中国語を理解していると言えるのだろうか、でも完璧なやり取りはできているのですよ?といった思考実験だ。
     AIは自身のプログラム(マニュアル)に従って出力しているだけであり、外からの入力に何かを感じたり考えたりしている訳ではないのである。「人のような人工知能」は制作不可能であることをこの中国語の部屋の思考実験は示している。

     また論語の中に、「子曰、由、誨 女知之乎。知之為知之、不知為不知。是知也。」という話がある。
    「「知る」ということは、知っていることを知っていると、知らないことは知らないといえることだよ」という意味だ。ソクラテスも似たようなことを言っていた気がする。この哲学上最も有名なこれが、AIにとっての最大の壁となっている。

     AIの弱点は無知の知にあり、新しい入力に対して知らないといったことを判断させることができない。画像認識の例で、動物のラベルを学習させると、車の画像が来た場合、車と似た動物を出力する。手持ちの選択肢から認識しようとするのだ。与えられたデータに対して、なんらかの結果を出せれば良いという目的関数のみで学習している場合、「知らない入力」というのは存在しないのでこのような問題が起こる。
     人間が選択肢をいくつも作り出し、AIの答えをすべてあらかじめ設定するような、ルールベースのAIだと最終的には「わからない」という出力も可能である。AIは目的関数が最大になればいいので、未知のものが来るという発想がないので、とにかく失敗だろうが成功だろうが答えを出していくので、知らないとは言わない。

     ルールベースのAIだと事務作業のすべてを把握して、定義して、設定する必要がある。現在のAIは「入力のデータと、出力してほしい結果という二つのペアのデータをたくさん用意するので、その間のルールを、機械に自動的に発見してもらおう」といった考え方である。音声から文字情報、英語から中国語、広告情報からクリックするかどうかを。入力と希望する出力のテストケースを多数用意して、その関係性を自動で生成するのだ。

     結論部分では、こう述べている。
     AIが人の知性を超えるのはまだ何十年も先の事であり、AIはそもそも人が行う設計に依存し動作する。しかし、人工知能と拡張知能を分けて考えるのは大事だろう。
     人工知能は、ビッグデータから特徴抽出をして人が解けないような複雑な問題に対応する。
     製造業、金融、小売等の業種でプロセスの自動化に適している。

     拡張知能とは、人の思考を助けることを目的にビッグデータを解析すること。創造性や柔軟な対応が必要な領域で、人をサポートする。意思決定支援、コスト削減、生産性の効率化などに有効とされる。
     例えば、契約書の作成など、AIが用途に応じて先例を参照して自動生成する。最終工程で人が確認作業をする。囲碁のAIタッグ戦も、AIの提案を人が見ながら判断して戦うものだ。

     ユーザーに的確なサービスを提供するために、膨大なユーザーの嗜好をデータベース化し、それを各ユーザーに向けて与える。その「的確なデータベースからの提供」を信じ切ってしまうと、もし的確でない提供があったとしても、「的確なデータベースからなので間違いはないだろう」と判断してしまう危険もあるだろう。ネトウヨでもないのに、AIがネトウヨと判断してあるアカウントを停止して、もしくは社会的抹殺にまで及んだとしても、それはAIが判断したことなんだし、実際あの人はネトウヨかもしれないから、これで良いんだ、と、なりかねない。逆の立場でも然り。よってAI社会は、企業が倫理的に善であることを前提としているが、「悪」であったとしても人間の力でなんとかなってきたところが、AIによって人の嗜好の内部まで食い込んでくるので、その「悪」であることへの人間からの対処が、今までよりも攻略困難になるのではないかとも思われる。

  • 一般教養レベルを知れる。素人でも理解できる。

  • 何冊かAIの解説本を読んだが、人間との違いが一番よく理解できて、興味深かった

  • 質問ベースで章が構成されていて読んでいて楽しい。技術系の人たちと同じ目線で会話できるようになりたいと思って読み始めたが、少し近づけた気がする。

  • AIの仕組み、問題点や今後の可能性まで、かみ砕いて解説されており、理解しやすかった。

  • AIってなんだ?という疑問から手に取った本書
    縁遠い世界でいきる私でも理解できる内容だった

    仕事でAIを活用する予定は今のところないが、
    もしそのようなことが起きた場合に
    今回得た知識がなんとなく参考になってくれたら嬉しい

  • 人工知能を概要とトレンドを紹介した本。
    初歩レベルと上級レベルの中間的な内容。
    汎用AI はまだまだらしい。
    学習させる入力データの精度がAIの性能に作用する。
    何の為のAIか、目的関数は人間が決めるところ。

  • 難しい言葉を使わずに解説してくれるありがたい本。それでもボンクラな自分には全ては分かりかねる。そのため以下は記憶に残った部分と感想。
    ANI(特化型AI=スマートスピーカーとか自動運転とか)とAGI(汎用型AI=人ができることならなんでもできる)。フィクションの世界だと汎用型AIのイメージだがまだそこまでは到達が難しいようだ。
    効用関数(それぞれの行動がどれくらい良いか=人間でいう価値観)がデータから行動する価値判断になる。AIが何をしないといけないのかフィードバックする「親」部分が目的関数になる。AIを人間に例えると分かりやすいようだ。
    ルールベースAI(知識を構造に落とし込む)でもデータが少なくルールが明確なら有効。予め予測ができる範囲内であれば良い手法な気もする。
    arXivというプレプリントサーバーの活用で最先端を知る(玉石混交な恐れ有)。まだ見てもいないが英語の学習が必須なのだろう。
    AIを用いて何かを作るデータサイエンティストが料理人、データが食材、計算機とプログラミング言語が調理用具、どのように作るかというAIアルゴリズムがレシピ、学習済みAIが出来上がった料理、誰に提供されるかというのが客。これは非常にたとえが分かりやすかった。
    AIが識別(音声・画像認識など)・予測(需要・障害・行動予測)・実行(業務最適化・作業自動化)において実用化されていること。AIができることを分かりやすく一言で説明してくれている。
    タイトルに偽りないように思う。

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著者プロフィール

株式会社TDAI Lab代表取締役社長
AIを用いてビジネスに今までにない価値を提供することを目的に2016年東大発学生ベンチャーとして株式会社TDAI Labを設立し代表取締役社長に就任。最先端のAI研究とその導入支援を行っている。ビッグデータから真実を浮かび上がらせる信頼性スコアリングAI「WISE REVIEW(特許取得済)」などの研究開発も行っている。
特技は競技ダンス。2015年学生競技ダンス選手権で全日本優勝。
東京大学大学院工学系研究科システム創成学専攻 博士後期過程在学中

「2020年 『世界一カンタンで実戦的な文系のための人工知能の教科書』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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